まだ年末商戦にも間に合う! プロが教える広告文の作り方!<後編> ~竹内謙礼氏インタビュー~
リスティング広告の効果を大きく左右するのが、「タイトル」と「説明文」の中身だ。観光牧場「成田ゆめ牧場」のネットショップを3年で年商1億円まで育てた実績を持つ経営コンサルタントの竹内謙礼さんに、リスティング広告のタイトル・説明文の位置づけや作成のポイントを、実践経験に基づいてお話しいただいた。
後編では、広告の目的やビジネスモデル、季節に応じたタイトル・説明文のポイントなどをおうかがいした(後編を読む前に前編を読む)。
訴求すべきなのは、長所ではなく
他社との比較に勝てるポイント
編集部●後編では、広告の目的やビジネスモデル、季節に応じたタイトル・説明文のポイントをうかがいたいと思います。まずリスティング広告の重要な指標には、クリック率とコンバージョンの二つがあると思います。クリックを得たい場合と、コンバージョンを上げたい場合で、タイトル・説明文の作り方はどのように変わってくるのでしょうか。
竹内●まずクリックを得たい場合は、前編でお話ししたように、検索キーワードによる質問に対して、ストレートに答えてあげるのが基本です。「介護用ベッド 評判」と検索している人に対しては、例えば「口コミ多数あり」といった文句を説明文の中に入れておく。質問に対して適切な答えになるように、タイトル・説明文を調整する必要があります。よくどんなキーワードに対しても、同一のタイトル・説明文を表示させているケースを見ますが、それではクリックが得られません。もし自社が依頼している広告代理店がそのような運用をしているなら、きちんと要望して、少なくとも主要なキーワードについてはキーワードごとに広告表現を変えてもらった方がいいでしょう。「激安 折りたたみ自転車自転車」なら「激安の折りたたみ自転車自転車があります」、「軽量 折りたたみ自転車自転車」なら「軽量の折りたたみ自転車自転車があります」とする。たったこれだけでも、クリック率はまったく変わってきます。
またリスティング広告はプル型の広告だと前編で説明しましたが、工夫次第でお客さんの興味を引いて潜在ニーズを引き出すこともできます。例えば「転職」というキーワードで検索した人に対して、インプラントの広告を出して、歯をきれいにして第一印象をアップしませんかと訴求する。あるいは新築マンションを検索している人に対して、中古マンションを新築同様にリノベーションした物件を提案するといった方法です。
このような、一見関係なさそうだけど実は深く関連しているというキーワードを探すのは難しい作業です。僕がいいと思うのは、マインドマップです。商品を中央にマインドマップをつくり、何人かで集まって意見を交換しながらイメージを広げていくと、そのような埋もれたキーワードを発見しやすくなると思います。表計算ソフトに担当者が一人でキーワードを羅列していく方法では、なかなか発想は広がっていきません。
一方、コンバージョンを上げるには、何よりも他社との比較に勝つことです。インターネットは、要するに比較の世界。商品やサービスの良いところだけ表現すればいいという考えは間違いです。お客さんは表示された広告を見て、どこが一番良いのか比較しているのです。従って商品の良いところをアピールするのではなく、他社と比較されたときに勝てるところをアピールするのが、コンバージョンを得るための鉄則です。
編集部●検索数の多いキーワードでは、多数の広告の中に自社の広告が埋没してしまうケースもよく見られます。タイトル・説明文で差別化するには、どのような工夫をすればいいでしょうか。
竹内●比較に勝てる点をアピールすることに加え、独自性のある言葉で訴求することが重要です。そのためのポイントは二つあります。一つは年齢層や性別ではなく、お客さんの個人名をイメージしてタイトル・説明文を考えることです。例えばダイエット食品なら、20代の女性をイメージするのではなくて、部下の女性、仮に由美ちゃんとしますが、由美ちゃんをイメージする。由美ちゃんにどう話せば買ってくれるかなと考えるわけです。すると由美ちゃんは海が好きだから、「夏の海に間に合う。30日で痩せたい人の○×」といった具合に言葉がビビッドになる。個人にメッセージを出すつもりで作るのが基本です。
もう一つは、商品を目の前に置いて考えないことです。最近、ある有名デパートに行ったとき、チェック柄のトートバッグが売られており、その商品のPOP広告が「チェック柄のトートバッグ」でした。見ればわかるでしょうという内容ですが、リスティング広告でも同じような事例はよく見かけます。見てわかることではなく、見てもわからないことを書くようにすると、オリジナルの表現ができます。商品を目の前に置いてしまうと、目に見えることばかり考えてしまいがちです。
- クリック率を高めるには、主要なキーワードと広告の間で、Q&Aの関係を徹底する。コンバージョンを上げるには、他社との比較に勝つ
- 無関係そうに見えて実は関係の深いキーワードや訴求ポイントを探すには、マインドマップが役に立つ
- オリジナルな表現を見つけるコツは、「個人名をイメージして考える」「見てわかることを書かない」の2点
タイトル・説明文を考えることが
自社ビジネスを見直す契機に
編集部●リスティング広告を利用している企業のビジネスモデルは、販売と資料請求(会員登録)の二つに大きく分かれます。それぞれモデルで、タイトル・説明文のポイントは異なるのでしょうか。
