2007年は携帯サイトのビジネスに注目
PC向けサイトと同じようにSEOは必要条件
携帯サイト向けSEO最新事情
2006年に一気に出そろったキャリア公式の検索サービスは、PCではあたり前の「検索」がケータイユーザーにも普及する大きなきっかけになると見られている。そうなると、PCサイトと同じように携帯サイトのSEOが必要となるが、既存のSEOとまったく同じノウハウが通じるわけでもない。本稿では、そんな携帯サイト向けSEOについて、PCサイト向けSEOとの違いや対応のポイントについて解説する。
TEXT:三好 雅士
2007年は携帯サイトに注目
2006年7月、「ケータイでググる」をキャッチコピーにKDDIとGoogleが提携し、au EZwebサービスに検索窓が設置された。NTTドコモ、ソフトバンクモバイルもこの動きに追随し、同年10月からそれぞれの検索サービスを開始し、利用者からの反響も非常に大きい。
元々、GoogleやYahoo!などの検索サービスは、PC向けと同様にケータイの世界にも存在していた。MSNやgooなども含めてPCにおける大手ポータルは、ほぼ例外なくケータイ向けの検索サービスも提供している。ただし、これらはすべて「勝手サイト」などと呼ばれる非公式の「一般サイト」が検索対象であった。
今回、各キャリアが導入した「ケータイ検索サービス」は、「公式サイト」も検索対象となっている。そして、ソフトバンクモバイルの端末に付いた[Y!]ボタンに見られるように、ケータイ端末から容易に検索サービスが利用できるようになった点に大きな意味がある(図1)。
年 | 月 | 記事 |
---|---|---|
2005年 | 6月 | Googleモバイル公開、ケータイ検索スタート |
10月 | Yahoo!モバイル、ケータイ検索リニューアル(ロボット型へ移行)。 | |
2006年 | 7月 | KDDI、au EZweb検索開始(Googleと提携)。 |
10月 | NTTドコモ、iメニュー検索開始。 | |
10月 | ソフトバンクモバイル、Yahoo!ケータイとして検索サービス開始。 |
実際、ケータイによる検索はどれくらい使われているのだろうか? 『ケータイ白書2007』(インプレスR&D)の調査結果によると、「情報サービスの探し方(複数回答)」としてケータイユーザーの53.4%が携帯電話の検索サイト利用経験があるという。また、利用したことのある検索サービスとしては「Yahoo!モバイル」が81.1%、「Googleモバイル」が41.5%となっている(図2)。日経産業新聞/インフォプラントによる調査では、約6割のユーザーが「キャリア公式検索サービス」を使い、約3割~5割が「Yahoo!やGoogle」を使うという結果も出ている。
また、KDDIの2006年7月期の中間決算発表では「公式サイトへの流入経路比率の約20~30%が検索サービス経由」と説明されている。
PCでのネット利用においては、その黎明期と比べて現在は多くのユーザーにとって必要不可欠なサービスとなっている。EコマースやSNSなど、PC向けに登場したサービスの多くが時期を経てケータイ向けに移植されている傾向を見ると、検索サービスがケータイでも当たり前の存在となるのも時間の問題だろう。
なお、現在このような検索サービスを利用しているのは、ケータイ自体を積極的に使いこなしている若年層やパケット定額サービス加入者である。
ケータイSEOが求められる理由
PC向けウェブサイトの世界で検索サービスの普及とともに生まれた「SEO」。現在ではほぼすべてのWeb担当者にとって重要な課題である。そして、これはケータイの世界でも同様の課題になるといえるだろうか? 答えは「YES」だ。
ここでおもしろい数字をご紹介しよう。EZweb検索サービス(Google)の結果表示画面において、どこがクリックされるかを示した次の調査結果だ(集計期間:2006年7月20日~9月30日。KDDIが2006年7月期の中間決算発表資料で公開)。
- 公式サイト:22%
- 一般サイト:47%
- PCサイト :31%
実際のEZweb検索結果と照らし合わせると図3のようになる。検索結果の10件中、最上部に4件表示される公式サイトのクリック率が22%。その下に3件しか表示されない一般サイトに、実に約半数(47%)のクリックが集まっている。普通は、上位に4件表示される公式サイトに40%以上のクリックが集まるはずだと思うだろう。
この結果が示しているのは、一般サイトでSEOを行うことは非常に大きなチャンスにつながるということだ。逆に、公式サイトにとっては危機的な状況にあるとも言える。
このような現象が起こる理由は、近年進む「公式サイト離れ」と「一般サイトの利用拡大」という2つの流れによるものという意見が多い。だが、筆者はそれよりも大きな要因があると考えている。それは、「公式サイトが検索エンジンに対応できていない」ということだ。
公式検索サービスを使っていると、エラーページがインデックスされていたり、リンク先が利用規約ページにしかなっていないケースが非常に多い。
2006年の夏まで検索サービスが存在しなかった公式サイトの世界では、「タイトルタグの記述」や「LPOを意識したサイト構造」など、PCの世界では当たり前のSEOがまったく施されていないのだ。
PCサイトとはここが違うケータイSEO
では、携帯サイトには具体的にどのようなSEOが必要なのか? PC向けのSEOと比較しながら解説しよう。筆者は、「ケータイSEOには5つの世界が存在する」と考えている(図4)。
NTTドコモ | au(KDDI) | ソフトバンクモバイル | |
---|---|---|---|
公式サービスとして提供 | iメニュー検索 オリジナルエンジン+一般サイトはGoogleモバイル、 Yahoo!モバイル、その他 | Google公式サイト用 エンジン | Yahoo!公式サイト用エンジン |
