キーワード広告のクリック数と平均CPCで調べる
新スポンサードサーチの影響と対策
オーバーチュアの新スポンサードサーチで品質インデックスによる順位決定方式が導入されたのが2007年7月12日。それから1か月以上の時間が過ぎたが、広告のクリック数やクリック単価にどのような動きがあったのだろうか。
あなたが出稿しているキーワード広告が、新しいシステムで有利な状態にあるのか不利な状態になるのかを調べる方法と、それぞれの対策を解説しよう。
ご存じのとおり、オーバーチュアは2007年7月12日から、新スポンサードサーチにおけるキーワード広告の掲載順位の決定方式を変更した。
念のためにこの変更の内容をおさらいしておこう。
従来のスポンサードサーチでは、キーワードごとの入札価格によってのみ広告の掲載順位が決まっていた。つまり、広告の内容がどうであれ、1円でも高いクリック単価で入札している広告が上位に表示されていた。それが、今回の変更によって、入札価格に加えて、実際に表示された広告のクリック率の履歴など、さまざまな要素によって掲載順位が決まるようになった(オーバーチュアではこれらの要素を「広告の品質」と呼んでいる)。
新しい掲載順位の決定方式では、クリック率が高いなど品質が高いと判断される広告は、同じ入札価格で品質の低い広告よりも上位に表示されるようになった。視点を変えてみると、広告の品質が高ければ、広告のクリック単価が自動的に低くなり広告費が少なくて済む仕組みだ。
逆にいえば、高い入札価格を設定していたとしても、クリック率が低いなど品質の低い広告は上位には表示されなくなっている。
なぜ新しい掲載順位の決定方式が必要だったのか?
オーバーチュアは、なぜこのような変更をする必要があったのだろうか。それは、重要度が増す検索マーケティングを健全に発展させるためだ。
キーワード広告は、ネットユーザーが検索エンジンにおいて何らかのキーワードで検索した場合に、その検索結果に表示される広告だ。広告内容に関連のあるキーワードで検索されたときにだけ表示されるように設定できるからこそ、キーワード広告は効率的な集客の手段となっているのだ。
しかし、ネットユーザーにとっての「検索エンジン」とは、広告を見るための場所ではなく、何らかの「情報」を探す場所である。求めている情報を入手できるからネットユーザーは検索エンジンを使うのであって、不要な情報が多ければ多いほど検索エンジンの価値が下がってしまう。そのため、検索エンジンの検索結果に表示されるものは、それが広告だったとしても、できる限り検索ユーザーの求めている情報に合致している可能性の高いものが求められるのだ。
確かに、新しい掲載順位の決定方式は詳細が明らかになっておらず少しわかりにくいので、以前のように入札価格だけで広告の掲載順位が決まるほうがいいという広告主もいるだろう。しかし、新スポンサードサーチの新しい掲載順位の決定方式でいうところの「広告の品質」とは、「その広告は、検索ユーザーが求めているものかどうか」を意味するものなのだ。検索ユーザーにとっては、高い入札価格を設定しているかどうかよりも、求めている情報との関連性が高いかどうかのほうが重要なのだ。
広告主にとって、有力な見込み客を効率的に集められるキーワード広告は、ネットビジネスにとって非常に効果的なマーケティング手法として普及してきた。また、ネットユーザーにとって、検索エンジンは広大なネット上で情報を探すためには、なくてはならないツールとなっている。その双方が今後も健全に発展していくためには、新スポンサードサーチによる掲載順位決定方式の変更は、避けては通れないものだったのだといえるだろう。
全体では費用対効果が改善
しかし広告主によっては……
前述のように、新しい広告掲載順位の決定方式が導入されてから、すでに6週間経っているのだが、その影響はどのようになっているのだろうか。
全体の動きでいうと、新方式への変更当初は、キーワード広告のタイトルや説明文を調整しきれず、掲載順位を上げるために入札価格を高くする動きがあった。しかし、それも一時的なもので、入札価格の上昇はすぐに一段落し、現在はクリック単価は下がる傾向にあるという。もちろん入札価格は日々変わるものなので具体的な平均などの数値は出せないが、新スポンサードサーチによって掲載順位の決定方式が変わったあとは、クリック単価は全体的に下がり、クリック率は上がる傾向にあることが判明している。この先この動きは続くと考えられる。
しかし、広告主ごとに見ていくと、新方式に変わってからキーワード広告の費用対効果が改善された勝ち組と、費用対効果が悪化した負け組の両方がある。実は、新方式の導入から2~3週間経ったあたりで、すでに新スポンサードサーチにおける勝ち組と負け組が出てきていた。6週間たった現在、その傾向は明らかになっているようだ。
勝ち組と負け組の違いは、新方式導入の前後でクリック数とクリック単価がどう変わったかによって4種類に分けられる(図1)。
この違いは何によるものだろうか。おそらく、新スポンサードサーチへの移行に際してオーバーチュアから広告主に送られていた情報メールやWeb担をはじめとする各メディアの出している情報を集めて、出稿しているキーワード広告のタイトルや説明文(広告のクリエイティブ)を調整していた広告主は新方式の恩恵を受けて費用対効果が改善しているのだと思われる。
実際に、キーワードやクリエイティブの審査はスムーズになったし、複数のクリエイティブを設定してより良いものを見つける「A/Bテスト」もできるようになったため、新スポンサードサーチへの移行後は広告のクリエイティブを変更する動きが多く見られたようだ。以前は、非常に高額な入札価格を設定しているがクリエイティブが練り込まれていない広告が常に1位の位置に表示されているようなキーワードもあったが、そういった検索ユーザーにとって魅力的ではない広告はクリック率が低いため、徐々に順位が落ちていっているようだ。
また、同じ商材を扱っていても、地方の小さな店ではなくメーカーなどのブランドネームがある場合は強いようである。たとえば、広告の中に「公式」と書いてあれば、クリック率は良くなるだろう。
自分は勝ち組? 負け組?
