バズるワードに法則はあるのか 国内400サイトのデータからわかった! オウンドメディアの成功パターン
業種を問わずオウンドメディアの活用が進んでいる。オウンドメディアには多くのメリットがあるが、集客をはじめとして課題も多い。昨今のネット事情では、情報接触はタイムライン型にシフトしている。そこで、オウンドメディアへの流入を増やすためには、SNSでバズらせることが有効そうだ。
バズるワードに法則はあるのか、ユーザーローカルの山田氏が「カスタマーエクスペリエンス コンファレンス 2016」で、「国内400サイトのデータからわかった! オウンドメディアの成功パターン」と題して、集客ノウハウ、コンテンツ改善方法、効果測定手法を紹介した。
SNSは『検索ワードを与える場』
オウンドメディアを運営する企業が増加している。各種テーマですでに400媒体以上が存在し、月に20媒体のペースでさらに増加しているという。理由は、オウンドメディアの運営には、以下のようなメリットがあるためだ。
- 自社ターゲットに直接リーチできる
- 広告やSNSと違い、コンテンツを長期的にストックしておける
- コンテンツ内容のコントローラビリティが高い
一方で、課題もある。コストをかけてオウンドメディアを運営しても、認知してもらうのが大変だということだ。
というのも、オンラインで生活者にコンテンツを届ける際にライバルとなるのは他社のオウンドメディアだけではなく、ニュース、コラム、キュレーションコンテンツなど、約1700もの媒体があり、一日当たり1万9000もの記事が掲載されるからだ。この大量のコンテンツの中から、自社のコンテンツを選んでもらうのは、そう簡単ではない。
オウンドメディアへの集客チャネルは、概ね次の4つに限られる。
- SNS
- 検索
- ニュースキュレーション
- 広告
このうちどのチャネルから開拓すべきかを考えるとき、生活者のインターネット利用状況を見る必要がある。最近はスマホでネットに触れる人が増えているが、スマホでは入力が面倒なため検索の利用は減っているといわれる。
逆に利用が増えているのが、SNSやニュースアプリだ。生活者の可処分時間の獲得競争が激化するなか、情報との最初の接点はタイムライン型のサービスが主流になっている。セッションで示されたアプリの月間利用度ランキングによると、上位3つはSNSである。また、TwitterやFacebookの拡散数は、記事トラフィックに強く相関しているという調査結果もある。ということは、オウンドメディアの集客においてもSNSを重視するのが正しい選択だろう。
さらに、ユーザーローカルの分析では、各チャネル横断の間接効果(アトリビューション)を考慮すると、SNSの検索トラフィックへの貢献度が大きいことが判明した。ある記事への流入経路を日別アクセス数の推移で見ると、初動ではSNSからの流入がメインだが、2、3日目になると検索流入に変化している。このことから、検索流入が増えたきっかけは、SNS上での接触だったのではないかという推測ができる。
SNSでバズれば、検索される回数も増える。つまり、SNSが検索ワードを与える場になっているということだ。SNSで話題になると、多くのメディアに二次掲載され、さらに検索順位にも好影響を与えるなど、SNSを起点に他のチャネルにもプラスの効果がある。
バズるワードに法則はあるのか
それほどSNSが重要なら、バズる法則はあるのか。ユーザーローカルは、SNS上で多く拡散された記事と拡散されなかった記事とで、タイトルをテキストマイニング分析した。
まずは旅行・観光情報に関する3つの媒体で分析した結果、各媒体ごとにバズりやすい単語が異なっていることが分かった。
それぞれの特徴をまとめると次のように整理することができる。
- 『じゃらんニュース』では「地域名が入っているコンテンツのほうが打率が高い」
- 『Relux Magazine』では「ブランディング通り、ラグジュアリーなネタは打率が高い」
- 『RETRIP』では「『絶景』などがウケる一方で、身近なネタはバズらない」
この結果を「国内か国外か」「特別感か身近なネタか」の2つの軸で、各媒体が強みを持つ領域をマッピングすると以下のようになる。
この結果から、まだ手がつけられていない領域が右下にあることが分かる。つまり、自社が次にどこを狙うべきか、どうやって狙うべきかを考えるためにはデータの活用が必要ということだ。
同様の分析をヘルスケアに関する複数の媒体で実施。「美容」「健康増進」「予防・保険」「治療」の4つのセグメントに分け、各媒体がどの領域に強みがあるのかを分析した。その結果、やはり媒体ごとに強みを持つ領域は異なること、そしてセグメントごとにバズりやすいワードが異なることがわかった。
