インタビュー

サイト担当者は“クッキー規制”にどう対応すべきか。専門家が明かす2つのポイント

データ取得は正々堂々と行い、データを活用することでユーザーに利益を還元する。それがパブリッシャー(媒体社)が生き残る道という江川さんに話を聞いた。
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日本でも3月10日に個人情報保護法改正案が閣議決定し、日本でのCookie規制も待ったなしの状態である。

世界に目を向けるとすでに欧州では、一般データ保護規則(GDPR)が2018年5月より施行され、EU圏内のユーザーによるサイトへのアクセスがあった際、ユーザーの同意なしに個人情報を取得してはならないという制約が設けられている。アメリカのカリフォルニア州でも「CCPA」と呼ばれる同様の法令が2020年1月から施行されている。

Cookieを巡り、データ取得、広告ビジネスなどの変革が進む時代に、パブリッシャーはどう対応していけばいいのか。この問題に長年取り組んでいるのが、東京都渋谷区に本社を置くPIANO Japan株式会社代表取締役社長の江川亮一さんだ。彼に話を伺った。
【聞き手】Web担当者Forum編集長 四谷志穂 【撮影】小沢朋範

PIANO Japan株式会社代表取締役社長の江川亮一さん

インターネット広告の登場以降、PV至上主義が続く

実は、取材をした3週間後の3月10日に個人情報保護法改正案が閣議決定し、2022年春ごろに施行されることが決定した。Cookie利用に関する条件も盛り込まれており、罰金の上限も1億円にひきあげられている。

つまり日本でもCookieを含むデータ保持に、法的条件が設けられることになる。パブリッシャー(媒体社)は、これまでの広告モデルから新たなビジネスモデルへの変換を迫られているわけである。

このような状況をすでに予測していたという江川さんは、日本国内のインターネット広告の動きを中心にこう振り返る。

シーセンスの(現:Piano/ピアノ)の日本法人ができたのが2010年12月。その頃日本国内では、アドネットワークを活用した広告ビジネスが盛んで、多くのパブリッシャーや企業は、いかにページビューを増やすか、いかに単価の高いネットワークとつなぐか、といったことに注視していました。

その当時、自社メディアのオーディエンスデータを取得して、収益化していくという視点はほとんどなく、データそのものの価値に気が付いていなかったと思います。

一方、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)はいち早く「データの価値」に着目し、データによって大きな富を生み出していきました(江川さん)

DMPの浸透とともにデータの価値に気が付きだしたパブリッシャー

そんななか、2015年に「DMP(Data Management Platform:データ マネジメント プラットフォーム)」というキーワードが業界内で浸透したことで、オーディエンスのデータが注目されるようになっていったという。

このあたりから、パブリッシャーや企業も、それまでのページビュー至上主義だった考え方から、ユーザーのエンゲージメントや、広告そのものの価値を高めていかないといけない、という考え方に変わっていきました(江川さん)

オーディエンスデータの活用というと、広告ビジネスを連想するかもしれないが、編集面でもこのデータは役立つ。たとえば、自分達が制作しているコンテンツがどういったユーザーに読まれているのかがわかれば、編集やコンテンツの企画に役立てられる。

実際にここ3年くらいで、パブリッシャーがタイアップ広告の広告主へのレポートに、オーディエンスデータを付記するといったことが増えているという。従来のタイアップ記事の指標は、PVやUUだったことが多いが、記事を読んだユーザーの興味関心や、会員化を進めているパブリッシャーであれば、ユーザーの性別や年齢などのデモグラフィックデータを付けることで、広告価値そのものを向上できる。

データで価値を生む

データに関する法整備に話を戻すと、欧州では2018年5月に欧州でGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)施行された。これはGAFAによるデータ独占への対抗策であるとともに、生活者が自身の情報をコントロールするための権利を守るために施行された法律である。

