【レポート】Web担当者Forumミーティング 2015 Autumn

千趣会が「数字にストーリーを持たせる」データ分析に活用したヒートマップのチカラ

数字に語らせるツールの使用法
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運営しているWebサイトのアクセス解析結果を上司などに報告したら、わかりにくいとか、想定外の評価をされたことはないだろうか。単に数字を羅列するだけではなく、数字にストーリーを持たせれば、相手はそのストーリーに乗ってきやすくなる。数字を可視化することで、ストーリーは、よりわかりやすくできる。Webサイト内でのユーザー行動データの可視化に有効なのが、ヒートマップだ。

「Web担当者Forum ミーティング2015 秋」では「ベルメゾンのデータドリブンな組織の運営方法」と題し、セッションの前半ではユーザーローカルの渡邊 和行氏が、解析結果から見えてくる最近のトレンドを解説。後半は、「ユーザーインサイト」のアカウントを共有してWebに携わる多くのスタッフがみんなでデータを見ながら改善に取り組んでいるというベルメゾンの事例を、千趣会の光本 圭一氏が紹介した。

渡邊 和行氏光本 圭一氏
株式会社ユーザーローカル 取締役 COO 渡邊 和行氏(左)と
株式会社千趣会 販売戦略部 販売分析チーム 光本 圭一氏(右)

スマホ最適化がECサイトには必須

ユーザーローカルはWebサイト分析事業やソーシャルメディア分析事業を行っている。渡邊氏は最初に、その分析結果から見えてきたトレンドを紹介した。

ひとつはソーシャルメディアの動きだ。2011年に登場したTwitterやFacebook、さらに2015年には新しくInstagramが登場した。Instagramのユーザーは若い女性が多く、先の2つとはユーザー層が少し異なる。SNSのユーザーは増加しており、広告プラットフォームとしても利用できるようになっているのが最近の動きだ。

もうひとつのトレンドはスマートフォンの増加で、ユーザーローカルのWeb分析はこれまでPCとスマートフォンのブラウザを分析対象としていたが、スマートフォンネイティブアプリの分析もリリースしている。

また、分析対象の拡大も最近の特長だ。ユーザーは、PCでサイトを見たあと、SNSでフォローし、外出先ではスマートフォンを見る。その先にあるのはリアルの店舗だ。ユーザーローカルでは、ECサイトのオムニチャネル化は自然な流れとして取り組んでいる。

これからは、自社内に閉じたWebサイトの分析、外部サービスであるSNSの分析、モバイルアプリや現実の店舗の分析まで行うようになるだろう(渡邊氏)

分析対象の拡大

ここで取り上げるのは、最初のステップであるWeb解析についてだ。「ユーザーインサイト」は、熟読エリアやエリアごとの閲覧率、終了エリア、クリックエリアなど、10種類のヒートマップを提供する。マルチデバイス対応のWeb解析ツールで、分析結果はPCでもスマートフォンでも見ることができる。現在国内700サイト以上で導入され、国内最大の導入実績を誇る。

全10種類のヒートマップで細かく分析可能

ユーザーローカルが解析しているデータ量は約25万サイト、約130億PV/月を解析している。その中から、特に伸びているECサイトを抽出して、最近のトレンドをいくつか紹介した。まずひとつは、スマートフォンの増加だ。ユニークユーザー数は、1年半で約2.15倍になっている。それに対して、PCサイトのユニークユーザー数は増えていない。

また、伸びているECサイトで見た場合には、コンバージョン数も1年半で約2.55倍と大きく伸びている。ただし、コンバージョン率は、やはりPCサイトの方が高い。また、スマートフォンでのコンバージョンには勝ち負けがはっきりついているとのことで、「スマートフォンはコンバージョン率が低い」という悩みを持つサイトもまだ多くある。つまり、アクセス全体におけるスマートフォンの割合が増えているので、そのスマートフォンでのコンバージョン率が低いままだと、売上げが減少しかねないというのが、現状の課題だ。

このため、ECサイトのスマートフォン最適化が必要になる。渡邊氏は、そのための具体的なポイントを3つ紹介した。

  1. PCの写真をリサイズしてそのまま使わない

    レスポンシブデザインにすると、ソースはひとつでそれを使い回せばいいと考えがちだが、PCとスマートフォンは違う。PC用の素材をそのまま使うと、コンバージョン率は上がりにくい。スマホ向けにはスマホ用の素材を用意するのが定石だ。

  2. 写真を大きく使う

    画面が小さいスマホでは、「やり過ぎ」くらいに写真を大きくするとコンバージョン率が上がる。

  3. 情報は思い切って取捨選択する

    小さい画面で、PCと同じ情報を詰め込むとむしろわかりにくいので、思い切って取捨選択する。

誰でも使えて分かりやすい分析ツールが必要

続いて千趣会の光本氏が、自社のECサイト改善事例について語った。

千趣会は主に女性向けにカタログ販売を行っているが、2000年にベルメゾンネットというECサイトを立ち上げた。主に女性向けといっても、ネット化によって男性客が少しずつ増えているという。カタログの場合はリストにもとづいて発送するが、リストには女性しか載っていない。しかし、Webサイトには男性もやってくるからだ。2、3年前は女性が95%だったが、今は90%に下がっている。また、商品の70%は自社で企画したオリジナル商品である点も特長だ。売上額では、巨人Amazonに水をあけられながらも、昨年は堂々2位である。売り上げの推移として、やはりスマートフォンからの売上げが増加している。

