【レポート】デジタルマーケターズサミット2020 Summer

掲げたビジョンの実現、他部門がメリットを感じる連携がカギ。日立製作所の「事業に貢献するコーポレートサイト」になるポイントとは?

会社案内的なコーポレートサイトの役割が大きく変化しつつある。ブランド価値向上、事業への貢献など、“攻め”の施策が求められているという。デジタルマーケティングを連携させたコーポレートサイトのリニューアル事例を日立製作所の米山氏が語った。
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「デジタル上での顧客体験の最適化は経営の最重要課題と注目されつつある」と語るのは、「デジタルマーケターズサミット 2020 Summer」に登壇した、アドビ株式会社マーケティング本部の松井真理子氏。

「これまで企業のWebサイト、コーポレートサイトは、その企業概要や財務情報、リクルート活動などの『会社案内』的な役回りで、信頼感を醸成することを強く意識され、いまや、そういったブランド価値向上のためだけでなく、事業にも貢献するための“攻め”の施策が必要となっている」と日立製作所の米山卓美氏が続く。そうした変化に先駆けた戦略的な取り組みの一例として、同社のコーポレートサイトのリニューアル事例が紹介された。

日立製作所 米山卓美氏
株式会社日立製作所 ブランド・コミュニケーション本部 デジタルプラットフォーム部 担当部長 米山卓美氏

ニューノーマル時代に重視される「デジタルセールス活動」

冒頭、アドビの松井氏は、「コロナ禍によるニューノーマル時代前後のB2B企業の変化に関する調査結果(マッキンゼー・アンド・カンパニー調べ※)」を示し、「デジタルセールス活動の重要度が40%も向上しており、従来チャネルの2倍もデジタルチャネルが重視されている」と指摘。

事業戦略でもデジタル化が重視され、オンライン営業モデルやEコマースモデルなどの施策に高い意欲がみられるという。また経営の最重要課題として「顧客体験の最適化」を挙げる企業が最も多く、「デジタル上での顧客関係構築は非常に重要になってきている」と語る。

デジタルセールス活動の重要度が40%も向上
ニューノーマル時代前後でデジタルセールス活動の重要度が40%も向上しているという
※Survey:Global B2B decision-maker response to COVID-19 crisis

日立製作所が6年ぶりにコーポレートサイトをリニューアル

そうした「デジタル活用による事業貢献」について、日立製作所でもさまざまな取り組みが進められてきた。その中で米山氏は、デジタルマーケティングを連携させたコーポレートサイトのリニューアルを1年という短期間で実現した。

サイトの問題点を洗い出す

創業110周年を迎えた日立製作所は、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、社会や顧客企業が直面しているさまざまな課題を解決する社会イノベーション事業を推進している。社会インフラや情報システム、さらには家電にいたるまで、事業分野は多岐にわたる。日立製作所は、世界46か国・地域にポータルサイトを展開し、それぞれの国・地域に適した情報と社会イノベーション事業に関するコンテンツを掲載している。

2013年に改訂したサイトは、コーポレートカラー的な色である「赤」を多用した斬新なデザインや動画を用いた先進性などが社内外から高い評価を得ていたものの、情報が増えるにつれ、事業部などから「使いづらい」という声が上がってきていた。そこで、2018年度に、外部コンサルに調査を依頼したところ、ユーザー調査でも「コンテンツが見つけにくい」「動線がユーザー視点に欠けている」などの指摘があった。

旧コーポレートサイト
リニューアル前のトップページ。公開当初の評価は高かったが、情報量が増えるにつれ問題点も浮上してきた

欲しい情報にすぐにたどり着けるサイトを目指して

そこで2018年6月、1年後の次期中期経営計画の発表された後となる2019年6月をターゲットとして、リニューアルすることを決定。次のビジョン、ミッション、ゴールを策定し、コーポレートサイト改訂プロジェクトを開始した。

