【詳細解説】グーグルの検索品質アップデートは日本オリジナル、著作権や情報の正しさは見ていない
【グーグル取材あり】グーグルが、日本語検索におけるサイト品質の評価を改善するアップデートを導入したことを、2月3日に発表しました。このアップデートの特徴や、グーグルに取材した内容を解説します。
すでに、SEOの専門家であるso.laの辻さんが初期分析を行い、どんなサイトが影響を受けているのかなどを解説した内容がいくつかのメディアで報じられていますが、この記事でも改めてお届けします。既存の情報は次のリンクをご覧ください。
- 日本語検索の品質向上にむけて(Google ウェブマスター向け公式ブログ)
- キュレーションメディア“狙い撃ち” Google検索、アルゴリズム変更の狙い(ITmedia NEWS)
- グーグルが検索アルゴリズム改善を発表 「キュレーション」系メディアがランクダウン(Buzzfeed)
- グーグル、日本語検索のアルゴリズム変更を発表、品質低いサイトの順位低下(SEMリサーチ)
「順位を上げようとするだけ」のページを落とす変更、日本語検索だけが対象
まず、今回の検索結果の改善はどういうものなのでしょうか。グーグルの公式ブログに書かれている次の文章がわかりやすいでしょう(強調は筆者による)。
今週、ウェブサイトの品質の評価方法に改善を加えました。今回のアップデートにより、ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がります。その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります。
今回の変更は、日本語検索で表示される低品質なサイトへの対策を意図しています。
つまり、「品質が低い(とグーグルが判断する)にもかかわらず、グーグルの評価システムをうまく利用しているサイトを、検索結果の上位に表示させないようにした」ということです。
この変更は、グーグルの日本語検索のみが対象です。グーグルの長山氏がその旨ツイートしています。
@methode @akuchaaaan007 @jumpingknee Yup this one is a Japanese specific launch.
— Kazushi N. | 長山一石 (@KazushiNagayama) 2017年2月3日
日本オリジナルというのは、何を意味するのでしょうか。グーグルは、原則として全世界でベースとなるクロール・インデックスと評価の仕組みをもっており、可能な限り、その共通の仕組みを改善していきます。過去に導入されたパンダやペンギンといったアップデートがそうですね。
しかし、日本のコンテンツ状況は世界のなかでも特殊な部分があり、ワールドワイド共通の仕組みでは対応しきれなかったため、こうしたアップデートが導入されたということですね。
日本特有に対処が必要だった自称“キュレーション”メディアたち
では、「日本の特殊な部分」とは何でしょうか。辻さんによると、今回順位を下げられたのは「対象サイトから考えると、特に情報が薄いキュレーションメディアおよびテキストを中心とした新興メディア
」で、具体的には、次のようなサイトの順位低下が(初期段階で)確認されているということです。
- カラダノート:医療系(運営:株式会社プラスアール) https://karadanote.jp
- 健康生活:医療系(運営:株式会社WEB企画) https://health-to-you.jp
- マーミー:子育て系(運営:株式会社amaze) http://moomii.jp/
- MARCH(マーチ):子育て系(運営:株式会社WEB企画) http://maternity-march.jp/
- MARBLE(マーブル):女性系(運営:株式会社Candle) http://topicks.jp/
- ガールズSlism:女性系(運営:株式会社amaze) http://slism.net/
- curet(キュレット):女性系(運営:フリュー株式会社) http://curet.jp/
- LINOMY(リノミー):女性系(運営:株式会社Kumar) https://m3q.jp/
- こいぴた:女性系(運営者情報なし) http://za-sh.com/
- 恋愛.jp:恋愛系(運営:株式会社ゼネラルリンク) http://ren-ai.jp/
- KAUMO(カウモ):生活・モノ系(運営:カウモ株式会社) https://kaumo.jp/
- RETRIP(リトリップ):旅行系(運営:株式会社trippiece) https://retrip.jp/
2016年にWELQをはじめとした“キュレーション”系メディアが問題視されたときに、「結局、こういうサイトを上位に表示するグーグルが悪いんじゃないか」という論調がありましたが、その時点ではグーグルは特に発表をしていませんでした。
そして、騒動の結果として大手がサイトを閉鎖したにもかかわらず、「巨悪が消えても、中小のろくでもないのが検索上位に来るだけで、状況が悪いことに変わりはない」とも言われていました。
おそらく、グーグルから答の1つがこのアップデートなのでしょう。
同じ「品質の低いサイト」でも、パンダアップデートで対処したのとは異なるタイプのコンテンツが日本で多く発生して検索結果を汚染していたんですね。だから、それに対応するための改善が必要になったのでしょう。
今回、このアップデートが“キュレーション”メディア対応のためのものかグーグルに確認しましたが、公式な回答は得られていません。しかし、日々アルゴリズムを更新しており特に大きな変更以外は発表しないグーグルが、あえて日本向けに公式に発表したことをみても、前述のような流れを受けてのものだと考えるのが自然でしょう。
この変更は、アルゴリズム修正? 手動対策?
