PR 2.0の現場から

「ROI+仮説+データの蓄積」で見つけるネットPRの成功サイクル/デジタルフォレストの場合

PR 2.0の現場から
ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ

多くの企業ウェブサイトのオーナーが広報部であるというのは、ご存知のとおりです。

従来の広報の仕事に新しくサイトの運営が増えたと同時に、インターネット時代のPR活動としてマスメディアが対象の広報活動からインターネットを通じたあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションへの変化にも対応しなければなりません。

広報のプロフェッショナルがウェブサイトのオーナーのプロフェッショナルになるためには、大きな意識改革が必要です。

この連載では、試行錯誤の中、成功のルールを発見しつつある企業の広報担当者から、成功のルールを導き出すまでのプロセスやノウハウをレポートしてきます。

神原 弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)

株式会社デジタルフォレスト
visionalist

広報とマーケティングの境目があいまいになりつつある「今」の現場を訪ねるこの連載、今回伺ったのは、国産アクセス解析ソフト「Visionalist」で有名な株式会社デジタルフォレスト

アクセス解析ソフト「Visionalist(ビジョナリスト)」の開発だけでなく、ウェブコンサルティングや「WebマーケティングROI Day」というイベントを通じて、企業のウェブマーケティングを幅広く支援している会社です。

今回は、ウェブマーケティング、特に「ROI(費用対効果)」のプロフェッショナル集団であるデジタルフォレストの「ネットPR」活動について、マーケティンググループ マーケティング部の橘 綾子さんにお話を聞きました。

「WebマーケティングROI Day」成長の秘密

デジタルフォレストでは、2006年から「WebマーケティングROI Day」というイベントを企画・主催しています。デジタルフォレストの基幹サービスであるウェブアクセス解析「Visionalist」は、企業のウェブマーケティングを支援するためのツールという考え方があり、その裾野の拡大と市場の成長のためにスタートしたのが、この「WebマーケティングROI Day」だということです。

  • 「第3回WebマーケティングROI Day」 Web解析のパイオニア「Web解析HACKS」著者 エリック・ピーターソン氏 招聘。8月1日(水) 東京国際フォーラムにて開催
    http://www.news2u.net/NRR200718652.html

初回(2006年3月)の参加者数約450人からスタートしたイベントですが、2007年8月に開催した第3回では参加者数も1000人を越え、日本を代表するマーケティングイベントへと成長しています。

橘 綾子氏
株式会社デジタルフォレスト
マーケティンググループ
マーケティング部
橘 綾子氏

自社で企画・開催するイベントへのこだわりと、その認知・集客方法についてお話を伺いました。

もともとB2Bのサービスを提供しているため、セミナーを中心にマーケティング活動をおこなってきました。『WebマーケティングROI Day』というイベントは、弊社のリードを獲得するということはもちろん、露出によって製品や会社の認知度を上げるという広報的な目的もあります」(橘氏)

もちろん効果測定には、自社のアクセス解析ソフト「Visionalist」を活用。このデータをベースに第1回からの告知媒体の効果を測定し、予算配分を変更するなどして、現在の規模へと成長させていったそうです。

ニュースリリースを基点にしたマーケティングの成功サイクル

デジタルフォレストでは、イベント集客のツールの1つとしてニュースリリースを活用しています。具体的には、同社では、ニュースリリース(による情報発信)→ウェブサイト(へのアクセス)→セミナー(への集客)の3点をセットで考えているということです。

ニュースリリースを出すときには必ず、ウェブサイト上に(その内容に関連する)製品ページが別途用意されており、そのページには(その製品に関連する)セミナーの情報があるという形を必ずとっていて、実はそれが成功サイクルになっているんです。お客様には、ニュースリリースを配信して情報を知ってもらうだけでなく、必ずセミナーを受けて深く理解していただきたいと考えています。ニュースリリース、製品ページ、セミナーこの3つのセットができていないと、プレスリリースの発行を遅らせてでもセットにします」(橘氏)

デジタルフォレストの成功サイクル
デジタルフォレストの成功サイクル

また、イベントの集客に関しては、上記以外にバナー広告やオプトインメールなども組み合わせて活用しているということ。これらも単純なCPCで比較するのではなく、「バナー広告で最初に印象つけて、そのターゲットにオプトインメールを投げる。ニュースリリースも含めて全部つなげて実施するのがテクニックとして重要なんです」(橘氏)とのこと。また、広告を出す期間についても大事だと指摘します。

セミナーの場合、開催日直前に申し込まれる方が多いですよね。広告を早いうちに出しすぎて、クローズすると歩留まりが悪くなるので、開催ぎりぎりまで告知をして、エントリーを受け付けるようにしています。特に、広告を早めに打ちすぎて、せっかく興味を持ってくれている人が参加できないということがないように、計画を立てることが重要ですね」(橘氏)

