情報アーキテクチャについて、映画『007/慰めの報酬』が教えてくれること(後編)
この記事は2回に分けてお届けしている。前編の記事では、映画『007/慰めの報酬』のサイトをきっかけに、映画サイトでのカテゴリの切り方を、SEOと情報アーキテクチャの両側面から解説し始めた。
後編となるこの記事では、前回に引き続いて、情報アーキテクチャに関するアドバイスをお伝えする。前編を前提とした解説になっているので、まだ読んでいない人は、まず前編に目を通してほしい。
多すぎるリンク数への対策:カテゴリの移動
サイトのアーキテクチャを考えるうえで、僕からの最後のアドバイスは、1つのカテゴリにおけるリンク数を抑えるために、時にはカテゴリを移動してもいいだろうということだ。たとえば、最初の方で追加した公開年の階層をジャンルのカテゴリの下に移動することによって、重複コンテンツの問題を回避し、1つのカテゴリに属する映画の数を減らすことができる。これによって、次のような階層ができあがるが、これは取っ掛かりとしてはかなり良さそうに思える。
免責事項:上記の階層構造はサンプルに過ぎない。これが適切な回答になるとは思わないし、最終的には公開年のカテゴリを削除し、アルファベット別にページを分割したりすることになるだろう。上記の階層を使用すると、大きな苦痛や損害がもたらされたり、命取りとなる可能性がある。
上質なコンテンツが確実にクロールされるようにする
階層の準備ができたら、今度は各ページに掲載するコンテンツに取り組まなければならない。最良の情報アーキテクチャとは、ユーザーが情報を探していく筋道にぴったりと沿うものだ。これにより、他の人がリンクを張りたくなるような有用なページを作成するチャンスが生まれる。作成するカテゴリページは、単なるリンクのリストであってはならない。それはサイトマップでやることだ。
上記のアクション映画の例では、最も人気のある新作映画を掲載したり、いくつかの作品について、ユーザーからのコメントを表示したりしてもいい。そのカテゴリには属さない作品に対するリンクを追加しても構わない。
たとえば僕ならば、『慰めの報酬』への期待が高まっていることを考えて、アクション(および、おそらくは映画)のカテゴリページからこの映画のページに対してリンクを張るだろう。ポイントは、重要なページに向けてリンクを張るということだ。どのページが重要かは、自分次第だ。いちばん売上の大きいページかもしれないし、現在はランクインできていないページかもしれない。基準はどんなものでもかまわないんだ。
その他の障害
ほとんどのサイトは膨大な数のページを抱えている。そして、実生活では多くのものがきちんとしたカテゴリ構造に収まりきれないという事実がある。これは、情報アーキテクチャを正しく構築する上で、多数の障害があることを意味している。
階層の重複
往々にして、1つの情報に対して適切だと思われるカテゴリが複数存在することがある。そういう場合、その情報に最も関連深いものをデフォルトのカテゴリとして選ぶことが大切だ。ユーザーのために、その情報を別のカテゴリにも追加することは簡単だが、パンくずリストは1種類しか選択できないので、重複コンテンツを回避するためにはデフォルトのカテゴリを決めておかなければならない。
たとえば、位置情報に関するアーキテクチャを構成する場合、階層が重複してしまうことがよくある。ロンドンでは、1つの場所を説明するのに地区名や地域名、地下鉄の駅名を使う。つまり僕たちのオフィスの場所は、次のように説明できるわけだ。
- サウスワーク地区にある
- バーモンジー通りにある
- 最寄り駅はロンドン・ブリッジ駅
新作映画が「新作」でなくなってしまった場合
ちなみに、この記事の最初の下書き段階では、アクション映画の上に据えるカテゴリとして、「新作映画」を設定していた。この方法は、一見するとそんなに悪い選択肢のようには思えない。ある程度の検索量もあるだろうし、各カテゴリに属する映画の数を減らすのにも役に立ち、自然にリンクが集まるようなコンテンツを作成するのも容易だろう。だが、これには2つの問題点がある。
まず、公開年のカテゴリを追加する場合と同じように、キーワード・カニバリゼーションの問題を引き起こす可能性が高い。「アクション映画」で検索したとたん、少なくとも2つのページが競合しあうことになる。つまり、新作アクション映画のページと旧作に属するアクション映画のページが存在しているわけだ。
もう1つの問題は、新作映画がすぐ旧作になってしまうということだ。そうなると、その映画のカテゴリを変更しなければならない。となると、該当ページのパンくずリストやURLばかりか、そのページにサイト内リンクを張っているすべてのカテゴリページも更新しなければならなくなるはずだ。サイトをユーザーにとってできるだけ使いやすいものにする必要があるってこと、前にも説明したよね。公開から3か月後にユーザーが『慰めの報酬』に関するページを探すのにサイトを閲覧しているとしたら、新作映画のカテゴリと旧作のカテゴリのどちらを調べるだろうか? 4か月後、5か月後、あるいは半年後ならどうだろう? 僕が言いたいのは、途中でページのカテゴリを変更せざるを得なくなるような階層構造を選ぶのは避けようということだ。
今回の記事がみんなにとって、次に自分のサイトをいかに構築するかを考える際の判断材料になったのならいいのだが。適切なアーキテクチャを構築すれば、ユーザーにとってわかりやすく、関連する検索語で検索上位を獲得できる可能性のあるサイトが即座にできあがる。君たちの一人ひとりが主人公になれるんだ。
追伸:多少、誤解を招くようなタイトルを使い、申し訳なく思っている。事情を知っている人たちは、これを巧妙なやり方だと考えるだろうが、キーワード・スタッフィングだと思う人も多いんじゃないだろうか(^_^)
ソーシャルもやってます!