商標権とSEOに関連する新たな訴訟——大企業が中小企業を狙った訴訟? (後編)
この記事は2回に分けてお届けしている。訴訟の背景について述べた前回に引き続き、この訴訟における問題点についてお伝えする。
問題点
eMoveは、「moving help(引越し手伝い)」など、特定のキーワードでHireAHelper.comよりも検索順位が低いことを、とても不愉快に感じているようね。Uホール社は、グランツ氏に電話をかけたり警告状を送付したりはせず、いきなりグランツ氏夫妻とハイヤー・ア・ヘルパー社を相手に訴訟を起こしたの。何を法的根拠に、Uホール社は告訴しているのかしら?
どうやらUホール社は「Moving Help」および「Moving Helper」という登録商標を所有しているらしいわ。ええ、そうね。これらの語句は、私が見たってかなり包括的で説明的よ。
今回のケースがそうだとは言わないけれど、最も利益に結びつきそうなキーワードを特許商標局に登録しようとするやり方が、企業の戦略としてますます広まってるような気がするの。そうすれば、自分たちより規模の小さな競合相手に対し、意地悪な警告状を送ったり、費用のかかる法廷闘争を仕掛けたりできるわけよ。小規模企業が訴訟を受けて立つ可能性はかなり低いの。問題となった商標の登録を無効にするための法廷闘争に参加する余裕なんか、自分たちにはないってことがわかっているんだもの。
覚えておかなくちゃいけないのは、特許商標局がある商標を登録したからといって、法廷がそれを支持してくれるとは限らないということ。
たとえば、アメリカン・ブラインド・アンド・ウォールペーパー・ファクトリーが起こした商標権侵害訴訟の悲しい結末を考えてみて。ブラインドや壁紙などの販売を手がけるアメリカン・ブラインド・アンド・ウォールペーパー・ファクトリーは、自社の登録商標を侵害しているとしてグーグルを連邦裁判所に提訴したの。ところが、商標権侵害の訴えが認められなかっただけでなく、裁判官は「アメリカン・ブラインド」という語句があまりに包括的で商標法では保護できないとの判断を示し、同社の登録商標を無効としたのよ。というわけで、いざ裁判が終わってみると、アメリカン・ブラインド・アンド・ウォールペーパー・ファクトリーはいろんなものを失ってたってわけ。
だから、商標が登録されているからといって、万全ではないということね。もちろん登録商標を所有することは、訴訟において有利な証拠となるし、登録してない場合よりも多額の賠償金を請求できるけれど、裁判で確実な勝利をもたらすものではないの。
話がそれちゃったけど、この訴訟における問題点に戻りましょう。
ハイヤー・ア・ヘルパー社は、Webサイトのコンテンツの中で、「moving(引越し)」「helper(手伝い人)」「moving helper(引越し手伝い人)」という語句を使用したとされているわ。Uホール社はその行為が同社の正当な商標権を侵害していると主張しているの。
商標権侵害に加え、Uホール社では著作権侵害、契約違反、企業秘密の不正利用なども申し立てているわ。さらに、ハイヤー・ア・ヘルパーがあらゆるメタタグおよび目に見えるコンテンツにおいて「moving help」や「moving helper」という語句を使用することを、直ちに(つまり、審理前に)差し止めるよう裁判官に求めているの。
結論
この記事では1つ1つの主張を検討するところまで扱いきれないけど、Uホール社によるかなり根拠の弱い提訴の中心となっているのは商標権侵害だと思うわ。
Uホール社では、正確にはハイヤー・ア・ヘルパー社が自分たちの著作権をどう侵害したのか把握するのに手を焼いたみたいで、代わりに、両社のWebサイトの構造があまりに似すぎているというあいまいな主張をしているの。
さらに、契約違反に関する訴えは、商標権侵害と著作権侵害の申し立てが認められない限り通用しないわね。グランツ氏がeMove.comに引越し手伝い人として登録していた5か月の間に、本当にUホール社のプロプライエタリな企業秘密を知り得た可能性は低いと思われるわ。
もちろん、まだ訴訟手続きにおけるごく初期の段階だし、Uホール社が裁判所に提出した書類の中には「封印された」、つまり「非開示」のものがいくつかあるの。したがって、この訴訟の見通しが、情報開示手続きの段階で一変する可能性だってあるわ。
この訴訟は2008年の夏に起こされたばかりだけど、弁護士たちは、差止め命令や司法管轄権、期間の延長などに関する議論を起こすのに余念がない状態よ。この訴訟にかかる費用は、Uホール社よりもハイヤー・ア・ヘルパー社にとって、はるかに手痛い出費となりそうだわ。
双方が所有する資源の差を考えると、高額な裁判費用のおかげで、この訴訟はUホール社が勝つかもしれないわ。戦い続ける余裕のある者が勝利するのよ。弁護料でさっさとハイヤー・ア・ヘルパー社を消耗させてしまえば、裁判官がUホール社のかなり説明的かつ包括的な商標について判断を下す前に、Uホール社が和解に持ち込める可能性は高くなるわ。米国において、公正な裁きが平等に行われていないというのは、悲しい真実ね。
いつもの通り、訴訟に何か進展があったら、またお伝えするわね。
それでは、ごきげんよう。
サラ・バード
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