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まずは「キングジム」を知ってほしい! 海外向けにSNSで動画活用を始めた文具メーカー

コロナウイルスにより、海外の文具イベントに出展できなくなってしまったキングジム。商品の魅力を伝えるために、SNSで動画投稿をし始めたのは若手社員4名だった。海外に向けてどうやって商品をアピールし、動画作成を内製でどう運用しているのかを聞いた。
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企業の動画活用に関心が高まる中で、内製化を図る企業も増えている。キングジムの海外事業推進部でも、若手4名が業務の傍ら、英語の動画を作成し、海外顧客向けに発信している。動画の内製化に至った背景や運用方法、効果などについて、実際に動画を作成している柴田氏と生亀(いき)氏に話を伺った。

アジア圏のエンドユーザーをターゲットに月に10本の動画を配信

ラベルプリンター「テプラ」やデジタルメモ「ポメラ」などのヒット商品でも知られる文具メーカー「キングジム」。日本はもとより、中国や香港、インドネシアなど東南アジアに5つの海外法人を擁し、事業拡大を目指している。

キングジムの海外事業を統括する海外事業推進部では、現地法人や販売代理店への支援だけでなく、一般顧客にもインターネットを通してキングジム製品の情報や魅力を直接伝えるため、英語版Webサイトをリニューアル。2020年7月からFacebook、2021年1月からInstagramの運用を始めた。静止画やテキストの他に、2020年9月から月に10本程度、海外事業推進部の若手社員4名が分担して動画を作成し、投稿している。今回話を伺ったのは、実際に動画を作成している若手社員4名のうち、柴田氏と生亀氏の2名だ。

左から 海外事業本部 海外事業推進部 経営管理課 柴田捺美氏、事業推進課 生亀滉大氏
英語版Webサイト

海外向けサイトと、Instagramを担当する柴田氏は、動画を活用し始めたきっかけについて、以下のように語った。

以前から海外向けWebサイトはありましたが、主な販売促進は展示会への参加や出張など、リアルな活動がほとんどでした。しかし、コロナ禍もあって現地に行けないことが続き、せめてネット上で海外の皆さんにキングジムの商品を訴求できればと、2020年4月からSNS配信の企画検討を始めました(柴田氏)

海外向けのInstagram

また、海外に向けて訴求したいと思った背景には、海外での文具ブームもあった。台湾で行われた文具系イベント「紙博」などに出展した際、大きな反響があったそうだ。さらに、日本の文具を写真や動画に撮ってSNSに上げるユーザーが多くいるなど、現地では一定の反応があった。そこで、海外法人を展開している中国・東南アジア圏のエンドユーザーを主なターゲットとし、「BtoC」の認知向上を主目的にしながら、SNSで商品を訴求しているという。

一方、生産管理業務の傍ら、Facebookへの配信を主に担当する生亀氏は、BtoCとBtoBの海外へのアプローチに関して、以下のように語った。

日本では事務用品としてファイルなどの需要があり、法人ユーザーが多いのですが、海外では各国でファイルの穴の数や間隔などの仕様が異なり、展開が難しい状況です。一方、シールや手帳などは仕様の制限もないため、一般消費者向けなら勝負できる土壌があると考えました。個人向け商品は現地での人気も高いので、一般消費者向けの商品から『キングジム』という会社を知っていただき、法人の市場を開拓できればと考えています(生亀氏)

メディアと地域の特性を意識しながら、コンテンツや見せ方を工夫

一般消費者向けを意識したInstagramとFacebookへの投稿動画は、社員自身が手帳を使ったり、ノートにかわいらしくシールをあしらったり、使い方や楽しみ方を提案する、親しみやすい構成だ。いずれも静止画だけだった頃よりも反応が増えており、その内容も好意的なものがほとんどだという。Instagramユーザーの動画への反応について、柴田氏は以下のように語った。

たとえば、動画のカルーセル投稿をストーリーでもお知らせすると、普段の静止画だけの投稿よりもハートの数や投稿へ飛んだ人の数が増えるので、動画の効果は高いと感じています。IGTVもInstagramのユーザーと相性がいいのか、表示回数が増え、特にPRをしなくともフォロワーの獲得に貢献しています。さらに、台湾には動画広告を打ったのですが、かなり反応が良かったです(柴田氏)

