はじめての企業YouTubeチャンネル活用

企業のYouTube活用、7か月で「チャンネル登録数1,000人」を達成! 少ないリソースで運用するには?

個人店を中心とした飲食店支援を生業とする株式会社フードコネクションのYouTube活用を聞きました。

個人店を中心とした飲食店支援を生業とする株式会社フードコネクション。「本当に必要とされる飲食店」を創るべく、Web制作やSNS運用をはじめ、人材紹介や物件紹介、経営コンサルティングなどさまざまな支援事業をおこなっている中で、YouTubeチャンネル「個人店のミカタLAB|飲食店経営相談所」の運営を2年前から本格的に開始しました。

その成長を牽引したのが、今回取材に応じてくれた株式会社フードコネクションの桑島さんと鈴木さんです。YouTubeはほぼ未経験ながら、習うより慣れろの精神でチャンネルを成長させてきたノウハウを中山が取材しました。

YouTubeの効果は「営業やサポートの工数削減、認知向上、問い合わせ増加」

中山: 2年間のYouTube、まだ道半ばだとは思いますが、これまでの成果を振り返ってみての手応えはどうですか?

桑島さん: ゼロからのスタートだったので、「ビフォーアフターでこれだけ伸びた」って話ではないのですが、「問い合わせ増加、認知向上、営業やサポートの工数削減」の3つで成果を感じています。個人的には「もっと成果が現れてもいいんじゃないか」という欲と、「まずまず悪くなかったのではないか」という満足感の2つの気持ちがありますね。

鈴木さん: 比較対象が無いから、もっとイケたんじゃないかって考えてしまうのかもしれないです。1~2年前の過去動画を経由してお問い合わせてくださるパターンが地味に多く、公開直後には反応は無くても、時間差で反応があると「努力が報われた」と感じます。

桑島さん: YouTubeに力を入れ始めたのは、2020年春に緊急事態宣言が発令されたタイミングでした。キッカケはオンラインで飲食店さんとの接点を増やしたかったから、です。当時、新規営業もできない、既存のお客様への訪問もムリ…という状況で、「何をしたらお客様との接点が増やせるのか?」「どんな情報を発信すれば喜ばれるのか?」を考えた末…「YouTubeだ」となったわけです。以前からアカウントはありましたが、本気で運営していたわけではありませんでした。チャンネル登録を増やすには、真に価値のある情報を発信せねばならないと考えてスタートしたわけです。

YouTube撮影の様子(左:桑島さん 右:鈴木さん)

初年度の目標だった「チャンネル登録数1,000人」を7ヶ月でクリア

中山: まず着手したのはどんな動画だったんですか?

桑島さん: “補助金”関連の動画です。これがいきなりのヒットを飛ばして、1〜2ヶ月でみるみる再生数とチャンネル登録数が増え、幸先は良かったです。飲食店さんに求められている情報が何か、目星はついていたので当然の結果ではありますが。初年度の目標だった「チャンネル登録数1,000人」を7ヶ月でクリアし、1年目は結果的に2,000人まで伸びたんです。

中山: スタートダッシュがよいと、「もっとアクセル踏もう」って機運が高まりますね。

鈴木さん: たしかに助成金関連の動画はニーズがあり検索流入も多かったんですが、「補助金・助成金チャンネル」になるのは避けたかったんです。

桑島さん: そのニーズを掘り続ければ再生数も登録数も増えるかもしれない。でも、フードコネクションの真の目的はここじゃないよね、と。フードコネクションは、補助金や助成金だけじゃなくて、飲食店さんを総合支援する会社です。お困りごとを何でも解決できる会社になるのがゴール。飲食店さんが困ったとき、フードコネクションを思い出してくれれば…っていう思いで運営しています。

撮影の打ち合わせ中(左から桑島さんと社員の二人)

再生数や登録者数という目先の数字に踊らされない

桑島さん: YouTubeでいろんな情報を出すことで、「フードコネクションってそういう領域にも長けているんだ」と認識してもらえるようになりました。たとえば、物件情報、開業準備、SNS運用支援などです。

