ECサイトのスマホ対応が今すぐ必要なたった1つの理由


スマホ経由の売上伸び率がPCの売上伸び率を凌駕
2010年7月、ドミノ・ピザがiPhoneアプリ「Domino's App」経由で1億円以上を売り上げたことが話題になった。iPhoneユーザー、しかもアプリ利用者という極めて限定された顧客セグメントでこれだけの売上が上がったことに、衝撃を受けたネットショップ運営者は多いのではないだろうか。
2010年下半期以降は、iPhoneに加えてAndroid端末の普及も進み、アパレル関連業界でもスマートフォン(スマホ)対応の“成功事例”が、ちらほらと報じられるようになってきた。目立つのが「スマートフォン経由での売上比率が前年の○倍になった」というニュースだ。
たとえば、アパレルが通販事業の柱となっているニッセンでは、2010年12月期にモバイル経由の売上高の伸び率がPCを上回る112%を記録。同社が強化しているのがスマートフォン経由での販売で、2011年度にはモバイル経由の売上の1割を占めると期待されている。
また、アパレルブランド大手のユナイテッド・アローズでは、2011年3月期のネット通販の売上比率が、全体売上の1割を突破。このうちスマートフォン経由での売上が、2010年の2~3%から、10%に高まったと報じられている。


スマートフォン経由の売上は、絶対額としてはまだ小さいものの、伸び率で見ると、PCやフィーチャーフォン経由の売上をはるかに凌駕している。アクセス解析データを見ながら、日々のマーケティング施策に知恵を捻っているショップ運営者は、だれもがそのことを肌で感じ取っているだろう。
とはいえ全体の売上額としてはまだ小さいため、将来的に重要なのはわかっていても、思い切った施策の実行に踏み切れないケースも多いのではないだろうか。現段階では、PCやケータイ経由の市場の方が圧倒的に大きく、それらに対して投資をした方が売上を拡大できるチャンスが大きいからだ。目先の利益を最大化するか、それとも将来の果実を取りにいくのか。資金も人材も時間も限られているショップ運営者にとって、この2つのバランスをどうとっていくかが、悩みの種になっているに違いない。
2010年代半ばには、携帯端末の半数以上がスマホに
しかし結論から言えば、アパレルをはじめとするBtoC型のショップにとって、ネットマーケティング全体の「スマートフォン最適化」は、待ったなしの最優先課題だ。今、スマートフォン最適化を怠ると、急増するスマートフォンユーザーを取り逃すばかりか、数年後にはビジネス全体の売上が減少する可能性すらある。
その理由は単純だ。PC&ケータイが主体となっていた個人のインターネット利用が、スマートフォン&タブレット端末へと置き換わりつつあるからだ。PC&ケータイという“旧大陸”から、スマートフォン&タブレットという“新大陸”へと、個人のネットユーザーの大移民が始まっており、この流れは止められない。むしろ今後、さらに加速していく。
このことを裏付けるデータはいくつもある。代表的なのは、スマートフォンの契約数だ。MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)とインプレスR&Dの共同調査に基づき、MCPCが行った推計では、スマートフォンの契約数は2011年3月末時点で、前年度比63%増の810万契約(個人634万契約)に達したと見られている。今後もスマートフォンは成長を続け、2016年3月末の契約数は、4712万契約(個人4164万契約)となる見通しだ。

IT市場専門調査機関のMM総研でも同様の調査を実施している。同社が2011年7月に発表した調査によれば、2015年3月末にスマートフォン契約数は6137万件となり、フィーチャーフォン(いわゆるケータイ)の契約数を逆転すると見られている。