オウンドメディアの運用では、そもそもメディア編集の経験者もデータ分析の担当者もいないことが課題となることが多いが、自社のユーザーがどのようなことに興味関心を持っているかが分かるツールがあれば、どのセグメントを狙うべきかを決める助けになるだろう。ユーザーローカルでは、自社媒体にアクセスしているユーザーの嗜好属性を分析したユーザーの興味関心データも提供している。
「サイト全体」と「コンテンツ単位」に分けて質を改善
SNSでバズらせ、検索が増えて、オウンドメディアに集客できたら、それを成果に繋げるのはコンテンツの質だ。
コンテンツの質を改善するには、「サイト全体」と「コンテンツ単位」という2つの視点に分けて考える必要がある。まずサイト全体の質を考える際には、「カスタマージャーニーに沿って目的別にコンテンツを分ける」のがポイントだ。たとえば以下のように目的別に分けて、各フェーズに合ったコンテンツと、次のステージに育成するコンテンツを設計する。
- 集客……拡散狙い、SEO狙いなど
- 習慣化……ハウツーなどのお役立ち系コンテンツ
- 育成……需要喚起系、事例やレビューなどで理解を促進
- 成果……CVの導線となるコンテンツ
コンテンツを管理するには、記事ページをグループ化しておくと便利だ。このとき、あらかじめ分析したい切り口でグループ化し、箱を作るようなイメージでコンテンツを入れていくと、計測や分析、改善までの手間が省ける。お勧めの切り口としては、以下のようなものがある。
- コンテンツの目的別
→「SEO狙い」や「バズ狙い」のほか、「育成目的」や「成果目的」など - 記事のカテゴリ別
→定期的に記事本数配分を見直す - 記事公開年月
→長期にわたって読まれやすい記事を発見しやすくなる
目的が異なればKPIも異なる。そこで、以下のように目的別のKPIを設定する。
- 集客→ 拡散数、PV・UU数など
- 習慣化→ ユーザーの再訪率など
- 育成→ 共感/理解が深まったかどうか
- 成果→ 導線のクリック数、CV数
これらの中で育成フェーズは数値化が難しいが、とても知りたい内容でもある。今までは、リツイートや「いいね!」ボタンを指標にしていたが、コンテンツの内容によっては「いいね!」を押すのが恥ずかしいようなものもある。そのような場合は、粒度と指標を変えることでKPIの設定が可能になる。
たとえば、個別のコンテンツ接触の影響を数値化するのは困難なので、コンテンツ単位ではなくコンテンツ群で評価する。目的別に設計したコンテンツ群のPV数・UU数などを指標にすることで、「立ち上げ当初とくらべて習慣化目的・育成目的のコンテンツ群のPV比率やUU数が上がってきている」という評価例を紹介した。このように、知りたいことを定量化するには、事前の設計が必須となる。
一方、コンテンツ単位の質の改善では、ヒートマップを使う。理解や共感などの目的を達成したかどうかをPVやUUなどの数値では評価できないが、ユーザーローカルのヒートマップなら、どこまで読まれたかが分かるスクロール深度や、よく読まれた場所が暖色で表示される熟読マップがある。
ヒートマップ分析をすると、どこで離脱されているか、どこが熟読されているかがわかるため、どのように改善すればいいかの参考になる。たとえば、ユーザーローカルの新サービスニュースのニュースページをヒートマップ分析したのが以下の図だ。
ページはテキストエリア、イメージ画像、お問い合わせ先などという構成になっているが、スクロール深度からは「ファーストビュー直後とテキスト終了地点あたりで離脱が見られるが、画像エリアでは離脱が少ない」ことが、熟読マップからは「テキストエリアは反応が強いが画像は1枚目で飽きられている」といったことがわかる。これにより、以下のような課題と対策が浮かび上がる。
- 課題 テキストエリアですでに離脱が多い
- 対策 1枚目の画像をテキストエリア内の段落の間に配置してみる
- 課題 会話画面は2枚目から反応が弱い
- 対策 会話画面以外の画像を使用する。画像を用意できない場合は2枚に留める。
また、このような改善以外にも、記事のSEOは継続的に実施する必要がある。狙ったキーワードで記事を作成して、そのあとは放置というのでは、せっかくのオウンドメディアの意味がない。オウンドメディアは、広告などと違って、いつでもコンテンツを直せるところにメリットがあるのだから。
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