中山: 補助金だけに特化するのではなく、幅広い情報を発信するチャンネルを目指したと。

桑島さん: 自分たちがなりたい姿を目指す → それを満たすコンテンツって何だ? と考える → それに沿ったアイデアを出す…ような形で企画を出し続けました。

鈴木さん: 補助金動画を出せばもっと伸びたかもしれないけど、飲食に関係無い視聴者が増えても意味は薄いですからね。

中山: 補助金・助成金がテーマだと、ネタも早く切れていたでしょうし、賢明な判断です。

鈴木さん: そういう領域だと、行政書士さんとか、税理士さんとか、すでに士業の方々のチャンネルがあって、専門家にガチで張り合っても勝つのは難しい。

桑島さん: それに、士業の方々はそもそも競合でもないですからね(笑)。

中山: 「お問い合せという直接的な成果」はよくわかりました。では、「営業やサポートの工数削減」というのは?

桑島さん: FAQ的な問い合わせをいちいちテキストで返すより、動画で返すほうが手っ取り早いケースですね。たとえば、飲食店さんに「ブログを書いて、自社サイトを強化しましょう」ってお伝えするんですけど、デジタルには疎い方が多く、最初の一歩でつまづく方もいらっしゃいます。そんなとき、「この動画を見て、その通りにマネすれば出来ますよ」という動画を作ってお渡しするだけで、ぐっと行動しやすくなります。

鈴木さん: ITだけでなく、たとえば衛生管理等の専門的なテーマになると、「チンプンカンプンでお手上げ…」となるオーナーさんもいます。「まとめた動画があるのでどうぞ!」とお渡しし、自己学習していただくことで、サポートにかかる工数はかなり削減されました。

いろんな動画を見てインプットを増やすのが成長の近道

桑島さん: ワンアクションで解決できるメリットはもちろん、「こういう情報を発信してくれてるんだ」という信頼感を抱いてもらえるのもプラスですね。限定公開にして、お客様専用の動画にすることもあります。たとえば「フードコネクションのアプリのログイン方法」のような動画は一般公開する必要はないですから。この動画があるだけで、サポートメンバーの工数はグッと下げられます。

中山: 企業のYouTubeの活用法として、まさに王道ですね。

鈴木さん: 膨大に届くお問い合わせに対し、ポンと返せるので本当に楽になりましたね。

中山: でも、工数削減の効果ってなかなか数字にしにくくないですか?

鈴木さん: 確かにそうです。ただ、今までなかった相談が入ってくることもあって、動画を見て、「人材もやってたんだ」とか「不動産にも強いんだ」と、こちらがアピールしなくてもフードコネクションの認知が高まってきています。営業マンがお客様と電話してるときに「YouTube見てるよ」と言われ、「その動画に出演しているの僕です」「本当だ!」という流れもよくあって、商談の進みも早い。アイスブレークも自己紹介も不要だったりします(笑)。

中山: この2年で一定の成果が出たということで、「YouTubeをもっと活用すべく、さらにアクセルを踏もう」という雰囲気なのか、「ちょっと待て」なのか…でいうとどちらですか?

桑島さん: プラスの効果が大きいので、「待て」はまったくないですね。社内で活躍したチームに送る賞があるんですけど、昨年はYouTubeチームが受賞できたので、社内的にもある程度評価してもらえています。ただ、社内評価は悪くはないものの、じつは苦労も味わっています。メイン担当の鈴木も私もYouTubeはいわゆる「見る専」で、発信側としては素人でした。

鈴木さん: 参考にできるB2B系チャンネルは少ないので、手探り状態で進めましたね……。本当にたくさんの動画を見て研究を重ねました。

中山: 当時の自分に言葉を掛けてあげられるなら、なんと伝えます?

