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『MINDパフォーマンスHACKS―脳と心のユーザーマニュアル』

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『MINDパフォーマンスHACKS――脳と心のユーザーマニュアル』

森山 和道(サイエンスライター)

脳と心のパフォーマンスを高めるワザのコレクション
100%能力を引き出すためのすぐに使える「脳の取扱説明書」

  • ロン・エール・エバンス 著、夏目 大 訳
  • ISBN:978-4-87311-337-1
  • 定価:本体2,800円+税
  • オライリー・ジャパン

たとえば、1万の項目を覚えようと思ったらどんな方法があるだろうか。指で100万まで数えるためには? 問題の重要度はどうやって判断すればいいのだろう――。

この本は「考えるためのHack、考えるための技」を追求した本だ。内容は記憶術、情報の整理、学習法、創造、計算、意志決定、コミュニケーションやプレゼン術、睡眠、栄養、運動など。人工言語を学ぶことの有用性みたいなものから、いま流行のマインドマップも紹介されている。この本の内容をマスターしたからといってSF小説に出てくる人間コンピュータのようになれるわけではないが、それなりに能力が高まるという。

以前、同じ出版社から刊行された『MIND HACKS』の続編という位置づけだが、主として心理学的実験から脳の仕組みを自分で実感する内容だった『MIND HACKS』とは、実際にはほとんど無関係である。あくまで考えるための基本的スキルや、ちょっとべんりな「道具」や考え方を身につけるための本だ。

人はそれぞれ、学習スタイルが違う。ノートをひたすら作ることでマスターする人もいれば、何度もテキストを読むことが最善の方法だと信じる人もいる。もちろん自分の身体を動かし、感覚で把握しようとする人もいる。これらは一般的にVARK(Visual, Aural, Reading/Writing, Kinesthetic)システムと呼ばれる形で分類されている。人はみんなそれぞれのチャンネルを使って情報を取得するが、どれを優先して使うかは個人差があり、自分がどのタイプに近いか見極めることで無理なく学習が進むという。なるほど。

カードを使った自分自身の思考パターンの「再プログラミング」や、行き詰まったときの思考のシャッフル法など、本書で紹介されているHackひとつひとつはけっこう単純素朴で、どれも言われれば当たり前のものが多い。だから逆に「なるほど」と素直にうなづけるものが多い。その気になれば明日どころか今日から使えるものばかりだ。

おそらく一番重要なことは、自分がいまどんな問題に直面しているか知ることなのだ。そしてそれを客観視すること。特にプレゼン前、あるいはプレゼンの最中に緊張してしまったときには、これが有効だ。緊張してしまった本当の理由は、いま現在の状況ではなく、過去の経験から来る古い情報に反応してしまっていることにあるのだ。いま現在の状況は自分には関係ないと言い聞かせることが重要だと著者は強調する。どんな状況でも、結局は自分の解釈次第なのである。

結局のところ、人間は自分自身の本来の能力以上は出せない。だが、少なくとも、本来の能力いっぱいまでは出したいではないか。もちろん自分自身の最大パフォーマンスを上げておくのが一番大事なことなのだが、必要なときに自分自身のパフォーマンスを最大に発揮するために、こういう本をパラパラめくっておくことは、いつか役に立つかもしれない。

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