棒グラフはピンク色がスマートフォンの契約数、灰色がケータイの契約数
折れ線グラフはスマートフォン契約比率
「スマートフォン市場規模の推移・予測(11年7月) [3]」 (株) MM総研 [ 東京・港 ]
出荷台数を見ても、スマートフォンの伸び率は著しく、この数年以内に携帯端末の主役がスマートフォンになることは間違いないだろう。携帯端末最大手のNTTドコモも、早ければ2013年にはスマートフォンの販売数がケータイを逆転すると見ている。
MCPCの推計では、個人向けのタブレット端末市場も、スマートフォン同様に2015年度には現在の5倍以上の水準まで一気に普及が進むと予測されている。タブレット端末がPCの代替機となっているのは、ネットブック市場がタブレット端末に押されて低迷していることからも示唆されている。今後はタブレット端末がスマートフォンと並んでインターネット利用の中核ツールに位置づけられていくに違いない。
そして契約数や普及台数以上に重要なのが、ユーザーが実際にどの端末でインターネットを利用しているかだろう。『インターネット白書2011』によれば、ネット利用の端末をスマートフォンと答えたユーザーが、2010年の5.3%から14.3%へと急伸している。スマートフォン&タブレット端末の普及と高性能化がさらに進めば、この数字がさらに増加することは容易に予測できる。
「WebサイトはPCで見るもの」という常識は、あと数年で時代遅れの考え方になる。インターネットは、スマートフォンやタブレット端末で利用される、という前提に立ってマーケティングを実施しなければ、流行に敏感な顧客から愛想を尽かされてしまうかもしれない。
使い勝手の悪いスマホ未対応サイトは客離れを招く
では「スマートフォン最適化」とは、具体的にどのようなことをすればいいのだろうか。その手法としては大きく分けて、「Webサイトの最適化」と「アプリの提供」の2つがある。Webメールとの連携が強いスマートフォンの普及は、ユーザーが受け取ったメールを、パソコンではなくスマホで開封する、という新たな導線を生んでいる。こういった状況からも、まずECサイトが優先すべきなのは、前者の「Webサイトの最適化」だ。
Webサイトのスマートフォン最適化とは、文字通りスマートフォンやタブレット端末のユーザーが利用しやすいようにWebサイトを新設したり、再構築したりすることだ。スマートフォンの小さな画面では、PC向けにつくられたWebサイトは縮小して表示されるため利用しづらい。それだけでなく、iPhoneなど機種によってはFlashを表示できず、ユーザーに対して重要な情報を提供できないケースも出てきてしまう。
Webサイトで何度も小さな文字や画像を読み取るためにズーム操作を求められ、ようやく目的のページにたどり着いたら、情報をうまく閲覧できなかった。このような経験をしてしまうと、たいていのユーザーは、そのサイトを再訪しなくなってしまうだろう。ある大手ショッピングモールのスマートフォン担当者は、その現状を次のように説明する。
スマホ対応していないサイトと、スマホ対応済みのサイトでは、
対応しているサイトのほうが、ユーザーの離脱率が圧倒的に低い。
商品や価格にあまり差がなければ、ユーザーはより信頼性が高く、使い勝手の良いサイトで買い物をする。スマートフォンにいち早く対応することは未対応の競合他社と差別化できるだけでなく、ユーザーの期待や信頼に応えることにもつながり、一石何鳥もの効果がある。
Webサイトの「スマホ最適化」基本のポイントとは
スマートフォン向けのサイト構築の手法については、PCやiモード向けサイトのように「これが正解」という方法論は、残念ながらまだ確立していない。他社の事例も参考にしながら、試行錯誤していく必要があるだろう。とはいえ、基本として押さえておくべき重要なポイントはいくつかあるが、重要なものを紹介しよう。
情報を詰め込みすぎないこと ―― スマートフォンの狭い画面に、あれもこれもと情報を表示させてしまっては、結局、使い勝手はあまり向上しない。またブロードバンド利用が中心のPCとは異なり、スマートフォンは回線速度の遅い3Gでの利用も多くなる。狭い画面でも見やすいように画面の表示要素をできるだけシンプルにまとめ、データ量も軽くすることが大切だ。
スマートフォンやタブレット端末は、PCとは異なり、タッチ操作が基本になるという点に留意すること ―― 一目でリンクだとわかるような表示にしたり、リンクの押し間違いがないように余白や行間を適度に設けておくのが基本だ。またケータイ向けサイトのように、何度もページ遷移が求められるサイト設計は好まれない。PC向けのサイトと同様に、できるだけ少ない操作で目的のページにたどりつけるように設計するのがいいだろう。
また、スマートフォンもタブレットも閲覧機能はPCブラウザと同機能であり、今後見込まれる更なる端末の進化を考えると、スマホ・タブレット向けサイトの構築は、ケータイ向けサイトをベースに構築するよりも、PC向けサイトをべースにすることが望ましいという点は留意しておきたい。
さらに、アパレル関連ショップならではの注意点もある。「色の再現性」の問題だ。スマートフォンの場合、機種によっては色の再現性がPCに比べてかなり劣るものがあるのだ。昨今のPCでは1600万色を表現できるが、スマートフォンでは26万色や6万5000色しか表現できない機種もあるためだ。そのため、「画面で見た色のイメージと違う」ということでスマートフォンからの注文で返品が増えたという報告もある。色合いが重要な購入ポイントになる商品は、PC画面での色の確認を促す注意書きを入れるなどの工夫が必要かもしれない。
いずれにせよ、スマートフォン最適化の「正解」にたどりつくための近道は、早期に対応を進め、アクセス解析データを蓄積・分析しながらPDCAのサイクルを回していくしかない。データを分析している間にも、スマートフォンユーザーはどんどん増えていくわけだから、Webのスマートフォン対応は早ければ早いにこしたことはないだろう。
数年後に、PCやフィーチャーフォンを基本にしていたWebマーケティング戦略に、スマートフォンが重要な要素として加わってくるのは、ほぼ確実だろう。そのときに成長し続けるショップでいるためにも、遅くとも今から半年以内には、スマートフォン対応に取り組んでおきたい。
大手ECサイトが参加するアフィリエイトネットワークであるリンクシェア・ジャパン(リンクシェア)では、こういった市場環境の変化へ対応するため、いつくか対策を講じている。
1つがネットワークに参加するECサイトに対し、迅速なスマートフォン対応の促進を行っている点だ。米国に本社を持つリンクシェアでは、昨年半ばより米国でスマートフォンコマースが急拡大していることをキャッチ。2011年2月、5月と実施したイベントではこういった先進事例を紹介し、大いにECサイトの注目を浴びた。
そういった反響を受け、リンクシェアでは、同社のアフィリエイトネットワークに参加しているECサイトやアフィリエイトサイトのスマホ対応の状況やスマホ経由の売上実態を独自に調査した。その結果によると、2011年5月から7月のわずか2か月で、スマートフォン経由の流通額が2倍に膨れ上がったことが確認されている。

