どの集客チャネルが売り上げを稼いでいるのか? ECサイトの成果をGAで分析する【前編】[第56回]
eコマースのトラッキングコードを実装すれば、eコマースサイトの集客施策やコンテンツの閲覧状況と売上データを直接結びつけて分析できるようになる。前回はeコマースのトラッキングコードの実装方法を解説したが、今回は「どのように分析し、施策の役に立てていけばよいのか」という分析方法を解説していこう。ECサイトの分析は今回と次回の2回に分けて解説する。
なお、今回紹介する分析を行うためにはWebサイトにeコマースのトラッキングコードを実装している必要がある。実装方法は第55回を参照してほしい。
- 集客チャネルごとに売上の成果を比較する
- 新規ユーザーとリピーターごとにサイト内のページの成果を比較する
- eコマース特有の指標の意味がわかる
集客施策別に売上の成果を見る
集客分析の一般論については第35回の連載でも解説した。くり返しになるが、ひとことで言えば「量」と「質」と「成果」で一気通貫に見るという方法だ。eコマースサイトでは、「成果」は「売上」、つまりeコマース系のディメンションや指標を選択して見ていけばよいことになる。
それでは具体的に見ていこう。まず[集客]>[すべてのトラフィック]>[参照元 / メディア]レポート(図1赤枠部分)の「サマリー」(図1青枠部分)あるいは「eコマース」(図1緑枠部分)指標グループを選択しよう。
まずは標準で選択されている「サマリー」指標グループから見ていこう。「サマリー」指標グループを選択している状態のレポートの一覧表部分が図2だ。
「参照元 / メディア」別(図2赤枠部分)に「量」と「質」と「成果」の指標(図2青枠部分)を一望できる。「成果」の部分にある「コンバージョン」のプルダウンは「eコマース」を選択する(図2緑枠部分)。
検索連動型広告やメールマガジンなどからの集客が「それぞれどの程度の量があり、売上にどのくらい結びついているのか」というのを概観するところから始めよう。
当然ながら、「集客量(セッション)が多く、売上(収益)を多く上げている」「参照元 / メディア」が大成功ということになる。実際の選択肢や判断はさまざまだろうが、そこで考えることは簡単だ。
- 成功している部分をさらに良くしていけないか?
- 成功していない集客施策は放置あるいは縮小するのか?
- 新しい別の施策を考える必要があるのか?
新しく始めたキャンペーンなどがあり、そこに注目して見たい場合は、該当の「参照元 / メディア」の値にチェックをして(図3赤枠部分)「グラフに表示」ボタン(図3青枠部分)をクリックしよう。
すると、チェックした「参照元 / メディア」の値を表す折れ線グラフが加わり(図4)、全体とチェックした「参照元 / メディア」の値の関係性を確認することができるようになる。
図4の例は、ある10日間のセッション(集客数)の変動グラフだ。ここではメールマガジンからの集客にチェックを付けて、折れ線グラフを追加している(図4オレンジの折れ線)。メールマガジンが全体の集客(図4青色の折れ線)の上下動の理由であることの仮説を検証する目的だ。
折れ線グラフを見ると、メールマガジンと全体の折れ線グラフで上下の動きが一致していることがわかるだろう。大きな変動がある場合は、このようにいくつかの「参照元 / メディア」をチェックして確かめれば、集客の変動の原因を比較的容易に解明できる場合が多い。
さらに細かく集客元とランディングページの組み合わせで分析するなどの方法については、第36回の記事を参照してほしい。
新規ユーザーとリピーター別に売上の成果を見る
そのサイトの成熟状況にもよるが、サイトが初期の拡大期なのであれば、次のポイントをを見るべきだろう。
- 新規ユーザーを多く獲得している集客チャネルはどこか
- その集客チャネルは売上で成果を上げているのか、いないのか
見る指標は「新規セッション率」や「新規ユーザー」(図5赤枠部分)とeコマース系の指標(図5青枠部分)だ。