レポート画面で調べる方法
管理画面にログインし、「レポート」に移動する。
左側のメニューから「1日当たりの広告費用対効果」を選択する。
右上のカレンダーアイコンから、開始日に2007年6月28日(導入2週間前)、終了日に7月26日(導入2週間後)を選択し、「適用する」をクリックする。
指標1のプルダウンメニューから「クリック数」を選択する。
指標2のプルダウンメニューから「平均CPC」を選択する。
[グラフの更新]ボタンをクリックする。
表示されたグラフの左半分が新方式の導入前の、右半分が新方式の導入後の、クリック数と平均CPCとなる。より細かく分析したければ、このデータを2週間ごとに区切って合計を出してから日数で割り、クリック数と平均CPCの日ごとの平均値を算出し比較するといいだろう(図2)。
新方式でパフォーマンスを改善するためのポイント
あなたは勝ち組だっただろうか、それとも負け組だっただろうか。ここからは、新スポンサードサーチで、より勝ち組に近づくためのポイントを紹介しよう。
広告のA/Bテスト機能で自動的に最適化
新スポンサードサーチでは、広告のクリエイティブ(タイトル&説明文)を複数作ってそれぞれを掲載し、クリック率の高い(つまり品質の高い)広告を見つける「A/Bテスト」をかんたんに行える。
しかも、複数の広告を表示したり、品質の高い広告を優先して表示したりする部分はシステムが自動的に行ってくれるので、あなたがする必要があるのは、複数の広告を作ることだけだ。この便利な機能を使わない手はないだろう。
新スポンサードサーチの管理画面でA/Bテストをするには、次のようにする。
管理画面にログインし、「キャンペーン」に移動する。
A/Bテストしたい広告グループが含まれている広告キャンペーンを選ぶ。
A/Bテストしたい広告グループを選ぶ。
[新規広告作成]をクリックする(図3)。
広告のクリエイティブを入力する画面が表示されるので、別パターンのタイトルと説明文を入力する。
広告が承認されると、入力されている広告クリエイティブが自動的にバランスよく表示される。それぞれの広告がある程度の回数表示されたあとは、クリック率の高い広告クリエイティブが自動的により多く表示され、クリック率の低い広告クリエイティブは表示されにくくなる。なお、広告グループの最適化機能は初期設定でオンとなる。オフにして最適化を行わないことも可能だ。
各クリエイティブのクリック率や、各クリエイティブが現在どれぐらいの比率で表示されているのかなどを調べるには、次のようにする。
管理画面にログインし、「キャンペーン」に移動する。
A/Bテストしている広告グループが含まれている広告キャンペーンを選ぶ。
A/Bテストしている広告グループを選ぶ。
[広告]をクリックする。
それぞれの広告クリエイティブに関して「配信頻度」「クリック率」などを確認する(図4)。
しばらくの間、自動的にA/Bテストを行ったら、クリック率の低い広告を掲載オフにして、さらに新しい広告クリエイティブを作る。こうして何度もA/Bテストを行い、より品質の高い広告を見つけていくのだ。
実際にA/Bテストを行う際には、最初はガラっと方向性の違うパターンで広告のタイトルや説明文を作って試すのがいいだろう。たとえば、「製品の特徴をアピールする方向性」「危機感をあおる方向性」「安さをアピールする方向性」「なんだろう? と思わせる方向性」などをそれぞれ作るのだ。そうしてしばらく全体の方向性をさぐってから、細かい単語の位置や表現の変化でA/Bテストをするのだ。
対象外キーワードを設定してクリック率を改善
広告の品質を良くするには、何よりもクリック率が高くなるようにするのがいい。そのために、対象外キーワードをうまく指定するのがいい。
スポンサードサーチでは、入札されたキーワードは自動的に「部分一致」というマッチ方式が指定される。検索エンジンで検索されたキーワードが、入札したキーワードと完全に同じものでなければ広告が表示されない「完全一致」と異なり、部分一致では、検索エンジンで使われた検索キーワードの中に、入札したキーワードが含まれていれば広告が表示される。部分一致では完全一致よりもインプレッション数が多くなるというメリットがあるのだが、そのぶん関係のない検索でも広告が表示されることが増え、クリック率が下がりやすくなる。そこで、マッチ方式は部分一致のままで、特定のキーワードが検索に含まれている場合には広告を表示しないという「対象外キーワード」を指定するのだ。
対象外キーワードの指定は、新スポンサードサーチ以前からあった機能なので、使ったことがある人も多いだろう。しかし、新しい掲載順位の決定方式が導入された現在、対象外キーワードをうまく使いこなすことは、以前よりもはるかに重要になっている。
