UX視点によるオウンドメディアのコンテンツプランニングを“5つのステップ”で解説
UX視点によるオウンドメディアのコンテンツプランニングを“5つのステップ”で解説
ユーザーの課題に応えるオウンドメディア体験をデザインするSXOにとって、コンテンツの有用性向上は大きなテーマだ。Googleも、ユーザーに重点を置いてサイトを改善することを推奨しており、ユーザーにとって有益で質の高いコンテンツの制作を求めている。Googleの検索結果から続く一連の体験のなかでオウンドメディアとユーザーの信頼関係構築にとって、コンテンツがユーザーの期待に応えることは不可欠だと言えるだろう。
では、どのようにユーザーの情報ニーズを探り、課題を解決するためのコンテンツを構築していけばいいのか。白石氏はこれを「UX視点によるコンテンツプランニング」と題して5つのステップで解説した。
1. 検索サジェストから消費者の情報ニーズを探る
何よりもユーザーのニーズを把握するところから始めなくてはならない。そこで役に立つのがGoogleの検索ボックスに表示される検索サジェストだ。
求められる情報やサービスを提供するためには、オウンドメディアを来訪していない人を含めた生活者全体の潜在的なニーズを把握しなければならない。検索サジェストは多くの人の行動データに基づいて予測しており、そのデータを活用すればユーザーニーズを推測することができる(白石氏)
2. パターンごとの検索シナリオを仮説する
把握した検索ニーズを基に、次に行うのがシナリオの仮説だ。そのために白石氏は検索エンジンからサイトに来訪した場合の理想的な情報対策行動のプロセスとゴールを設定し、パターンごとに仮説するという。
具体的には、商品を知りたいのか、見積もりが欲しいのか、店舗に行きたいのかによって来訪したいページ=コンテンツも課題解決=コンバージョンが違うということを理解し、ニーズごとにプロセスを設計するのだ。
ここでPCの場合とモバイルの場合、利用シーンの違いでユーザーニーズは異なることを考慮する必要がある。また商材やターゲット層、検討ステータスによっても利用デバイスごとのニーズに違いが生まれる。情報が誰に、どのようなシーンで、どのようなデバイスで閲覧される可能性があるのかを検討しておくことが重要だ(白石氏)
仮説を立てたら、次はその仮説が正しいのかを検証する必要がある。そこで役に立つのが、GoogleサーチコンソールやGoogle Analyticsが蓄積したデータだ。
自社の商材やターゲット層によってある程度の推測は可能だが、既存のデータを使ってデバイスごとの検索ワードや閲覧コンテンツの違いを確認しておく必要がある。いつ、どのような検索キーワードで検索されていることが多いのかを調べることで、いつどのような検索ニーズが生まれているのかを把握することができ、仮説したシナリオの裏付けになる(白石氏)
3. KPI/KGIを定義し、それを目指すコンテンツを企画する
検索ニーズを把握してシナリオを仮説したら、そこからコンバージョンに貢献できるコンテンツを企画することになる。ゴールは何かを明確にすることで、検索ニーズとゴールの間を繋ぐために適切なコンテンツは何かを考えることが重要だ。
コンテンツの内容によって、集客しやすい(がコンバージョンしない)ものもあれば、(集客には貢献できないが)コンバージョンしやすいものが生まれてくる。ひとつのコンテンツにすべての役割を持たせるのではなく、役割分担を考えながら企画するのがいいのではないか(白石氏)
しかし、コンテンツの企画では内容よりもSEOの順位=流入数の確保を追い求めすぎてしまう場合もある。こうした点について白石氏は「順位を追い求めたい気持ちはわかる。しかし、本当にユーザーにとって有益な情報を提供できているか、順位が上がりそうなキーワードを追いすぎてはいないかを肝に銘じる必要があるのではないか」と指摘した。
4. ユーザビリティの向上につながるわかりやすい情報構造
ユーザーの情報ニーズを満たすために必要なのが、“わかりやすさ”、“見つけやすさ”の担保だ。それは、検索結果に表示される際に十分かどうかも考慮しなければならない。
ページのタイトルやディスクリプション(説明文)は検索流入における重要項目だ。ユーザーニーズに合致したキーワードを使ってわかりやすく説明し、レスポンシブデザインなどではPCとモバイルで検索結果に表示される文字数も異なることにも気を付ける必要があるだろう。また、ページ単体の内容だけでなく、来訪したユーザーがサイト内で探しやすいか=回遊しやすいかも考慮しなければならない(白石氏)
ちなみに、レスポンシブデザインの採用は検索クローラーが情報の重複を避けるなどの目的でGoogleが推奨しているが、白石氏は次のように指摘する。
レスポンシブデザインがユーザーにとって本当に使いやすいのかは検討の余地がある
PCとモバイルは見え方の違いだけでなく、ユーザーのアクションにも向き・不向きの違いが存在している。そうしたデバイス特性の違いを考慮すると、レスポンシブデザインを採用したことによってどちらかのユーザビリティが低下する場合があるという。この点は、自分たちがどのようなシナリオでどのようなコンテンツを提供したいのかによって判断する必要があると言えるだろう。
たとえば、商品カタログなど、情報閲覧が主体のコンテンツはレスポンシブが効果を発揮する。しかし、ECやIR情報など、ユーザーファンクションの多いものは、レスポンシブだとユーザビリティが低下するので注意する必要がある。
5. 4つの軸でコンテンツを評価し、PDCAを回す
こうしてコンテンツを公開できたとしても、すぐに効果が出るとは限らない。公開後は、訪問数、滞在時間、直帰率/離脱率、CV率といった指標を基に、PDCAを回しながらチューニングを繰り返していく必要がある。
コンテンツがアクセスを集める力(集客力)を持っているか、コンテンツを読ませる力(閲覧力)を持っているか、次のページに誘導する力(誘導力)を持っているか、コンバージョンへの貢献力(成果力)を持っているかを評価しながらチューニングすることが重要だ。一発勝負ではなかなか効果が出にくい。コンテンツはPDCAを回しながら運用するものだという考えで運営しなければ、中途半端になってしまう(白石氏)
こうしたPDCAの検証で重要なのは、結果に一喜一憂しないということだ。
検索結果の順位変動はとてもわかりやすい成果なので一喜一憂しがちだが、重要なのは検索結果の順位ではない。新たな検索キーワードによりコンテンツへの新規流入が増えたか、関連する製品情報への誘導ができたかなど、検索結果の順位以外のKPIを設定し、達成状況を確認することが重要だ。本来の目的を定義しておかなければ、順位が上がらない場合に方向性を見失ってしまう(白石氏)
マーケティングには“手段が目的化する”ということが往々にして生じがちだ。検索結果で上位に露出することは手段のひとつであることは確かだが、それが本来の目的ではない。白石氏がSXOの定義で語った「ユーザーの課題に応えるオウンドメディア体験をデザインし、ビジネスゴールを達成する」というプロセスが十分に機能しているかを検証し、中長期的な視点でチューニングを続けていくことが重要だと言えるだろう。
セミナーの最後に、白石氏は次のようにまとめた。
SXOとは、検索結果画面に表示される順位ではなく、オウンドメディアに来訪したユーザーとの良質な関係性を構築すること。ユーザー体験を最適化しようとするGoogleの方向性と足並みを揃え、ユーザーのニーズや利用シーン、利用デバイスなどの文脈に沿ったコンテンツを届けることで、着実に信頼関係を構築することが求められている。SXO=顧客エンゲージメントの一環と捉えて、中長期的な視点で取り組んでいくことが重要だ(白石氏)
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