「新規ユーザーを獲得しようと考えている集客チャネルが、その思惑どおりの成果を示しているのか」といったポイントで確認していこう。
新規ユーザーとリピーターで行動の違いを分析し、成功パターンや失敗パターンを発見するためにはセグメントをかけて分ける方法を試してみよう。まず全体把握のために、[コンバージョン]>[eコマース]>[概要]レポート(図6)に新規ユーザーとリピーターのセグメントをかける(図7赤枠部分)。セグメント機能の基本的な使い方に関しては、連載の第30回を参照してほしい。
「新規ユーザー」と「リピーター」のセグメントを同時に表示したのが図7だ。
ここでは、リピーターの購入数(図7オレンジ色の折れ線)が多いことがわかる。そしてリピーターの上下動が大きい(図7青枠部分)。定期・不定期のメルマガなどで、リピーターの購買意欲を上手にかき立てて売り上げに結びつけられているのだろうか? 気になったポイントを1つずつ確認し、次の施策へのヒントがないか探ってみよう。
新規ユーザーとリピーターで似ている部分と異なる部分に注目する
また、セグメントの各指標の比較(図7緑枠部分)では、似ている部分や異なる部分を把握しておこう。
たとえば「新規ユーザーが意外に平均注文額が高く、初回訪問からがっつり買い物をしてくれる」ようであれば、新規ユーザーに対して価格訴求面を強く出す必要はあまりないかもしれない、などと仮説を立ててみよう。それぞれの指標の正確な意味については記事の最後で紹介する。
新規ユーザーとリピーターのセグメントをかけるのは、前半でも紹介した[集客]>[すべてのトラフィック]>[参照元 / メディア]レポートの他に、[行動]>[サイト コンテンツ]>[すべてのページ]レポート(図8赤枠部分)などでも試してみるとよいだろう。
[すべてのページ]レポートでは、新規ユーザーとリピーター別に次のような視点で見ていこう。
- あるページが新規ユーザーとリピーターのどちらに人気なのか(図8青枠部分)
- 購入に結びついた場合に高くなる「ページの価値」が新規ユーザーとリピーターで違うのはどこなのか(図8緑枠部分)
- それは納得できる結果なのか
図8の例では、2つ目のページと3つ目のページの「ページの価値」が新規ユーザーとリピーターで大きく異なっていた。
このように新規ユーザーとリピーターの集客チャネルの違いや、サイト内で見ているページの違いを確認すれば、それぞれに適した集客チャネルやランディングページ、サイトのトップページに表示するコンテンツ、それぞれの望ましい誘導路をどのようにすべきかの判断材料にできる。
eコマース特有の売上に関係する指標の意味
最後にeコマース特有の指標について紹介しておこう。それぞれの指標の意味は以下のとおりだ。
指標名 | 意味 |
---|---|
収益 | 総売上のこと。eコマースのトラッキングコードのトランザクションの記述内の「revenue」の合計値 |
トランザクション数 | 総購入回数。なお「購入」とはeコマースのトラッキングコードのトランザクションのデータが1回につき1購入となる |
eコマースのコンバージョン率 | トランザクション数÷セッション。つまり1訪問平均の購入回数。細かい話だが、トランザクションのあったセッション数÷全セッション数ではないと思われる。つまり1セッションで2購入があったら、分子は単純に2として計算している |
平均注文額 | 収益÷トランザクション数。つまり1購入あたりの売上高のこと |
固有の購入数 | 各商品レベルの総購入回数。1購入(トランザクション)で同じ商品を2個購入した場合には1とカウントする。つまり何種類の商品が購入されたかの総数 |
数量 | 延べ商品購入数。トラッキングコードの「個々の売上商品明細の記述」の「quantity」の総数 |
今回は集客別・セグメント別にeコマースの成果を分析する方法を紹介した。次回は[コンバージョン]>[eコマース]セクションのうち[概要]レポート以外のレポート群について解説する。
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