  1. ビジョン
    コーポレートサイトは顧客課題に応えるために、デジタルを活用した日立グループのコンシェルジュになる
  2. ミッション
    ブランド価値向上だけでなく、事業にも貢献する
  3. ゴール
    欲しい情報へ容易にたどり着ける
    日立の認知を上げ、興味をもってもらう
    さらに日立が伝えたい情報をしっかり届ける

訪問者視点を最重要視し、コーポレートサイトのトップページとして“あるべき姿”を検討。既成概念にとらわれず、多くの企業が採用しているディレクトリ構造型の情報サイトから脱却し、できるだけシンプルに「欲しい情報にすぐにたどり着けるサイト」を目指した。来訪目的に基づく情報の整理を行い、ECサイトでは一般的なリコメンド機能を提供し、さらに日立が“今”伝えたい情報をダイレクトに提供することなどを考えたという。

営業部門と連携してMAツールを導入
訪問者のニーズに合わせたリコメンドで送客を実現

リニューアル前に徹底的なサイト分析を行った。その結果、いくつかの課題が抽出された。そのひとつは直帰率で、平均40%~50%と高いことが分かった。

また流入経路を見たところ、訪問者の多くは外部の価格比較サイトに貼られたリンクから来ていること、さらにサイト内検索を分析したところ「家電の品番」や「型番」、さらにはマニュアルを探していることがわかった。

2018年7月、「デジタル活用」や「BtoBサイトでのリコメンド」などを考えていたところで出会ったのがMA(マーケティングオートメーション)ツールであるアドビの「Marketo Engage(マルケト エンゲージ)」だった。Marketo Engageのオプション機能の「Webパーソナライゼーション」を活用することで、訪問者に応じたコンテンツを出し分けられることがわかったのだ。

しかし、Webパーソナライゼーション機能だけでは利用できなかったため、米山氏は即座にデジタルマーケティングを取り組み始めていたIT分野の営業部門に相談し、結果として、わずか3か月後、2018年10月より「Marketo Engage」を導入することになった。

実は営業部門もデジタルマーケティングの活用に関してさまざまな課題があり、その解決手段としてMAツールを導入することについて検討していたが、単独の部門で良いMAツールを導入するには、コスト的に難しい状況だった。

そこで、本社と営業部門が連携して導入するMAツールを、社内で部門の垣根を超えた使い方をすることで、コーポレートサイトからは事業部門への送客強化により事業貢献を実現でき、営業部門側では送客された訪問者をMAでシームレスに把握し、SFA連携でリアルな営業活動に貢献できる。

つまり、コストを按分するだけでなく、データを共有することで部門横断の営業活動が可能になると考えた(米山氏)

2018年11月、早速「Marketo Engage」をトライアルで活用した。具体的には、コーポレートサイトに、流入が多かった価格比較サイトからの来訪者に、家電サイトへの誘導を図るバナーを掲出したところ、クリック率がなんと30%を超えた。当該サイトにリンク先の変更依頼をしたこともあって現在は下がったものの、こういったリコメンドのクリック率は1%程度といわれるのに対し、スマートフォンで掲出したり、季節的な需要増の時期に掲出したりすることによって、5%を超えることがあるという。

クリック率が30%を超えた
価格比較サイトからの訪問者を、日立の「家電FANサイト」へ誘導するリコメンドを実施。クリック率が30%を超えたという

リコメンド、検索性、導線等に腐心したリニューアル施策
多面的な効果を得ることに成功

主なリニューアルの施策をまとめてみよう。

  • コーポレートサイトトップページのブランディングエリアに、リコメンド機能を活用して訪問者の属性に応じて画像やリンク先を変更
  • 企業情報やお問い合わせなどの導線を整理してグローバルナビに集約
  • 近年のユーザー行動にあわせて「検索ボックス」を中央に配置
  • 訪問者に伝えたい最新情報をトップページに掲載し、コンテンツへのダイレクトな送客を実現

