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消費税10%前の駆け込み需要で売れるモノは? 8%増税時の消費行動データから生活者心理を探る

過去の消費税増税時のさまざまなデータから、生活者の購買行動や心理の変化を振り返る。

この記事は、Intage 知る Galleryで公開された記事の許諾を得てWeb担当者Forum向けに再編集したものです。

※本記事は2014年12月に発行した『インテージ消費税増税 影響分析プロジェクト』のレポートを再構成しています

消費税8%→10%増税前の駆け込み需要はあるのか?

2019年10月に予定されている消費増税。実務的な運用の課題はまだ検討が続いていますが、消費にはどのような影響が想定されるのでしょうか。

この記事では、前回の2014年4月の5%から8%への消費増税時に小売店がどのような動きをとり、生活者の消費行動にどのような変化が見られたのか、データで振り返りました。

目次
  • 増税直前の駆け込み需要 その規模は?
  • 増税後の消費落ち込みに備える小売店の工夫
  • 増税後に見られた生活者の変化は?

増税直前の駆け込み需要 その規模は?

まずはインテージの消費者パネルデータSCIを用いて、2014年4月の「消費増税前」の生活者の消費行動を見てみましょう。消費税は1989年の導入から現在まで、図表1のように増税されてきました。

図表1

1997年3月と2014年4月は曜日の並びが同じだったため、増税の動きを週別に並べて比較します。

まず、1997年の増税(消費税3%→5%)直前週の生活必需品(飲食料品・雑貨・化粧品)の購買額は、前年と比較して16.9%増加しました。これに対して、2014年の増税直前週の購買額は対前年42.8%の増加と、1997年の増税時を大きく上回りました(図表2)。

図表2

2014年の増税時は、特に日用雑貨品の購買量が伸びています。図表3は、購買量の前年比が高い順にカテゴリーを並べたものです。比較的長期のストックが可能なものが多く、上位には日用雑貨品が集中し、次に調味料や飲料が続いていました

図表3

次に、2014年の増税前に購買額が大幅に増加した原因を探るため、生活者の買い物の仕方を分析しました。その結果、2014年の3月に「まとめ買い」を行った人の割合は、1997年3月と比較して24.9%から29.7%に増えていました(図表4)。

このまとめ買いをした人たちは、3月に1人当たり平均122品目を買っていました。1997年の112品目から1.09倍と、買うものの「幅」を広げていたことになります。また、1つひとつの品目でもまとめて買う量を増やしていて、133品目で前年より買う量が増えていました。これも、1997年の95品目から1.4倍と、買うものそれぞれの「まとめ買い量」を増やしていたことになります。

図表4

このように消費者のまとめ買いが増えた裏で、小売店はどのような工夫をしていたのでしょうか。当時の店舗の取り組みが見える材料として、「インテージチラシインデックス(全国のチラシ情報を収集したデータ)」を用いてスーパーのチラシのうたい文句を調べました。

すると、増税直前の週に発行されたチラシの89%に「税」「まとめ」といった文言が入り、ほとんどのチラシに何らかの増税関連ワードが掲載されていました(図表5)。

図表5

たとえば、増税の2週間前となる2014年3月17日週のチラシでは、「食卓の必需品はお早めに」「毎日使うもの」「日持ちするもの」などのストック買いを提案するワードや、「計画的に」「今のうち」といったワードが散見されました。また、直前となる3月24日週には「あと○日」「ラストチャンス」といった言葉が目立つようになっていました。

このような小売店のキャンペーンが生活者の購買行動に影響を及ぼしたかどうかを確認するために、消費増税前に購入した品目の購買きっかけをアンケート調査したところ、増税に関連したセールを店頭やチラシを見て行った衝動的なまとめ買いが、さまざまな品目で見られました(図表6)。

図表6

特に清涼飲料や炭酸飲料などの飲料系は店頭セールによってまとめ買いが促進され、柔軟剤や洗濯用洗剤などの日用雑貨やまとめ買いセールが多い乾物などは、チラシでも促進されたことがわかります。

一方、増税前に「駆け込み需要」という言葉が使われた新聞や雑誌の記事の数は、1997年よりも2014年の方が多いという調査結果(「駆け込み需要」の現代史)もあります。報道を通しても駆け込み消費、まとめ買いといった空気が高まっていたと考えられます。

2014年の消費増税は引き上げ幅が3%と、1997年の増税より大きかったことや、マスコミや店頭でもまとめ買いを促進する動きが目立ったことで、生活者の購買意欲が強くかき立てられ、駆け込みでの消費が増えたといえそうです。

増税後の消費落ち込みに備える小売店の工夫

2019年10月の消費増税時は、飲食料品の多くが増税対象外の品目となる見込みです。つまり「今のうちにまとめ買いをしておくべきもの」は、前回の増税時と比べて少なくなります。この結果、まとめ買いは同様に起きるのでしょうか? その対象は何になるのでしょうか?

