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あなたもジョブズになれる?/書評『理系のための口頭発表術――聴衆を魅了する20の原則』

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『理系のための口頭発表術――聴衆を魅了する20の原則』

評者:森山 和道(サイエンスライター)

効果的なプレゼンテーションをするための技術を解説
講演は「公演」でもある。聴衆を情熱と興奮で魅了せよ

  • ロバート・R・H・アンホルト 著
  • 鈴木炎、イイイン・サンディ・リー 訳
  • ISBN:978-4-06-257584-3
  • 定価:880円+税
  • 講談社

これは非常にシンプルな本である。発表に関する技術の本だ。「理系のための」とあるが、講演会などで発表する機会は誰でもあるし、そこまでいかなくてもプレゼンは日常茶飯事だろう。その技術は誰でも使えるものだ。準備、話の構造、視覚素材、話し方の技術を解説し、各章末ではポイントがまとめられている。

発表はコミュニケーションである。1人芝居ではない。聴衆のニーズを絶えず自問し、時間配分を考え、ストーリーを構成して話さなければならない。かける時間は重要性を反映させるべきだ。

発表内容は、正確で完全で、そして明瞭に表現されなければならない。リハーサルを怠らず、リラックスし、適切な服装で臨むこと。勢いやノリは重要だが、それはただ単に論理を積み上げてゆくだけでは生まれない。適切に脇道を固めていくことは重要だが、やりすぎると焦点がぼけてしまう。最小限にとどめ、本筋を絶えず明確に再確認すべきだ。

図は効果的だが使いすぎはやはり禁物である。結論をはっきり示すべきであり、展開に機能を果たす図のみを厳選しなければならない。具体的なモノを見せて説明するのは幼稚な手法だと思うかもしれない。だが小道具が聴衆に与える効果は、老若男女を問わず絶大である。

そして重要なことは話し方である。声、視線、ポーズ、ジェスチャーをうまく使うことは、平凡な発表を熱意あふれる忘れがたい発表に変える。科学的な成果の学術発表でさえそうなのだ。ビジネスプレゼンであればなおさらだろう。聴衆にインパクトを与えるためには、沈黙、すなわち「間」も効果的である。沈黙は言葉を聴衆に染みこませる効果を持つ。黙ってただ相手を見つめることは発表者にも勇気がいるだろうが、うまく使えば言葉にまさる。

単に話すだけでは聴衆は聴き続けてはくれない。講演は「公演」でもある。スクリーンに向かって話し続けてはいけない。聴衆を情熱と興奮で魅了せよ――。

この手の本に書かれていることは概して同じだが、絶えず繰り返し頭に入れておくべきことが簡潔にまとめられている。

熱意にあふれ、論理明晰で優れたプレゼンテーションは、聞いていて気持ちがいい。発表に感銘を受けるだけではなく、聞いているだけで自分の頭の働きまで良くなったような気がするものだ。そうなればプレゼンは勝ったも同然だろう。

重要なことは、これらが「技術」だということである。つまり、学んで身につけることができるのだ。外国人の発表がいくらうまくても、彼らだって、最初から発表がうまいわけではないそうだ。本書のような教科書で学び、トレーニングし、実地で経験を積むうちにうまくなっていくのだ。もちろん持って生まれた性格によって得意不得意はあるだろうが、それを乗り越えることは可能なのだ。

とりあえず、自分にそう言い聞かせて、アップルのジョブズにでもなった気分でプレゼンに挑んではどうだろうか?

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