こうした施策の積み重ねにより、2019年6月に完了したリニューアルでは、かつて40~50%だった直帰率が一般的な30%台に改善し、事業や事例などのページやコンテンツへの送客強化を実現。なお直帰率低下にはシンプルなデザインで表示速度が大幅改善されたことも貢献している。

また、用途・ターゲットなどに合わせたリコメンドによってクリック率が数%以上向上した。こういった取り組みが注目され、各種メディアに掲載されたほか「Marketo Champion 2019」の受賞などにつながった。

さらに改訂前と比べて、事業部門サイトへの送客数は、例えば産業分野のWebページでは300%も向上し、事業部門のリード獲得に大きく貢献した。他にも訪問者あたりのPV数は140~160%に増加、検索件数も150%以上増加し、検索内容も企業情報や事業関係が増えるなど、多面的に効果が上がったという。

クリック率が30%を超えた
トップページの改訂ポイント。導線の整理、ブランディングエリアの送客活用、検索ボックスの中央配置など「欲しい情報にすぐにたどり着ける」改善がなされている

部門連携することでデジタル化の価値が向上
今後さらなる相乗効果に期待

今回のリニューアル施策について、米山氏は「『確かな施策を打てば、成果はかならず出る』ということを実感した」と振り返りつつ、これらの「施策成功には営業部門との連携が必須だった」と語った。「Marketo Engage」の導入が決まった後も、2018年12月から営業・事業部門の宣伝/Web、企画部門を訪問し、Web改訂とMA導入について説明を行ってきたという。米山氏は各部門との連携のコツについてこう語る。

「Webパーソナライゼーション」という“機能”を使ってほしいという要請ではなく、コーポレートサイト トップページの一等地である”ブランディングエリア”を事業部門への「送客に使って欲しい」と提案した(米山氏)

また「Marketo Engage」でコーポレートサイトからの送客が増え、営業活動に高い効果が期待されることで、必然的に課題だったSFAの活用が活性化することや、「Marketo Engage」自体も顧客の動向がメールで送られるなど、簡便に営業活動に活用できることも強調して伝えた。

さらにITの営業部門のデジタルマーケティング部隊がサポートすることにより、「説明に赴いた全ての営業・事業部門が快諾し、連携が実現した」という。部門が得られる実効的なメリットについての丁寧な説明や不安を解消するコミュニケーションなどの重要性も説いた。

日立製作所のデジタルマーケティングの全体像
日立製作所のデジタルマーケティングの全体像

トリプルメディアを活用してさらなる事業貢献へ

現在、日立のWebサイトでは「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」といったトリプルメディアを活用して既存・新規顧客の誘導を図っている。そして、コーポレートサイトへの訪問者に対し、各施策によって各事業部門サイトへ送客し、両サイトのデータを分析したリードのニーズの解析結果などを事業部門と共有しているという。当然ながらそれらのデータは展示会やセミナーなどへの誘導やリアルの営業活動にも役立てられている。

今後はさらにトリプルメディアを活用して事業部門への送客を図り、SFAのリード情報収集などアフターコロナ時代の営業活動を支援していきたい(米山氏)

さらにこうした成功事例を示すことで、さらに多くの部門からも連携を希望する手があがっており、海外拠点からも利用・連携を期待されているという。

米山氏は「短い期間ながら私たちの取り組みが成果をあげられたこと、そしてコロナ禍の影響もあって各部門との積極的な連携が進みつつある。今後もビジョンに掲げたとおり、様々な施策を通じて事業に貢献していきたい」と語り、まとめの言葉とした。

日立製作所のコーポレートサイトのリニューアルのカギとなった「Marketo Engage」は、顧客体験を通してレベニュープロセスを加速する。アドビの松井氏は「“顧客のエンゲージメント”をコンセプトに、必要なコンテンツを最適なチャネルから適切なタイミングで提供し、最適な顧客体験を構築する」と改めて強調し、導入検討から情報収集まで状況に応じた対応の用意があることを伝え、セッションを終えた。

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