【レポート】デジタルマーケターズサミット2021 Summer

ファンの”好き”が購買行動に影響を与える! アンバサダーマーケティングの必要性とアプローチ方法

アンバサダーマーケティングの専門家として多くの取り組みを支援しているアジャイルメディア・ネットワークの出口氏が、アンバサダーマーケティングの必要性や取り組むにあたってのアプローチ方法を解説する。
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SNSなどから情報を得ることが当たり前になっている現在、「アンバサダーによる口コミは、広告によるリーチでは難しくなっている態度変容に有効な情報」だと、アジャイルメディア・ネットワークの出口氏は言う。しかしながら、どのように取り組めばいいかよく分からないという人も多そうだ。「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」に登壇した出口氏が「アンバサダー的アプローチ」について紹介した。

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部 部長 兼 エバンジェリスト 出口潤氏

ファンやアンバサダーのマーケティング活用が必要とされる背景とは

ファンマーケティングやアンバサダーマーケティングという言葉を耳にする機会が増えているのではないだろうか。背景にあるのは、以下のような環境の変化だ。

  • 人口減少により、顧客候補の絶対数が減少し、新規顧客の獲得が困難になっている
  • 発生する情報量が爆発的に増え、企業から発信する情報は広告だけでは生活者に届かない
  • 信頼されている情報源として、知人の口コミや、オンラインのレビューが上位に入っている
  • 口コミから情報を得ることで、購入行動へ移る割合は広告の4倍となっている

つまり、アンバサダーによる口コミは、広告によるリーチだと難しくなっている態度変容に有効な情報になりつつあるのだ。そのような口コミを生み出してくれるのは、パレートの法則で言うところの売上の8割を占める2割のロイヤル顧客だ。「企業やブランドにとって、ファンは今まで以上に大切な存在になってくる」と出口氏。

アンバサダーとインフルエンサーの違い

では、アンバサダーとは具体的にはどういったものなのか。出口氏はまずアンバサダーとインフルエンサーの違いを、「ファン度・熱量」と「影響力」の軸の4象限の図で説明した。

マーケティングコンセプト「アンバサダー」の定義

インフルエンサーは影響力の大きさが重視されるが、アジャイルメディア・ネットワークが提唱するアンバサダーは、ファン度や熱量が高いという考え方だ。また、報酬や発言内容、情報発信の頻度は、以下の図のような違いがある。

アンバサダーとインフルエンサーの違い

アンバサダーには金銭的な報酬はお支払いしないことを推奨しています。通常は体験することできない特別な体験をインセンティブとして参加してもらうのがいいでしょう(出口氏)

インフルエンサーとは「他人の行動に影響をもたらす人」を指す言葉だが、世の中で言われているインフルエンサーは「有名人でフォロワー数の多い人」というニュアンスで語られることが多い。しかし、「フォロワー数や知名度が、必ずしも影響力とイコールではない」と出口氏は言う。

マーケティングであれば、情報が届けばいいわけではなく、情報を受け取った人が態度変容し、何らかのアクションを起こすことが目的だ。そのためには、情報を受け取ったことで相手の心が動かなければならない。発信者の“好き”という思いに共感が生まれて、つながり、心が動くことが大事であり、まさにソーシャルメディアの醍醐味だと言えるだろう。

ファンが持つ“好き”のチカラを最大化し、ビジネスを成長させるのがアンバサダーマーケティング

では、アンバサダーとは具体的にはどのような人のことなのか。出口氏が実体験を例に説明した。

出口氏は趣味でボルダリングをしており、定期的にSNSに投稿しているという。それを見た出口氏のフォロワーであるA氏が、「出口さんに影響されて、ボルダリングはじめました!」と投稿し、それに対してA氏のフォロワーであるB氏が「僕も一時期はまっていました。また始めようかな」というコメントをつけた。

これは、アンバサダーの出口氏のSNSの投稿によって、1人の新規顧客の獲得と、1人の休眠顧客の掘り起こしができた状態と言える。このようなことは日々あちこちで起きていることだろう。これを、フロー図にしたのが以下だ。

人を介して伝わっていくことでヒト軸の“好き”や“共感”が生まれ、広がっていく

アジャイルメディア・ネットワークでは、口コミに接触した人が1か月以内に購買に至った割合の調査を行っている。2020年度の調査では、平均25.9%の方が口コミに接したことがきっかけで購入に至っているという。この数字からも、「ファンの力は非常に大きい」と出口氏は言う。では、どのように取り組んでいけばよいのか。

ファンはターゲットではなく、パートナーと意識を変えましょう。どうやって購入させるかではなく、どうしたらもっと“好き”になってもらえるかを考え、コミュニケーションを組み立ててください。そのように組み立てる中で、ファンが持つ“好き”のチカラを最大化し、自社のビジネスを成長させることこそ、アンバサダーマーケティングやファンマーケティングです(出口氏)

