事例から読み取る成功に導く3つの視点(3)商品やカテゴリの既存/潜在ファンを味方につけてクチコミを広げる
事例から読み取る成功に導く3つの視点(3)
商品やカテゴリの既存/潜在ファンを味方につけてクチコミを広げる
ブランドの既存ファンや、商品カテゴリのヘビーユーザーや関心層、つまり潜在的なファン候補を見出してまず味方になってもらい、そこからクチコミを広げていく手法。「インフルエンサーマーケケティング」や「エバンジェリストマーケティング」などと呼ばれるものがこれに当たる。
インフルエンサーというと、全網羅的に360度アンテナを広げている人のことだと思う方もいるようだが、情報の氾濫する今日ではそんな人はまずいない。仮にいたとしたら、それはインフルエンサーというより単なる情報フリークだろう。
インフルエンサーは商品カテゴリごとに異なり、商品回りの知識に加え、ネットワークや発信力もあり、その結果、その人の意見が他者に影響を与える人を指す。これは一般の生活者の場合もあるし、業界に精通したジャーナリストやセレブの場合もある。セレブや業界誌に新商品や情報提供をする方法は従来からの常套手段だが、特に今注目されているのが、一般生活者の中から自社にとってのインフルエンサーを発見し活用することで、これを可能にしたのはネットだ。
ペットフードのぺディグリーは、イギリスにおいて、単なるペットフードのメーカーという立場から、ペットとの生活を充実させるブランドとしてブランドを刷新するため、新たに愛犬家のためのコミュニティサイトを独自に立ち上げた。そしてサイトの公開にあたっては、まずさまざまなドッグオーナーの調査による50以上のチェック項目開発を通じ、ぺディグリーにとってのインフルエンサーを発見。彼らに限定して先行DM告知を行い、彼らが率先して人に伝えたくなることを狙った。
このサイトは、ドッグオーナーが情報交換や愛犬自慢をしあえるコミュニティサイトで、愛犬の写真とストーリーを書き込めるカスタマイズポストカードなども用意されている(図8、9)。
自分の愛犬の特技を人に自慢したり、他の犬の笑えるストーリーを共有するなど、犬好きの心理をうまく捉えた作りとなっている。ターゲットが積極的に利用したくなる「場」の提供により、ぺディグリーのブランドイメージ刷新や好感度の醸成、また会員登録した人たちとの中長期的な関係構築が可能となったわけだ。
また、インフルエンサーに宛てたDMもこだわりの結晶だ。サイトと同様のポストカードを絵本風にした高いクオリティの冊子と共に実物の切手が同封され、サイトでカスタマイズしたポストカードを出力して切手を貼れば、実際にカードとして人に送れるようになっている。
このDMのコストは、従来ぺディグリーが利用していた一般的なDM単価の数倍もかかったそうだが、その甲斐あってクチコミが瞬く間に広がり、最終的にサイトにアクセスした人数で換算すると大幅にコスト効率が向上したという。ターゲットの吟味(インフルエンサー発見)の重要性と同時に、このような人にアプローチする際の質的なこだわりも大きな影響を及ぼすことがわかる事例だと言えるだろう。
以上の事例からも、「クチコミとなるためのテーマ(トピック)」を、「誰に向かって」、「どのようなツールや場を用意して」提供できるか、また「参加性」や「対話性」をいかに組み込めるかなどが重要なポイントとなることは理解できただろう。
また、生活者から見れば、同一ブランドにかかわる情報には、接点(マス広告、ウェブサイト、イベント等々)による違いはない。したがって、クチコミは企業の一担当者や一部署で完結できるものではなく、中長期的な戦略に基づき、さまざまな接点を連動させつつ全体設計することが肝要となる。
同時にアクセスやブログ解析をはじめ、量/質の両側面から定期的に効果検証を行うことも、クチコミ効果のパワーアップには欠かせないポイントである。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』 掲載の記事です。
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