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Googleの新しい挑戦:ワイヤレスの次はオフライン!? Google Gears登場

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Googleの新しい挑戦
ワイヤレスの次はオフライン!?

林 信行(ITジャーナリスト)

今や技術面でもビジネス面でも、インターネットを語るうえで欠かせない存在となったGoogle。この連載では、そんなGoogleが提供しているサービスとそれを支える技術の解説、ビジネス的な可能性の考察など、さまざまな視点から捉えていく。

インターネット非接続時でも動的なウェブアプリケーションを利用可能にする技術「Google Gears」

米Googleは、5月31日から開催の開発者向けイベント、Google Developers Dayにあわせて、開発中の新技術「Google Gears」を発表した。

Google Gearsのウェブサイト

最近では電子メールから、RSSリーダー、ワープロ、表計算ソフトなど、ウェブアプリケーションの利用が広がっているが、こうしたウェブアプリケーションは、インターネット接続環境がない場所ではほとんど用をなさず、ちょっとした操作をした拍子に「インターネット未接続」を警告するメッセージを表示して操作不能になってしまう。

Google Gearsは、こうした問題を解決し、インターネットから切り離されたオフライン環境あるいは接続が極めて遅い環境でも、こうしたウェブアプリケーションを“それなりに”利用できるようにする開発者向けの技術だ。

たとえばGoogleが提供するRSSリーダーのGoogle Reader。これもこれまではインターネット接続がない環境ではほとんど利用できなかったが、Google Gears仕様で作り直されたことで、インターネット接続していない環境でもハードディスクに一時蓄積した2000件の最新RSS記事を閲覧したり、検索したりといったことができるようになる。

Googleに限らず他社製のサービスでも、Google Gearsを使えば、たとえばオフラインでも操作が可能な表計算ウェブアプリケーション、オフラインでも過去に受信した電子メールの最閲覧や検索できるサービスといったものを開発できる。

AJAXなどで組まれたユーザーインターフェイスの操作も、オフラインで問題なく利用できるのだという。

Google Gearsはブラウザのプラグインとして幅広く提供

Google Gearsは、Internet ExplorerやFirefox、Operaといったウェブブラウザに対応したプラグインとして提供され、アドビ社のApollo技術用にもAPIが用意される。アップル社のウェブブラウザ、Safariには次期バージョンで対応予定だ。

なお、Googleでは、現在、発表中のウェブブラウザやプラットフォームだけに限らず、今後もパートナーシップ関係を広げていきたいとしている。

Product Manager of Google GearsのOthman Laraki氏
Product Manager of Google GearsのOthman Laraki氏(発表会は米国Google本社とのビデオカンファレンスという形で行われた)。

プロダクトマネージャのオスマン・ララキ氏によると、Google Gearsには、次の3つの構成要素があるという。

  1. ローカルサーバー。つまり、パソコンがオフライン状態のとき、サーバーに変わってデーターを供給するサーバーをユーザーのパソコン本体内で用意してしまおうというものだ。

  2. SQLLiteベースのデータベース。上のローカルサーバー経由で供給するデータ(たとえばGoogle Readerの2000件のRSS記事データ)はここに蓄積される。

  3. 「ワーカープール」と呼ばれるもの。これがバックグラウンドでパソコン側のローカルサーバーの情報と、インターネット上のサーバーの情報を可能なかぎり頻繁に同期しようとする――それによって新鮮な情報を反映できるのだ。

Google Developer Programのトップ、ブレット・テイラー氏は、Google Gearsの基本動作と今後の方針ををこう説明する。

これまでの多くのウェブアプリケーションは、インターネット経由のサーバーとつながりっぱなしになることを前提にしていたが、Google Gearsでは、サーバー接続を前提とせずに必要なときだけパソコンのローカル情報とサーバー情報を「同期」する。

今後のウェブアプリケーションの開発スタイルを変貌させる可能性を秘めた技術であるが、それだけにGoogleも1社だけで標準化しようというつもりはない。

Firefoxで有名なMozillaやOpera、Apolloといったパートナーと組んで開発途上のウェブブラウザのプラグインを提供する一方で、どのような問題点があるかなど開発者達の意見にもできるだけ耳を傾ける意向だ。

またソフトそのものもオープンソースという形で提供する。

Product Manager of Google GearsのOthman Laraki氏
Head of Google Developer ProgramのBret Taylor氏。

既存アプリケーションの作り直し工数はさほどではない?

気になるのは既存アプリケーションをGoogle Gearsベースで作り直すのにどれほどの時間がかかるかだ。

ララキ氏によればGoogle Gears版のGoogle Readerは、同リーダーの開発スタッフの1人が、Gearsに興味を持って、毎朝Google本社に通うバスの中で数日間かけて仕上げたものだという。

1人勝ちのGoogleに不安を抱く人も多い中、Googleがウェブブラウザの根本的な問題に取り組んだ同プロジェクトがどの程度浸透するかは気になるところだ。

米国Google本社とのビデオカンファレンスという形で行われたプレス向けのGoogle Gears発表で、Googleのエリック・シュミット氏は、Google Gearsについて次のように語った。

Google Gearsでは、今日のブラウザのもっとも大きな問題に取り組もうとしています。そうすることによってこそより幅の広いアプリケーションを実現できるようになり、よりよいユーザー体験をできるのだと。

我々はコミュニティの力を信じています。この力が、この技術を「何が可能か」の限界まで押し広げてくれ、世の中の誰にとっても利益のあるオープンな標準を築いてくれるのだと信じています。

Googleではこの発表の後、オーストラリアから出発点に世界の主要都市を横断して同日開催される開発者イベント、Google Developers Dayがスタートした。

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