「CDP」を積極活用! ソニーマーケティングが考えるファン創造のマーケティング
デジタルマーケティング技術の発展によって、顧客の「行動データ」が重要視されるようになって久しい。ECサイトの利用実績、Webサイトの閲覧履歴、さらにはリアル店舗への訪問状況など、バラバラに管理されていたデータを統合的に管理し、より効率的な施策に繋げようという動きも一般化している。
こうしたデータを社内統合するための立役者、それが「CDP(Customer Data Platform:顧客データ基盤)」である。ソニー商品のマーケティング・セールスを担うソニーマーケティングでは、Treasure Data CDPを徹底活用し、「ファンの創造」に向けたマーケティングを実現する取り組みをしている。
「デジタルマーケターズサミット 2021 Summer」のセッションに、ソニーマーケティングの鍋島基海氏が登壇、トレジャーデータの小林広紀氏を聞き手に、一眼カメラのマーケティングにおけるCDP利用事例などを解説した。
「行動データ」を徹底重視するソニーマーケティング
ソニーマーケティングは、ソニーの中において、おもにエレクトロニクス商品のセールスやマーケティング、カスタマーサポートなどを担っている。
鍋島氏は、ソニーが今、徹底的に注力しているのは「ソニーのファンを増やし、継続的に選ばれるブランドになること」だと述べた。
ソニーブランドのファンになってもらうためには、ソニーのことを「全く知らない」「知っているがファンではない」といったさまざまなフェーズの生活者を発見し、ファンになりたくなるコミュニケーションをとらなければならない。
無関心層を見込み客に、見込み客を購買客に、購買客をファンに変えるには、それぞれの段階に応じたマーケティングメッセージを、あらゆるタッチポイント(接点)で届ける体制が必要だ。以下の図は「ロイヤルティループ」と呼ばれるもので、ソニーマーケティングの戦略を端的に示している。
この戦略を推進するために、率先して行われているのが、「顧客の行動データ取得」である。
お客様の意識変容・態度変容といったインサイトを捉えるには、お客様がどう行動されているかのデータを集める必要がある。これをデジタルの世界でどのように行うかが始まりとなる(鍋島氏)
ここでいう行動データとは、Webサイト訪問者の流入元、閲覧ページ数、検索内容などに加え、購買情報や製品購入者アンケートの結果など多岐にわたる。ソニーマーケティングではこれらのデータをTreasure Data CDPに集約し、横断的に分析することによって、個別のマーケティング施策に反映させているという。
例えば、この行動データから判明したインサイトに応じて、顧客の用途に合わせたコンテンツを提供したり、顧客が自分の持つ製品を登録すれば、その登録に応じて製品をより快適に使いこなすためのコンテンツを提供したりしている。
そうやって顧客のその時その時の興味関心に寄り添うことで、より一層ソニーの製品を活用し、満足度を高め、その結果ファンになっていただくことを目指しているという。
社内に散逸する顧客データを統合する「CDP」
CDPは一言で言えば、“社内に散逸する顧客データを統合するためのシステム”である。
たとえば、ECサイトの購入者データ、店頭で集計したアンケートの結果、営業現場の日報システムなどのデータはそれぞれ独立していて、連動していないケースが一般的である。これらを統合管理できるようにし、より効率的なマーケティングに繋げようというのが、CDPの基本的な役割だ。
国内外で100社以上のベンダーが提供しているCDPの中でも、ソニーマーケティングはトレジャーデータが提供する「Treasure Data CDP」を採用している。同社のCDPは国内でも高いシェアを誇っており、トレジャーデータの小林氏によれば、Forbes Global 2000に選出されている国内大手企業218社(2020年度)のうち、50社以上で導入されているという。
CDPは、さまざまなマーケティングツールや外部データベースと連携させてこそ大きな効果を発揮する。小林氏は、「トレジャーデータは、データソースやサービス、システムと連携するための“コネクター”を多数すでに実装しており、いち早く利用することができます」と、その優位性をアピールした。
講演では、Treasure Data CDPがソニー製一眼カメラのマーケティングに活用されている事例が紹介された。顧客のインタレストを捉えるため、行動データをTreasure Data CDPで把握・分析し、その傾向に合わせてアプローチ方向を変更することで、一定の成果をあげることができているという。
“体験価値”向上のためのアプリを提供
事例に続いて紹介されたのが、「体験価値」を高めるための取り組みだ。
商品を購入する前に抱いていた「期待価値」に比べて、実際に製品を使ってみたことで得られる「体験価値」のほうがより高ければ、製品・ブランドのファンになる可能性は極めて高くなる。そのため、ソニーマーケティングの戦略においては、「体験価値」の向上は至上命令だ。
こうした狙いから生み出されたのがスマートフォン向けの「My Sony」アプリだ。アプリやWebサイトを通じて、購入したソニー製品を登録しておくことができ、取扱説明書や、使いこなしに関する新着情報、アップデート情報なども一元的に参照ができる。チャットやLINEの相談窓口も設けており、修理申し込みもアプリから行える。
My Sonyアプリの運用にも、ユーザーに有益な情報を提供するためのデータ基盤として、Treasure Data CDPを活用しているという。
今後重要なのは、データ基盤とデータを扱う人材の育成
鍋島氏は、CDPの活用によってマーケティングをはじめとした体験価値向上の取り組みの可能性が広がる一方で、人材の育成がより重要になっていると指摘する。
技術的には、「スケーラビリティを担保したデータ基盤」も、「分析に必要なデータ収集とAIが活用できる状態へのデータ加工」も揃えられるようになりました。今後は、収集・統合したデータを、使いこなせるだけの人材の養成が重要になると思います。「データを理解した上でマーケティング企画を行える能力」「データを分析できるアナリティクス的な資質」「データベース構築の知識」──こうした“3層構造”の能力が求められるでしょう(鍋島氏)
これからCDPの導入を検討している企業担当者に向けて、鍋島氏はこう助言する。
CDP導入前でも、CSVを使って簡易データベースを構築するなど、やれることはたくさんあると思います。まずはとにかく手を動かしてほしい。一度結果を出してみて、そのうえで、「データをもっと集めないといけない」「データの連携先を増やさないといけない」といった課題を見つけ、そのうえでCDPを導入されるとより効果的だと思いますので検討してみてはいかがでしょうか(鍋島氏)
セッションの最後に小林氏は、トレジャーデータが毎週水曜日に実施しているCDP入門セミナーを紹介、今回の講演と合わせて、ぜひ参考にしてほしいと呼び掛けた。
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