【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Autumn

CDPは複雑化するデジタルマーケティングの救世主となるのか? 導入の際にやるべき5つのポイント

CDPを効果的な運用につなげるためにやるべきポイントを解説
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CDP(Customer Data Platform)は、クロスデバイスやオムニチャネルといった潮流の中で、ユーザー行動を正しく分析・理解するためのツールとして期待を集めている。だが導入後、効果的な運用にまでつなげようとすると、ハードルは決して低くないようだ。

Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」に登壇したアンダーワークスの谷口智史氏は、デジタルマーケティング専業コンサルティング会社の立場から、その勘所を解説した。講演タイトルはズバリ「CDPは導入すべきか?やめるべきか? ~成功事例と失敗事例から考える~」である。

谷口智史氏
アンダーワークス株式会社 マネージャー 谷口智史氏

増加するCDP導入

「デジタルマーケティング」といっても、広告、MA、CRM、BI、Webアナリティクスなど、その範囲は、多岐に渡る。多くの場合、それぞれが独立していて、ログやデータというレイヤーでは連携がとれていない。

これらの要素を“1人1人の顧客”の観点で連携させ、より精緻なデータ分析を行おうというのが、講演の本題になっているCDP(Customer Data Platform)である。

CDPの位置付け

谷口氏は「一時期は“CDP”がバズワード化していた」とも評するが、市場データの面からもCDPの隆盛ぶりはうかがえる。世界全体では、2016年12月期にCDPベンダーが23社だったところ、半期に約10社ずつのペースで増え、2018年12月期には78社にまで増加。従業員数、資金調達額も着実に増えているという。

なぜCDPが必要なのか?

ではなぜ、ここまでCDPが求められるようになったのか。谷口氏は、その背景としてユーザーの変化をあげた。まず指摘したのは、顧客行動のクロスデバイス化である。ある1人のユーザーが買い物をする場合、その起点がスマートフォンだったとしても、途中でPCやタブレットに端末を切り替え、その後スマートフォンに再び戻って決済する、という行動は決して珍しくない。

チャネルも多様化した。1台のスマートフォンで、あるサービスにアクセスしようとしたとき、Webを使うかアプリを使うかでもログは分散する。ましてやブラウザを複数使い分けたり、SNSから流入する可能性もある。こうなると、本来1人と認識すべきところが、データ分析上は10人以上と認識してしまう恐れがある。

本来は1人と認識すべきユーザーを、データ上は10人以上とカウントしてしまう可能性がある

こうなると当然、データの正確性には疑問符が付く。これを正すのが、データ統合プラットフォーム、CDPの存在である。

CDP導入のための6ステップ

とはいえ、CDPの導入を巡っては難題も多い。アンダーワークスでは、以下のような相談が数多く寄せられているという。

  • 数億円かけてCDPを導入したがホコリをかぶっている
  • 構築を始めたが、利用イメージがわかない
  • 使い方がわからないので運用をまかせたい

CDP導入で成果が出る・出ない以前の問題として、構築も運用もできていないのが、実情のようだ(谷口氏)

この現象を考える上で、アンダーワークスではまず「CDP導入のための理想的6ステップ」を、次のように定義したという。

  1. 戦略・ビジョン
  2. KGI/KPI設計
  3. 顧客体験の設計
  4. 各顧客接点の設計(デジタル~リアル)
  5. ITインフラの整備
  6. 業務体制の見直し

まず起点となるのが、「戦略・ビジョン」。ここがすべてのスタートだ。これに続く「KGI/KPI設計」のステップで、具体的な数値目標などにまとめる。以下、3~6へと施策を進めていく。一連の流れの中では、Web解析用にどんなタグを埋め込み、パラメータをどう設定するかなどの技術的な対応や、施策を微調整するためのディレクションも当然欠かせない。

ステップを進める上で実施すべき具体的なタスク

CDP導入における提供側の課題

6ステップを進める上で重要なのは、6ステップのどれか1つだけに力を注ぐのではなく、6ステップを緻密に連携させることだ。

各ステップをつなぐことが、CDP導入では重要

「連携する」といっても、なかなか難しいのが実情だ。たとえば、ビジネスコンサルティング会社は「戦略・ビジョン」の立案には長けていても、それ以外のKGI設計や顧客体験の設計については、必ずしも専門家ではない。またSIerはITインフラの整備で抜群の力を発揮しつつも、やはりそれ以外の企業全体目標を立案するスキルがないことが多い。CDPを売るベンダー側にもこうした認識が必要だと谷口氏は訴える。

CDP導入における導入企業側の課題

もちろん、CDPの導入企業側にも課題はある。エンドユーザーの購買体験は、ここ10年で確実に変化した。ユーザーは、SNS投稿で商品を発見し、店頭で見て、Amazonのレビューを読んで判断し、最終的にはブランドECサイトで購入する、という購買行動をしている。

これは客にとっては、なんの問題もないスムーズな流れだが、この流れを企業側の担当部署で分けようとすると、そう簡単にはいかない。たとえば、以下のように部署ごとで担当する領域がわかれている。