竹内●販売系は、「スピード対応」とか"即買い"のニーズへの対応力を訴求することです。ネットで調べて商品を買おうという人は、時間がなくて面倒くさがりの人が多いと思います。そういうお客さんに対応できることを明示しておくのが基本です。
資料請求や会員登録に関しては、クーポンなど何かしら特典をつけ、それをタイトルや説明文で訴求することが重要です。ただし資料請求・会員登録の場合は、新規客の獲得コストを厳密に計算するのを忘れないでください。ネットに限った話ではありませんが、新規客を獲得するコストは、既存客を掘り起こすコストの5倍だと言われます。また5%の既存客に逃げられると、25%の売上が失われるという法則もよく言われます。既存客との関係も加味しながら、どの程度の新規客獲得コストをかけられるのかを考え、そのうえで広告を出稿・運用してください。
編集部●最後に、季節(繁忙期・閑散期)ごとのタイトル・説明文作成のポイントについて、特に重要な点をご説明ください。
竹内●これは販売企画にも関係してきますが、季節によってメリハリをつけてあげることが重要です。例えばクリスマスツリーを売っているなら、夏の間は「無料特典」とか「早割」とかを企画して、タイトル・説明文で訴求する。クリスマス商戦に入ったら、今度は「スピード対応」とか「まだ間に合う」といった表現にシフトする。年間の販売計画やイベント予定を見通し、それに合わせて広告表現も変えていくのが大事です。
僕は毎年、向こう1年間の主要なイベントスケジュールを入れたカレンダーを用意しています。例えば2010年なら、3月にエコポイントが切れますし、6月から7月にかけてはサッカーのワールドカップ南アフリカ大会が開催されます。すると、3月はエコポイント対象商品の最終商戦になるとか、ワールドカップの日本戦時に広告を出してもだれも見てくれないから意味がないとか、広告戦略も立てられるわけです。例えば年間1200万円の広告予算があるなら、毎月100万円ずつ均等に用いるのではなく、販売計画やイベントスケジュールに応じてメリハリをつけるのが、本来の広告運用の姿だと思います。
地味ですが連休をチェックしておくことも大事です。連休中は売上に占めるモバイルの割合が高くなり、PCが低くなります。ですからあらかじめモバイルに広告が多く出るようにしておくのです。また特に大型連休中にネットで商品を検索している人は、近所の店が休業中などの理由で緊急にその商品を必要としているケースがあります。そのようなお客さんに対応できるのであれば、そのことをタイトル・説明文に明記しておくといいでしょう。対応できない場合でも、代わりに「連休中は10%オフ」などと訴求しておくと、他社と差別化できると思います。
リスティング広告は、男女の付き合いに似ていて、お客さんの立場や置かれている状況に応じてまめに手を掛けてあげないと、お客さんを振り向かせることはできません。その意味では、リスティング広告の表現を真剣に考えることは、自社のビジネスを見つめ直すことにもつながります。広告表現を考えることで自社の強み・弱みや方向性を確認できたり、新しいビジネスモデルがひらめいたりするのです。キーワードを広げるためのマインドマップをつくれば、DMの宛先も変わってくるかもしれません。自社のビジネスを突き詰めて考えるツールとしても、リスティング広告は役立てられると思います。
- 販売系の広告は"即買い"への対応が、資料請求・会員登録系は顧客へのメリット明示がポイントになる
- 年間の販売計画やイベントスケジュールを念頭に、季節によって広告表現にもメリハリをつける。連休中のモバイル対応も忘れずに
- タイトルと説明文を真剣に考えることは、自社のビジネスの強みや弱み、方向性をチェックすることにもつながる
竹内謙礼氏プロフィール
有限会社いろは代表取締役。大学卒業後、観光牧場の企画広報に携わった後、楽天市場にネットショップを出店。オープン3年目で年商1億円を達成し、2年連続で楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー「ベスト店長賞」を受賞する。現在は大企業、中小企業を問わず、販促戦略立案、新規事業、起業アドバイスを行なう経営コンサルタントとして活躍。主な著書に「売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方」(日本経済新聞社)、「会計天国」(PHP研究所)などがある。
11月12日に株式会社ワードシーカーと共著で「儲かるキーワード広告の使い方」(日本実業出版社)を出版。キーワード選び、広告文の書き方など、キーワード広告出稿に関する実務をやさしく解説。
コメント
全然ちがうよ・・・
全然ちがうよ・・・。この人、あまり実際の運用経験ないのでは。
マーカーしてあるところは大きくズレてないけど、
その他はまったく実状とちがうので信じてはダメ。
具体的には?
編集部です。コメントありがとうございます。
「ちがう」の部分、具体的に「本来はこうあるべきところこう書かれている」のように具体的な指摘がありましたら、それを書いていただけると、建設的になって良いですね。
そうでなく、具体的な指摘がない「ちがう」だけの書き込みだけで終わってしまう場合(根拠のない批判だけ)は、申し訳ありませんが、編集部としては削除するしかないのです。いかがでしょうか?