“デジタルなマーケティング”とやらに一筆啓上

勘違いだらけのDMP活用、実際に運用して感じた3つのウソ

「DMP」をバズワード的に扱い、テキトーなことを言う今の状態に一筆啓上

DMPを使って広告を最適化しましょう!

DMPを使って顧客個々人の興味関心をしっかり分析しましょう!

CRMデータと繋ぎこんで御社独自のDMPを作りましょう!

なんてご提案を伺うたびに、「はぁ、またか…」と、ため息をついてしまうこともしばしば。DMPは、ちゃんと使えば企業が顧客に対してより良いコミュニケーションをしていく大きな助けとなるはずです。しかし、今のDMPに対するさまざまな言説を見るに、

  • 「そもそもDMPって広告ソリューションなんでしたっけ?」
  • 「DMPって分析ツールなんでしたっけ?」
  • 「DMPを内製するってどういう意味でしたっけ?」

ということを、いったんちゃんと見つめなおすべきフェーズが来ているのではないかと思ってしまいます。少なくとも、現場でデータと格闘し、コミュニケーションを企画し、日々運用している私には、そう思えて仕方ないのです。

申し遅れました。わたくしは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社でCX、コンテンツ、データとデジタルを活用したマーケティングなどを担当している各務浩平(かがみ こうへい)と申します。まだ30代(独身)の中堅ですが、この業界のさまざまな「何かおかしい」ことに、物申して参ります

「DMP」をバズワード的に扱い、テキトーなことを言う今の状態に一筆啓上

あらためて言いますが、いまの「デジタルマーケティング」(この言葉も私は好きではないですが)の業界では、「DMP」が一時的なバズワードとして扱われており、企業のマーケティング全体像のなかでDMPが本来果たすべき役割とは違った角度で話されているという印象を拭えません。

その原因の最大の理由の1つに、そもそも「プライベートDMP」と「パブリックDMP」が混同され、「DMP」という1ワードで語られてしまっていることがあると思います。そして、あげくの果てには「DMPはビジネスに有効じゃない」なんてことも語られてしまう状況です。

ユーザーサイドでDMP活用を担当している私としては、この状況に、腹立たしいというか、立つ瀬が無いというか、納得いかないというか……。

ということで、DMPの本当の価値を今一度問いたい! というか、DMPを正しく評価してほしい! という思いから、プライベートDMPの本当の価値、本質的な使い方について、今回は一筆啓上つかまつります。

※なお、今回お話しするのは「プライベート」DMPのお話です。一般的にイメージされることの多い、第三者データを扱う「パブリック」DMPとは異なるものだということを念頭に置いて本文をお読みいただければ幸いです。

「DMPのウソ」に声を上げたのに、「そうだね」しか言われずショボーン

少し話は遡りますが、私は少し前に「Adobe Symposium 2017」というカンファレンスでDMPについてセッションを担当させていただきました。そこで私の話した内容をご覧になった方がブログ記事にしてくださいました。その記事は1000いいね!弱まで拡散されましたので、「あ、それ見たよ」という方もいらっしゃるかもしれません。

このレポート記事に関しては、マーケッター瞳さんからも、

といったコメントを頂くなど、(私の耳に入る範囲では)「やっぱりそうだよね」「おもしろい」「本質を突いてる」など、おおむね共感いただいたようで、それはそれでありがたく思っています。

しかし一方で、あの内容に対して同意ばかりが集まった状況に、若干不本意な気持ちもあったのも事実です。

というのも、セッションタイトルを「そのDMP、成果出せていますか? 3年運用して感じた様々なウソとホント」として「ウソ」と銘打って論じたにもかかわらず、その「ウソ」が広まっている原因だと私が想定していたDMPの売り手側(ベンダーや広告代理店、ウェブコンサルティング会社など)からも同調されてしまったからです。

私の狙いとしては、もっと、「そうじゃない、DMPはこんな価値を生み出せる」「各務の言うことはおかしい、こうすればいい」などの反論が出てほしかったのです。

実際には「ユーザー側にこういうこと言われてるようじゃ、まずいな」という代理店の方もいらっしゃったようです。しかし、ではその後、コレといった動きが業界に出てきかというと、そうではないのが実際のところです。

そこで、「DMPは、もっとこういう使い方をすれば効果が出る!」という話と、さらにその先の「企業がDMPを活用することで消費者が得るメリット」について、この記事で解説していきます。

勘違いだらけのDMP活用、実際に運用して感じた3つのウソ

ではあらためて、DMPに関するウソとホントについて。

この記事の冒頭に書いたような憤りもあり、今回のセッションでは、大きな枠組みとして、2つの事柄についてお話しいたしました。

  • 1つ目は「DMPに対する間違った認識について」。

  • 2つ目が「セカンドパーティデータの活用について」。

この記事では、まず1点目の事項について説明していきます。

この話を理解する前提として押さえていただきたいポイントとしては次の2点です。

  • 「プライベートDMP」の話であり、「パブリックDMP」についてではないこと。

  • 「プライベートDMPは、人間の脳にあたるもの」だと弊社内では定義していること。

そうした前提で、私は次の3つを「ウソ」だと判断しています。これらは代理店さんやベンダーさんが主張しているのを耳にしたことがあるものです。

DMPって広告ソリューション? DMPって分析用ツール? DMPを内政するってどういうこと?

