Intage 知る Gallery【出張版】

ドラマの録画視聴で約6割がCMスキップ、WBSも早回しで時短――変化するテレビの視聴スタイル

テレビドラマやニュース番組を例に「テレビの見方」の変化を調査

この記事は、Intage 知る Galleryで公開された記事の許諾を得てWeb担当者Forum向けに再編集したものです。

スマホがあればいつでもどこでも動画が見られる時代。テレビコンテンツは必ずしも“テレビ画面”で見るものではなく、いつでもどこでも楽しめるようになり、視聴スタイルは多様化しています。2018年のいま、テレビコンテンツはどう見られているのでしょうか?

動画配信サービスにはない『テレビらしい』楽しみ方とは?」に続き、この記事では、視聴実態を明らかにするデータから、これからのテレビのチカラの測り方について考えてみます。

スマホで見る人はどのくらい? テレビコンテンツの見られ方

図表1はi-SSP(インテージシングルソースパネル)のメディア接触ログデータで捉えた、主要なスマホ動画アプリの1か月の利用率です。

スマホ動画アプリの利用率
図表1

YouTubeの利用率が最も高く、スマホ利用者の約60%が利用しています。一方、テレビ局公式の見逃し配信サービスのTVerは、スマホ利用者の約6%が利用している結果となりました。

公式の見逃し配信アプリ以外にも、スマホでテレビコンテンツを見る手段は多数あります。

  • 公式アプリでのリアルタイム視聴
  • Huluなどの定額動画配信サービスでの視聴
  • YouTubeなどの動画投稿アプリでの視聴
  • 録画機からの持ち出し再生
  • スマホ本体で録画しての再生

こうした視聴手段を問わず、スマホでテレビコンテンツを見る人がどのくらいいるかを調査した結果が図表2です。

スマホでのテレビコンテンツ視聴実態
図表2

週に1日以上スマホでテレビコンテンツを見ている人は全体の25%、4人にひとりという結果となりました。この割合は若年層ほど高く、10代では6割、20代では4割以上となっています。

さらに、どこで見るかという場所を聞いた結果が図表3です。

スマホでテレビコンテンツを見るときの場所
図表3

多くは家で見るという結果でしたが、駅、電車・バスの車内で見る人が約24%、職場・学校で見る人が15%という結果でした。スマホが、「好きな時間に、どこででも、テレビコンテンツを楽しむ」というテレビの新しい視聴スタイルを生んでいることがわかります。

ここまで、スマホの普及に伴う新しい視聴スタイルについて見てきましたが、テレビ放送ならではの「同時性(放送と同時に受信)」や「みんなで同時に楽しむ」といった、テレビ受信機での視聴スタイルにも変化が見られます。

このような生活者の「テレビの見方」の変化に伴い、テレビの「チカラ」の測り方も、変わる必要があります。デジタル化が進み、さまざまなデータが取得できるようになったいま、どのような測り方ができるのでしょうか?

「タイムシフト視聴(録画再生)」による正しい評価

生活者のテレビの見方の変化を受け、2018年4月から関東におけるテレビスポット広告の取引指標が「世帯視聴率」から「個人視聴率」に変わりました。さらに、放映後7日までのタイムシフト視聴も反映されるようになります※1。この結果、タイムシフト視聴がそれなりの数字を持っているドラマなどはより正しく評価されることになりました。

※1 「All&P+C7」 個人視聴率と7日後までのテレビ番組(プログラム)とテレビ広告(テレビコマーシャル)の意。

「個人」の「タイムシフト視聴」を含めたテレビの見方について、インテージシングルソースパネル(i-SSP)を利用して、2018年春ドラマの視聴状況を例に見てみましょう。

接触率が安定してくる各ドラマの3話目を対象に、ランキングを出してみました(図表4)。ドラマの放送初期は「お試し視聴」も多く、話題性で数字をとりやすい傾向がありますが、3話目くらいになると「継続する/しない」がシビアに分かれてくることから、コンテンツの真の評価が浮き上がってきます。

2018年春のドラマ接触率ランキング、1位ブラックペアン
図表4

リアルタイム、タイムシフトを統合した総合ランキング1位は「ブラックペアン(TBS)」。リアルタイムとタイムシフトともに1位であり、さらにタイムシフトのスコアの方がリアルタイムのスコアを上回っていました。このような視聴は、視聴者に「見逃せない番組」というイメージが形成されている番組に多く、最終回まで一定数の視聴者を維持する傾向があります。

また、「コンフィデンスマンJP(フジ)」や「Missデビル(日テレ)」「モンテ・クリスト伯(フジ)」のように総合ランキングで見ると、リアルタイムランキングの順位を上回るものもあり、リアルタイムの視聴だけでは評価しきれない価値を持っていることがわかります。

タイムシフトが、新しい番組価値を照らし出している、と言えそうです。

タイムシフトはテレビCMの敵? 「CM飛ばし」の実態

次にインテージのスマートテレビ視聴ログ「Media Gauge TV」を用いて、タイムシフト視聴の実態を詳しく見てみます。

スマートテレビ視聴ログとは、ネットに接続されたテレビの操作履歴データのことで、チャンネル選択などの行動を秒単位で把握することが可能です。さらには、ネットに接続された録画機のデータも収集しており、再生はもちろん、早見再生(倍速再生)やCMスキップなど詳細な操作履歴の分析ができるため、広告主の関心の高い「CM飛ばし」などの視聴実態を浮き彫りにすることも可能です。