特にInstagramは台湾や韓国、フィリピン、シンガポール、タイなどでの反応が高いという。フォロワーの8〜9割が女性ということもあって、ちいさく持てるマスキングテープ「KITTA」など、「女子文具」と呼ばれる商品群の投稿は反応がよいそうだ。

おそらくアカウントを持っている人が多いこと、そして日本の文具に興味があって、『かわいいものが好き』『この文具がステキ』と感じるポイントが日本人と近いからではないかと推測しています。なので、Instagramで配信する動画は、若い女性が好みそうな表現や色使いを意識しています(柴田氏)

一方、Facebookについては、Instagramよりも男性ユーザーが若干多く、ビジネス用のコミュニケーションツールとしている人も多いそうだ。そこで、動画を作成する際には使い方や機能性などを見せるように心がけているという。さらに、フレンドリーなコミュニケーションも演出している。たとえば、仕事で使えそうな整理ファイルの訴求をする動画の場合でも、冒頭で視聴者に呼びかけるような言葉を入れて親近感を出せるようにしているそうだ。

Facebookユーザーの動画への反応について、生亀氏は以下のように語った。

Facebookでも、画像を使用したものと、動画を使用したものを両方投稿したところ、動画を使用したほうがリーチが伸びたという実績があります。動画の印象が良いと”Love it”などの現地語でのコメントや、リアクションをくれるので、いい評価として受け取っています。そうした反応の良い動画を掲載して、シンガポールやタイなどにエンゲージメント広告を配信したところ、フォロワー獲得に大きく貢献しました(生亀氏)

そして、Facebook、Instagramともに共通しているのが、「海外文化を意識した投稿をすること」だという。たとえば、日本で手帳といえばカレンダーやスケジュールなどのフォーマットが入ったものが主流だ。しかし、海外では自分の習慣を記録する「ハビットトラッカー」や、ToDoリストなど、白紙の手帳に自分でフォーマットを作成することが好まれる。そこで、柴田氏と生亀氏は具体的な使い方をネット上で調べたり、SNSのタグで写真を探したりして、海外の文化に沿った商品や見せ方の参考にしているという。

他にもセンシティブになりがちな政治的、宗教的な要素は取り込まないようにしています。日常的な習慣でも、たとえば『頭をなでること』が失礼に当たるタイでは、そうした表現やコンテンツは嫌われます。“好まれそうなこと”だけでなく、“嫌われそうなこと”も意識しながら、生活習慣や使い方、文化を知り、その上で動画を作成したいと考えて、日々勉強しています。他にも、ビジネス用のファイルというとシックな色味が好まれると思っていましたが、アジア圏では想像以上にカラフルな色味が好まれることもわかりました。施策を通じて、そうしたハックやコツを蓄積して反映させていきたいと思っています(生亀氏)

動画作成とSNS投稿は、若手社員4名が主業務の傍らで担当

動画を作成する全体的な運用は、4人で担当を振り分け、進捗については随時相談しながら進めているという。担当者はそれぞれ生産管理や販促などが主業務だが、新商品やキャンペーンなどの情報が共有されているため、話し合いもスムーズに進むそうだ。

月1回打ち合わせをして、次月の担当を決めていますが、得意・不得意などに応じて各自が手を挙げたり、主業務の忙しさの程度などから分量を調整したり、固定の担当者を設定せず、フレキシブルに決めています。その後、期限までに社内や自宅などで撮影を行い、投稿数日前に共有して確認しています(柴田氏)

なおInstagramについては、通常のフィード投稿は静止画がメインで、動画はストーリーズに3秒程度、リールで30秒〜数分をベースに作成・配信しているという。

ストーリーズはすぐに消えてしまうこともあり、新製品などのタイムリーなニュースが多く、リールではシールや付箋などを使った手帳のメイキング動画など、楽しみ方を紹介することが多いです。撮影の内容は、私自身の趣味と一致していることも多く、アイディアは尽きることがありません。撮影は自分のスマホですが、他に安価な三脚やライトなどを購入しました(柴田氏)

