TVCM×Twitterでアプリダウンロード数1位を獲得した出前館! 施策の舞台裏を聞いた
フードデリバリー業界の戦国時代ともいえる現在、ダウンタウンの浜田さんを起用したTVCMやお笑い芸人のEXITさん・モデルのリコリコさんを起用したTwitter連動キャンペーンなど攻めのマーケティング施策で、App Storeの無料アプリダウンロードで1位を獲得した「出前館」。
定番アプリの強豪ひしめく中、いかにしてアプリダウンロード1位を獲得したのか。その施策の全容を同社の高木翔太氏に語ってもらった。
TVCMにインフォメーションを固定してクーポン利用率が10倍に
――App Storeの無料ダウンロード1位を獲得する施策の全容をお聞きする前に、まずは改めて、出前館について教えてください。
高木氏: 出前館は2000年の10月に発足したフードデリバリーサービスのプラットフォームです。2016年10月にLINEと資本提携契約を締結していて、そこから2020年3月にさらにLINEが300億円の追加出資を行い、資本業務提携を強化して現在はLINEも出前館のサービスに関わるようになりました。
加盟店舗数は約8万店で、アクティブユーザーは約650万人の規模です。ユーザーが出前館で加盟店舗の料理を注文し、出前館が配達します。
提供している配達サービスには2種類あり、1つは飲食店が独自のデリバリーサービスを行っている場合のマーケットプレイス型です。このタイプでは出前館がユーザーからの注文、支払いを担い、飲食店に対してはメニュー情報掲載の場、注文受付と情報連携を提供しています。そして配送自体は飲食店が行います。
もう1つは、オーダー・デリバリー代行型です。これはデリバリーサービスを独自で持っていない飲食店に対して、メニュー掲載、注文受け付けから配達を出前館が行います。
――出前館といえば、ダウンタウンの浜田さんが出演されている歌が特徴的なCMが印象に残りますよね。TVCMの施策には力を入れているのでしょうか?
高木氏: そうですね。私が所属するマーケティングコミュニケーション本部では、TVCMやSNSの販促を一緒にやっているんです。いろいろなチャネルを担当している人が一緒に会議をするので、「TVCMをやろう」という話になったときに「CM放映中の画面の一部を他の情報に使ってもいいよね」という発想になりました。そこで、常に画面上に訴求したい情報を出すようにしているのが特徴です。
たとえば、画面左上にクーポン情報を固定表示したTVCMを2020年に放映したところ、同様のクーポン内容で施策を実施したサイト比較して、利用件数が増加する傾向が見られました。
画面左上にインフォメーションを固定するTVCMで結果が得られたので、さらに発展して、L字枠でずっとクーポン訴求をしつづけるTVCMを作りました。Webサイトなどではよく見るような「クーポン無料配布中」や「出前館で検索」、「アプリダウンロード」などといった情報を常にTVCMのL字枠に掲載することで、これまではCMの最後1秒程度でお得情報を伝えていた訴求から、15秒フルでお得な情報を伝えることができるようになりました。
そのフォーマットでTVCMを配信した結果、新規ユーザーの獲得が同様のクーポンキャンペーン実施時と比較して3倍以上に増加し、CMで15秒間クーポン訴求を行う効果を実感しました。
また、様々なL字CMを試していると、本来CMでは出前館をWEBで使ってもらう目的の訴求を行っていましたが、アプリダウンロード数の増加にも貢献していることがわかり、第3弾のCMではアプリダウンロード数を最大化する目的でL字訴求を行った結果、アプリダウンロード数が急増してiPhoneのApp Storeランキングで1位を獲得しました。
――また、出前館では、2020年から公式Twitter運用に力を入れるようになったそうですが、経緯を教えてください。
高木氏: LINEと資本提携をしたことで「あらゆるチャネルを使ってマーケティングをして行こう」という体制にシフトしたことが大きいです。2009年からTwitter公式アカウントはありましたが、フォロワー数は2020年の9月時点で5万人程度と伸び悩んでいました。そこで、定期的にお得なクーポン配布や、出前館と相性の良いと考えるサービスとタイアップしたキャンペーンを中心に、積極的にTwitterの運用を行っています。
その甲斐あって、フォロワー数も増加し、2021年7月現在で30万人にまで伸びました。
――Twitterを活用することで、アプリのダウンロード数にも影響がありましたか?
