デジマ4つのマイルール

若手時代の「失敗したくない」を乗り越えた瞬間―チュチュアンナのデジマ担当に聞く「挑戦の転機」

デジマのキャリアを掘り下げる連載。今回は、チュチュアンナのデジマ担当・坂本氏に注目。慎重派からの脱却法とは?

マーケティングにおいて、PDCAを回し続けてトライ&エラーを続けていくことは定石といえる。つまり、失敗を恐れずに試行錯誤を続けていく胆力が必要になるが、失敗することを不安に感じるマーケターもいるのではないだろうか。

靴下やインナーをはじめとするファッションアイテムを展開する「チュチュアンナ」。同社のデジタルマーケティング担当・坂本氏も、かつてはその一人だった。リスクヘッジを重視し、失敗を避けるあまり慎重に物事を進める傾向があり、施策の計画に時間をかけすぎてしまうこともあったという。そんな坂本氏が、ある出来事をきっかけに失敗を恐れず、スピーディーにPDCAを回せるようになった背景には何があったのか。これまでのキャリアの歩みとマイルールについて伺った。

株式会社チュチュアンナ デジタルマーケティング部 マネジャー 坂本 小津江さん

見下されてないか心配だったSV時代

坂本氏のマイルール

ルール1 違う視点から自分の仕事を見る

坂本氏は新卒でチュチュアンナに入社し、販売職からキャリアをスタートした。店舗で販売スタッフとして働いた3カ月後には、坂本氏は複数店舗の店長をマネジメントするエリアマネジャーとなった。一般的には店長などを経験した後に任されることが多いが、当時チュチュアンナは急拡大の真っ只中にあり、新卒もすぐにエリアマネジャーに配属されたのだ。

マネジメントする店長は私よりもはるかに経験があり、年齢も上の人ばかりです。私も早く知識を身につけて何か指示したり、提案したりできるようにならないと、役に立たないエリアマネジャーだと見下されてしまうのではないかと必死でした(坂本氏)

エリアマネジャーになって半年間、必死に仕事をしていた坂本氏は新しいチームが新設されることになり、違う役割を任されることになった。販売スタッフの採用活動など店舗運営をフォローする業務を任され、本社で内勤で働くようになった。すると、同じ部署にいた他のエリアマネジャーの様子を目の当たりにする機会が増えた。そこで気づいたことがあったという。

エリアマネジャーが店長と電話で話している様子を聞いていて、『あの言い方ではきっと伝わらないだろうな。もう少し言い方を変えるだけで伝わりやすくなるのに』と感じて、当時の自分も同じように店長に接していたんだと気づきました。これがきっかけで、自分の視野が狭くなりすぎていたと気づけたんです。俯瞰的な視野を持つことの大切さを実感しました(坂本氏)

さらに、内勤をするようになったことで、会社の仕組みや事情が理解できるようになった。新卒で入社して、すぐに現場の仕事をしていたためにわかっていないことが多かったのだ。その後、坂本氏はSV(スーパーバイザー)の仕事を任された。SVはエリアマネジャーの上のポジションにあたり、エリアマネジャーよりも多くの店舗を担当する。

エリアマネジャー時代は、店長たちに見くびられないようにしたいと思って、どんどん新しいことを提案していたのですが、まずは店長たちと一緒に考える寄り添い型のマネジメントスタイルに変わりました。店長から意見や提案があったときは、しっかりと聞き、もし実現が難しい場合には、実現ができない理由をきちんと説明することを心がけました。マネジメントスタイルを変えてからのほうが、店長とのコミュニケーションが円滑になったと思います(坂本氏)

これまでのキャリア

CRM…なにそれ? 育休を経てデジマへ配属

ルール2 PDCAの「P」に時間をかけすぎず、スピード感を大切に

坂本氏はエリアマネージャーやSVとして8年ほど働いた後、産休・育休を取得して、その間に2人の子どもを出産した。職場復帰をしたときに配属されたのはマーケティングの部署だった。

復帰前に上司と電話で話したときに、『店舗のお客様をよく知っている店舗経験のあるあなたに、CRMを任せたい』と言われました。私はCRMという言葉を聞いたのが初めてだったくらい、マーケティングの知識がない状態でした。復帰してみると、ユーザーシナリオ、カスタマージャーニーなど未知の言葉が飛び交っていて、異世界に来たような感覚になりました(坂本氏)

店舗営業職からマーケティング職への部署異動だったため、キャッチアップすべきことは多い。商談や会議に出て、わからない言葉をメモしては後で検索し、それでもわからない場合は本を読んで学んだ。そして、坂本氏はマーケティング担当になってある壁に直面した。それは元来の慎重な性格がPDCAのスピードを落としてしまうことだった。

