ストーリーテリングをB2Bマーケに活用する6つの実践テクニック(後編)
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。 →まず前編を読んでおく
B2Bビジネスの相手は、B2Cの消費者と違って常に意思決定者とは限らないため、メッセージにストーリーテリングを取り入れるのは難しい場合が多い。しかし、不可能ではないし、実はおもしろいほど効果を発揮する。
この記事では、あなたのB2Bマーケティング戦略をワンランク上にするストーリーテリングについて学んでいる:
- B2Bマーケティングでストーリーテリングが重要な理由(前編)
- 知っておくべきストーリーテリングの7つの利点(前編)
- B2Bマーケティングにストーリーテリングを取り入れるテクニック
後編となる今回は、ストーリーを使ってメッセージを分解してから組み立て直す具体的な方法を紹介する。
B2BがB2Cから学べる中核的マーケティングストーリーテリングの技術
- 個性のあるブランドを構築する
- 本物かつオリジナルの物語を生み出す
- 誠意をもって感情を取り入れる
- オーディエンスを知る
- 個人的なものにする
- データを重視する
テクニック1個性のあるブランドを構築する
ブランドには個性がある。
人間にたとえば「陽気な人」や「まじめな人」「ユーモアのある人」「カリスマ性のある人」などの個性があるように、ブランドにも個性がある。ブランドを呼吸する生き物と考えよう。ブランドに真の人間性を吹き込むには個性を持たせることが重要だ。
ここでは、共感を呼ぶブランドによく見られる個性をいくつか挙げる:
啓発的: 君が今読んでいるMozブログなどが挙げられる。君のブランドは、さまざまな視点や製品の仕組み、何かをする方法など、他者に情報を伝えるためのコンテンツを絶えず作成しているだろうか?
エンターテインメント: Netflixなどが挙げられる。君のブランドは世界の混乱から気を紛らわせ、少しの間でも心配事を忘れられるようにすることを目指しているだろうか?
破壊的/反抗的: ハーレーダビッドソンなどが挙げられる。リスクを取ることを恐れない真にワイルドなブランドだろうか?
官能的で贅沢: たとえばRed Saint Botanicalは、希少な茶葉から醸造された本格的なスピリッツベースの飲料だ。君のブランドには、洗練性や爽快感がにじみ出ているだろうか?
効率的で意欲を引き出す: ナイキなどが挙げられる。君のブランドは、チャンピオンのような心構えで、人をやる気にさせようと熱心に取り組んでいるだろうか?
幸福感: コカ・コーラなどが挙げられる。ブランドの唯一の使命が喜びや笑い、輝きを育むことなら、幸福感はそのアイデンティティとなるものだ。
これは単なる提案であって、B2Bブランドの個性がこれらのカテゴリのいずれかにフィットする必要はない。ブランドの価値をさらに深く掘り下げて、自分に合っていると感じるアイデンティティや特徴を模索してみてほしい。
テクニック2本物かつオリジナルの物語を生み出す
公開するコンテンツごとにストーリーを伝える必要がある。それが「メール」「ニュースレター」「インスタグラムへの投稿」「ブログ記事」のいずれであろうと、メッセージは次の要素を取り入れている必要がある:
- 普遍的である
- 記憶に残りやすい
- 一貫性がある
- 整理されている
これらの要素に重点を置くことでコンテンツ戦略が強化され、コンテンツの説得力が増し、独自性も高まる。では、具体的なブランドについて見ていこう。
パタゴニアは1973年の創設以来、常に本格的なコンテンツを展開し、「ブランド価値」「企業文化」「倫理観」を絶えることなく示してきた。たとえば、この動画では、次のようなストーリーを示している:
トレイルランナーのフェリペ・カンチーノ氏がチリ中部のマイポ川流域を走り、そこで水力発電プロジェクトAlto Maipoが生態系に大きな影響を与えていることを示す。
このストーリーからは、パタゴニアが環境を重視していることが明確に見てとれる。
別のストーリーでは、ダニエルという男性が娘にサーフィンを教えることで、初心者の心をつかんでいる。パタゴニアが環境だけでなく、
- アウトドア活動でのつながりを通じて健全な関係を育むこと
を重視していることがわかる。
このように、一貫して君の価値観やブランドの個性に沿ったコンテンツを発信することで、ビジネスと顧客の間に揺るぎない強い絆を築ける。
B2Bに取り入れるには
マイクロソフトはB2BとB2Cの両方を手がけるブランドであり、さまざまな製品を提供している。
同社は、自社の製品がどのように利用されているかを示した業務関連のストーリーを共有する取り組みの一環として、Microsoft Story Labsを開発した。
これは、まさにウィン・ウィンの試みだった。というのも、同社はユーザーが作成したコンテンツを得て他のチャネルで共有できるようになり、ユーザーはストーリーを共有することでブランドとのつながりを深められたからだ。
テクニック3誠意をもって感情を取り入れる
強い感情を示すことで、消費者は自分が1人ではないこと、特に賛同できるブランドの場合は個人としての自分より大きな理念の助けになることを理解できる。
