組み合わせは何通り? 5種類から2種類選ぶ時の計算方法・余事象の使い方
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
この記事を読むべき人:組み合わせをすぐに算出できない方
この記事を読む必要がない人:順列・組み合わせの基本をすぐに算出できる方
この記事でわかること:組み合わせ、積の法則、和の法則、余事象
5種類のアクリルスタンドのうち2種類もらえるとき、組み合わせは何通り?
今度のイベントで、イベントキャラクターのアクリルスタンドを5種類用意して来場者にプレゼントします。1人につき2種類もらえるようにする予定です。
なるほど、アクスタいいんじゃないかな。2種類もらえるということは10通りのもらい方があるということか。これくらいバリエーションがあるとおもしろそうだね。
10通りですか!
(なに!? どうやって数えたの? 前回、覚えた順列の計算だと10通りにならないし、何が違うんだ?)
アクスタの写真をSNSとかにアップしてもらうキャンペーンと組み合わせてもいいかも。そういう撮影できそうな場所も用意して……。
(10通り……どうやって?)
あれアユムさん、話し聞いている??
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているモリさん。
モリさん! 先輩が、よくわからない方法で数えました!
アユムさんの質問もよくわからないですが、一体何が起きましたか。
5種類のアクスタから2種類選ぶのですが、その組み合わせのパターン数をささっと数えられるようになりたいです。
なるほど。では早速、数えていきましょう。
まずは樹形図を書こう
前回、順列を学びましたね。順列は順番があるものの場合の数を計算する方法でした。
はい、バッチリ覚えてます。
今回のアクスタは、順番はありますか?
いえ、順番は関係ないです。
それでは、アクスタをA、B、C、D、Eとおきましょうか。まず、樹形図をかきましょう。
はい! Aをもらった場合、残りはB、C、D、E の4通りですね! ということは、5×4=20通りではありませんか? あれ? 先輩の出した答えのちょうど2倍になっちゃってますね。
整理してみましょう。それでは、今の考えで樹形図の続きをかいてみましょうか。
では、Bをもらった場合についてかいてみますね。
A、Bの組み合わせ、ダブってませんか?
確かに! これは、同じ組み合わせですね。
ということは、ダブりなくC、Dと樹形図にするとこんな感じですね。あ、先輩の言う通り、全部で10通り!
はい、その通りです!
組み合わせの公式を使って求めてみよう
これをさささーと計算できるようになりたいです。
そういうときは、公式を使いましょうか。
まず、組み合わせの公式は、
𝑛C𝑟とし、 𝑛𝑃𝑟 𝑟! で求めます。
これは、𝑛個から𝑟個の個数を選ぶということです。
5種類のアクスタから2種類もらう場合、5C2とあらわします。
Cは何の略ですか?
コンビネーション(combination)、日本語に訳すと「組み合わせ」、そのまんまですね。
どういう計算をするんですか?
ざっくりいうと、分子は、𝑛から大きい順に数字を𝑟個かける。この例では、5から大きい順に数字を2個かけます(5×4)。これが𝑛𝑃𝑟です。
分母は、𝑟から1までの数字を掛け合わせる。この例では、2から大きい順に数字を2個かけています(2×1)。これが階乗です。
どうしてこうなるんですか?
5つから順番に2つをとる場合は、順列の公式を使って5𝑃2。よって5×4=20です。
樹形図にかくとこんな感じですよね。
2つのものの並び方は、2通りですね。例えば、ABの並び方は、ABかBAしかありませんね。これを「2!(2の階乗)といいます」。
「!」ビックリするんですか?
いえ、これは「階乗(かいじょう)」といって、𝑟! のとき𝑟の数から大きい順に1までかけていくことを表しています。
ビックリして1まで掛け算しながら走り抜けてしまったイメージですね!
(? まあいいか)公式にあるように、順列の計算で出る場合の数を、選ぶ個数(𝑟)の階乗で割ることで、組み合わせのパターンの計算になるのです。
なので今回の場合、順列で5つから2つ取り出した5𝑃2を、2つの階乗で割ります。
5C2= 5𝑃2 2! となり、計算すると 5×4 2×1 =10となります。
なんかクラクラしてきました。
別の問題で、この計算を練習しましょうか。イベントの設営にはアユムさんの同期7人から3人お手伝いが必要と聞きましたが、選び方は何通りですか?
これは順番がないので組み合わせの問題ですね?
その通りです! アユムさんとほかの2人が何番目に選ばれようと同じ人が集まれば同じグループとなりますよね。
となると、𝑛C𝑟の公式にあてはめて、7人から3人の組み合わせなので7C3になって、 7×6×5 3×2×1 = 35通りですね。
正解です!
積の法則を使ってみよう
設営の話で思い出したのですが、同期7人のうち、力仕事が好きな人が3人いて、残りの4人は几帳面なんですよ。この2つの性質をうまくミックスして設営にあたりたいです。
適材適所ということですね。
そこで、力仕事が好きな1人、几帳面な2人をあわせた3人のチームを組んだらいいのではないかと思います。これって何通りになるか、どうやって求めればいいですか?
それでは、まず、力仕事が好きな1人を選ぶのは、何通りですか?
3人から1人選ぶので3C1で、3通りですね。
几帳面な2人を選ぶのは?
4人から2人選ぶので4C2で、6通りですね。
力仕事が好きな3人をA、B、Cとしましょうか。
さて、樹形図をかきましょう!