幼い頃から「失敗したくない」という性格で、高校・大学受験も合格圏内を受けていました(笑)。そんな性格も影響して、PDCAの「P」の段階に非常に多くの時間を費やしていました。
施策を決める際には、どんな効果が期待できるかを考えるのと同時に、どんな問題が起こり得るか、リスクを徹底的に掘り下げてしまいます。たとえば、季節商品のプロモーションを行った際には、計画の立案に時間をかけすぎて、実行に移した頃には販売のピークを逃してしまったこともありました。
マーケティングの世界はスピード感も欠かせません。最先端のプロモーションを行ったとしても、準備に時間をかけすぎると他社に先を越されてしまいます。そんな中で、自分の仕事の進め方が時代の流れに合っていないと痛感しました(坂本氏)

そんな坂本氏が仕事のスタイルを変えるきっかけになったのは、今までの常識が一気に通用しなくなってしまったコロナ禍だった。

ちょうど春になる前だったので、パンプス用の靴下やストッキングのプロモーションを予定していました。しかし、コロナ禍になって外出どころではない状況になり、世間では『おうち時間』というワードが盛り上がっていました。すぐ先も見えない中でしたが、商品を売ることを考えて動いていくしかありません。とにかく思いついたことを試して、他社より早く取り組むしかないと思いました。そこで、おうち時間を楽しめる商品としてルームウェアに着目し、すぐにインフルエンサーさんに依頼して、自宅で着用写真を自撮りしてもらいました。それをそのままコンテンツとしてアップしたのです(坂本氏)

他社に先駆けてルームウェアのプロモーションを実施できたことで、売り上げは好調な伸びを見せた。この体験によって、坂本氏はPDCAの「P」に時間をかけすぎないことを心がけるようになった。

考えてみたら、店舗と比較したらECの施策はPDCAがとても簡単なんです。店舗なら売り場のレイアウトを変えようと思ったら、閉店後に何日もかけて変える必要があります。でも、ECサイトなら簡単に変更できますし、やってみてダメなら次はこっちを試してみようくらいの気持ちでちょうどいいんだと身をもってわかりました(坂本氏)

デジタルマーケティング部の会議風景​​​​​

ルール3デジタル戦略はお客様と現場の視点を重視

坂本氏は、デジタル施策を推進する際には店舗のお客様や店長、販売スタッフの意見を実際に聞くことを重視している。

お客様のアンケートやユーザーインタビューの機会を多く持つようにしています。現場の店長・販売スタッフの声も大事にするのは、接客でアプリやオンラインストアを活用してくれているからです。アプリ内にあるお客様の会員証をお会計で提示してもらっていますし、店舗に在庫がないときはオンラインストアの在庫をアプリで確認するなどしているので、スタッフの意見も積極的に聞いています(坂本氏)

年間の購入金額が高い顧客を対象にしたユーザーインタビューでは、マーケティング戦略としても大きな気づきがあった。

購入金額が高いお客様は、チュチュアンナのさまざまな商品が好きなのではなく、『この商品を何年もひたすら買っています』とおっしゃる方が多かったんです。ひとつのアイテムを熱狂的に愛してくださっていました。そこで、リピート購入が多い商品を購入いただいたお客様に対して、さらに購入いただけるようにアプリ上でアプローチしたり、まとめ売りのキャンペーンを行ったりもしています(坂本氏)

「感動タイツ」はリピート購入が多い商品

自分が仕事する姿は大変そう?

ルール4ポジティブに働く姿を子どもに見せる

マーケティング部に異動したときには幼かった坂本氏の子どもたちは、現在小学校3年生と1年生になった。ワーキングマザーとして働く中で、坂本氏には大事にしていることがある。

仕事が忙しいときは、家庭に仕事を持ち込むこともあります。そんなときには、いやいや仕事をするのではなく楽しんで仕事をしている姿を見せたいと思うんです。うちの子どもは二人とも女の子です。『お母さんが働いていて大変そうだった』というイメージがあったら、将来大人になったときに仕事をするという選択肢をもたなくなってしまうかもしれません。子どもにとって、なるべく自分がネガティブな要素にならないようにしたいと思っています(坂本氏)

リモートで働く機会も増えている

そんな風に思うようになったきっかけは、子どもたちが物心つく前に、坂本氏自身が仕事と家庭の両立に悩んだことがあるからだ。職場復帰したものの、幼い子どもたちが体調を崩すことが多く、職場に行けないことが続いた。

なぜ私だけが大変な思いをしなきゃいけないのだろうと、ネガティブな気持ちになったこともありました。会社に対しては休んで申し訳ない気持ちになり、子育てがなかったらもっと仕事ができるのにと思ったこともあります。でも、そんな感じで働いていると、きっと子どもたちにも伝わってしまうなと思ったんです。だから、子どもたちが『お母さんは自分たちのために楽しんで働いているんだ』と思ってもらえるように振舞っているつもりです。その結果、おのずと自分の考え方や話す事もポジティブになっているように思います(坂本氏)

坂本氏のマイルール(再掲)
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