DMPのウソ1 「DMPは広告ソリューションである」

結論から言うと、新規顧客を獲得するためにプライベートDMPを使っても、うまくいかない場合が多いようです。

世間では、こんなことが言われています。

プライベートDMPにサードパーティのデータを取り込んで拡張配信することで、新規顧客を効率よく獲得でき、CPAを改善できる。

しかし、私がDMPを3年間運用してきた経験からみるとこれはウソで、次のようなことがホントだと感じています。

  • プライベートDMPにサードパーティのデータを取り込んで広告配信するのは、得策ではない

  • なんでもかんでも類似拡張できるわけじゃないので、「拡張配信」というワードを妄信しない方がいい

  • プライベートDMPは、新規獲得数の効率的な拡大よりも、ARPU(顧客ごとの平均売上)やLTV(生涯価値)の伸張に使うべき

この背景にある理由としては、次の2点があります(重ねてお伝えしますが、あくまでプライベートDMPを使った広告配信においてという話です)。

  • さまざまなサードパーティデータを利用する場合、各データの生成ルールが統一されているわけではないので、「拡張配信」が思った通りに働かない可能性が高い

  • どの程度の精度かわからず信頼性の低いサードパーティデータよりも、信頼できるデータの範囲内で的確にターゲティングする方が効果的である

たとえば、DMP内に取り込んだCRMデータから「優良顧客」とフラグ付けしたセグメントをアドネットワークやDSP側に送ったとします。このセグメントに似ているユーザーにターゲティングを拡張してもらえれば、優良顧客をどんどん獲得できるだろうという皮算用ですね。

しかし実際には、受けとった広告配信システム側で「このセグメントに含まれる人たちは御社にとって優良顧客なので、同様に優良顧客になってくれそうな見込み顧客に対して広告を配信します」と認識してくれることはありません。むしろアドネットワークやDSP上ではただの「旅行好き」など、たまたま関連性の高い別のフラグで認識されることのほうが多いのです。

そうした認識をもとに拡張配信を行ったとしても、結果として無駄なバイアスがかかるだけになり、アドネットワークがもっている標準のセグメントでオーディエンス配信するよりもCPMが高騰してしまう、なんて状況になりやすいのです。実際に弊社のような「契約もの(MVNO回線やプロバイダなど)」の商材では、この傾向が強く出てしまっていました。

おそらく日用品メーカーなどであれば、この手の広告配信も若干うまくいく可能性はあるでしょう。しかし、日用品メーカーは保有しているCRMデータが少ないという課題が往々にしてあるため、実際には期待薄になってしまうのが現実ではないでしょうか。

一方で、既存顧客に向けたアップセル施策にプライベートDMPを介した広告配信を行うことは有効です。CPMが高くなるのは事実ですが、同時にCVRも高くなるため、結果としてCPAは良くなる可能性が高いということが、実際に何回かの試験を行った結果から見えてきています。

※なお、実はサードパーティデータをプライベートDMPに取り込んで広告配信をするメリットが1つあるのですが、それはいくつかのDSP事業者様から本気で叩かれる内容なので秘密です。

DMPのホント1

DMPを広告に活用するのであれば、新規獲得目的ではなく、ARPU/LTV向上のために使うべき

言い換えれば、広告ではなく、Adobe Targetなどと絡めて自社保有データに基づいたサイト内ターゲティング施策を行うことで、CVR向上やサポートコストの削減に寄与できるということです。

DMPのウソ2 「DMPは分析用ツールである」

DMPがまるで「分析ツール」のように語られるケースが散見されます。しかし結論から言うと、ほとんどの場合、DMPの中で「分析」を行う必要性はありません

単純にデータ分析をする箱なのであれば、それは古き良き「データウェアハウス」と呼ばれるツールがあります。また、高度な分析を行うのであれば、SPSSなどの「データマイニングツール」や、Target Finderのような「クラスタリングツール」、Tableauのような「BIツール」を使うほうが、圧倒的に楽です。

分析はそうした便利なツールに任せ、DMPは「データ分析結果をもとにしたアクション装置」として使うべきなのです。

そもそも「プライベートDMP」が革新的だった理由の1つは、会員属性などの自社データにもとづいたターゲティングの高速最適化であったはずです。

もちろん、会員の属性ごとに異なる表示をサイト上で実現すること自体は、昔からできていました。サーバー側で会員データベースと連携して表示を切り替えるやり方です。しかしこのやり方では、高速にPDCAをまわすのは現実的ではありませんでした。というのも、出し分け内容を短期間で改善していこうとしても、都度サーバー側の設定変更が必要で、システム開発会社などへの依頼に伴うタイムラグとコストが課題になっていたからです。

