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メディア進化社会

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『メディア進化社会』

神野 恵美(編集者、ライター)

過去3年でメディアを取り巻く環境はどのように変わったか?
ネット社会と現実社会の溝を、一消費者の立場で鋭く洞察

  • 小寺信良 著
  • ISBN:978-4-86248-153-5
  • 定価:本体952円+税
  • 洋泉社

ITmediaで筆者が2003年2月から連載中のコラムをまとめて書籍化した一冊。収録されたコラムはウェブ上に今も掲載されていて読むことができるが、それをあらためてテーマごと、時系列に整理することで、メディア社会のここ3年余りの潮流がひとまとめに把握できる。

本書では、メディア社会にまつわるさまざまな事象が“メディア論”“テレビ論”“ネット論”“人間行動論”“著作権論”の5つのテーマに沿ってまとめられているが、中でも興味を引かれるのは、昨今ニュースを賑わしているコンテンツの複製に絡んだ話題だ。

筆者は“人間行動論”において、“録画”とはある種の心理学的行為だという。「その流れや意味は理解できても、それ以上のディテールを、脳が記憶できない」からとして、人は後日「何度も見て、もう一度同じ気持ちを味わったり、さらに多くの情報を得ようと」するという。それゆえに「録画することで、情報を脳外のストレージに蓄積したという喜びなり満足感を得る」と分析する。デジタル放送の複製回数を1回に制限するコピーワンスに対して我々が不快感を覚えるのは、この“録画”という一種の所有欲を満たすための行為が制限されるからだと筆者は言う。たしかに、コンテンツ提供者が懸念する海賊版の横行は問題だが、筆者の言うように、コピーの回数を制限する方法が賢明な解決策たるかには、疑問を感じる」

さて、デジタルコンテンツの著作権保護施策については、“著作権論”の「コンテンツ保護の日米差はどこからくるのか」および「日本のコンテンツ保護は厳しすぎる?」に米国の状況と比較する形で紹介されている。この2つのコラムは、米国インテル社の副社長ドナルド・ホワイトサイド氏と著作権関連の実務を担当するジェフリー・ローレンス氏へのインタビューがベースになっていて(随所に同社のビジネス戦略に沿った発言も伺えるが)、米国ではホームネットワーク内でのデジタルコンテンツのコピーについて、ユーザーに対してより柔軟性が与えられていることが紹介されていて興味深く読むことができた。これによって、米国ではデジタル放送が利用者に支持され、急速な普及に繋がったとのこと。保護技術によって、コンテンツが盗まれることも防止できているという。

日本においても、コピーワンスは2011年に完全移行する地デジの普及への足かせになるのでは、という家電メーカーの意見もあって、2006年8月にコピー回数に制限を設けない方式“EPN(Encryption Plus Non-assertion)”への切り替え検討が情報通信審議会の中間答申として発表されが、これは結局実現しなかった。さらに今年7月には、情報通信審議会が方針を大きく転換して“コピーナインス”の方針が打ち出され、「権利者団体の反撃」「私的録音録画補償金制度への足固め」などとマスコミやネットを賑わしたので、まだ記憶に残っている方も多いだろう。この件に関しては、最近の小寺氏のコラム『「1世代コピー9th」では誰も幸せになれない』でも解説されている。

本書を読み終えると、『メディア進化社会』という書名が表すように、IT業界の進展がいかに早いかを思い知らされる。収録されているわずか半年前のコラムでも、今読むとやや古くなってしまった感じが拭いきれない出来事もある。“メディア社会は日々進化する”ことを念頭に置いて本書は読み進めなければならない。

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