見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

疑問はあっても質問できない――「なんでも訊いて」と言われても戸惑う人を、どう助ける?(第6回)

質問しようにも「わからないことがわからない」状態。じつは質問は、「わかっていないと、できない」のだ。

牛田さん「どういう言葉でどう訊けば、ちゃんと答えてくれるのかしら」

語尾に「ゾウ」と付けて、さりげなく象愛を主張するモリマミコです。都内でパソコン教室を運営するかたわら、ユーザーさんと提供者さんの架け橋になりたいと思っていますゾウ。

教室内にもゾウさんの置物を置いたり、写真を貼ったり、さりげなくみなさんにゾウさん好きになっていただきたいと思っているのですが、意外と?誰も見ていない。たまたま気付いた生徒さんに「そういえば、教室にゾウの写真多いわね」と言われて、ここぞとばかりに満面の笑顔で「はい、象好きなんですゾウ」と答えた後の、ちょっとした冷凍庫感がたまりません。ゾウゾウならぬ、ゾクゾクします。

……⛄❄(ヒュ~ヒュルル~~~)❄⛄……

さて、今回は、新品のノートパソコンを持って、教室にやってきた牛田さん(仮名、54歳、女性)。

何を訊けばいいのかわからないのだけど、教えてもらえるかしら。

彼女が指さした先には「何でも訊いてください」という文字。それは、Windows 10のパーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」だった。スタートボタンの横にある検索ボックスである。最近増えてきているが、FAQやQ&Aよりも進化した「質問したら答えるよ」というサービスだ。

何でも訊いていいと言われてもねえ。何を訊けばいいのかしら

と彼女は曖昧な表情を浮かべている。

天気とか訊けますよ。雑談もできますし、パソコンのわからないこととかも訊けますよ

と答えると、「そうなんだ、じゃあ、訊いてみよう」とつぶやきながら、牛田さんは突然Cortanaに入力した。

「エクセルの点々を出したい」

あまりにも唐突だったので私の目も点々になった。「Webで検索」という文字列が表示されたので、クリックする牛田さん。ブラウザが立ち上がって検索結果が表示される。

「そ、それはどういう意味ですか?」と、Cortanaの代わりに、私は訊いてみた。

エクセルをやっていたら、なんか点々の線が消えちゃったの。元の画面表示に戻したいんだけど、戻るボタンを押しても戻らなくて……

問題のエクセルファイルを拝見すると、改ページプレビューになっている。

前はここに青い点があったのよ。それを見えるようにしたいから、訊いてみたんだけど……。でも、あまりピンと来る答えがないわねえ。訊き方が悪いのかしら。

彼女はCortanaの画面を一瞥してから、

「エクセルの点々を見えるようにしたい」

と文章を変えた。

うーん、どういう言葉でどう訊けば、ちゃんと答えてくれるのかしら。言葉を選ぶのって難しいわよねえ。なんて訊けばいいのか、わからないんだもの

彼女のやりたいことを聞いてよくよく整理すると、「印刷範囲の設定を解除したい」「改ページプレビューを止めたい」ということだった。

“自分で気づかない操作”によって、先日まで見えていた改ページの線がなくなってしまい、「ファイルがおかしくなったのでは?……」と不安になり、ゴールに近づくことよりも不安を解消するため、「もう一度線を見えるようにしたい」、というだけだった。

疑問はあっても質問ができない……「質問する」って難しい!

FAQやQ&Aよりも進化した「質問したら答えるよ」というサービスが、最近は主流だ。人工知能が進化したこともあるが、そもそも「キーワード検索」も、こういった、“漠然とした疑問にも答えてくれるサービス”だと言える。

一方で、いろいろな人から聞く悩みが「キーワード検索がうまくいかない」「思った検索結果が出ない」というものである。この理由を探っていくと、悩みの原因の本質は

どういう言葉で探せばいいのかわからない

というものだとわかる。これは、シニアに限ったことではない。

慣れた人なら、次々と言葉を入れ替えて探すことを、特に手間とは考えない。しかし、インターネットを利用していても、検索の仕組みを知らない人にとっては、何度も言葉を入れ替えるのは「効率が悪い」と感じるようだ。

また、検索結果に表示される情報が多い場合も、(真偽についてはいろいろあるが)たくさん情報があって嬉しいという気持ちではなく、たくさん表示された検索結果から「探すのが面倒」という不満となってしまう。

「検索エンジンに対して、質問がうまくできていない」というのは、「適切な結果を出すためのキーワードが選べない」ということだ。実際「質問をする」のは、検索エンジンだけではなく、人間に対してもかなり難しいことだ。

「解決するための質問」って?

自分の抱えている問題の答えを探すとき、次の3つが揃わないと、解決には至らない。

  1. 「ゴール」が見えている
  2. 自分が「どこまでわかっているか」が見えている
  3. 自分が「何をわかっていないか」が見えている

しかし多くの場合は、「わからないことがわからない」状態であることが多い。その状態で検索なり質問なりをしてしまうと、ゴールも明確でないため、明確でない答えが返ってくることになる。

そう、質問は、わかっていないと、できないのだ。

「解決するための質問」ができないのは、「ゴールや考え、疑問を明確にするのが難しい」ことが主な原因である。だから、教える側はいつも、上記3点を質問者から引き出すために、いろいろ逆質問をする必要がある。

わからないことは、気軽に訊いてね!

