時代はコンテンツ管理からカスタマー・エクスペリエンス管理(CXM)へ移行中。その重要性とは?
CMSを使ったWebコンテンツの制作・管理は、もはや当たり前の時代になった。差別化を実現するには、カスタマー・エクスペリエンス管理にまで対応できるCXMが必要とされている。
ジゾンのHeartCore CXMは、コンテンツの作成だけでなくパーソナライズや最適化まで可能な、Webコンテンツ管理・エクスペリエンス管理の国内製品だ。同社の神野 純孝氏は、「Web担当者Forum ミーティング2015 秋」で「優れたユーザー体験を実現するWebサイトへ」と題し、CXMの実際と、最新ツールの機能を紹介した。
時代はCMSからCXMへ
CMSは、フリーツールからエンタープライズ系ツールまで、世界で1500種類もあると言われる。フリーツールでは大量のコンテンツ管理が困難であるという違いはあるものの、既にCMSのコモディティ化は進んでおり、機能面に大差は見られなくなっている。
Web戦略の考え方は、ここ数年で以下のように変化している。
- プロダクトファースト → カスタマーファースト
- Webを分析する → 顧客を理解する
- マルチチャネル → オムニチャネル
- コンテンツを量産 → 文脈を持ってコンテンツを作成、設計、提供
- 効率的 → 効果的
そこで2012年頃から新しく登場したのが、顧客体験を戦略の中心に置いた管理ツール、CXMだ。コンテンツの作成、配信、最適化まですべてサポートするため、ビジネスにおける価値は高い。しかし、完全なCXMと呼べる製品はまだ少ないのが現状だ。国内で販売されている完全なCXM製品は5種類程度、世界でも10種類くらいしかないと神野氏は言う。
CXMは、CMSとCRM、マーケティングオートメーションを組み合わせたもので、以下のような機能を備えている。
- コンテンツ管理
- 顧客管理
- マーケティングオートメーション
- SNSの管理
- データ分析
- データマイニング
これらのキーバリューによって顧客満足度を高めるのがCXMの役割である。そこで、CXMの市場にはCMSのベンダーやCRMのベンダー、マーケティングオートメーションのベンダーが参入している。現状でCXMに一番近いのはマーケティングオートメーションだが、既存ツールで顧客体験管理を実現しようとすると、複雑難解なワークフローを手動で構築する必要があるため、運用が難しいという課題があり、途中であきらめる企業も多い。
デジタル・エクスペリエンスのポイント
デジタルで顧客体験を最適化する際にポイントとなるのは、顧客ターゲティングやパーソナライズだ。理想は「探さなくてもすぐに見つかる」ことである。特に、スマートフォンでは何度もタップしてサイト内を探すことはほとんどないので、「その人が今欲しい物を、すぐ出してあげる」ことが出来なければ、他へ流出していってしまう。さらに、その人が異なるデバイスで訪問した場合も、同一人物であると認識して同じ体験を提供することも重要である。
デジタル・エクスペリエンスを考える上で参考になるような、問題のある実例がいくつか紹介された。
- ダメな例1システムの都合でお客様のニーズに応えられない
米国出張で、日本を6日に出発。航空会社のサイトからホテルを予約すると安いので予約しようと思ったが、米国到着は時差の関係で5日になる。そのサイトでは、6日以降の予約しかできない。
- ダメな例2レコメンドエンジンの精度が低いことで不快な思いをさせる
通販サイトで冷蔵庫を買った。「右開きドアの冷蔵を買った人は、左開きドアの冷蔵も一緒に購入されています!」と、有り得ないレコメンドをされた。
- ダメな例3日本語の表記揺れに対応できないために不便を感じさせる
商品検索で、「デジタルカメラ」と入力した場合と「デジカメ」と入力した場合で、ヒットする商品数に大きな差がある。日本語や日本の慣習を理解していない海外製CMSなどで発生しやすい。
このように、日本のデジタルマーケティングには、まだまだ多くの課題が存在している。これらを解消するのが、先に述べたような最新の完全CXM製品である。
完全にCXM化された製品では、以下のようなエクスペリエンスが提供可能だ。
- セグメンテーションによるターゲティング
訪問者が該当するセグメントと同じセグメントに属する人が、過去にコンバージョンに至るまでに取った行動を提案する。
- プレディクションによる補正
AI等の分析から立てられた予測や仮説を、訪問者の実際の行動に応じて補正を行っていく。
もうひとつのポイントは、経験の運用だ。デジタルでは取れるデータも多いが、データだけでは見えない部分もある。そこは、システムに惑わされずに自分の今までの経験と勘を信じ、捨てないことも重要だ。
「すでに起こった未来」をデータから探すおもてなし
今後のWebサイトには、「おもてなし」の精神が求められる。例えば、同じサイト訪問者でも、「ヘビーユーザー」と「間違えて来たユーザー」に同じものを見せるのは、ユーザー体験としては正しくない。お得意様にはそれなりの体験を提供するのが「おもてなし」だ。また、時間軸を考えるのもおもてなしにとって重要である。必要なのは、「すでに起こった未来を探す」ことだ。具体的には、以下のようなことが考えられる。
- 10年後に成人式を迎えるのは、10年前に生まれた人
- ○と△の組合せで食品を買った人は、間もなく妊娠が発覚する可能性が高い
- 今Sサイズのベビーおむつを買った人は、半年後にMサイズのベビーおむつを買う
このように、明白な事実から、想像もつかないような事実までが、「今に含まれる未来」として浮彫となる。
顧客体験を考える上で必要なのは、行動の文脈を捉えることであり、コンテキストの抽出がCMS/CXMの役目ということになる。
最後に、HeartCore CXMの機能が、いくつかデモで紹介された。ひとつは、ユーザーの嘘を見抜く機能だ。たとえば、キャンペーンの申し込みで年齢や性別を偽っても、サイト内のコンテンツでFacebookの「いいね!」ボタンを押すと、そのユーザーの情報はFacebookの登録情報に置き換わる。これにより、本当にその人に必要な情報を提示することができる。
顧客体験の最適化やコンバージョン向上を図るには、A/Bテストが非常に有効であるが、HeartCore CXMに特長的なのは、Dynamic Imagingだ。画像の中に埋め込まれた文字を動的に変化させ、自動で画像生成ができる。例えば、ソーシャルメディア連携で取得した個人名をリアルタイムで画像内に反映する、といったことが可能。A/Bテストのために複数の画像を準備するには、デザイン会社に依頼する場合も多いが、工数やコストの面で難しいケースもあるだろう。個人別やセグメント別に異なる文字の入った画像や、端末ごとに最適化した画像を自動生成するDynamic Imagingのような機能があれば、何百何千パターンというA/Bテストをいつでも好きなだけ実行できるようになる。
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