一般サービスとして提供(ユーザーが任意に選択) | Yahoo!モバイル、Googleモバイル、その他の検索サービス | 同左 | 同左 |
PCサイトでは、Yahoo!とGoogle向けの対策を行えば、ほとんどの検索サービス利用者をカバーできると言っても過言ではない。しかしケータイにおいては、Yahoo!やGoogleは一般サイトをカバーするのみ。公式サイトは、各キャリアがそれぞれでクローズドな世界を構築しており、その検索サービスは前述の通り独自のものだ。NTTドコモではiメニュー検索、auではEZweb検索サービス、ソフトバンクモバイルではYahoo!ケータイ検索が提供されている。
つまりケータイにおけるSEOは、一般サイト検索サービスとしてのYahoo!とGoogleに加え、各キャリアがそれぞれ提供している3つの公式サービスの合計5つを考慮しなければならない。実際は、gooモバイルなど他にも多くの一般検索サービスは存在する。また、NTTドコモのiメニュー検索でも、一般サイト向けの検索用に10以上の一般検索サービスへのリンクが表示される。しかし、まずは前述の5つを抑えることが、現時点においては先決だ。
また、ここでその詳細までは触れないが、PCとケータイは、同じインターネットといえどもサイトの構築、運営方法で異なるポイントがいくつもあり、SEOを実施するにあたってはそれらの考慮も必要不可欠となる(図5)。
PCとの違い | SEOのポイント |
---|---|
画面表示 | PCに比べて表示件数が少なく、1件あたりの表示文字数や説明文も短いため、より簡潔な表現で検索エンジンに表示させる必要がある。 |
URL生成方法 | 「~.jp/i/」や「~.jp/e/」など、各キャリア向けに異なるURLを生成している場合、クローラーがどのキャリア向けのURLをインデックスするのかに合わせた対処が必要。 |
アクセス制限 | 特に公式サイト。ケータイ端末以外からのアクセスをネットワーク的に制限をしている場合、クローラーからのアクセスも遮断してしまうケースがある。 |
ケータイSEOの全体像
上記のことを踏まえ、すでに携帯サイトを運営しているWeb担当者の方は、改めて次のことを確認してもらいたい。
自社名/自サービス名での検索結果
正しく検索結果に表示されているか? リンク後のページは正常か? これがうまくいっていない場合、サイトが検索エンジンに正しくクロールされていない可能性がある。
クロール状況/インデックス数の確認
たとえばauの検索窓に「site:http://aaa.co.jp」のように、自サイトのURLを「site:」に続けて入力すると、その検索エンジンに自サイトが何ページインデックスされているかが判明する。通常、自サイトの持つページ数とほぼ同数の値が検索結果件数として表示される。もし「1」など極端に少ない場合は、適切にクロールされていない可能性があり、早急なSEOが必要だ。
通常、SEO事業者はこれらを考慮した施策の提言や次のような調査をクライアントごとに実施する。Web担当者として、これらの対処が必要だと判断した場合には、自力で解決するかSEO事業者に依頼するかを考えたほうがよいだろう。
利用システムとの整合性
CMSやHTMLソースのキャリア変換サービスの仕様上の問題から不具合が生じているケースもある。クローラーに対するアクセスログを調査/分析した対処が必要となる。
SEOキーワードの選定
そもそも、検索サービスで入力されるキーワードは種類も検索回数もさまざまだ。いくら上位に表示されるようにしていても、それが滅多に検索されないキーワードだと、対策している効果も薄い。対策キーワードは、その利用頻度、競合度を考慮しつつ、戦略的に決める必要がある。
具体例として、弊社の場合は上記の点をクライアントと共有し、確実な対処を行うべく、約6か月間のプロジェクトとしてSEOを行っている(図6)。
概ね2~3か月で順位の上昇が始まり、継続的に順位アップのための施策を行っている。しかし順位アップもさることながら、現時点では前述のような「エラーページが検索にひっかかる」「検索リンク先が利用規約ページのみ」など、それ以前に解決すべき課題を抱える携帯サイトも少なくない。これらは、担当者としても早急に対処すべきであるし、ケータイ検索サービスのユーザーに対しても(適した結果が得られないという意味で)好ましくない状態である。ケータイ検索が便利になり、積極的に使われてこそのケータイSEOであるわけで、関連事業者も、まずは後者の問題解決に注力すべきだと筆者は考えている。
ケータイSEOの提供事業者
ケータイ検索は、特に公式サイトが対象になってからはまだ半年程度しか経っておらず、その動向は流動的だ。自社内で対処するにせよ、専門の事業者に依頼するにせよ、SEOが今後のケータイ事業戦略で重要な要素となってくることはご理解いただけただろうか。
最後に、ケータイSEOサービスを提供する事業者を図7に示してみた。本稿とあわせ、自社での利用検討の参考にして頂ければ幸いである。
タイプ | 概要 | 事業者 |
---|---|---|
コンサルティング型 | クライアントサイトを分析し、総合的なSEO施策を実施するタイプ。 | 株式会社シリウステクノロジーズ アウンコンサルティング株式会社 株式会社IMJモバイル |
成果報酬型 | SEO実施後のクライアントサイト順位に応じて料金を設定するタイプ。 | デジパ株式会社 株式会社ユニメディア |
SEM連携型 | 検索エンジン広告への出稿サービスと連携し、SEO/SEMの両方を提供するタイプ。 | 株式会社アイレップ 株式会社シーエーサーチ |
CMS連携型 | CMSと連携し、サイト構築システムとSEOの両方を提供するタイプ。 | 株式会社フラクタリスト 株式会社マイネット・ジャパン |
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.5』 掲載の記事です。
ソーシャルもやってます!