光本氏自身は、元々は靴の仕入れを担当していたという経歴を持つ。その時、ヒールの高さと靴のサイズに相関関係があることに気付いた。仕入れ担当の大きな課題のひとつが、いかに在庫を減らすかだ。当初、どのサイズも同数作っていたが、高いヒールは小さいサイズが、低いヒールは大きいサイズが売れることに気付いた。そこで、それに合わせて発注数を変えたのである。

この時、上司を説得するのに、「数字にストーリーを持たせる」ことが大事だと気付いた。どの靴のどのサイズが何足売れているというデータをExcelの表にして見せても、それでは人はピンとこないのだ。しかし、「背の高い人は、高いヒールは履きませんよね」という話方をすれば、すぐに納得してもらえる。

データ利用は、カタログ販売時代から行っている。ただしそのときは、季節ごとにカタログを発行するので、データ分析も季節ごとでいいという、ゆったりした時代だ。データ分析は、データ分析担当者のみが行っていた。

ECサイトを始めたことで、Web解析も始めたが、カタログのときと同じような体制ではレポートが間に合わなくなってきた。「Webのログを見るために、社内のデータウェアハウスからデータを取り出すのに1時間かかるため、一日かけてもExcelの表を100マス埋める程度」という状況だ。

そこで、とあるデータ分析ツールの導入を決定した。これにより各営業担当がレポートを見るようになった。このツールは、もちろん全社員が見ることができるものだが、とはいえどう見たらいいかわからないなど、使える人数は少数に限られていた。

また、データの使い方も「サイトをリニューアルしたので、どのようによくなったかのデータを出してください」といったものだった。データを基に何かをするのではなく、自分たちの求める結果の根拠とするための数字が欲しいということだ。これは、データドリブンではない

そのツールがサポート切れとなることから、もっと簡単に使えるツールはないのかと探して見つけたのが「ユーザーインサイト」だった。これなら誰にでも扱えるし、レポートも感覚的にわかりやすい。今では、各担当者も意図的に「これをすればこういう影響」ということを意識して施策を行っている。

分析ツールに重要なこととして光本氏が挙げたのは以下の点だ。

  • 現場担当者も簡単にアクセスできる
  • 分かりやすい見た目

分析担当部門として販売分析チームはSQLを書くなどの専門業務を行い、数百人いる営業担当者がそれぞれWeb解析をして結果を利用するという体制だ。しかし、営業担当者の経験やスキルはそれぞれ違う。初めてWebサイトを担当するような人でも使えて、わかりやすいものが欲しいというニーズが、営業担当側から上がってきていた。その他、ユーザーインサイトのいいところとして、いくつかの点が挙がっている。

  • いろいろなヒートマップをひとつの画面に並べて見られる
  • レポートを過去にさかのぼれる
  • レポートの見方の説明が出る

具体的な施策のひとつが、ページの改善だ

ほとんどの人はカタログを見てネットに来る。つまり、Webは決済機関として利用されているということだ。そこからいかにプラスアルファで買ってもらうかが、ECサイトのひとつの役割となっている。そのためには、スカートを買いに来た人にそれに合うセーターをお勧めするなどの、コーディネートの提案が有効だと考え、提案型のページを作っていた。

しかし、その提案型ページを見ているのは25%の人だということがヒートマップによって分かった。そのため、クリックしてもらえないなら、もともと見えるところに置けばいいということでページを改善した

もうひとつはA/Bテストだ。社内には「商品説明こそが最も重要」という意識が強く、キャンペーンのバナーを大きくするのを避ける風潮があった。そこで、キャンペーンバナーの大きさの異なるものをA/Bテストして、周囲を納得させた。もちろん、バナーは大きいほうがコンバージョン率は高かった。

小さな変化で効果を得るよりも、直接的な効果を得られることを考えるほうがいい(光本氏)

そのためには、ユーザーインサイトのようなツールが説得材料になる。また、効果を説明するときには、数字を丸めないほうがいいという。売上げが増加したなら、何十万というように数字を丸めず、一円単位までいうほうが、本当っぽくていいということだ。

千趣会の事例のように、数字を単に見せるのではなく、数字にいかにストーリーを持たせるかが重要だ。数字が語る見せかたを工夫すれば、上司の説得もしやすい。それには適切なツールを選ぶのが近道というわけだ。

用語集
Facebook / Instagram / SNS / アクセス解析 / キャンペーン / コンバージョン / コンバージョン率 / スマートフォン / セッション / ソーシャルメディア / ユニークユーザー
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