デジマ4つのマイルール

7500種類以上のチョコレートを食べて気づいた仕事の流儀! 東洋経済のマーケターが語る「隠れた強みの見つけ方」

デジマのキャリアを掘り下げる連載。今回は東洋経済新報社のマーケティング担当の荒木氏に、仕事のマイルールを聞いた。

「自分たちの強みは、中から見ると意外にわからない」
ごく当たり前だと思っていることに、自分たちの強みが隠れていることがある。

東洋経済新報社でマーケティングを担当している荒木氏がそう気づいたのは、趣味のチョコレートを探求していたときのことだった。

その気づきを生かして荒木氏が取り組んだのは、『週刊東洋経済』の読者と編集者との接点づくりだ。その取り組みがペルソナの明確化につながり、編集者が特集を考えるときにも役立っている。そんな荒木氏に、キャリアや仕事に関する4つのマイルールについて聞いた。

株式会社東洋経済新報社 デジタルメディア局 マーケティング部 荒木千衣氏

食べたチョコレートは7500種類以上!

荒木氏の4つのマイルール

ルール1趣味を充実させて、仕事にのめり込みすぎない

荒木氏はひとつのことにのめり込むタイプだ。幼い頃は気になったものを追いかけてすぐどこかに行ってしまい、迷子センターの常連だった。仕事でもその姿勢は変わらず、担当の仕事だけでなく「あれもやった方がいい、これもやりたい」と自ら仕事を増やしすぎ、体調が追いつかなくなり休職したこともある。

仕事で気になることがあると土日も考え続けてしまい、夢まで見たりするんです。でも猪突猛進型なので、どうしてもそれがやめられないんです。だから、強制的に仕事のことを考えない時間を作るしかない。何か趣味を作ろうと思いました(荒木氏)

趣味にするなら、長く続けても苦にならないような好きなものにしよう。そう考えた荒木氏が選んだのは「チョコレート」だった。

チョコレートなら季節を問わずに手に入り、コンビニやスーパーはもちろん百貨店やチョコレート専門店もあるし、旅先でも続けられる。チョコレートなら長く続けられそうだと思いました。検討したタイミングで「何かを究めるなら1年で1000種類くらい知ると世界が変わる」とアドバイスを受け、毎日3種類のチョコレートを食べることを決め、「毎日チョコレート生活」というブログを書きはじめました(荒木氏)

荒木氏のブログ「毎日チョコレート生活」

チョコレート生活を1カ月ほど続けると、コンビニやスーパーなどで気軽に手に入るチョコレートはほぼ制覇してしまった。荒木氏は食べたことのないチョコレートを求めて百貨店に行くようになり、情報収集のためにチョコレートの情報を発信しているSNSアカウントをフォローするようになる。

チョコレートにとても詳しい人がたくさんいることがわかり、思っていたより奥が深そうだと感じました。そして、毎週のように新商品が出てくるコンビニの商品の移り変わりの早さに驚き、物流が発達しているからこそ実現できるのだと思いました(荒木氏)

現在、荒木氏の毎日チョコレート生活は8年目に突入し、食べたチョコレートは7500種類を超えた。SNSで発信を続けていたら、ラジオやテレビ、雑誌などの出演依頼が来るようになり、今ではチョコレートの専門家としても活躍している。仕事を離れるために始めた趣味が仕事になったというのも猪突猛進型の荒木氏らしい。7年以上、毎日チョコレートを食べてブログにアップし続けられる秘訣について聞いてみた。

仕組み化したことだと思います。「この日は会食だから投稿が難しそう」という日はあらかじめ予約投稿しています。どんな構図の写真を載せるかというフォーマットを決めて、チョコレートを撮影する時間も決めておくんです。まずやれることをやってみてから、軌道修正していく。人と比べすぎず、人からの評価に揺るがないよう、自分が納得することを大切にしています(荒木氏)

毎日チョコレート生活は8年目。チョコレートの奥深さを語る荒木氏。

チョコレートの作り手に会って気づいた「自分たちの魅力」

ルール2雑誌が売れにくい時代だからこそ、売上以外の良さも大事にする

チョコレートの活動を通じて、作り手に話を聞く機会が増えた荒木氏は気づいたことがあった。

衛生管理や流通など関係者からすると当たり前でも、外部から見るとすごいことがたくさんあることに気づいたんです。「その工夫をもっとお客様に伝えたらいいのに!」と感じました。そして、自分たちの仕事でも同じことが起きているんじゃないかと思いました(荒木氏)

そこで荒木氏が取り組んだのが「読モ」という仕組みだ。『週刊東洋経済』を定期購読している読者から希望者を募り、読者モデルと読者モニターを兼ねた存在になってもらう。毎年6人ほどの読モを選び、期間中は毎週誌面に関する詳しいアンケートに回答してもらい、編集部のメンバーと顔を合わせる機会も作った。

『週刊東洋経済』の「読モ」募集チラシ

雑誌が売れにくいといわれる時代です。営利企業なので売上はもちろん大事ですが、編集部がこだわって誌面を作っているのをずっと見てきました。だから、改めて編集部のメンバーに『週刊東洋経済』の良さを伝えられないかと思ったんです。お金を出して雑誌を買ってくださる読者の声なら、作り手に響くと考えました。私もアンケートを読んで、気づきを得ることが多々あります(荒木氏)