たとえば、図表5は2017年11月に放送されたあるドラマを「録画番組再生マップ」として視覚化したものです。縦軸は操作率、横軸は番組の経過時間軸を表していて、「どの時点でどのような操作が何%の録画機でされているのか」がわかります。赤く塗られた時間帯は「CM時間」を表し、CM時間帯に再生している録画機は、2~3割であることがわかります。残り6割程度の録画機は、CM時間帯を文字通り「スキップ=CM飛ばし」している状態です。

あるドラマの録画番組再生マップ
図表5

同様に、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」のとある放送回のデータを見てみましょう(図表6)。前述の図表5とはまったく違う形になっています。

ワールドビジネスサテライトの録画番組再生マップ
図表6

多くのビジネスマンの情報源として愛されているこの番組は、音声が聞き取れる状態で早回し再生される「早見再生」が多用されていることがわかります。「時短で。でも大切な情報は逃したくない」そんなニーズがこうした視聴形態を生んだと考えられます。CM時間帯も早見再生を含め、半数近くが視聴しており、完全にスキップしていた先ほどのドラマとは大きな違いが浮かび上がってきます。

この「テレビの見方」からは、「早見再生だと普通に聞こえる、『早見再生を逆手に取ったクリエイティブ』」など、クリエイティブ開発のアイデアも浮かび上がってくるのではないでしょうか。

子供向けのアニメなどの場合、テレビCMそのものが番組コンテンツを模したしつらえとなっており、CMがほとんどスキップされないという分析結果もあります。タイムシフト視聴だからといって、必ずしも「CM飛ばし」されるわけではないのです。

このような実態を受けて、今後はタイムシフトの再生状況を前提とした番組作りやテレビCM作りがなされることが期待されます。

新しい視点はだれを幸せにするのか?

「世帯視聴から個人視聴へ」という潮流は、広告主に新しい分析視点を整備する必要性を喚起しています。その結果、呼応するサービスも次々と生まれてきています。

詳細な属性設定はもとより、実際の商品購入やサービス利用状況、生活意識・価値観を加味したターゲット設定など、リッチな付帯情報を駆使して視聴者像を分析するサービスもその1つです。

「生活者360°理解」を実現するインテージのデータベースを用い、特定番組あるいは特定時間帯の視聴者像を詳細にプロファイリングしたアウトプットが図表7となります。

図表7:自動車メーカー広告出稿枠 視聴者プロファイリング事例

車という商材の選び方からその背景にある価値観、好みの世界観までが詳細に描かれています。

このように詳細なプロファイリング分析を行うことは「届けたい人にメッセージは届いているのか?」を追求することであり、その活動は「必要な人に必要な情報が届く」ことにつながり、最終的には広告主と生活者に幸せな関係をもたらすことにつながります。

広告取引指標の個人視聴への切り替えは、番組評価のみならず、テレビ局の「番組作り」をも変化させます。「だれに向かって」をより意識した番組作りは、視聴者(=生活者)にとっても観たいコンテンツが増える可能性をはらんだ、うれしい変化であるはずです。その変化はテレビ局や番組のファン層を育成するでしょう。

また、タイムシフト視聴を含んだ番組評価によって、テレビ局にとって正しい「番組の価値」が顕在化します。それは、スポンサーに対しての新しい価値証明につながります。

テレビ視聴の実態把握における新しい視点は、「テレビ局」「広告主」「生活者」の三方を幸せにするチカラがあります。

マーケティングのデジタル化が「個」への対応を急がせています。その潮流はデジタル施策に端を発し、テレビをはじめとしたさまざまな効果計測、プランニングにも及んでいます。「個」への対応は「新しい視点」を求めています。テレビは個人視聴率になり、デジタルとの統一指標開発も始まっています。

他方では、タイムシフト視聴、Netflixなどの動画コンテンツの充実、ロケーションフリーの持ち出し再生など、電通の奥律哉氏が提唱する「一周してテレビ※2」という「テレビ」や「テレビを取り巻く場」の新しい潮流も動き出しています。

新しい「テレビの見方」を捉え、価値を計測するフレームの開発・整備を急ぐことが求められています。

調査概要

今回の分析には、i-SSP(インテージシングルソースパネル)、Media Gauge TVのデータと 、自主企画調査の結果を使用しています。

  • 【i-SSP】※ i-SSP(読み方:アイエスエスピー)/シングルソースパネルは株式会社インテージの登録商標です。

    インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。最適な広告プランニング・効果測定をサポートします。

  • 【Media Gauge TV】

    日本全国を調査対象に、月あたり61万台のスマートテレビと58万台の録画機から収集された視聴ログデータです。膨大なサンプルサイズで収集されているため、市区町村レベルの分析でも一定のサンプルサイズを確保でき、視聴傾向の詳細なエリア差を把握することができます。都道府県ごとのエリアマーケティングや、テレビCMのプランニング・バイイングにご活用いただけます。

自主企画調査

  • 調査手法 インターネット調査
  • 調査地域:京浜(一都三県)
  • 対象者条件:16-59歳の男女
  • 標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
  • ウェイトバック:性年代構成比を2015年度実施国勢調査結果にあわせてウェイトバック
  • 標本サイズ:n=2,582
  • 調査実施時期:2018年6月18日(月)~2018年6月21日(木)
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