アンバサダーマーケティングに取り組むにあたり必要な3つの意識の変化

出口氏は、「アンバサダーマーケティングを実践するにあたって、まずは意識の変化が必要」だと言う。ポイントは以下の3点だ。

1. 企業発信から生活者発信へ

企業発信を自己紹介とすると、生活者発信は他己紹介。「企業メッセージのリーチから購買」ではなく「信頼のおける口コミから購買」にしていく。

企業発信から生活者発信へ

2. フロー型からストック型へ

キャンペーンなどで短期的に高い山をつくっていくフロー型から、中長期的に強い絆をつくって巻き込んでいくストック型へ。

フロー型からストック型へ

ターゲットからパートナーへ

商品を購入してもらうターゲットという存在から、商品を共創していくパートナーと顧客の考え方を改める。このように意識を変化させたうえで、アンバサダー育成のステップとして出口氏は以下の図を示した。

アンバサダー育成のステップを設計・管理

この表のうち、①はアンバサダーにしてほしい活動、⑤⑥はアンバサダーが友人に与えてほしい影響を、仮設定するもの。②から④については、現状を洗い出すものだ。また、③④については、自社の資産活用も含めて考える必要がある。「これらを最初に整理しておくと、スムーズに組み立てていける」と出口氏は言う。

アンバサダーマーケティングのコミュニケーション戦略

続いて、コミュニケーションの戦略を組み立てるが、その際には以下の図のようなサイクルで考える。「傾聴」「会話」「活性化」「支援」「共創」の5つのステップだ。

アンバサダーマーケティングにおけるコミュニケーション戦略「アンバサダーサイクル」

まず、「傾聴」と「会話」のステップでは自社の接点にいる顧客の中から熱量の高いファンを発掘して、直接つながる。ファンのSNS上での活動を把握し、発掘したファンとコミュニケーションして、どこを好きになってくれたのか、どうして欲しいと思っているかなどを知るために「会話」する。

この「傾聴」「会話」は、調査とは全く異なるものだという。一方的に相手のことを調べるのではなく、ファンの生の声を聞いたり、直接話をしたりすることで、相手のことを理解し寄り添うことだという。

では、ファンやアンバサダーはどうように発掘すればよいのか。その発掘方法をまとめたのが以下の図だ。

ファン・アンバサダーの発掘方法

「活性化」のステップでは、「会話」のステップで得た仮説を検証しながら、日常的な口コミを増やしていく。出口氏は、「活性化はキャンペーン施策を実施することではない。短期的で大量の投稿ではなく、長期的に口コミを滞留させることが重要」と強調する。自然投稿された口コミと、リツイートキャンペーンによる定型の口コミを比較すると、明らかに自然投稿の方が周囲の反応を得られるという調査結果も紹介された。

「支援」「共創」のステップでは、アンバサダーがさらに周囲にメッセージを届けるために、企業はどのような支援をすればいいかをアンバサダーと共に考え、進めていく。「結果を提示するのではなく、過程を開示して一緒に考えて進めていってもらうことが非常に大事」と、出口氏は言う。

アンバサダーマーケティングにおけるポイントをまとめると、以下の3点になる。

自然投稿や自発的な活動を増やしていくことを目的とした機会提供

キャンペーンやインセンティブなどで、無理矢理口コミを増やすのではなく、自発的に自身の思いや体験を語ってもらうようにすることが大切。

情緒的価値や活性化のヒントを見つける

ファンがブランドを愛している理由や好きなツボを把握し、寄り添う。

ファンの力を多面的に活用し、マーケティングパワーに転換する

リアルなファンの声はマーケティングに活用できる資産であるとともに、共創していく関係性を築くことで、ファンの好きを加速する大きな原動力になる。

アンバサダーがもたらす4つの価値。効果測定は人軸でデータを繋ぐこと

では、アンバサダーマーケティングの効果測定はどのようにやっていくのか。最後に効果測定の考え方や、試算方法について出口氏が解説した。

前提として、アンバサダーマーケティングは口コミを増やすことだけが目的ではない。アンバサダーは多様な価値をもたらすが、口コミはそのうちのひとつだ。出口氏はアンバサダーがもたらす4つの価値について図を示した。

アンバサダーがもたらす多様な価値

アンバサダーは多様な価値をもたらすという前提で、効果測定は人軸でデータを繋ぐのが大事な考え方だという。アンバサダーマーケティングがどの程度ビジネスに貢献しているかは、アンバサダーの人数、アンバサダー1人あたりのフォロワー数や投稿数、アンバサダーの投稿による露出、口コミ接触者の購買転換率などを使って試算できる。具体例として、出口氏のTwitterアカウントでアンバサダー活動を行った場合、どの程度の売上貢献があるか試算したのが以下の図だ。

効果シミュレーション

フォロワー854人の出口氏が、半年間にわたって月に2回投稿した場合で計算している。購買変換率は、アジャイルメディア・ネットワークの調査結果から導き出した数値を使っている。試算によると、出口氏1人のアンバサダー活動で1万円弱の売上貢献が見込めることになる。

実は、出口氏はあるマスクのファンであり、SNSで紹介していたところ販売会社の目に止まり、実際にアンバサダーに任命されたという。Twitterでの投稿は1回のみだが、1人が購買に至ったと確認できたそうだ。

試算では12投稿で3.4人の購入に影響した、となっていたが、たった1投稿で、1人が購入したという。このように、「ファンやアンバサダーには大きな力がある」と出口氏は強調し、「すべてのブランドにアンバサダーを」とセッションを締めくくった。

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