1997年の増税時は、まとめ買いによる駆け込み需要の後、反動で市場が落ち込む現象が見られました。それを経験した小売店は、2014年に消費増税が施行された直後、どのような施策を実施したのでしょうか。「買い物に出かける前」と「買い物をする場所」という2つのタイミングで、小売店がどのような施策をしていたのかを見てみましょう。

まず、買い物前に目にするチラシに登場する言葉から、どのようなキャンペーンを実施して生活者に何を訴えていたかを見てみました(図表7)。

図表7

価格を訴求するワードは、増税前の2013年のすべてのチラシでも使われていましたが、増税直後も同様にすべてのチラシで使われていました。ここで使われていた価格訴求ワードは「価格据え置き」「価格引き下げ」といったもの。増税による消費者負担を抑える工夫が見られます。また、前年と比べて「お花見」「行楽」「新学期」といった季節イベントに関するワードが増えていました。季節イベントを訴求することで、来店を促す工夫をしていた様子がうかがえます。

次に、「買い物をする場所」である店頭で目にする「価格表示の仕方」に注目してみます。1997年の消費増税の後、2004年に商品の価格を税込みで表示する「総額表示」が小売店に義務付けられました、さらに2014年の増税にともって、「税込み・税抜き」価格を併記して表示可能になりました。

この法改正の結果、店頭の価格表示がどう変わったのかをインテージの「全国店頭プロモーション調査」の付帯調査から見てみました。2014年の増税直前は56%が税込表示だったのに対し、増税から2週後には税込みだけの表示がわずか2%になりました。また、28%だった併記表示が76%を占めていましたが、これは割高感を抑えるための工夫だったようです(図表8)。

図表8

このように、消費者の目に触れる価格を抑えたり、イベントを訴求して売り場を活性化するなど、小売店が消費意欲を喚起しようと工夫している様子が見られます

増税後に見られた生活者の変化は?

最後に、2014年の「消費増税後」の生活者の消費行動にどのような動きが見られたのかを確認してみましょう。

消費増税後の半年間、生活必需品全体の購買金額・数量がどのように推移したのかを見ると、増税直後に購買金額・量ともに前年割れ、5月末までは順調に回復しましたが、6月から回復が停滞しています。この傾向はどの品目でも見られましたが、特に飲料の回復が遅かったようです(図表9)。

図表9

このデータを生活者の年代で比較すると、年代が上になるほど直前の駆け込み消費が多く、消費の回復が早い傾向が見られました(図表10)。

図表10

この購買金額・購買量の動きの要因を、生活者の心理と行動の両面から探っていきましょう。

まず、生活者の心理にどのような変化があったのかを振り返ります。増税から半年経った2014年11月の時点で、「去年と比較して生活のゆとりがなくなった」人は全体で56%と半数を超えていました。特に子育て世代である40代に多く、30~40代では生活が苦しいと感じる人も多くなっています(図表11)。

図表11

また、「増税によって中長期にかけて個人消費が落ち込む」と感じる人が、増税直後の4~5月は42%程度でしたが、時間を追うごとに徐々に増加して11月には60%に達し、じわじわと負担を実感してきた様子がうかがえます(図表12)。

図表12

さらに、内閣府の消費動向調査でも、1年後に物価が上昇すると予想する人が増加傾向にありました(図表13)。増税に加えて物価上昇の懸念も相まって、負担感と先行きへの不安が広がっていったようです。

図表13

次に生活者の消費行動を、「1回の買い物の量」と「買い物に行く回数」という2つの要素に分けて見てみます。2014年6月~10月における1回の買い物金額は、ほぼ前年並みだった一方、買い物に行く回数は前年を下回っていました(図表14)。

増税から半年経っても、生活者の半数が「生活のゆとりが少なくなった」と感じていたり、時間が経つにつれて中長期的な不安を感じる人が増えたりするなど、生活者心理の変化を背景に、買い物の回数が減り、購買の回復が停滞していたようです。

図表14

2019年10月に予定されている次回の消費増税でも、生活者の心理の変化が購買行動に影響を与えることが予測されます。現在、政府では一部の飲食料品の税率8%据え置きや、キャッシュレス決済での2%ポイント還元など、軽減税率制度が検討されています。

これらの軽減税率施策のほか、小売店が実施するキャンペーン・セールなどによって、購買心理の悪化をいかにやわらげられるかが、消費の停滞を避けるためのカギとなりそうです。

調査概要

今回の分析は、インテージの保有するSCI(全国個人消費者パネル調査)、インテージチラシインデックス、全国店頭プロモーション調査の付帯調査、自主企画のインターネット調査のデータをもとに行いました。

  • SCI(全国個人消費者パネル調査)

    全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。このデータからは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「いくらで買った」のかがわかります。消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

  • インテージチラシインデックス

    全国約27,000店舗の折り込みチラシの掲載状況を捉えるデータです。いつ・どこで・何がいくらで掲載されたのかといった商品別の掲載状況のほか、チラシ画像やタイトル情報を収集しています。小売店における施策実施状況の把握にご活用いただけます。

  • SPI(全国店頭プロモーション調査)

    全国小売店パネル調査(SRI)の対象店と共通の店舗(全国370店)にて、調査員が毎週末収集している店頭販促状況データです。店頭プロモーション実施状況の把握や効果の測定にご活用いただけるほか、追加調査で「販促ツール」「什器」有無など詳細な店頭実態を捉えることも可能です。

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