鈴木さん: 「一人で悩むな。いろんな動画を見てインプットを増やすのが一番早い!」です。競合他社の動画から学ぶのはもちろん、飲食店に向けて発信しているチャンネルは個人法人問わず片っ端から見まくりました。ネタの種類、企画の切り口、人気の出る出ないの差はどこにあるのか…を調べているうちに、自社チャンネルの方向性も固まってくるものです。

独学の限界を感じ、コンサルティングを依頼

桑島さん: 予想していたより、「再生が伸びない」と感じていたので、1年半を過ぎた頃から社外に回答を求めようと考え始めました。YouTubeアナリティクスは割と見ていたんですけど、ただ見ていただけでアクションに結びつけられていませんでした。

鈴木さん: サムネイルのCTRはどれだけかな?とか先月と今月の再生数の差はどれくらいかな?を確認するくらいで、深くは分析できていませんでした。具体的な検証ができるまで作業を落とし込めなかったので、独学の限界でしたね。

中山: なるほど。

桑島さん: 中山さんに分析してもらったタイミングで、やるなら今しかないと思ってコンサルを依頼することにしたんです。

中山: ありがとうございます(笑)。

桑島さん: 数値を客観的に見て視聴者維持率のグラフ形状の意味がわかったり、数値の上がり下がりが何に起因しているのか、改善のために編集や構成をどう替えればいいのか…、外部の人に分析してもらって見えてきたことがたくさんあって…。

鈴木さん: 社内の視点だけで取り組んでいると、つい”足し算”の意識が働いて、「このことも伝えよう」「あの情報も盛り込もう」といった具合に情報過多になることもあった気がします。

桑島さん: それに、YouTube アナリティクスの数値にしても、比較対象が無いから「5%ってのは果たして良いの? 悪いの?」すらもわからない。で、その都度ググって調べるけれど、不安は残るし、スピード感も出ないというジレンマがありました。

中山: YouTube アナリティクスの使い方の情報はWebで見つかるけれど、個別の数値をどう解釈すべきかは企業ごとに課題が異なるので、正解はわからないままになりがちですよね。

撮影の様子

編集者のリソースをいかに確保するか問題の解決策

中山: 他に運営でご苦労はありましたか?

鈴木さん: リソースを確保するための社内調整です。具体的にはデザイナーと編集者の作業時間をどう確保するか。社内にデザイナーが一人いて、その人に編集をやってもらうことになったんですけど、じつはもうひとつ自社YouTubeチャンネルがあって、そちらの作業もあります。よって、負担を下げるために極力簡易な編集で済むように依頼しました。

桑島さん: 凝った編集は工数もそれなりにかかります。当時は助成金関係の動画を作っていたので、タイムリーに公開したかった。そこで、クオリティはそれなりでOKとし、短時間で完成させることを優先させたんです。

鈴木さん: デザイナーから「こうしたほうがいい」って提案も来るし、それはありがたいんだけど、「それより明日公開するのが大事」なので、ゼッタイ必要って以外は無しにして、とにかくスピードを優先しました。クオリティを求め始めるとキリがないですからね。

中山: 視聴者が求める質と内容が、お二人は肌感でわかっていたってことですね。

鈴木: 今は阿吽の呼吸ができているので、「この動画を参考に編集お願いします」「なるほど!了解です」という流れが作れていますね。

中山: でもデザイナーさんがいなくなったり、病欠したら?

桑島さん: 外注さんにお願いすることになります。社内デザイナーが動画のフォーマットを作ってくれましたので、依頼事項をマニュアル化してしまえば、編集者が変わっても完成動画に大きなズレが生じません。

中山: TV業界から一般企業に転職したYouTube担当者さんが、「YouTubeにおいて映像クオリティーは二の次でOK」と話されていたのを思い出しました。テロップに誤字脱字が多少あってもユーザーは問題視しない、と。

※参考記事

はじめての企業YouTubeチャンネル活用

元テレビマンが語る「あえて数値目標を持たない」という企業YouTube運営

YouTubeチャンネルSAMURAI ENGINEER [侍エンジニア]は、プログラミングに関する情報を初心者でもわかりやすく解説する動画配信し、コロナ禍の2年前からチャンネル運営をはじめ、2022年8月現在、登録者数は2.9万人に成長。そのノウハウを中山が話を聞いてきました。
中山順司(Faber Company)[執筆], なとみみわ[イラスト]2022/9/1 7:003111

鈴木さん: その感覚、すごくわかります(笑)。

営業業務をこなしながらでもYouTubeは運営できる

中山: さて、避けて通れない「費用対効果」の話をお聞きしたいんですが、基本的に社内リソースのみで運営しているとはいえ、ROIの議論はありますよね?