リンクシェアでは、日々変わる環境と、実際のアフィリエイトネットワーク上での動向を捉え、その最新情報を顧客に提供しスマートフォン最適化の推進を心がけている。
もう一点が、すでにスマートフォン対応しているECサイトに、スマホを活用した新たな選択肢を提供している点だ。リンクシェアは日本でいち早くスマートフォンアプリにアドネットワークを展開した企業である。当初iPhoneアプリのみ対応していた状況から、2011年3月にはAndroidアプリに対応。そしてこの9月にはスマートフォンのブラウザで閲覧した場合にもアドネットワークが表示できるよう対応を完了した。
これにより、スマートフォン対応をしたECサイトには、アフィリエイトだけではない新たな顧客を誘導する導線を提供できるようになっている。
この先、確実に拡大が見込まれるスマートフォン市場。対応には当然それなりのコストとリソース投下が欠かせないが、競合に先行して対応することにより、このように新たな商機を得ることもできるということを考えると、決して高い買い物ではないといえるだろう。
リンクシェアについて
「リンクシェア」は、リンクシェア・ジャパン株式会社の運営するASP(アフィリエイトサービス事業者)で、2001年4月から日本国内でアフィリエイトサービスを提供している老舗。EC関連の広告主を中心に、パフォーマンスベースのオンラインマーケティングサービスを提供している。2010年5月には株式会社トラフィックゲートと合併し、アフィリエイト・サービス事業者としては国内最大規模となった。
- URL: http://www.linkshare.ne.jp/ [4]
- Twitter: @linksharejapan [5]
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