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『ビル・ゲイツ、北京に立つ 天才科学者たちの最先端テクノロジー戦争』

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『ビル・ゲイツ、北京に立つ 天才科学者たちの最先端テクノロジー戦争』

森山 和道(サイエンスライター)

マイクロソフトがアジア研究所を設立した技術開発戦略とは
世界最先端の研究拠点へと急激に変貌する中国を描く

『ビル・ゲイツ、北京に立つ 天才科学者たちの最先端テクノロジー戦争』
  • 『ビル・ゲイツ、北京に立つ 天才科学者たちの最先端テクノロジー戦争』
  • ロバート・ブーデリ、グレゴリー・T・フアン 著
  • 依田 卓巳 訳
  • ISBN:978-4-532-31303-6
  • 定価:本体2,500円+税
  • 日本経済新聞出版社

本書は、1998年にマイクロソフトアジア研究所が中国・北京に設立されて現在に至るまでを中心に、中国を舞台にした企業による研究開発の現状を描いたノンフィクションである。最初の人材集めや、王堅氏らによるインターフェイス研究、そのほか自然言語処理やデータマイニング研究などの発展物語も興味深いが、もっとも面白いのはやはり現在の話だ。初代所長を務めた李開復氏は、MS本社副社長だった2005年にグーグルに転職し、グーグルの研究所を設立した。「世界の工場」からイノベーションを生む研究開発大国へと成長しつつある中国での、熾烈な人材獲得競争を描いた物語でもある。

本書では李氏が執筆した「中国で成功するために」という報告書が紹介されている。そのキーワードは原題の「グァンシー(Guanxi)」「関係」のことである。中国でビジネスを進めるためには「ビジネスライク」では無理だ。人と人との信頼や儀礼、敬意といった、曖昧模糊とした深いつながりをゆっくりと育てていく気持ちがなければ、中国での成功は覚束ないという。

もともと李氏は、中国の優秀な研究者たちが、国際的な研究の潮流を知るための情報や活躍するための舞台システムが中国そのものにないことに憂慮していた。本書を読むと、彼は優れた研究環境を手に入れて、若者たちを、ひいては中国を育てるために、いわば西側の企業を使ったのかもしれないと思えてくる。育った研究成果や人間はどこへ向かうのか。

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