ニュースリリースは、時間軸とパーマリンクの発想で

神原 弥奈子氏

ニュースリリースに掲載する関連URLは、SEO対策として該当サイトへの被リンクの効果を生むために、該当内容が記載されているコンテンツページへ直接リンクを設定するディープリンクが一般的です。ところが、デジタルフォレストでは、あえて該当カテゴリのトップページにリンクを設定しているとのこと。

ウェブではニュースリリースはそのときだけでなくずっと残るからなんです。たとえばセミナー告知のニュースリリースなら、該当セミナーのページにではなく、セミナーのトップページにリンクすることにしています。

また、ニュースリリースごとに記載するURLの末尾にパラメータをつけて効果測定をしていた時期もありましたが、今はそれもしていません。これは、ニュースリリースに記載されるURLの見栄えも考慮してのことです」(橘氏)

アーカイブされるニュースリリースの場合、最新のニュースリリースだけがアクセスされるわけではなく、過去のセミナーに関するニュースリリースが閲覧される可能性も高いわけです。そのときに、最新のセミナーなども一緒に閲覧してもらうことを配慮されているわけですね。どのニュースリリース掲載ページからの誘導なのかは、Visionalistなどのアクセス解析ツールを使えば判断できるわけですから。

情報発信する人が多いからこそ、社内から情報が集まる

多くの広報の方が「情報発信のネタが少ないこと」を課題として挙げていますが、同社では、ニュースリリースのネタは現場から自然に集まってくるそうです。

社内から情報があがってくる企業風土はどのように作られてきたのでしょうか?

自社イベントやセミナーでスピーカーをできる人材が社内に大勢います。その人たちはみんな、情報発信への意識がとても高いんですよ。情報発信をすれば情報が集まるということを知っている人たちなんですよね」(橘氏)

社外向けに情報発信する機会が多ければ、おのずと社内での情報流通も活性化されるようだということです。

製品開発においても、ニュースリリースとして情報発信できるかどうかが1つの指標になっているというデジタルフォレスト。「社外に発信できないものは、社会的評価が低い」(橘氏)という視点もユニークです。

ROIにこだわる社内からの評価が一番厳しい

情報発信意識の高い人材が集まったデジタルフォレスト。その社内では、自社のマーケティング活動のROIの最大化のためのプロセスはどうなっているのでしょうか?

ROIを最大化する会社ですから、予算に関しては、非常にシビアですよ(笑)。Visionalistを使って集客のためのマーケティン活動がすべてデータベース化されていて、それをすべての社員が自由に見られるようになっています。データが蓄積されるにつれて、判断基準としての情報の正確さにブレが少なくなってきているのを実感しています」(橘氏)

B2Bのビジネスモデルでは、すぐに成果が出るものではありません。蓄積されたデータ(数値)はあくまでも1つの指標としては大切ですが、「1つの媒体に大きな金額をかけるのではなく、リスクを分散させながら、ROIを最大化するのがポイント」(橘氏)とのこと。

たとえば、直接的なコンバージョンでみると、バナー広告よりもオプトインメールのほうが効果は高いものです。費用対効果の悪い媒体は出稿対象からはずし、新しいところを試していくという基本的な手法を突き詰めていくと、バナー広告の出稿がどんどん減ってオプトインメールばかりになりそうですが、橘氏はそうはしていません。「バナー広告を出していなければオプトインメールの効果が下がる」という仮説があり、費用対効果だけでは判断することはできないからだそうです。

バナー広告は数週間掲載していますので、目に入るということが大事なんです。オプトインメールは効果が即日から翌日までですし、メールを削除されたら終わりですから」(橘氏)

とはいえ、常に物事がうまくいくとは限らず、失敗事例として自社セミナーでネタとして使われてしまったこともあるとか。社内の目の厳しさが伝わってきますね。

失敗例として披露されてしまっても、併せて成功例も出してもらえればいいんですよ(笑)。担当としては、同じ失敗を繰り返さないようにしています」(橘氏)

◇◇◇

ネットPRの特徴の1つに、利用者の生の反応が1クリックずつのデータとして手に入ることがあり、それがマスマーケティングとの大きな違いとなっています。デジタルフォレストの社内では、アクセス解析の情報を「ただデータを見る、結果を知るだけではなくて、常に仮説を立てながら活用」しているそうです。

どのような仮説を立てて、マーケティングプランを考えるか。それによって社内に蓄積されている豊富なデータの見え方が大きく変わってくるとのこと。

ネットPRにおいて「仮説力」が重要だということは、前回のワールド・ファミリーの取材で村田さんがおっしゃっていたことと共通していますね。

国内外でさまざまなアクセス解析のツールやサービスが提供されている現在、Visionalistの競合との差別化のポイントは、「国内で開発を行っているため、日本の利用者の声を反映させながら製品を改善し続けていること」(橘氏)だそうです。同社のネットPR推進においては、全社的なウェブマーケティングへの関心の高さと顧客からの直接の声があわさって、大きな力となっているようです。

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