  • SNSアカウントを運用するのは広報部
  • Webに広告を出すのは宣伝部
  • ブランドECサイトを運用するのはマーケティング部

このため、データを他部署の人間が把握しづらかったり、人事評価が部門単位で行われたりするために他部署に関しては「我関せず」で終わってしまいがちだ。

顧客行動のシーン別に担当部署が分かれてしまっている

また大企業の場合は、ジョブローテーションの問題もある。デジタルマーケティングは極めて速いスピードで進化・変遷しており、知識の習得には多大な時間がかかる。しかし、3~5年程度の周期で転属になってしまうと、知識の蓄積が簡単に失われてしまう。

CDPを導入するにあたって、よく「運用できるのか?」「投資対効果はあるのか?」と聞かれるのだが、もはやそういう次元の話ではない。現実に顧客データは分散しているし、市場も変わった。それなのに、間違っているかもしれないデータで経営判断をしていて良いのか?(谷口氏)

企業側は今まで、研究機関や広告代理店がまとめたデータを購入するなどして、「使う」ことが一般的だった。しかし、時代は変わった。企業にとって本来必要なデータは、企業が「作る」時代へと変貌したと谷口氏は指摘。そのためのツールがCDPだと語った。

最も重要なのは「KGI/KPI設計」

では、CDPをトラブルなく導入・活用する上で最も重要なポイントは何か? それは、6ステップのうちの第2ステップの「KGI/KPI設計」だという。

第1ステップの「戦略・ビジョン」で、仮に「デジタルトランスフォーメーションの実現」に設定したとする。では、それを実現するための数値指標はなんだろうか。

売上、顧客単価、来店者数、アンケート調査による顧客満足度など指標は多くあるが、これを規定するのは難しく、谷口氏も「今の段階でできなくてもそれは仕方のないことだ」と認める。結局、KGI/KPI設計が明確にできないまま、Webサイトリニューアルなどの個別施策だけを推進してしまうことになる。

またCDPで施策の成果を判断するといっても、Googleアナリティクスだけに任せることはできない。

Googleアナリティクスは1回のセッションの中で、ゴールに達した人の数を数えるだけのツールとも言える。だが実際に顧客行動を考えてみた場合、特定のデバイスの1回のセッションで物事を完結させる顧客がどれだけいるのか、それに当てはまるビジネスモデルは果たしてそんなに多いのだろうか。GAだけでデジタルトランスフォーメーションの達成度を判断するのは、よくよく考えれば難しい(谷口氏)

CDPは、企業全体の目標から、それこそSNSの1投稿のクリック率まで、実に幅広いKGI/KPIを混在させるシステムだ。以下の図は、不動産販売会社におけるKGI/KPI設計の例である。

KGI/KPIの設計例

こうして、KGI/KPI設計がしっかりなされたCDPを導入できれば、「売上を30%伸ばしたい」という目標が社命として降りてきた時、どのKPIが上がれば達成できるか考えやすい。具体的にどんなキャンペーンを企画するか、ツールを入れるかなどの判断も、同様に容易だ。

谷口氏によるとGAは、Googleが考えるKGI/KPI設計があらかじめなされている。だからこそ簡単に利用でき、ユーザー数も多い。しかし谷口氏が繰り返し指摘するように、KGI/KPIは、企業側の目標に応じて柔軟に設定しなければならない。次の2点に気付くことが、CDP導入のスタート地点だという。

  • 「Webの施策をやるならまずGA」という先入観を捨てる
  • マインドセットを大きく変える

データ収集を行う前段階で「データアーキテクト」を固める

CDPはデータのプラットフォームなのだから、かたっぱしからデータを取得すればいいのだろうか? それは大きな間違いだ。適切なタグやパラメータを設定しておかなければ、売上を施策別に細分化することはできない。よって、データ収集を行う前段階で、データをどう構造化するかという「データアーキテクト」をしっかり固めておかなければならない。

「データ収集」の前に、まず「データアーキテクト」を考える

またCDPを導入しても、マーケティング成果アップなどに直接つながらない、あるいは売上が下がるケースが稀にあることも念頭に置いておくべきという。これはマーケティングの粒度に起因する。

CDPを導入すると、極めて細かな顧客ターゲティングが可能になる。しかし、CDP導入前はターゲティングの範囲が粗いため、結局「ラッキーパンチ」的にとりこめた客のデータも成果に含まれてしまう。CDP導入でターゲティング精度が上がるため、結果「1施策あたりの売上(アップ効果)」が相対的に落ちるケースもあるのだ。データの正確性が高まるがゆえの現象として、注意が必要である。

加えて、CDPが導入できたとして、それを運用する人員がいなければ、マーケティング施策の数は増やせない。CDPの導入の際には、AIによる施策の自動化なども必要になるだろうと谷口氏は語る。

CDPを導入するために今やるべきこと

谷口氏は最後に、CDPを導入するために今やるべきことは次の5点だと示した。

  • 人の考えたツール、データに頼ることをやめよう
  • 自社に必要なデータを自社で定義して構造化~統合しよう
  • 構築には専門家だけでなくオールラウンダーのパートナーを探そう
  • ビジネスに重要なデータを蓄積しよう
  • それにより自動化のフェーズに進めるようにしよう

これまでは多くの人が、すでにあるデータやツールに頼りきりだった。そこへCDPだけを入れても、おそらく意味は無い。自分たちに必要データをしっかり考え、その上で構造化してほしい(谷口氏)

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