鈴木さん: あります。しかも、桑島はもちろん、私も他に営業業務があるんです。

たとえば今日は、顧客へのサポート電話の仕事、不動産管理飲食店の物件紹介、豊洲市場へ訪問してサポート業務もやっています。そっちで売上を作って、余剰時間でYouTubeを回すことで文句が言われにくい状況を作っています(笑)。YouTubeが全体業務の半分を超えないように…できれば4割以内に収めたい。

中山: じゃあ、もし営業業務から解放されたら?

桑島さん&鈴木さん: フルコミットできるなら、本数を増やし、質にもこだわりますね!

中山: 「忙しいから」を理由にYouTubeをやってない企業担当者に聞かせたいセリフだ…(笑)。ところで、YouTubeにかける予算は決まっているんですか?

鈴木さん: とくにはないですね。内製の編集費用くらいなので、さほどお金はかかっていません。

桑島さん: YouTubeの効果は現状はプラスもマイナスも完全に掌握できていないけど、営業業務もちゃんとやって成果を出しているわけで「ごちゃごちゃ言わないでください」と(笑)。

中山: その方法、YouTube運営者の処世術になるかもしれませんね(笑)。

鈴木さん: 再生数もチャンネル登録も増えているし、お問合せや認知向上の間接効果を含め、会社も効果を感じています。飲食店向けに情報発信している企業チャンネルって、実はあまりないんです。飲食店オーナーさんが個人でやっている例はときどきありますが。

せっかちな気質はYouTube運営向き

中山:お二人の話をお聞きして、大胆に行動しているのがすばらしいと感じました。それにしても、なぜそんなにフットワーク軽く動けるんでしょう?

鈴木さん:せっかちだからです。二人とも、とにかくせっかちなんです。

中山:ほほう?

桑島さん:明日やることを決めてから寝たいという性格なんですよ。前日に明日のアクションが決まっていないと気持ち悪い。

鈴木さん:再生数がゼロだったとして、べつに失うものなんてないですし。

桑島さん:我々の業界では、YouTubeはまだ十分に活用されていません。2年前に運営を始めたときから思っているんですが、競合はあまり入ってこないし、チャンスだなと。じゃあ我々が飲食店向けの発信をすればするほど、成果が出るはず。No.1になるチャンスもあると思っています。だから、じっとしてる場合じゃない!って考えて、素早く行動するという。

中山:失敗が怖いとか、うまくいかないかもって恐怖はなかった?

鈴木さん:全然ないです。まあ……私が出演した動画が伸びないとちょっぴり傷つきますけど(笑)。それに、過去動画を久しぶりに見たんですが、自分は成長している!と思いました。編集、サムネイル、トークの質が全部成長していて嬉しかったです。数字で示すのは難しいですが、これからYouTubeを始めるチャンネルに比べて、スキル的、経験的なアドバンテージがあると実感しています。

桑島さん:フードコネクションの社風として、「とりあえずやってみよう」ってのがあって、代表から「YouTubeは任せる」と言われています。実際、何も口出しをしてこないので、だからこそ「なんとかせねば」って考えますね。まずは…チャンネル登録1万人を目指してがんばります。

中山:時間の問題でしょう。コンサルしていたから言うわけではないですが、必ず到達すると思います。

桑島さん&鈴木さん:その言葉を信じて邁進します!

中山:ちなみに、ファベルカンパニーでは企業YouTube活用のコンサルティングを行っています。お困りの方はこちらからご連絡ください。

 

 

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