Webサイト開発のプロセスにSEOをどう組み込むか(後編)
この記事は前後編の2回に分けてお届けしている。前回に引き続き、今回もSEOを開発プロセスに組み込む方法について、専門家の意見に耳を傾けてみよう。
プロセス中でSEOが見過ごされないようにするために
すごろくで「○マス戻る」があるのと同様に、開発ライフサイクルでは、その過程において前進と後退を繰り返すものだ。こうした状況で、SEOの取り組みが見過ごされないようにするにはどうすればいいのだろうか?
ジェシカ・ボウマン氏SEOは、プロジェクト進行の各ステップに関わっていなければならない。これを言うと、大半の企業はもちろん、多くのSEO担当者まで驚くけれど、場合によってはSEOチームがWebサイトのプロダクトマネージャなどよりプロジェクトの核心に深く関るべき部分もある。
多くの企業では「SEOの役割は企業の他の機能とは異なる」という認識が欠けている。私がクライアントに言うのは「SEO担当者はWebサイトのプロダクトマネージャやプロジェクトマネージャ(この2つを同じ役割にしている企業もある)とまったく同じような役割を果たす必要がある」ということだ。
Webサイトのプロダクトマネージャは、
- Webサイトおよびその成否の最終責任を負う。
- SEOトラフィックを含む全トラフィックを最大化するために行動する。
だから、プロダクトマネージャにSEOを全面的に受け入れさせよう。彼らは、ITに関わる企業幹部と事業に関わる企業幹部の双方から意見を聞いてもらえるので、最も望ましいSEO擁護者になり得る。
プロジェクトマネージャは、
- プロジェクトのために遂行される全作業の詳細を監督する。
- ミーティングを設定し、レビューおよび承認プロセスに適切な人材を選んで配置する。
だから、SEOを組み込むことがどれほど必要か、そしてなぜ必要かを、プロジェクトマネージャが完全に理解していることが極めて重要だ。彼らのポジションこそが、プロジェクトで必要なSEOの実行を可能にするのだ。
SEO担当者がすべきことの1つに、プロジェクト計画の綿密なチェックがある。大半のプロジェクトマネージャは、開発ライフサイクルの適切な場所にSEOを組み込んだ経験がないので、プロジェクトの中でSEOが関わるべき場所を見極めるのが目的だ。これまでSEOをプロジェクトに組み込んだ経験のない企業なら、開発プロセスにSEOを統合した経験のあるコンサルタントにお金を払って相談する価値はある。1度学んでおくと、そこで得たものを将来のプロジェクトに活用できるからだ。
フラン・ラーキン氏わが社では、新製品をリリースするたびに、URLからnofollowリンクの1つひとつにいたるまで、SEOの要件を明確に文書化している。したがって、わが社の開発チームの手元には必要な詳細があり、QAチームが、SEOの要件が指示どおり機能しているかどうかをチェックしている
鍵となる人物
プロジェクトにどんな人が関わっているかは、私にとって大きな問題だ。プロジェクトに関わる全員に、検索エンジンに配慮してサイトを最適化することについて一定の理解が必要だろうか? それとも、特定の人だけがSEOタスクを監視しケアすればいいのだろうか? 開発者は301リダイレクトの設定がなぜ必要なのかを認識していなくて大丈夫? あるいは、その設定方法を知っているという事実があれば十分?