高木氏: ありましたね。iPhoneのApp Storeのランキングは超有名アプリ、定番アプリが占めているため、上位に食い込むのは簡単ではありません。TVCMの効果もありましたが、Twitterキャンペーンも併用して、ダウンロード数を増やしていきました。
――新規アプリ会員を増やすためにキャンペーンを行ったのですね。具体的にどんなキャンペーンを行ったのでしょうか?
高木氏: 2020年12月28日~30日の3日間でアプリ限定のクーポンを先着で数量限定にしてTwitterで発信しました。リーチはフォロワーの方がメインですが、アプリを使っておらず、Webサービスを利用している方も多かったです。そういった方に対して早い者勝ちのクーポンをフックにして、集中的にアプリをダウンロード&インストールしていただきました。
――12月28日~30日という年末の時期にキャンペーンを行ったのには理由があるのでしょうか?
高木氏: この時期にクーポンを配布したのは、一般的に春の新生活や年末年始にスマホを買い替える人が多いからです。スマホを買い替えると、まずアプリをインストールしようとしてアプリの総合ランキングをチェックする人が増えます。そこで、アプリがランキング上位に入っていれば新規ダウンロードユーザー数に効いてくると考えていました。
また、年末年始はデリバリーサービスの需要が高まります。競合よりも出前館で注文してほしいという気持ちもあったので販促強化という意味で行いました。
TVCM×Twitterの施策 人気若手芸人やモデルを起用したCMでTwitterトレンド入り
――TVCMとTwitterを連動させたキャンペーンを行ったと聞いていますが、詳しく教えてください。
高木氏: 2021年4月5日~8日までの4日間、Twitterで、「TVCMの内容を予想してみよう」という参加型のキャンペーン企画をしました。目的は新規配達員の獲得です。
CMの内容は配達員に扮したEXITのお二人と、モデルのリコリコさんが、「出前館の配達員として稼ぎを競い合う」というお給料バトル編のCMです。それぞれ勝者が違う3パターンのCMを制作しました。CMの放映期間は4月6日~4月9日で、どのテレビ局でもその日に流すパターンをそろえて、キャンペーン中は毎日結果が変わるようにCMを配信しました。
Twitter上では「『#出前館の配達員』とハッシュタグをつけ、みんなで勝者を予想してみよう、一緒に応援してみよう」と声をかけました。
――毎日違うパターンの結果のCMを配信するというのも珍しいですが、Twitterで連動しようとしたのはなぜですか?
高木氏: せっかくテレビでCMを放映するなら、その資源をTwitterでも活かそうと、キャンペーンが立ち上がりました。Twitterで予測をするためには、普段Twitterしか見ない人もテレビでCMを見る必要がありますから、CMをもっと見てもらえるという盛り上げ効果も狙っています。
また、お給料バトル編のCMでもL字の枠のフォーマットを活用しています。このときは、下は検索、左側は配達員の順位が常時入れ替わるリアルタイムランキングを出してみました。対戦ゲームのバトル画面をイメージしています。
――キャンペーンを実施してみて、結果はどうでしたか?
高木氏: このキャンペーンのコンバージョンは「配達員説明会の予約」にしていたのですが、Twitterキャンペーン実施前後(TVCM放送中)の比較で、配達員説明会予約数は157%増加しました。トレンド入りした結果、多くのTwitterユーザーに「出前館の配達員」というキーワードが目に入り、気になって検索した結果「こんなことができるのか、やってみたいな」と応募する人が増えたのかと思います。
また、Twitterは、配達員の方の情報交換の場として利用されている背景もありました。「どのエリアの仕事でどのくらい運べた」など、仕事の報告ツイートが多いのです。このCMは新しい配達員獲得が主目的ですから、Twitter上で出前館の配達員として活動するメリットを伝えられることは、新規配達員獲得にも貢献できるだろうと考えていました。
なぜTVCM×他チャネルを活用するのか? これからは掛け合わせで効果を狙う
――出前館といえば全国展開のフードデリバリーとして最大級というイメージでしたが、この1年、配達員の募集や出前館ブランド訴求と、TVCMを大展開してきました。その理由はなんですか?