というのも、以前は入札価格が同じならば、マッチ方式に完全一致が指定されている広告が、部分一致が指定されている広告よりも優先して表示されていた。しかし、今はさまざまなアルゴリズムで表示順位が決定されるため、完全一致を指定するよりも、部分一致と対象外キーワードをうまく使ってクリック率を高く保つのが、表示回数と費用対効果のパフォーマンスが良くなるのだ。
また、スポンサードサーチでは、意味ベースで入札キーワードと検索キーワードのマッチングが行われているため、たとえば「ワイン」というキーワードに入札していれば、「ぶどう」という検索キーワードに対しても広告が表示されるようなこともある。この機能によって、予想外の検索キーワードで広告が表示されている可能性がある。
既存の広告グループに対して対象外キーワードを指定する方法は少しわかりにくい。次のようにする。
管理画面にログインし、「キャンペーン」に移動する。
対象外キーワードを指定したい広告グループが含まれているキャンペーンを選ぶ。
対象外キーワードを指定したい広告グループを選ぶ。
画面右にある[広告グループの設定]ボタンの右側にある下向きの矢印をクリックする。
ドロップダウンリストが表示されるので、[広告種別の設定]を選ぶ。
[広告グループの広告種別の設定]画面が表示されるので、「スポンサードサーチ」の右側にある[対象外キーワード]の[表示]という部分をクリックする。
対象外キーワードを入力するボックスが表示されるので、対象外キーワードを1行に1つずつ入力する。
[変更を保存]ボタンをクリックする。
対象外として指定すると効果的なキーワードとしては、「無料」「画像」「比較」などの明らかに購買を目的としていないものなどがあるが、ほかにもマンションの賃貸に関する広告ならば「販売」を、販売に関する広告ならば「賃貸」を対象外キーワードに指定するのもいいだろう。新品販売だけのサイトならば「中古」や「修理」などを指定するのもいい。
また、管理画面内のキーワード選択ツールで表示されるキーワードの中にネガティブな情報が含まれる場合もあるので、そこから探すのもいいだろう。
管理画面内のキーワード選択ツールで表示されるキーワードをすべて入札キーワードとして登録する人もいるが、それはお勧めできない。たとえば「電話」に関するキーワードとして「電話機 盗聴」が表示されるなどだ。キーワード選択ツールは全自動ツールではなく、あくまでも補助ツールだ。表示されたキーワードをしっかりと精査して、自分の商売に関係するものだけに入札するようにしよう。
コンテンツマッチとスポンサードサーチは別の広告グループにする
コンテンツマッチとスポンサードサーチは異なるものだと考えて、同じ広告でも別の広告グループに分けて設定するべきだ。
1つの広告グループでスポンサードサーチとコンテンツマッチを兼ねている場合は、広告グループのコピー機能を使って、別の広告グループに分けたあとでコンテンツマッチ用の変更を加え、運用しよう。
クリック率を気にするようになって、クリック率が何%あればいいのかという疑問はあるだろう。しかし、クリック率の合格ラインは業種やテーマによって異なる。ある広告では0.5%あれば御の字だが別のテーマでは3%のクリック率が標準かもしれないし、競合他社の動向にもよる。A/Bテストをうまく使ってさまざまなクリエイティブを作ることで、適切なクリック率は見えてくるだろう。
今の自分の広告のクリック率が他の広告主と比べて良いのか悪いのかは、品質インデックスの表示を見れば、ざっくりとわかる。品質インデックスは5段階あるので、3より低ければ同じジャンルの他のものよりも悪くて、3より高ければ悪くないと考えていいだろう。広告に対して入札キーワードが合っているかどうかは、客観的に考えればわかるはずだ。しかし、広告のタイトルや説明文といったクリエイティブが良いのか悪いのかは、広告を見る受け手によって大きく変わる。あなたがターゲットとしているユーザー層にとって現在のクリエイティブが合っているのかどうかを判断するには、品質インデックスは1つの基準として利用できるはずだ。
また、旧スポンサードサーチの時代には、管理画面やシステムはほとんど変更されなかったが、新スポンサードサーチは改善や新機能の追加をしやすい構造になっている。実際に、新スポンサードサーチへの移行期間中の7月3日には、キーワードの移動やコピー、キーワード選定ツールの表示の改善など、いくつかのアップデートが導入されている。今後も、より良い広告を作り、効果測定をするための仕組みはどんどんアップデートされていくはずなので期待したい。
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