その好例がTOMSだ。同社は「インパクト」ページにおいて、「マイノリティ社会の食糧不足や資源不足の問題解決に、ビジネスで得た利益を役立てる方針」について説明している。
全体として、消費者はより大きく重要な問題に対して感情面で強い結びつきを見出そうとしており、それを示すブランドを支持する傾向が強い。
B2Bに取り入れるには
オーディエンスは突き詰めると個だ。そのため、メッセージを強く印象づけるには、(B2Bでは見過ごされることの多い)感情面での要素を中心に組み立てる必要がある。
B2Cと同じように、オーディエンスの
- 恐れ
- 喜び
- 不安
を書き出して、ビジネスがそれらの感情をどう増減できるか関連付けて考えよう。
テクニック4オーディエンスを知る
ファンキーな万能型デザインのドリンクカバーを手がけるブランドFreaker USAは、会社紹介ページに次のように記載している:
お子さんの幼児用マグカップも、あなたの瓶ビールと同じようにハイになれます。
このコピーは、同社がオーディエンスをよく理解していることを示している。親は時に「子どものミルクを(スタイリッシュに)保温でき、さらに大人の自分の飲み物にも使える」、そんな万能の商品を欲している。
B2Bに取り入れるには
オーディエンスに対する理解を深めよう。そのために次のことを実施するといい:
- 現在の顧客にインタビューを通じて質問
- 似たようなオーディエンスの市場調査
質問に自由に答えてもらうことで癖やニュアンスの違いを知ると、本来ならわからなかったはずの情報を直に得られる。
顧客についてごく小さなことでも理解できるようになった企業は、自らの弱点を自覚できる。顧客の基本情報として「年齢」「人種」「居住地」を知るだけでは十分ではない。具体的に、次のようなことを知ろう:
- スターバックスのどのメニューが好きか
- 誕生日をどのように祝うか
- Netflixのどの番組を見ているか
こうした具体的な情報を把握することで、相手を驚かせたり、相手の言語でコミュニケーションを取ったりできるため、常に真っ先に思い出してもらえる。
つまり、オーディエンスについて知れば知るほど、関係を深められるということだ。
テクニック5個人的なものにする
SnapchatのBitmojiは2016年にリリースされた機能で、ユーザーは自分の写真から自分だけのオリジナル絵文字(Bitmoji)を作成できる。
Snapchatはアニメ調のアバター作成を通じて、ユーザーの子ども心を引き出せた。これらのアバターは、連絡先リストにあるユーザーと交換することもできる。
B2Bに取り入れるには
人は独自性を感じたいと願い、それぞれの個性や考え方に訴えるメッセージに引き付けられる。それを示す
- コンテンツ
- ユーザー体験
- メッセージ
をパーソナライズできる方法が多いほど、そのブランドを試したくなるだろう。
加えて、ウェブサイトでパーソナライゼーションを利用すれば、確実にオーディエンスの注目を集められる。たとえば次のような方法なら、オーディエンスが探している情報に正確に誘導したりできる:
- その分野のユーザー向けにマーケティングテンプレートなどの対象を絞り込んだリードマグネットを提供
- チャットボットにあらかじめ用意した回答を取り込む
テクニック6データを重視する
年月を経てテクノロジーなしでは生活するのが難しくなるなか、消費者の体験をパーソナライズする方法において、データはこれからも大きな役割を果たすだろう。
たとえば、Refinery29はデータを利用して、ネット上の画像に見られる特大サイズの女性の割合が適切でないことを示した。同社はこのデータをブランド戦略に取り入れて、米国の実際の女性像を正確に反映した写真の撮影とイラストのデザイン刷新に着手した。
B2Bに取り入れるには
データを使ってB2Bブランドが重視しているトピックと結びつけることで、新たな興味深いストーリーを素早く作成できるため、オーディエンスと感情によるつながりを生み出せる。特にソーシャルメディアで自社のマーケティングキャンペーンに関するデータを収集することにより、ブランドにとってすでに有効なストーリーを探し、それに応じて規模を拡大できる。
B2Bのストーリーテリングまとめ
ストーリーテリングは、B2Bビジネスの大きな問題を解決する(恐ろしく長い販売サイクルや興味を示さない潜在顧客の問題は、よく聞く話だろう)。さらにそれだけでなく、顧客との長期的な関係を育むことで、より大きなインパクトを生み出せる。結局のところ、それこそ私たちマーケターが求めていることではないだろうか?
B2C企業が使うマーケティングストーリーテリングの技術は、B2B企業の場合でも非常によく似ている。
- ブランドの個性
- 感情
- 物語性
- オーディエンスの情報
- パーソナライゼーション
- データの利用
B2B企業がこのプロセスに費やす労力に対し、常にそれを上回る利点が得られることはわかってもらえるだろう。
(前編のOne Rand Manのストーリーなど)B2Cブランドのストーリーテリングをよく研究することで、同様の考え方や戦略をB2Bビジネスにも適用し、同様のメリットを得られる。
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