ガッテン。こんなのどうでしょう? 力仕事が好きなAさんと紐づくグループは6通りです。
よいですね。つまり、力仕事好きな人は3人いるので…?
なるほど、3×6=18通りですね!
正解です。異なるグループごとに選んで、それをパターンごとに組み合わせるときは掛け算をします。これを「積の法則」といいます。
あ、机とか椅子とか設営するから、席の法則ですか?
違います。その席ではありません。掛け算のことを積というので、積の法則です。
余事象という考え方を知ろう
設営って力仕事に見えるんですが、几帳面さも欠かせないんですよね。3人を選ぶときに、少なくとも1人は几帳面な人を入れる場合は何通りですか?
几帳面な人、重要ですね。その場合は「余事象」という考え方を使います。先に言っておきますが、余りとなる事象の話であって、ゾウさんの話ではないですよ。
そういえば、森さんは大のアジアゾウ好きでしたね。
はい! 象とかゾウという文字が出てくるだけでウキウキします。で、余事象(よじしょう)の話でしたね。余事象というのは、そのできごとが起こらない事象のことです。
むむ?
例えば、少なくとも1人は几帳面な人を入れるということは、力仕事が好きな人だけのグループではないようにしたいということですよね?
そうですね。だから、全員が几帳面でもいいんです。
では、几帳面な人が入っているパターンはどんな感じになりますか?
「几几几」「几几力」「几力力」のパターンがありますね。
そうですね、でもこの3つをすべて数えるには3回組み合わせの計算が必要です(これはあとでやります)。
なるほど。
上のパターンに含まれないのは「力力力」のパターンだけということに気づきますか?
確かに。
ということは、すべての組み合わせの数から「力力力」のパターンを引けば「几帳面が少なくとも1人は入る」場合になりますね?
確かに!!!
では、やってみましょう。全部の組み合わせは何通りですか?
7人から3人選ぶので7C3で35通りです。
力仕事が好きな人だけの組み合わせは何通りですか?
3人から3人選ぶので3C3で、1通りですね。
つまり……
35-1=34通りですか!?
大正解!
このように、全体の事象(場合の数)の数から起こらない事象(
和の法則を使ってみよう
では、余事象の計算が本当に正しいか検証しましょう。先ほど、グループのメンバーは「几几几」「几几力」「几力力」のパターンがあるという話になりましたね。
それぞれのパターンにおいて何通りあるかを確かめましょう。
まず、「几几几」のパターンです。これは、几帳面さんを3人選んでるんですね。
つまり、4人から3人選ぶ、4C3で4通りですね。
次に「几几力」はどうでしょう。
几帳面さんは4人から2人選んで、力仕事好きさんは3人から1人選んで、積の法則ですね(キラーン)。
いいですね。その通りです。
4C2は6通り、3C1は3通り、6×3=18通りです。
最後に、几帳面さん1人、力仕事好きさん2人ですね。
几帳面さんは4C1で4通り、力仕事好きさんは3C2で3通り、積の法則で4×3=12通りですね。
コホン、コホン。あってます。
咳(せき)……。
そう、積(せき)は掛け算です。でも、ここでは足します。
「几几几」4通り、「几几力」18通り、「几力力」12通りを足すと何通りですか?
4+18+12=34通り! 先ほどの余事象で計算したときと同じ数になりました!
このように複数のパターンの場合の数を求めるときは、それぞれのパターンの場合の数を出して足します。これが「和の法則」です。
わー。
わー(和)は、足し算ですね。
ここで大切なことは、パターンをきちんとかき出すことです。漏れなくダブりなくかき出すのは、すべての基本。情報をしっかり整理して条件をかきだせるようにしましょう。
すべてのパターン数や条件ごとのパターン数を手軽に導けると、考えをまとめる際の武器になりそうです。
はい。何かを選ぶというとき、順列、組み合わせの考え方があることを頭に入れておくと、意外なパターンの見落としなども減りますよ。
ポイント
- 組み合わせとは、順番がないものを選ぶ方法。異なる𝑛個のものから異なる𝑟個のものを組み合わせるという意味
- 公式だと「𝑛C𝑟」。計算方法は、「𝑛C𝑟= 𝑛𝑃𝑟 𝑟! 」
- 続けて組み合わせを考えるときは、それぞれの場合の数をかける積の法則
- 違うパターンを考えるときは、それぞれの場合の数を足す和の法則
- 特定の事象が起こらないことを考えるときは、余事象
- 樹形図とは、木の枝のように場合分けをあらわしたもの
今日の問題をおさらい
Q1. 5種類のアクリススタンドから2種類を選ぶ組み合わせは何通り?
5C2= 5×4 2×1 =10
答え:10通り
Q2. 7人から3人選んで、会場設営の手伝いをする場合、選び方は何通り?
7C3= 7×6×5 3×2×1 =35
答え:35通り
Q3. 7人のうち、力仕事が好きな人が3人、残りの4人は几帳面。力仕事好き1人、几帳面2人の3人でチームを組むとき、選び方は何通り?
3C1 × 4C2= 3 1 × 4×3 2×1 =18
答え:18通り
Q4. 選んだ3人のうち、少なくとも一人は几帳面な人が含まれるようにするのは何通り
余事象で求める場合:
7C3 - 3C3=34
和の法則で求める場合:
全員几帳面:4C3=4
1人几帳面:3C2×4C1=12
2人几帳面:3C1×4C2=18
4+12+18=34
答え:34通り
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