訪問者に応じて各国向けコンテンツを表示したい場合にSEOで留意すべきこと
ここのブログでスコットから「グローバル・アソシエイト」として温かく紹介してもらって以来、僕らDistilledのメンバーは、PRO会員向けのQ&Aコーナーを手伝う形でSEOmozの仕事に協力してきた。読者の多くもご存じの通り、SEOの専門家にコンサルティング形式で質問ができるというのは、PRO会員の大きな利点の1つだね(別にSEOmozからお金をもらって言ってるわけじゃないよ!)。SEOmozのやり方を内部から眺め、時には個人的な問題を解決するのも目にしているから、このPRO会員制度って本当に役に立つことが多いって実感してるんだ。
その話はさておき、そろそろ今回の話題に移ろう。
意外なことでもないだろうけど、英国人である僕は、サイトの国際化問題(internationalisation)を山ほど担当してきた(米国式にinternationali「z」ationって書いた方が国際的かな? このジョークはいつまでも使えそうだね)。実はその中で、何度も繰り返し聞かれた質問が1つあったので、僕は自分の考えをここで公にした方がいいと思ったんだ。
僕がここで説明したいのは、ジオデリバリー(geo-delivery)、つまり、訪問者の居住地ごとに異なるコンテンツを提供する手法についてだ。
訪問者について(サインアップ情報やクッキーなどから得られる)詳しい情報がない場合は、ジオデリバリーを実現するには、訪問者のIPアドレスから居住地を判断するのが唯一の方法だ。IPアドレスに基づいてコンテンツを選択的に提供するという話になったら、クローキングの問題は避けて通れない。
グーグルは6月1日に、どのような場合にIPデリバリー(アクセス元のIPアドレスに応じたコンテンツ調整)がクローキングと見なされるかについて、明確なガイドラインを発表した。このガイドラインから、重要な部分を引用しよう。
Googlebotには、同じIPアドレスを持つ一般的なユーザーが目にするのと同じコンテンツが見えなければならない。
さて、ここでちょっと考えてみてほしい。
米国人である君が外国人嫌いという批判をかわそうとして、「私の最も親しい友人の多くは米国人です」なんて説明をするとしたら、何かがおかしいということに気がつくだろう。でも、グーグルがやっているのは、それと同じことなんだ。僕は米国人が大好きだけど、米国では国内のスポーツイベントに「ワールド・チャンピオンシップ」なんて銘打ってるよね。僕がこのクローキングの定義が抱える問題を説明するために使おうとしているアナロジーは、そのやり方と非常に近いものがある。米国は去年も「ワールド・シリーズ」で優勝しなかったっけ?
では、君たちにはっきり言おう。米国外にも「ワールド」はあるんだ。英国では、6000万人ほどの人々が第一言語として英語を話している。北欧でも、かなり多くの人たちが英語を使って検索をしている(特にビジネス関係で)。そしてもちろん、オセアニアや南米にも僕らの友人はいる。このことと、英語圏全体で「.com」というドメイン名が広く使われていることを合わせて考えると(米国向けのサイトが全部「.us」というドメイン名を使ってればいいのにね)、検索エンジンは誰にどういう検索結果を示すべきか、判断するのが難しい場合もあるんじゃないかな。
英国に本拠を置く企業のサイトが「google.com」で良い順位を獲得して、「google.co.uk」で良い順位を獲得できていないケースを度々見かけるけど、それは、これらのサイトがある種のフィルタに引っかかって、「十分に英国的」でないと判断されてしまったためなんだ。同様に、米国に拠点を置く企業からは、英国に事業を拡大したいのだけれど、どうすればいいかという質問もたくさんくる。
特定の国をターゲットにしたい
国際的ターゲティングの基本から言えば、この場合は、検索エンジンに自分の事業拠点を、できるだけ多くの方法を使って知らせることが重要だ。その方法をいくつか挙げてみよう。
- 国別コードトップレベルドメイン名(たとえば「.co.uk」など)を使用する
- その国のホスティングサービスを利用する