しかし、プライベートDMPがこの課題を解消しました。DMPを活用することで、PDCAサイクルを短期間でまわしながら高度なターゲティングを実施ができる、そうした点にマーケターは大きな価値を見出したはずです。

この観点で言うと、DMP「的な」ものであっても、

  • Adobe Targetのようなサイト内ターゲティングツール
  • Salesforce Marketing Cloudに代表されるMAツール
  • DSPなどのアウトプットソリューション

などとシームレスに連携できないシステムは、プライベートDMPとして価値を成さないとも言えます。

弊社では、プライベートDMPはあくまでデジタルマーケティング上の「脳」に当たる役割を果たすものだと考えています。ということは、脳からの指示を受けて実際にアクションを実行できる手足(上記のようなツール)がなければ、意味がないのです(逆の観点では、アクションシステムと直結できるデータウェアハウスがあれば、それが「プライベートDMP」としての役割を果たせるはずだとも言えるかもしれません)。

DMPのホント2

DMPの役割は分析にあらず。ターゲティング・テスト・MA・広告配信などの「アクション」機能とシームレスにつながり、そこに指示を出す役割が最も大切。

DMPのウソ3 「DMPを内製するといい」

結論から言うと、自社専用のプライベートDMPをオンプレで構築するメリットは基本的にありません。というか、「それはDMPではなくただのデータウェアハウスなのではないか?」と突っ込みたくもなりますが、それは前述の通りなので、少し異なる観点の価値を考えてみたいと思います。

その価値とは、「プライベートDMPの最大の特徴はセカンドパーティデータ連携にある」ということです。ここで示す「セカンドパーティデータ」とは、企業間でのデータトランスファーによって得られる、他社のファーストパーティデータを意味して用いています。

SaaS型のプライベートDMPソリューションでは、異なる企業間であっても同一ツールを利用していれば、DMPに格納された非個人情報を相互に共有することが可能です(ツールから発番される固有の識別番号をキーにしており、個人を識別できる情報は含まれません、念のために)。

たとえば弊社のお客様で「東京在住の30代男性」と定義されたデータを、同一プライベートDMPを利用しているB社に渡し(もちろん契約のうえで)、そのデータに基づいてB社が広告を打つ、ということは技術上容易にできます(※弊社では実際には実行していませんが)。

上記特徴を踏まえ、プライベートDMPでは、

  • ファーストパーティデータ ―― 自社保有データ
  • セカンドパーティデータ ―― 相対契約した他社のファーストパーティデータ(
  • 一般のサードパーティデータ

の3種類のデータを扱うことができます。それぞれにボリュームと精度の違いがあります。

実は、自社だけでは賄えないデータ量を確保しつつ、精度の高い施策を実行できるセカンドパーティデータこそが、プライベートDMPの最大の特徴かつメリットなのです。

なぜなら、「ファーストパーティデータ+サードパーティデータ」を使ったサイト内ターゲティングや新規リーチ系広告配信は、プライベートDMPがなくてもできるからです(多少の難易度はありますが)。ですから、セカンドパーティデータの連携ができない「DMP内製」に予算と時間を費やすのは、デメリットばかりでメリットがほぼないと言ってもいいのです。

DMPのホント3

自社専用のプライベートDMPを独自に構築するメリットは、ほとんどない。

プライベートDMPの最大の特徴は、セカンドパーティデータ(他社のファーストパーティデータ)連携にある。

まとめ: DMPを実際に使ってわかった3つのホント

この記事では、DMPの都市伝説(つまり、間違っているウソの言説)として、次の3つを提示しました。

  • DMPは広告ソリューションである
  • DMPは分析ツールである
  • DMPを内製するといい

しかし、3年間実際にDMPを運用した私の出した結論は、次の通りです。

DMPはARPU、LTVを上げる広告ソリューションとしては有益である。
DMPはアクション措置であり、分析装置にあらず。
DMPの2nd Party連携を最大活用する上で、「内政」という考え方は基本的に無い。

プライベートDMPの活用にあたっては、以上の特徴をしっかりと押さえておくことで、ムダのない価値のある仕組みを実現し、顧客から得られる利益を大きくできるかもしれません。

さて、ここで問題です。

こうした前提を踏まえて企業のマーケティングプラットフォームを整えたら、DMP活用はうまくいくのでしょうか?

残念ながら、プライベートDMPもご多分に漏れず「魔法の杖」ではありません(魔法の杖だったらどんなに良かったか……)。実際には、プライベートDMPの運用は一筋縄ではいいきません。

そんな担当者の苦悩も交えつつ、「プライベートDMPを使って、本当に価値を出すには」という点を、次回解説します。

今回はいったんここまで。

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