荒木氏が新卒で東洋経済新報社に入社した理由は、大学生の頃に『週刊東洋経済』を読んで面白いと思ったからだった。自身もファンであるからこそ、その良さを読者からの声として編集部のメンバーに実感してもらいたいと考えたのだ。読モの取り組みをはじめて4期目となり、編集部のメンバーにも変化が現れているという。

雑誌のペルソナは大まかに決まっていますが、編集部員が思い浮かべるペルソナは一人ひとり違っていたと思うんです。最近では「この企画は〇〇さんを思い浮かべながら考えた」という話を聞くようになり、ペルソナがより明確になったのを感じます。読モとのミーティングに積極的に参加する編集者も多く、雑誌制作の裏話を話したりして親睦を深めています。「この特集を読んで転職を決めました」などの声を聞くこともあり、そんな影響まであったのかと私自身も驚いています(荒木氏)

読モからの意見は、マーケターである荒木氏自身にも役立っている。

『週刊東洋経済』を知ったきっかけを聞いてみると、一番多いのは書店で見かけたという意見なんです。書店が重要な場所であることを再確認できました。そして、先輩が読んでいたというケースも多く、人から人への紹介も有効だという気づきも得ました。毎週届くアンケートを読みながら、読者の方がとても深く読み込んでくれていると感じます。『週刊東洋経済』への期待と愛を感じ、感動しています(荒木氏)

これまでのキャリア

交渉が上手くいかなかったときに救ってくれた1冊

ルール3 得意分野は人それぞれ違うから、役割分担が大事

周囲には優秀な人がたくさんいます。「自分はなんでこんなにできないんだろう」と落ち込むこともありますが、自分と人は違う。その人のいいところをうまく取り入れられないか、その人の得意なところ以外で、自分の得意を伸ばそうと考えるようにしています(荒木氏)

人それぞれに役割があり、考え方も違う。荒木氏がそう考えるようになったのは、大手ネット書店の担当になったときの出来事が影響している。それまで、リアルの書店とはスムーズに進んでいた契約条件のすり合わせが、大手ネット書店とはなかなかうまくいかなかったのだ。交渉に悩んだ荒木氏は『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中』(東洋経済新報社)という本を手に取った。

本の冒頭に「交渉はお互いが自分の利益を求めて行うので、互いの利益がずれることもある」と書いてありました。その一節を読んだときに「だからうまくいかないのか」と納得したんです。リアル書店さんとは「この本を多くの読者に届けたい、売上を伸ばしたい」というベクトルが一致していました。でも、ネット書店にとって、当社の刊行物は数ある商品のひとつでしかないんだと気づいたんです(荒木氏)

相手が何を利益だと思うかを理解したら、後はお互いにどこまで譲れるかを調整すればいい。荒木氏がそう考えるようになると、交渉はスムーズに進んだ。この経験で荒木氏が学んだのは「人は人、自分は自分であり、それぞれに考えや利害がある」ということだった。その考えはリーダーとなった今、チームビルディングにも反映されている。

それぞれが得意な分野を生かせば質の高い仕事ができ、早く仕事も終わります。そして、私は天才的なアイデアを出せるわけでもなく、ワンマンなリーダーでもありません。私にできるのは、みんなが気持ちよく働ける雰囲気づくりをすること。だから、つらいことや大変なことはみんなで分け合って、楽しいことは一緒に喜べるようなチームでありたいと思っています(荒木氏)

自社の本を読んで、悩みが解決したという。

やってみるかマインドで、どんどん世界を広げていく

ルール4 つべこべ言わず、最初の一歩を踏み出す

荒木氏は書店営業からキャリアをスタートし、現在は東洋経済ストアとサイトの運営やメルマガの配信も行う。現在の業務を任されたときは、必要となるHTMLやWebデザインの知識はまったくなかった。

楽観的な性格なので、新しい仕事を任されたら「まぁ、やってみるか」という気持ちでのぞんでいます。まずはやってみて、わからないことは聞いてみようというスタンスです(荒木氏)

Webサイトを任されたとき、何かの役に立つのではないかと色彩検定の資格を取得した。色について学んだことで、書籍の装丁を見たときに「この色合いは補色の関係性だからバランスがいいな」などと気づくようになり、意外と他の仕事にも役立つと感じたという。

HTMLはそこまで詳しくないのですが、今は知識がなくても使いやすいツールもあるので、意外と何とかなります。これまでも新しいことを任されたときは、つべこべ言わずにまずは一歩を踏み出すようにしてきました。その結果、仕事の幅が広がり、自分の世界も広がった気がしています(荒木氏)

一歩を踏み出すフットワークは仕事だけに限らない。チョコレートを学んだことで、おいしいショコラティエが多いフランスに興味がわいた荒木氏は、プライベートではフランス語を勉強し始めた。そんな風に軽やかに最初の一歩を踏み出していく荒木氏の世界は、これからも広がっていくのだろう。

フランス語の語学書とチョコレート
荒木氏の4つのマイルール(再掲)
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