そしてFacebookでは、フィード投稿には30秒程度、ストーリーズには5秒程度の動画を投稿することが多いという。

最近は動画と静止画を半々くらいの頻度で掲載しています。以前は1分半くらいの長い動画も掲載していましたが、長いと再生を躊躇するのではないかと想像し、30秒程度に短くしたところ閲覧数が増えました。Instagramのように詳しい使い方や楽しみ方を紹介するというより、製品のシンプルなイメージを伝えるようにしています。ストーリーズの方は、Instagramと同様、新商品の紹介などがメインで、撮影の裏側を映したメイキング画像・動画などを見せることもあります(生亀氏)

業務の合間にスマホで手軽に撮影し、動画編集ソフトを導入して作業時間を短縮

動画で使用する素材は、日本向けの販促にも使用している画像や動画に、自分たちで撮った画像を組み合わせることも多いそうだ。撮影はスマートフォンで行い、編集はアライドアーキテクツ社の「LetroStudio」を使用している。撮影用の商品手配などに時間はかかるものの、編集している時間はわずか30分程度だという。

Facebookでの動画には、しばらくフリーソフトやハイエンドな動画ツールを使っていたのですが、操作が重たいことと、動画の吐き出しに数時間かかることもあり、動画を1本作成するのに丸1日かかっていました。そこで、効率化を検討していたところ、タイムリーに『LetroStudio』と出会い、導入を決めました。準備や撮影にかかる時間はそのままでも、編集時間が大幅に圧縮され、作業時間が約半分の3〜4時間程度に収まるようになりました(生亀氏)

動画ツールを変えたことにより、動画制作の経験がなかった新入社員でも、30分ほどのレクチャーで簡単な動画が作れるようになったという。そして、誰もが簡単に動画を編集できる環境が整ったことで、今後ますます動画の内製化が進み、活用の幅も広がることを期待しているそうだ。

また、動画制作を外部へ委託しない理由について、柴田氏は以下のように語った。

初めから内製で動画制作を運用しているのですが、ある時、現在の本数と内容で動画制作会社に見積もりを取ったところ、百万円以上といわれて驚きました。さらに動画の目的や内容を伝えるディレクション作業や修正・変更などに手が取られ、納期も2週間はかかることを考えると、内製の方が柔軟に対応できると考えています(柴田氏)

動画をさらに活用して新たな訴求を目指す

快適な動画制作環境が整ってきたことで、柴田氏、生亀氏とも「さらに動画活用の幅を広げていきたい」と意欲を見せる。コロナが収束した以降も、SNSだけでなく、様々な場面で動画が使われることは間違いなさそうだ。

展開先の一つとして考えているのが、リアルな場面での動画活用だという。リアルな展示会や商談でも、モニターやタブレット等で動画を流すことで文具の機能や使い勝手、楽しさを伝えることができる。また、現在は英語の動画がメインだが、中国子会社に中国語への翻訳を依頼するなど、多言語化も行っていきたいという。そして、さらに挑戦したいと考えているのがYouTubeだそうだ。

YouTubeなら長い動画も違和感なく閲覧され、InstagramやFacebookでできなかった訴求ができるようになると思います。たとえば、手元をずっと映した詳しいメイキング動画や、1年目の社員が自発的に作ってくれたキャラクター人形を使って対談形式で使い方を詳しく紹介する動画など、いろいろと作って配信してみたいです(柴田氏)

文具が好きという社員の思いと、SNSに強い世代の人材が入ったことにより、動画活用を進めるキングジム。海外向けという難しいターゲットながら、目的に合った動画をスピーディに作成できるのも、SNSで現地の反応を調べたり、試行錯誤して表現を変えてみたりと社員の感性や裁量で動画を内製化しているからだろう。また、動画の内製化に合わせて適切な動画作成ツールを導入したことも大きなポイントだ。今後のキングジムの動画活用はさらに進化を遂げていくだろう。

――柴田さん、生亀さん。取材協力ありがとうございました。

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