高木氏: 出前館のマーケティング活動においては、「さらに知名度アップして、新規で使ってもらえる人を増やす」というものがあります。2020年7月の認知度調査では、出前館を知っている、という人は57.2%に留まっていました。そこからTVCMを中心とした取り組みで、半年程度で90%に近い認知率まで伸びてきています。ダウンタウンの浜田雅功さんが歌う「Demae-canの歌」が圧倒的なインパクトで、サービス認知という意味では課題を克服しつつありますが、CMでももっとマーケティングや販促要素に直接効果が出るようにできるのでは、ということも考えていました。
――それで出てきたのがL字や、今回のTwitter連動キャンペーンという訳ですね。こういった転換の発想やテレビとデジタル部門の社内連携、なかなかできないと思うんですね。
高木氏: 最初にお話したように、出前館の現在のマーケティングコミュニケーション本部は、マーケティングすべてに関わっていて、TVCMや販促、宣伝、アプリ、Webデザイン制作などを行っている部署なのが特徴です。スタッフがそれぞれの目線で意見や発想を出せるので、テレビだけ、Webだけでは出てこないアイデアが出てきやすい環境はあると思います。
私自身、今の時代にマーケティングで成功するためには、単体メディアでうまく行くことよりも、複数のメディアをうまく組み合わせて相乗効果が出るようにマーケティング活動を行うことが良いと考えています。ただCMを流すのではなく、CM×ソーシャルメディアだったり、CM×アプリだったりと、複数の要素を掛け合わせる考え方をしたほうがいいと思っています。
――「マルチチャネルで相乗効果をいかに得るか」ですね。
高木氏: そうですね。人の面でも同じです。CMだけやっている人なら「そんなところにインフォメーションを入れたらダメ」と思ってしまうかもしれませんが、販促の人間は「CMでも販促したい」という発想が出てきます。
また、CMの計測も認知向上だけを見るのではなく、コンバージョンを取って効果計測し、放映時間枠、放映エリアを細かく検討して絞り込むことで費用対効果を上げています。そういった取り組み全体があって、Twitterトレンドだったり、アプリダウンロードだったり良い方向に行っているのかなと考えています。
――スポットでバンバンCMを打つ時代でもなくなっていますね。
高木氏: 出前館の場合は、飲食店さんの営業時間、皆さんがデリバリーを取りたくなる時間帯のニーズを考えて、特に週末の夕食などを狙ってCMを打っています。エリアや時間を管理していれば、検索流入から効果計測もわかりやすいですし、リアルタイム性の高いソーシャルメディアとの連動もしやすいと言えます。
――今後、デジタルチャネルとの融合とシナジーがさらに高まりそうですね。
高木氏: はい、日本のデリバリーはまだまだポテンシャルが高い状態で、もっと多くの方に、気軽に頼んでいただけるようになると期待しています。その一方で、フードデリバリー業界は競合企業が濫立状態にもあります。
出前館では、デリバリーの品質や正確さや加盟店の多さといった基本的な配達サービスのクオリティはもちろんですが、デジタル分野ではマーケティング・シナジーを高め、お客様に選ばれていくよう努力して参ります。Twitterもまだまだ拡大していきますし、実は出前館のLINE公式アカウントも3,700万人の友達を抱えており、公式アカウントの友だち数ランキングではトップ15に入って来ました。LINEとの連携ももちろん、現在はZホールディングスのグループにもなっていますので、今後はYahoo!との連携も進んでいくかと思います。今後にご期待ください。
――この度はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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