『動画広告"打ち手"大全 最強の戦略74』(全11回)

動画広告施策でよくある3つの失敗パターンと成功する設計方法

動画広告施策は、目的やターゲット、配信メディアを絞って設計するのが基本。欲張った設計は失敗のもとになります。よくある3つの失敗パターンを紹介します。(第7回)

2020年3月6日発売の書籍『動画広告"打ち手"大全 最強の戦略74』の第1章全てと、他5節をWeb担で特別公開。

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欲張った設計は失敗のもと

目的、ターゲティング、メディアを絞り込むのが基本
Chapter 2 施策の基礎設定 共有可能な言葉で方向性を定める

動画を制作するとなると、あれもこれもと盛り込みたくなりますが、それでは誰の心も動かせず、ネガティブな印象をも与えかねません。よくある失敗例と、施策への向き合い方を含めた対策を紹介します。

狙いが定まらないと中途半端な動画になってしまう

動画広告施策では、1つの目的やターゲット、配信先のメディアに絞って動画を制作することが基本です。施策の目的により、求められる内容は変わります。ターゲットやメディアについても同様で、これらを絞り込むほど、限られた時間の中で効果的な訴求ができる動画になります。

反対に、1本の動画で複数の目的やターゲットへの訴求を目指してしまうと、何を伝えたいのかわからない中途半端なものになってしまうおそれがあります。複数の目的、ターゲット、メディアが選択肢にある場合は、それぞれを絞り込んで施策を設計するのが望ましいです。

しかし、実際に動画広告施策を起ち上げると、周囲からさまざまな意見が出て、当初の考えにはなかった目的やメディアが加えられてしまうこともあります。このような欲張った設計は失敗につながりやすいので、当初の設計事項を明確にして不要な要素は加えないよう、周囲の理解を求めましょう。

動画広告がネガティブな印象を与えるおそれも

人々は、日々さまざまなメディアやアプリで魅力的な動画コンテンツに触れています。中途半端な内容の動画広告では、手を止めて見てもらうことも難しいでしょう。

見てもらえないだけならまだいいのですが、ターゲットにとって見当違いな訴求をしてしまうと、違和感からネガティブな印象を持たれてしまいます。これでは、せっかくの動画広告がマイナスの結果になりかねません。動画は静止画よりも強い印象を与えるため、ネガティブな印象も生みやすいと心得ておく必要があります。

特に、YouTubeのインストリーム広告では注意が必要です。強制的に再生が始まるので、視聴者はSNSの動画広告のように無視できず、ストレスが強くなるためです。

欲張った設計による失敗のよくあるパターンは、次の3つに分類できます〔図表17-1〕。

  • 複数の成果を求める
    認知目的の施策で購買の成果まで欲張ってしまう
  • 広すぎるターゲティング
    異なる動画でアプローチすべき相手に、同じ動画で広告配信してしまう
  • メディア間での使いまわし
    YouTubeを想定して制作した動画を、SNSにもそのまま広告配信してしまう
欲張った動画広告の失敗パターンと例〔図表17-1〕

具体的な失敗例を次に紹介します。

態度変容と購買の両方を期待するのはNG

1つ目は「複数の成果を求める」です。例えば、アパレルブランドがブランドのコンセプトやポジショニングを再構築するリブランディングを行い、動画広告を配信するとします。

このとき、新しいビジュアルやブランドメッセージを伝えて認知を得るための内容と、価格情報を押し出して購買を促進する内容を1つの動画に混在させては、どちらも印象が弱くなってしまいます。

複数の目的を設定するケースとして、購買目的の動画広告で認知などの態度変容も期待することはあります。しかし、この場合の認知はあくまでも副次的なもので、両方の期待を動画に込めるのはNGです。動画はあくまでも1つのもっとも重要な目的のために制作しましょう。

受け止め方が異なるターゲットにまで配信しない

2つ目は「広すぎるターゲティング」です。本来は異なる内容の動画でアプローチすべき複数のターゲット群に対し、同じ動画で広告配信してしまうと、期待する成果を得られません。

例えば、家事代行サービスの動画広告は、ターゲットの家族構成によって、自分ゴト化して捉えてもらえるかどうかが変わるでしょう。日々忙しく育児に追われている夫婦に向けては「家族全員の時間が増えて家庭が明るくなった」といった動画が効果的でも、単身者には響かない、ということも起こり得ます。内容によっては反感を買ってしまうこともあるでしょう。

このような失敗を避けるには、それぞれのターゲット群に対してどのような訴求が効果的か、またネガティブな印象を与える可能性はあるかを考慮したうえで、広告配信のターゲティングを把握し、既婚者だけをターゲットとするなどの設定を行います。

なお、複数のターゲット群に対して別の動画で訴求したいときは、冒頭部や前半部分をターゲットに応じた内容で制作し、後半部分の補足情報やLPへの橋渡しの内容は共通にする構成がおすすめです。これなら工数をあまり増やさずに効果的な訴求が可能です。

メディアにより受け入れられやすい動画は変わる

3つ目は「メディア間の使い回し」です。例えば、YouTube用に効果音やナレーションを工夫して制作した動画があるとして、それをそのままTwitterで広告配信しても、音声なしで視聴せざるを得ないオーディエンスにとっては物足りなく感じられ、視聴してもらうことは難しいでしょう。

そもそも、インストリーム広告であるYouTubeと、アウトストリーム広告のSNSでは、表示のされ方はもちろん、見られ方も大きく異なります。また、SNSの中でも、メディアにより特性は異なります。同じ動画を利用するにしてもメディアにあわせて内容を調整し、単純に使い回すことは避けましょう。

経験を積めば、複数のメディアに向けた動画を同時進行で企画・制作することもあります。しかし、慣れないうちは1つのメディアだけを想定して取り組んでください。(鈴木)

まとめ

欲張った設計には注意が必要です。少なくない費用と工数をかけた動画広告で「二兎を追うものは一兎をも得ず」どころか、マイナスの結果とならないよう気を付けましょう。

 

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『動画広告
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  • 発行:インプレス
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