GDPRが施行される前に、欧州各国では、パブリッシャーのネットワークができたという。日本で言うと、新聞社や出版社が連合を組むようなイメージである。

FacebookやGoogleが武器としているところは、性別や年齢といったユーザーの具体的な情報で、ターゲティング広告が出せるという点です。またアドネットワークを介した、豊富な広告配信面を保有していることです。

パブリッシャー1社単体では、取得できるユーザー情報も限られ、配信面が足りない。つまり「インプレッションが足りない」ということが起きます。そこを補うために、パブリッシャー同士が連合を組んだわけです。そういった取り組みのなかで、欧州でも急速にDMPの活用が進んでいきました(江川さん)

「日本でもパブリッシャーが連合を組み、GAFAを介さず直接広告主と繋がっていく仕組み作りが今後必要になってくる」と江川さんは言う。

こうした将来を見据え、ウェブサイトのパーソナライズやマネタイズを支援するのが、江川さんはじめとするPIANO Japanの取り組みだ。実際PIANO Japanの顧客にはパブリッシャーが多く、その数350媒体を超える。

しかし国内のウェブサイト全体を通じて見ると、ユーザー情報を収集していても、ユーザーの同意を得ていないサイトも多い。こうしたサイトは時代の変化についていけていないところも多いと江川さんは警鐘を鳴らす。

世界では、欧州GDPRだけでなく、米CCPA(California Consumer Privacy Act)も今年に入り施行されました。法制面以外にも、SafariやGoogle ChromeをはじめとするブラウザベースでのCookie規制もどんどん強化されていっています。ユーザーの同意のないデータを活用したビジネスモデルは、終わりを迎えつつあります。現に、一部ブラウザ上での運用型広告の単価が半減している状況にあります(江川さん)

こうした状況を悲観するのではなく、むしろビジネスチャンスだと捉えるべきで、実際に収益増に転換した米Business Insider(ビジネスインサイダー)の例を挙げた。

米Business Insiderの事例

米Business Insiderでは、従来のアドネットワークを介したディスプレイ広告に依存したビジネスモデルから脱却し、読者の会員化を推進し、サブスクリプションモデルを確立した。その結果、収益は右肩上がりの成長を続けている。もちろん収益増は、会員化だけが寄与しているわけではないが、会員データによって、取り扱うコンテンツの質の向上や会員により良い体験やサービスを提供できたことがこのビジネスモデル躍進の背景にある。

データ取得は堂々と取得し、利益を還元する

このように、サイトの価値を創造し、正々堂々とデータを取得し、そのデータを活用して、ユーザーや広告主にその利益を還元していくことが重要である。そのためには、まずパブリッシャーは次の2つを意識するべきである。

アドネットワーク依存の収益構造を変える

一つはパブリッシャーや企業側が、サードパーティーや他のプラットフォームに依存にした収益構造自体を見直していかないといけない点である。

顧客ニーズを理解し、エンゲージメントを高める

ユーザーのニーズを再度理解し、エンゲージメントを高められる体験を提供しなければならない。

たとえば、集めたユーザーのデータを360度見えるような形で可視化をしていく。パブリッシャーならではの属性データを持って、広告主・ユーザー双方に気付きを与えてあげることで、サイトの価値向上を図る。イベントなどでユーザーとの直接的な接点を設けるなどして、サイトの信憑性・信頼性を上げていくなどの施策が求められてくるという。

最後に、江川さんはビジネスモデルの変換による「ユーザーの減少を恐れないこと」だと言う。

たとえ月間100万UUのサイトが、将来的に10万UUになっても生き残っていけるやり方も考えておくべきでしょう。企業側は、データを読者のために集めて活用しているという趣旨を胸を張って言うべきだと思います。これによって失うユーザーも現れるでしょう。しかしこうしたユーザーは囲い込みの対象にはならない“一見さん”だと思って捨てる覚悟を持つところまで来ていると思います。時代の変化をむしろチャンスと捉えて、そういったユーザーにも読んでもらえるようなサイト作りを作っていってほしいです(江川さん)

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