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事例から読み取る成功に導く3つの視点(1)ターゲットが興味を持つ仕掛けでクチコミを創り出す

事例から読み取る成功に導く3つの視点(1)
ターゲットが興味を持つ仕掛けでクチコミを創り出す

先にも触れたとおり、モノのあふれる成熟市場では、決定的な商品の差別化が難しくなっている。技術革新の続くカテゴリや、これまでなかったカテゴリの商品などは例外だが、もはやそのようなカテゴリは多くない。したがって、一般の生活者が商品そのものをクチコミ(話題)にすることを期待しても、なかなかそうはいかないのが実際だろう。そこでクチコミを起こすための「トピック(話の材料)を創る/提供する」という視点が重要となる。

この例として世界的に有名な成功事例は、2004年以来、米国で次々に話題=クチコミを起こして売り上げも伸ばしているバーガーキングの一連のコミュニケーションがある。1位のマクドナルドが子供やファミリー向けの戦略をとっていることに対抗し、バーガーキングは10〜20代の若い男女をメインターゲットに絞って思い切った展開をしている。

図4 入力した命令やメッセージに対して、不気味なニワトリがさまざまなアクションをとってくれる。
http://www.subservientchicken.com/

その第1弾は、世界的に大きな話題になった「Subservient Chicken」(服従ニワトリ)だ。

新商品のチキンバーガー発売にあたり、「Have It Your Way」(あなたのお好みどおりに)というバーガーの特徴を活かし、「あなたのお好みどおりに動く=服従するニワトリ」のゲームサイトを作った(図4)。

怪しげなのぞき部屋風の画面には、不気味なニワトリのコスチュームをまとった人間が直立し、命令を待っている。テキストボックスに思い通りのコマンドを入力すると、数百通りの言葉に反応するように設計されたニワトリが実にさまざまな動作を行う。「どんな言葉にどんな動きで反応するか」を見つけ出すことをゲーム感覚で楽しめ、また新たな言葉を発見するとつい人に自慢したくなるというターゲットの心理も手伝って、瞬く間に億単位のアクセスを世界から獲得した。

まずウェブサイトを先行オープンし、うわさが広まりだしてまもなく、若者が視聴する深夜にテレビスポットCMをオンエアしてウェブサイトへの誘導を強化している。それまで存在感が希薄となりつつあり売り上げも不振だったバーガーキングが、これをきっかけに狙い通り若年層を中心に人気を得て、売り上げも大きく好転した。

続く第2弾は同年秋の「チキン・ファイト」だ(図5)。

図5 「チキン・ファイト」のウェブサイトでは、2羽のニワトリが戦う模様を動画で見ることができた。現在、キャンペーンは終了して、サイトも閉じられている。

前出とはまた別の新商品チキンバーガーを導入するにあたり、新旧チキンバーガーの対決を、独自のボクシング試合のテレビ番組作成という大仕立てで展開。

もちろんジョークなのだが、大真面目でやるバカバカしさが若年層の感覚にマッチし、どちらのチキンを応援するかの事前人気投票(投票結果により試合当日の内容が変わるという触れ込み)でも数百万の投票を得て、話題(クチコミ)・売り上げともに大成功となった。

さらに翌年には、新商品チキンフライのコミュニケーションとして、「コック・ロック(Coq Roq)」という架空のメタルバンドを結成。おなじみのニワトリの被り物を身に着け、楽曲にはチキン・フライが歌詞にふんだんに盛り込まれ、ミュージックビデオにもチキンフライがもちろん登場……という、まさにバーガーキングならではのもの。

ウェブサイトはまるで本物のミュージシャンのファンサイトのような作りで、ターゲット自らが楽しみながら参加し、友人にクチコミすることを想定した構えとなっている。2006年になってからも、このニワトリのキャラクターを使った新たなターゲット投票型キャンペーンを展開するなど、常に何らかのターゲットの参加性を組み込んだ際立ったエンターテインメント性で、クチコミに上るだけでなく、売り上げも好調に推移している。

極端な事例に感じられるかもしれないが、「クチコミ」とはそもそも、人に話したくなる驚きやおもしろさ、ためになる情報などの強い動機付けがなければ発生しにくい、ということを改めて理解するうえでも参考になる事例だと言えるだろう。

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