ジェシカ・ボウマン氏プロジェクト関係者の全員がSEOを理解していれば、各プロジェクトで全員がSEOを意識するので、それが最も望ましい。SEOを理解することが最も重要になる役割は以下のとおり。
- 主任プログラマ
- 主任ユーザービリティデザイナー
- プロダクトマネージャ
- プロジェクトマネージャ
役割という観点で言うと、チームではなく、プロジェクトごとの役割に注目することが重要だ。大規模企業の場合は特にそうなのだが、ユーザビリティのチーム、デザインのチーム、プログラミングのチームが別々のプロジェクトに分かれ、それぞれ異なるリリースに取り組んでいることが多い。そうなると、プログラミングチームに「SEOエキスパート」がいても、全部のプロジェクトに関わることはできない。したがって、プロジェクトに配属された責任者たちは、SEOに関して詳しい知識を持っているか、あるいは他の部門のときとはまったく異なるやり方でSEOチームと密接に連携することだ
私から補足しておきたいのは、品質保証(QA)チームはSEO全般を正確に理解しておくべきであり、自分たちが何をテストしているのかを具体的に認識している必要がある、ということだ。
加えて、QAチームはテストに役立つツールを完全に備えておくべきだ。こうしたツールは、リダイレクトが確実に301で行われているか、解析プログラムは正しく追跡できているかなどを調べるのに使われる。
SEOがプロセスに組み込まれていない場合
私は、あるサイトでSEOが考慮されていなかったため、トラフィックが激減したのを自分の目で見たことがある。たとえば、こんな例があった。サイトのあるセクションを新しい(そして改善された……怪しいけど)プラットフォームに移動した。この新プラットフォームでは、各ページに対して2つの異なるURLを作成し、古いプラットフォーム上のページも、301で新ページにリダイレクトせずそのまま残した。その結果、この企業は1つの同じコンテンツにつながる3つの異なるURLを持つことになり、それぞれがさまざまな方法(フィード経由、サイト検索、外部リンクまたはサイト内リンク経由)でアクセスできる状態になってしまっていた。
ジェシカ・ボウマン氏SEOをプロセスに組み込まないというのは、お金をテーブルの上に置きっぱなしにして、さらに家の外にお金をまいたり、ゴミ箱に捨てたりするようなものだ。最悪の場合、それがあなたの努力を台無しにする可能性があり、その修復に何千ドル(大企業や複雑なWebサイトなら何十万ドル)もの費用がかかることもありうる。これで何年分ものSEOの仕事が水の泡になる危険性もあり、たった1回のリリースで順位とトラフィックが急落してしまうこともある。
Webサイトの改訂にはさまざまなリスクがあり、SEOに影響しそうもないごく些細な変更が結果に悪影響を与えてしまう事例がいかに多いかに驚かされる。このような理由から、従業員全員にSEOを教育して、SEOチームには各リリースの状況をつねに知らせることが、企業にとって最もためになる
フラン・ラーキン氏SEOの問題は、サイト上の他のバグと同じように扱われる。当社は問題を追跡して、重要性を見極め、それに応じて優先順位を決めていく。
結論
それぞれの組織とそのプロセス(あるいは、プロセスの欠如)は異なる。しかし共通して言えるのは、プロセスにSEOを組み込むことが重要だということだ。ボウマン氏とラーキン氏も言及しているように、みんなが会議の席につき、「SEOとは何か」「なぜSEOが重要なか」を学ぶことが重要だ。各部署にSEOの支持者、理解者を見つけると、取り組みがずいぶん楽になるだろう。
たとえば、Simply Hiredでは、マーケティングチームと製品チームをSESのようなカンファレンスに出席させているし、SEO関連のブログ記事は社内で回覧しているほか、新人のエンジニアには「SEO基本技術のチートシート(トラの巻)」のコピーを配布して、自分のオフィスブースのパーティションに貼らせている。
プロジェクトのメンバーをSEOに関わらせるもう1つのやり方として、社内の各部門の人を対象に各種のトレーニングコースを用意して、彼らが新たに習得したSEOスキルを個人サイトで試してもらう手もある。たいていの人は何らかのWebサイトを持っていて、検索エンジンで順位を上げるという話になれば、自分でコントロールできない会社のサイトよりは自分のサイトのほうが興味のわくものだ。
SEOが見過ごされないようにするために、あなたの会社ではどんなことをやっている? どんなことはうまくいって、どんなことはうまくいかなかった? 披露できるような教訓は学んだかな?
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