私も含めて、多くの教える側や情報の提供者は「わからないことは質問してください」と言う。しかしユーザーの大半は「なにがわからないかわからない」状態である。

質問欄を「どどーん。さー来い! ばっちこーい!」としても、ユーザーは質問を明確にできず、バットを振ることができない。バッドタイミング

わからないことがあったら何でも訊いてね!

という言葉は、

わからないことが明確で、きちんと質問を言語化できたら訊いてもいいよ

と同質なのだ。それをしないと、質問の収拾がつかないということもあるだろう。しかし、本気でなんでも質問してほしかったら、「質問してね」では、やはり不十分なのだ。

「質問を作りやすい状況」を意識して提供しよう

パソコンやインターネットを使っていると、ユーザーはさまざまな「疑問」にぶつかる。それを解決するには、誰かに「質問」する必要がある。このとき、大部分のユーザーが「疑問点を明確にして、人に伝えること=質問すること」自体、不得意だということを、提供者は意識しなければならない。

多くのサイトは、立て板に水のように一方的に説明を畳みかける。隣の竹やぶに竹立てかけたのは、竹立てかけたかったから竹立てかけた、というような感じのサイトが多い。坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いたでもいい(どうでもいい)。

こういう対処だと、ユーザーは自分のなかに湧いた疑問を明確にする間もなく、情報で頭が一杯になってしまい、先を読むこと、考えることを止めてしまうのだ。

「キーワード検索がうまくいかない」「思った検索結果が出ない」というのは、「質問をするのに慣れていない」「質問をするための準備を整えていない」ということだ。だから、そういう人たちのために、「質問をしやすい環境」を提供者側が整えてあげる必要があるのだ。

それは、質問を入力してAIが答える、というものではない。そうではなく、ページを読みながら「あれ?」という小さな疑問を持つようにさせて、ゆっくりと次の段落で咀嚼できるようにしていくという環境である。読み手の呼吸に合わせて、質問を作れるように手伝い、ぎんぎらぎんにさりげなく答える。情報をユーザーが食べやすいサイズに切る、というイメージだ。これぞ「究極のインタラクティブページ」である。

ユーザー行動まとめだゾウ

先日、仕事の関係でいろいろな官公庁のサイトを見る機会があったが、こちらは、究極の“新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー”という感じのページであった。立て板に水。寝耳にミミズ(なにそれ怖い)

何を表現しようとしているのかというと、つまり流暢だが一気に説明されるだけでぜんぜん覚えられないのだ。とにかく息継ぎもせずに、言いたいことを言う。ザ・立て板に水ページ

こんなサイトでもユーザーは、果敢に情報を探そうとする。しかし、うまくいかない。キーワード検索もしてみるが、思うような結果が出ず、サイトから情報が見つけられない。サイトを分析すると、ちゃんと必要な情報は用意されている。構造的にも、すぐ横にあったり下にあったり。「いつでも君のそばにいる」という歌があれば踊って歌いたくなるほど、近くにあるのだが、ユーザーにはそれはわからない

たぶん、提供者側はこんな風に考えているのではないだろうか。

ユーザーは、簡単に希望の情報を取り出せるに違いない

やりたいこと(ゴール)は明確なのだから、サイト内検索だったら、キーワードは○○と入れるはずだ

しかし、多くの場合、ユーザーのゴールは明確ではない。もやっとした状態でページを見て、検索し、試行錯誤する

FAQページでもそうだ。ユーザーは、数ある質問のなかから自分の質問と同じ内容・似た内容を探すわけだが、これが、実は意外とユーザーにとって難しい。質問したいことが明確でない場合もあるし、明確に同じ質問を選んだつもりなのに回答が求めている内容ではない場合などだ。

だから、FAQページやQ&Aページを用意しておくよりも、閲覧するページ内でユーザーの疑問が解消されるようにすることが必要だ。小さな疑問がいくつも浮かび、それを解決する情報がページ内に組み込まれている。そういう状態なら、ユーザーは“呼吸ができる”だろう。

ユーザーを観察することは、よりよいウェブサイトを作るために必要だ。ただ、単に観察するだけではなく、時折ユーザーと会話するのはいかがだろうか。

  • どんなことを調べたいと思ったときに、どういう言葉で調べようとするか?
  • 調べた結果と目的は、ちゃんと合致しているか?
  • ユーザーのゴールは本当に明確か?
  • ○○について調べたいといっても、本当の目的がそれなのか?

このようにユーザーにアプローチすることにより、明確になってすらいないゴールを目指しているユーザーの姿が見えてきて、ユーザーと同じ速度で呼吸をするようなページができあがる。いっしょに検索してもいいだろう。

ところで、今回の登場人物「牛田」さんだが、検索がウマくないからウシ…ウシシ

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