そのFAQ、問題解決できていますか? くらしのマーケット、ラクスルの問い合わせ削減・成功事例
Webサイトやアプリの「よくある質問(FAQ)」を使って問題解決をしようとしたのに、求めている答えが見つからないという経験をしたことがある方は多いのではないだろうか。自己解決できない場合、サポートセンターに問い合わせる人もいれば、最悪の場合サービスの利用を諦めてしまう人もいる。
「Web担当者Forumミーティング 2022 春」のセッションに登壇したNotaの猪飼氏は、FAQシステム「Helpfeel(ヘルプフィール)」を導入したことで、問い合わせ件数の削減や効率化につながった「ラクスル」や「くらしのマーケット」の事例を取り上げ、FAQシステムの活用方法や効果について解説した。
コロナ禍でオンラインの顧客接点が増加
コロナ禍では、人との接触を避けるため、これまでオフラインで利用していたサービスをオンラインに切り替える人が増えた。例えば、銀行の店舗に行くのではなくオンラインバンクを使う、店舗に買い物に行くのではなくECサイトを利用する、飲食店に行くのではなくフードデリバリーを利用するといった具合で、顧客接点がオンライン寄りに変化しており、この傾向は今後も続くと考えられる。
一方でオンラインサービスでは、トラブルがあったときにサポートセンターに連絡しても、速やかに問題解決につながらないことがある。Notaが実施した「金融関連サービスのカスタマーサポート実態調査」によると、金融機関のカスタマーサポート利用時の不満として「電話がつながらない」が72.1%、「担当をたらい回しにされた」が46.5%、「その日のうちに回答が得られない」が27.9%となっている。サポートセンターの対応が悪いと、顧客の不信感が募って、顧客離れにつながることがある。
サポートセンターの立場から見ると、従来の問い合わせに加えて、オンラインならではの問い合わせ内容が増えることで、業務量が増加しているのです。人手によるサポート提供は限界を迎えており、ITを活用した効率的なサポートが不可欠になっています(猪飼氏)
顧客向けサポートは、大きく下記の3種類に分けられる。
- コンシェルジュが伴走する手厚い「ハイタッチ型」
- 電話、メール、チャットで人間が対応する「ロータッチ型」
- チャットボットやFAQシステムを活用した無人対応の「テックタッチ型」
猪飼氏は「これからのサポートは、ツールで自己解決するテックタッチ型に進む」と予測する。
そのFAQ、ちゃんと問題解決できていますか?
自己解決のためのサービスとして、従来から「よくある質問(FAQ)」を用意している企業は多い。しかし、そこで問題解決ができるユーザーはわずか25%に過ぎず、残りの75%は未解決と言われている。未解決の場合は、電話やチャットなどの有人のサポートに対応を求めることになってしまう。
では、なぜFAQだけで問題解決に至らないのか。猪飼氏は、「キーワード入力したときに該当のFAQが表示されない」ことを理由にあげる。
たとえば、「故障」で検索すると「返品交換案内」がヒットするけれど、「動かない」で検索するとヒットしない。言い換えや曖昧な検索に対応していない場合がある。また、「ショッピング」で検索すると「ショッピングの方法」がヒットするけれど、「シッピング」とちょっとタイプミスで結果が出てこない場合もある。
猪飼氏は、「FAQのこうした課題に対応するのが、どんな質問表現にも適切な答えを導くFAQツール「Helpfeel」です。Helpfeelは検索ヒット率98%、問い合わせ件数64%削減という効果があります」とアピールする。
ここからは、Helpfeelの導入事例をみてみよう。
くらしのマーケット ヘルプとカテゴリ検索に活用
キッチンやエアコンの掃除、家事代行、引っ越しなど多様な生活サービスの提供者とユーザーをマッチングするプラットフォーム「くらしのマーケット」のヘルプはHelpfeelで構築されている。
例えば、ヘルプ画面で「支払い」と入力すると、「キャンセル料金の支払い」「お支払い方法について」「支払金額の訂正について」など、支払いに関連する複数の質問文が提案される。ここで「お支払い方法について」をクリックすると、支払い方法についての回答ページが表示される。
知りたい単語で検索した時に、いきなり回答ページを表示するのではなく、まずは単語に紐付いた質問文を作成し、ユーザーの質問内容を言語化するお手伝いをします(猪飼氏)
ユーザーが使う単語はさまざまだ、例えば同じ支払いでも、「PayPay」と入力された場合は、「PayPayでの支払い」に関する質問文が表示され、「楽天Pay」と入力した場合は、「楽天Payでの支払い」に関する質問が表示されるなど、検索する単語が「支払い」でも「特定の決済手段」でもヒットする。
さらに、くらしのマーケットでは、ヘルプページに加えてカテゴリ検索でもHelpfeelを使っている。サービスページはカテゴリを設けて一覧にしているが、ユーザーはサービスを利用するときに、必ずしもそのサービスのカテゴリを考えて利用はしない。
例えばピンポイントで結婚式の司会を探したい時、トップから「結婚式」や「司会」のカテゴリをたどっていき、目的のサービスに行き着くのは困難だ。そこで、検索でキーワードを入力すると、関連するカテゴリを表示するようにした。
