今から語るやり口には、僕の知る限りまだ名前がついていない。そこで、僕はそれを「ソーシャルメディア汚染」(SMP:Social Media Poisoning)と名付けてみた。その手口というのは、競争相手のドメインを騙って、スパムっぽいコメント、投稿、リンクを積極的に投じ、ブロガーやソーシャルメディアの投稿者、あるいはフォーラムの運営者とかジャーナリストなどが、そのブランドに対して否定的な見方をするように仕向けるというもの。
僕は今日初めて、SMPに関する相談を持ちかけられたんだ。それは、ある企業がソーシャルメディアマーケティング(SMM)を逆手に取って、競合相手に攻撃を仕掛けたいという話。もちろん、その会社がどこかという話はできないし、僕はそんな戦術に絶対手を出すなってアドバイスしたからね。個人的な意見だけど、SMPに手を染めれば、攻撃対象のブランドよりも攻撃を仕掛けた自分のブランドの方に、より大きな危険性をもたらしてしまうからだ。
悪玉のSMM屋が手がけそうなやり方を見てみよう。
- Techcrunch、GigaOm、MattCuttsなど、大手のブログにスパムコメントを投稿する(余談だけど、Techcrunchにスパムを投稿すると、主宰のArrington氏は二度とその投稿者のサイトに言及しないそうだ)。
- フォーラムで程度の低い発言を行い、問題のブランドやウェブサイトがフォーラム荒しを雇ったように見せかける。
- 有名ブロガーや報道関係者などにメールしたり、時には電話までかけて、明らかに拒否されるような「やらせまがい」のキャンペーンを持ちかける(後に残るのは悪い印象だ)。
- reddit、Digg、Netscapeなどのサイトで登録を繰り返し、これらサイトの管理者に、攻撃対象のサイトに対する悪印象を与える。このやり口は、露骨な手法(同一IPでDiggのアカウントを50個取得するとかね)と組み合わせると最も効果的だ。
- 攻撃対象にしている相手の同業者に偽のメールを送り、有料リンクや相互リンクを持ちかけたり、ひどく悪い態度でリンクを乞うようなことも行う。
おそらくSMPの手口には、これら以外にも胸くそが悪くなるような手法がたくさんあるだろう。上に挙げたのは、僕が直接聞いた(あるいは、話の内容から推察した)ものだけだ。
もちろん、こういった手口を公開したのは、競合相手にSMPを仕掛けろとけしかけるためじゃない。ブログ、フォーラム、ソーシャルメディアサイトの運営者に対して、あるドメインが自分のサイトにスパム攻撃を仕掛けているように見えても、実際にそのドメインの仕業だとは限らないことを理解してもらいたいからだ。ソーシャルメディアにおいて、みんなを敵に回すような行為をしでかすと、どれほど反発を招くか考えれば、競合相手を蹴落とすために、怒れるブロガーやサイトオーナーの心理を逆手に利用できるぞと、悪党どもが思いつくのは時間の問題に過ぎなかったんだ。
こうしたSMPに関わったり(もちろん、仕掛けられた側としてだよ)、どっかの企業がSMPの対象になっているのを目にしたことのある人はいるだろうか? ここ2か月ほどの間に僕が受け取ったブログ関連のメールの中に、何通かちょっと怪しいメールがあるんだけど(疑わしいメールが、実は違うドメインから来たんじゃないかと気付いたときには、例の「アハ!」体験ができたよ)、これだと指摘できる根拠がないんだ。
とにかく、ソーシャルメディア関係者はSMPなどに決して手を出さないよう、強く勧める。IPアドレスの追跡、メール配送経路の特定、不正行為検出といった調査力と、プラットフォームを通じてお互いに結びついている人たちの社会の前で、SMPを仕掛けたとばれることは非常に危険だ。これは想像するほかないが、正体がばれたときに受ける反発は、競合相手に与えようとしていた打撃の10倍もひどいものになるだろう。そんな手法を検討するより、生産的なコンテンツとか、リンクを増やす施策とか、あるいは参加型のソーシャルメディアマーケティングとか、何か着手できることはないんだろうか? SMPなんかよりも、別のことに時間を割こうよと言いたいね。
それから、ブロガー、サイト所有者、ソーシャルメディアの運営者たちには、用心しろと言っておこう。スパム攻撃を仕掛けてきているとあなたが思っているサイトは、完全に潔白なのかもしれない。必ず自分で調査してみることだ。
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