現在、この変更が「アルゴリズム変更」なのか「手動対策」なのかをグーグルは明らかにしていません。しかし辻さんは、次のように判断しているということです(あくまでも2月3日の調査時点での情報です)。
サイトを中心としているようだが、サイトのコンテンツすべてが影響を受けているわけではない。
(※下記追記参照)
サイト内のページ単位で、特定の評価値を基準に順位下げが発動しているようだ。(※下記追記参照)対象になっているサイトでもまだ上位に残っているページもそれなりにある。
これが「まだ一定の範囲でしか変更が反映されていない」のか「ある程度関連性などで評価されているページは上位に残る」のかは、判断しきれない。「手動対策ならばここも一緒に順位を落としているだろう」というサイトが残っているため、手動対策ではなくアルゴリズム変更ではないかと思われる。
「サイトを中心としたページ単位」ではなく、「サイト単位」の適用だと思われるとのことです。
全体的に順位が低下していたサイトのなかでも順位が落ちていないページがあるため、当初はページ単位の適用かとみられていました。しかし実際には、サイト単位で対象となり、そのなかでも検索語句との適合性が低い場合にだけ順位を下げる処理が行われているのではないかということでした(実際に、同一URLでも検索フレーズによっては順位が下がっていないページも認められるため)。
すでに発表から数日経っていますが、順位が低下したサイトはそのままで、かつ同様の他のサイトに同規模の順位低下がみられないため、第1弾のアップデートは完了しているのではないかと辻さんは分析しています。
ただし、著作権や情報の正確性は関係ない
編集部では、今回の変更についてグーグルに取材し、次の情報を確認しました。
そのページが著作権の正当な保有者によるページかどうかの判断は、今回の変更でも含まれていない。
ページに記載されている情報が正確であるかどうかの判断は、今回の変更でも含まれていない。
つまり、今回のアップデートは、あくまでも著作権や情報の正しさとは関係なく、それ以外の判断にとどまっているということです。
また、こちらもグーグルに確認したことですが、今回の変更は、あくまでも日本語検索の品質向上のための第一歩であり、これで完了というわけではありません。
アルゴリズムなのか手動対策なのかはともかく、これからさらに「品質の低いサイト」だとグーグルが判断する仕組みの精度を高めていくということです。
ちなみに、編集部でグーグルに次のような質問も送りましたが、これらに対して回答は得られませんでした。追って情報を得られ次第、お伝えしていきます。
判断の対象は「サイト」か「ページ」か
人間が判断しているのか、完全アルゴリズムか
アルゴリズム改善の検索結果への反映はいつごろスタートし、いつごろまでに反映がいったん完了する予定か(またはすでに完了しているのか)
「高品質なサイト」「低品質なサイト」の判断基準として、新たに加わった特徴的な要因は何か
このアルゴリズム改善は、welq騒動があったことに関係があるのか
今回の変更で、検索クエリの何%ぐらいに影響すると推測されるか
今回の変更で影響を受けるだろうサイトは何サイトぐらいあるか
あ、グーグルは原則として公開できる情報は公式ブログなどに記載する方針で、そこに書かれていない情報は公式には出せないのがふつうです。ですので、「これぐらいの質問にも答えないのか」とか怒ったりしないでくださいね。
回答できない理由としてはいろいろありますが、最も大きいのは、「こういうページの評価を下げた」という情報を出せば出すほど、その裏をかいて検索上位に表示しようという動きが強くなるからですね。
また、今後のアップデートで初期の回答と異なる内容になっていく可能性もあります。ですからグーグルは「こうしたフィロソフィーで、こういった方向を目指すように動いている」という方向だけを公式に示すんですね。
企業のWeb担当者はこのアップデートにどう対応すべきか
さて、企業のWeb担当者は、このアップデートで何からの特別な対応を行う必要があるのでしょうか。
結論としては、まっとうにやっているところは何もする必要はないでしょう。
今回、順位下げ評価の対象となったのは、次のようなサイトだと思われます(順位が下がったサイトからの編集部による推測です)。
- 1ページの文字数を多くして
- ある程度は周辺のトピックをカバーしようとしている
- しかし、実際には内容が薄い
- そのため、サイトを訪問した人が「何か良い情報はないか」と、そのページにそれなりの時間とどまっているだろうと思われるページ
こうしたコンテンツを多く作っているところでなければ、今回のアップデートは何も気にする必要はないだろうと考えています。
ただし、グーグルは今後、さらにこうした評価の仕組みを改善していくのは、間違いありません。そのなかで、本来ならば対象となるべきでないページが、巻き添え的に順位低下などの被害にあう可能性は、完全には否定できません。
その場合、アルゴリズムによる判断でミスがあったのならば、次のアルゴリズム更新までその状態が続くことが考えられます。
とは言うものの、これに対してWeb担当者側がなにか対策できることはありませんので、月並みではありますが、次のようなことを意識するのが大切でしょう。
検索ユーザーの検索意図(キーワードではなく、検索を通じてどういう結果になることを望んでいるのか)を適切に把握し
その検索ニーズを満たす良質でオリジナルなコンテンツを作り
オーガニック検索からだけの集客に頼らず、ソーシャルや広告をふくめた集客ポートフォリオを考える
ソーシャルもやってます!