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『ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』

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『ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』

斉藤 彰男(編集者、システム・エンジニア)

ネットがグローバルなコミュニケーション環境となった今
コラボレーションが企業のあり方を大きく変えつつある

  • ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ 著
  • 井口 耕二 訳
  • ISBN:978-4-8222-4587-0
  • 定価:本体2,400円+税
  • 日経BP社

本書のタイトルである「ウィキノミクス」とは、「ウィキ」と「エコノミックス」を合成した造語である。たとえウィキというシステムのことは知らなくても、ウィキを用いて編纂された百科事典「ウィキペディア」については、一度や二度は聞いたことがあるのではないだろうか。

さて、本書ついてその「ウィキペディア」には『階層型の指揮命令系統をとる組織によって構成される旧来の世界に対し、ウェブを通じた無数の人の協働(コラボレーション)によって成立する世界を「ウィキノミクス」と定義。ウィキやブログ、SNSなどウィキノミクスを支えるツールの活用によって起きている現象について解説している』と記述されている。

本書の内容をつきつめて要約すれば、ウィキを初めとするツールをベースにしたコラボレーション環境は、これまでの組織原理やコミュニケーションスタイル、経営戦略やワーキングスタイルを大きく変えようとしている、といったところだ。

構成としては、まずウィキノミクスの真髄を4つの行動原則、「オープン性」「ピアリング」「共有」「グローバルな行動」としてとらえ、この原則が古いビジネス教義を駆逐しつつあると解説する。

「オープン性」とは、たとえば人材やアイデアを外部から導入したり、逆に従来は機密扱いだった方法を外部に開示したりするといった旧来の企業の壁を破ること。「ピアリング」とは旧来の階層構造的組織から、水平型の組織構造に転換すること。「共有」とは、知的財産をはじめとする資源やアイデアを抱え込むのではなく、公開して共有すること。「グローバルな行動」とは、フラット化する世界を認識するだけでなく、グローバルな連携、人材市場、ピアプロダクション・コミュニティを企業活動に実際に活用することである。この4つの行動原則は、21世紀の企業競争には欠かせないエコノミックス(経済学)だというわけである。

次に、「ウィキノミクス」を採用したケーススタディとして、7つの例を紹介している。ここでは、リナックスに代表されるオープンソース・ソフトウェア開発プロジェクト、ボーイング、プロクター&ギャンブル、BMWといったグローバルな企業、ヒトゲノム計画といった学術研究などが取り上げられていて、それぞれのケースにおいてウィキノミクスを導入し、すでに成果を上げつつあることが、数多くの関係者のインタビューや、具体的な事実を列挙するという手法を用いて詳細に解説されている。

とりわけ、ボーイングの事例は、B787ドリームライナーの開発にあたって、地球規模でコラボレーションを行った過程が詳細に記述されていて、コラボレーションせざるを得なかった事情、当初はプロジェクトを推進する当事者も成功すると確信が持てなかったこと、コラボレーションの成功によって新たな時代への指針が得られたことなどが紹介されていて、興味深く読むことができた。

400ページを超える力作である本書は、片手間に読むといった類の書籍ではないが、読むことに費やした時間に十分見合うだけの知識と示唆をもたらしてくれることは請け合いだ。

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