- サイト内の各ページに、その国における事業拠点の住所をプレーンテキストで記載する
- グーグルのWebmaster Centralで地域のターゲットを設定する
- その国のウェブサイトからリンクを張ってもらう
- などなど
もし、君の会社が一から始めるのなら、上に示した手段を全部使うと、ターゲットとしている国で高い順位を獲得できるチャンスも最大限に大きくなるよ。
でも、話はこれで終わりじゃないんだ。君の会社がすでに、「.com」ドメイン名で地位を確立している場合には、一から始めるよりはむしろ、現在のドメイン名が持つ力を利用して新しいターゲット地域にも影響力を及ぼしたいと考えるんじゃないかな。
そこで、この記事のねらい(それと、さっき「ワールドシリーズ」を持ち出した理由)は、ある手法に潜む落とし穴を指摘することなんだ。その手法については、この問題を検討している企業が驚くほど頻繁に提案しているのを目にする。
「ワールドシリーズ」問題を避けるための方法
僕が見た提案というのは、具体的にはこんな感じだ。
うちのサイトに複数のバージョンを用意しておいて、ユーザーの居住地を特定してから、各ユーザーに合わせて適切なコンテンツを提供するか、サイト内の適切なページ(または、ターゲットとしている国でホスティングしているサブドメイン名でも可)にリダイレクトすればいいじゃないか。
しかし、これには問題があって、ロボットの見る世界ってメジャーリーグのコミッショナーの見方に限りなく近いんだよね。つまり、どんなときでも米国のことしか頭にないんだよ。
主要検索エンジンのロボットは米国からやってくる。したがって、そのIPアドレスは米国のものだと判断され、その結果、米国向けコンテンツを受け取ることになる。地域ごとに異なる言語のコンテンツを配信している場合、この問題はさらに悪化してしまう。というのは、ロボット用にクローキングでもしないかぎり、英語のコンテンツしかクロールしてもらえないからだ。
だから、この種のIPデリバリーは、お粗末なアイデアなんだ。IPアドレスに基づいたジオデリバリーはむやみに実行してはいけないということを肝に銘じておくべきだ。そんなことをしたら、検索エンジンを通じてリーチできるはずの市場があるのに、その多くを見過ごすことになってしまうからね。
では、うまくやるにはどうしたらいい?
やり方としては2つあって、どちらがベストプラクティスかは条件次第だ。その条件とは、新しい国で展開する事業の規模と、自社の「.com」ドメイン名がどのくらい影響力/知名度を持っているかかということだ。
もし、新しいターゲット地域に強力なチームがおり、メインのドメイン名の力が(比較的)小さい場合には、上で述べたように(その国のホスティングサービスを利用するなどの方法で)その地域だけの独立したウェブサイトを立ち上げるのが、長い目で見れば賢明なやり方だ。
一方、マーケティングおよびPR部隊が本拠地にしか存在しないか、メインのドメイン名が強力な場合、あるいはその両方に当てはまる場合には、サブドメイン名上(「uk.」「au.」など)またはサブフォルダ内(「/uk/」「/au/」など)に、各国版のコンテンツを作成することがベストプラクティスになる。
後者のやり方をする場合、サブドメイン名とサブフォルダのどちらについても、グーグルのWebmaster Centralで地域のターゲットを設定できるけど、地域をまたいで複製コンテンツを作成してしまわないように要注意。サブドメイン名を使うケースでは、対象地域でサブドメイン名をホストティングするという選択肢もあるけど、サブフォルダを使用するケースでは、ドメイン名の影響力をより強く受けることになる。
最適なやり方を選ぶための判断基準が、いまいち明確に線引きできていないのが残念だ。それでも、うまくすればあと何か月かのうちに、どっちのやり方がもう一方のやり方よりずっと優れているかがわかってくるはず。その時には、真っ先にここで報告するよ。
ひとまずは、言語の問題がうまくいきますように……。
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