Helpfeel導入前、ユーザーはいろいろなページを経由してからようやく目的のページにたどり着いていましたが、今はキーワードを入れれば一発で該当サービスのカテゴリを見つけられるようになりました。カテゴリ一覧はページ訪問者の40%以上が利用しており、カテゴリを介することで簡単に目的にたどり着けるようになりました(猪飼氏)
くらしのマーケットには、200以上のサービスがある。そのなかで、導入以前はユーザーが階層を行ったり来たりしながら探していたため、すぐに目的にたどり着けなかった。その結果、1日500件以上の問い合わせがあったが、Helpfeelの導入により「必要なサービスが簡単に見つかるようになった」「質問の回答が得られるようになった」といった効果が生まれている。
ラクスル ウィジェット表示でどのページからもヘルプにすぐ到達できるように
オンライン印刷サービスを展開するラクスルもサービスメニューの数が多い事業者だ。トップページ上部では豊富なサービスを紹介する必要があるため、どうしても「ヘルプ」はトップページの下部にリンクされることになり、ユーザーがヘルプにたどり着きづらいという課題があった。
そこで、ヘルプシステムにHelpfeelを導入すると同時に、画面右サイドに「お困りの場合はこちら」というウィジェットを設置し、それをクリックすると、サブウィンドウが立ち上がり、質問を受け付ける形にした。ヘルプを探し回らなくても、ワンクリックでヘルプにたどり着ける仕組みを実現したというわけだ。
ここで例えば、「間違えた」と入力すると、「注文を間違えたため、キャンセルしたい」「住所を間違えたので修正したい」「入稿したデータを間違えたため、やり直したい」などの質問文の候補が表示される。そこで「入稿データを間違えた」をクリックすると、「入稿したデータを差し替えたい(再入稿)」のページが表示される。ここで、「再入稿」「データ 変更」などの異なるキーワードを入力しても、関連する質問文が表示され、結果としては同じ再入稿の説明ページに到達できる。
初めて利用する人はそもそもまず何をしたらいいかわからないこともあるだろう。その場合、「何から」と入力すると、「注文したけど何から始めればいいかわからない場合は?」という質問が表示され、クリックすると注文までのフローが表示されるというわけだ。
常時表示されるウィジェットを設置することで、ニーズに応じていろいろなページで接客を改善することができます。ラクスルさんの場合、以前から約700のヘルプページを用意していましたが、多くのユーザーは適切なヘルプにたどり着けず、問題が解決できていませんでした。
Helpfeel導入後は、わずか一週間で検索ヒット率が50%改善し、テレビCM放映があって問い合わせが増えた時にも、サポートセンターの人手を増やすことなく、システムで対応できました(猪飼氏)
ラクスルの担当者は、「事業が急成長していくなかでオペレーションが肥大化し、繁忙期と閑散期の落差にも対応しきれず、お客様を十分にサポートできていなかった。Helpfeelの導入でFAQのノーヒットが大幅に削減できたことで、問い合わせ率が34%削減できた。ユーザーの要望や不明点に対して、現場起点でコンテンツ改善ができるようになった」とHelpfeelを高く評価している。
Helpfeelの活用方法3種類
Helpfeelの活用方法は大きく3つあると猪飼氏は説明する。
1つ目は、事例で紹介したような、ユーザー向けの「公開FAQ」としての活用だ。Helpfeelの導入の8割がこの利用方法となる。
2つ目は、コールセンターのオペレーター向けマニュアル「マニュアル型FAQ」だ。コールセンターで問い合わせを受けたオペレーターがFAQで調べてユーザーに回答するもので、生命保険、損害保険、通信会社などの活用事例がある。
3つ目は、最近ニーズが増えている「社内FAQ」としての活用だ。人事、総務などバックオフィス業務の人は、「結婚したときの事務処理」「年末調整書類の書き方」など、日常的に社員からさまざまな質問を受けている。あらかじめ社内FAQを用意しておくことで、社員が自力で解決できるようになる。
導入・運用のサポート体制
Helpfeelは、提供したら終わりではない。企業のサイトにあわせたFAQのトンマナ調整、ウィジェットの設置場所の最適化、既存のFAQコンテンツの改修・移行などが必要となるが、Notaはこれにも個別に対応している。導入企業ごとに、テクニカルライターが辞書を作成し、質問や回答文の編集サポートを行い、導入後は、ユーザーがどんな単語で検索して、どんな質問をクリックしているのかなど利用状況の月次レポートと、対応していないキーワードの追加などの改善提案も行うという。
最後に猪飼氏は、「FAQの運用実績がなくても、改善ノウハウがなくても、専門チームがサポートします。多くの企業が導入してから1カ月ほどで問い合わせ数削減の効果が出ています。当社のWebサイトでは導入企業の事例ページで実際のFAQを試せるようにしているので、近い業種の企業の事例でぜひ試してみてください」とアピールし、講演を締めくくった。
- FAQシステム「Helpfeel」
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