このコラムは、Web担当者Forumと「日経ネットマーケティング」「Markezine」各誌の編集長が、毎回共通のテーマでネットマーケティングを語るコーナーです。
第8回のテーマは「グーグルのPageRank格下げ問題、どう見る?」です。
他誌編集長のコラムも同時に公開されていますので、併せてご覧ください。
- グーグルの「ペナルティ規定」にはより一層の説明責任が求められる(日経ネットマーケティング)
- ブログとTwitterで世界中に広まった「GoogleのPay Per Post問題」の今後(Markezine)
- グーグル日本のページランク低下の件を語るならこれくらい理解しておこうよ ~Web担/日経BP/MarkeZine連動コラム(Web担当者Forum)(この記事)
連動コラム、今回のお題は「グーグル日本が自社サービスの宣伝にブロガープロモーションを利用したことを、日本のブロガーさんが指摘して、それを米グーグルのマット・カッツが知って、google.co.jpドメイン名のページランクが5に引き下げられて、日本のグーグルがあわてて謝罪(でも一般の人には意味不明)した」という件について。
詳細は、スラッシュドットで取り上げられた記事などで確認できますので、初耳な人はそちらをご覧ください(こちらにはもう少し多い情報も)。
ペイパーポストの是非とリンク/PageRank問題は別
さて、この件はいろんな人がいろんなことを言っていますが、一番の混乱が、
- ブロガープロモーション(ペイパーポスト)のサービスの是非
- 有料リンクの是非
がごっちゃになっていること。それぞれ分けて考えましょう。
ペイパーポストの是非
ブロガーが企業から報酬を得たり便宜を図ってもらったりして、その企業の商品やサービスに関する記事を書くことは悪いのでしょうか?
別にまったく悪くないですよね。ただし、それは提灯記事(広告)だということが、そのブログの読者にわかるようにすることが大前提です。なぜ読者にわからなければいけないか? そうしないと際限なくステルスマーケティングがはびこり、いつか不信感が拡がり、広告効果が下がっていくからです。
だから、ブロガープロモーションに参加して書くブログ記事には、「○○サービスに参加しています」といったあいまいな表現ではなく、「この記事は株式会社△△の広告として書いた記事です」、明示すべきなのです。
テレビでは「この記事は株式会社△△の提供でおおくりしました」といった表現もアリかもしれませんが、それはテレビが広告が大前提のプロフェッショナルメディアだから。広告ではない個人の記事が大前提のブログという場では、可能な限り明確にしたいところです。
有料リンクの是非
ペイパーポストであれ、メディアサイトの広告であれ、リンクを購入する行為は、検索エンジンが禁止している事項です。
なぜNGなのかは、渡辺隆広氏の解説あたりを参考にしてください。グーグルは有料リンクを Google に報告する必要がある理由で有料リンクを明示的にNGとしていますし、ヤフーも英語のヘルプでは検索エンジンでの順位を人為的に向上させる手法を使うページをスパムとみなすとしています。
では、ブロガープロモーションで記事にリンクを含めることを条件にしている案件がありますが、これは問題なのでしょうか?
答は簡単。だれのためのリンクなのかです。
SEOのためであればNGとなります。当然ですね。検索エンジンのガイドラインに違反しているのですから。
そのブログを訪れる人のためのリンクならば問題ありません。
でも、それならば検索順位に影響を与えないように「rel="nofollow"」をリンクに付けなきゃいけません。そうじゃないと、検索エンジンからSEOスパムではないかと勘違いされてスパム扱いされてしまいますからね。だって、訪問者のためのリンクなら「rel="nofollow"」でも問題ないですよね?
(ブログサービスによってはリンクの属性を指定できない場合もあるという問題は残りますが)
ということで、ペイパーポストでは、
- SEO目的ではなくブロガーさんやブログの読者に情報を伝えることを目的とする
そのうえで、
- 広告であることが明確にわかるようにブログ記事に記述する――クチコミ系広告の倫理
- リンクには「rel="nofollow"」を付ける――検索エンジンのガイドライン
とするのが、今の世の中では適切(というか無難)ですね。
リスクを理解したうえで危ない橋を渡りたい人は止めませんけれども、営業の現場では「リンクが増えれば検索エンジンで順位が上がりますよ」とか言うなら、そのリスクも併せて説明すべきですよね(ペイパーポストのサービス提供社側が「そんな検索エンジンのガイドラインがあるなんて知らなかった」とか言ってるのは論外)。
まぁ、こういうのも含めて業界のガイドラインができればいいので、日本でクチコミマーケティングの業界団体ができて、しっかりと認識が共有されたガイドラインができるのがいいですよね。
実はおかしい日本グーグルのPR低下
ところで、今回はブログサービスを利用した日本グーグルのPageRankが下げられたのですが、実はこれ、少しおかしなことなんです。
というのも、有料リンクが原因でリンク先サイトの評価が下げられるなら、私が500万円ぐらい使って日経ネットマーケティングとMarkeZineをリンク先にしたブロガープロモーションをモーレツに展開して、それがグーグルにバレるようにすれば、競合のサイトを検索結果から蹴落とせるからです。
通常は、ペイパーポストがバレて評価が落とされるのは、ブロガーのサイトのほうなのです。なのに、リンク先の評価が下がっているのは変だな、と。まぁ、今回は身内がやったことで、しかも本人が白状しちゃったのですから、適切な対応なのですが。
でも、「ペイパーポストがなければ本来ならば存在しなかったはずのリンク」を張ったページの評価をそのままというのも、グーグルの主張からするとおかしな話ですね。
そうなると、「英語圏では周知が広がってきたけど、日本ではまだペイパーポストが多いな、ここで一発見せしめを作るか」というグーグルの陰謀説も意外と……。
TBPRも即座に反映されてるじゃん
あとですね、Googleツールバーなどで表示されるページランク表示は「TBPR(ツールバーページランク)」と呼ばれ、いわゆるPageRankとはまた違うものだといわれていました。その理由は、
- TBPRは実際のPageRankではなく、古い情報が表示されている。
- 実際にグーグルが検索結果の順位付けに使っている情報はPageRank以外にも山ほどあって、「PageRankが高い」ことが「検索順位が高い」ことに直結しない。
というものでした。でも、今回は発表があってすぐにgoogle.co.jpのTBPRが下がっていました。以前に海外で有料リンクが取り締まられたときもそうでしたね。ということで、1つ目の「TBPRの情報は古いから役に立たない」というのは、今はちょっと違う感じですね。
とはいえ、2つ目の理由のほうが「TBPRは役に立たない」の理由としては大きいので、やはりTBPRは参考程度にしておくのがよさそうです。
ちなみに今回の件は、アジアジンという、日本/アジアのウェブ関連の情報を英語で伝えるサイトが、英語圏に情報を伝えるハブとなったようです。それを有名ブログのTechCrunchが伝えて、Twitterで広がって、マット・カッツに伝わったといわれています。逆にいえば、日本でどれだけ騒ぎになっても、アジアジンがなければ英語圏には伝わらなかった可能性が。すごいですね、アジアジン。
3誌連動のこのコーナー、各誌の「書くの大変なんだよね」という声から、どうも打ち切りになる可能性が……。
もし、「いや、ぼくは読みたいんだよ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ励ましのメールを。特に反響がなければ、さらっと打ち切りまたは不定期掲載にしちゃう予定です。
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