せっかくリニューアルするならビジネスに貢献するサイトにしませんか
「そろそろウェブサイトのリニューアルをしないとな……」と考えているなら、現状の課題を解決するだけでなく、将来的にビジネスに貢献するサイトにすることも考えてみよう。
単にサイトに情報を掲載して集客するだけでなく、
- マルチチャネルに対応する
- A/Bテストでデータを元に成果を獲得する
- パーソナライズで最適な情報を提供する
- 顧客セグメントに対応した自動パーソナライズする
- メールや印刷物も顧客の行動をもとにパーソナライズする
などで「ロイヤリティの高いリピーターにさせる」ためのデジタルマーケティング、その第一歩がウェブサイトだという考え方だ。
ウェブは情報の掲示板でいいのか
Web担当者が「そろそろウェブをリニューアルしなければ」と思っているとき、その理由はいろいろあるだろう。
- 不安定だ
- 古いシステムで更新しにくい
- デザインが古くさい
- 今時モバイル対応しないとダメだよね
- etc...
どうせリニューアルするなら、ビジネスに貢献するサイトにしてはいかがだろう。
これまでウェブサイトは、「情報の掲示板」「デジタル商品カタログ」と思われてきた。「無いのはまずいから、とりあえず作った」というサイトもけっこうあるはずだ。それならコストセンターだし、お金と手間をかけないことが最優先となる。デジタルに強い人が兼務で片手間にやっていたら、それは致し方ないことだろう。
だがそれでいいのだろうか。ウェブを含むデジタルテクノロジーの進化はめざましい。今からやるなら、「デジタルマーケティングプラットフォームとして、プロフィットセンターにしようではないか」という話だ。カタカナの羅列で目が滑ったかもしれないが、何が言いたいかというと、
- ウェブサイトに来た人をおもてなしすることで、自社のファンになってもらい、購買意欲を高める
言い換えれば、
- ウェブが収益に貢献することを目標にする
ということだ。
もちろん、ECサイト以外では、直接売り上げが立つわけではない。しかし、情報を出しっ放しで「見たければ見てくれ」というサイトではなく、「これを買いたい」「ここと契約したい」と思わせるサイトなら、ビジネスに貢献していることになる。
いやむしろ、そういうサイトでないなら、きちんとした予算をつけてもらえないのは当然だ。
ウェブでのおもてなし3つのレベル――己を知り、目標を定める
「“ウェブでおもてなし”って何だ」と思われるかもしれない。まずはっきりさせておきたいのは、ウェブで集客する話ではなく、広告などで集客した後のウェブでの体験(カスタマーエクスペリエンス)の話だということだ。
おもてなしができていないダメなパターンは、たとえば次のようなものだ。
- スマホ対応しておらず、スマホで見るとPC用サイトが小さく見えるだけ
- 何度来ても同じコンテンツしか掲載されていない
- すでに購入した商品の広告が掲載される
これでは「おもてなし」できていないので、そのうち来てもらえなくなるだろう。
それに対して、たとえば次のようなサイトならどうだろうか。
- 毎回、興味を持っている面白いコンテンツが表示される
- ちょうど買おうと思っていた物のクーポンが提示される
こうした、サイトに来た人がちょっと嬉しくなるようなサイトなら、そのブランドを好きになってもらえる。サイトにもう一度来ようというリピーターになってもらえるし、購入しようという気持ちになってもらえる。購入も一度だけでなく、何度も買ってくれるお得意さんにもなってもらえるだろう。
目指すのはそこだ。
では、具体的にどのようなサイトであればビジネスに貢献できるのか、テクノロジーや手法の活用段階で整理してみよう。
レベル1昔ながらの情報掲示板(静的で受動的)
「存在しています、見てください」というフェーズ。ウェブページがなければ、デジタルの世界ではその会社は存在していないことになる。だから、ウェブページがあることは存在証明であり、探している人に自分たちを見てもらうための場所だ。
もちろん、ものによっては「これをお探しですか、電話してください。XX-XXXX-XXXX」で十分な場合もある。
レベル2マルチチャネルとパーソナライズ(動的で受動的)
「来てくれた人をもてなす」フェーズ。デバイスごとに適した見やすいサイトにし、関係ないものは見せない。
たとえばB2B企業のサイトで、スマートフォンからの閲覧ならば電話番号や地図へのリンクをトップページに表示し、PCからの閲覧ならば会社概要のメニュー下に拠点一覧を表示するという対応なども考えられる。
レベル3見込み客に当てにいくサイト(能動的)
「気に入ってもらえそうなものを適切なタイミングでお勧めする」フェーズ。Amazonのレコメンドのようなものがイメージしやすい。また、ウェブがいいかメールがいいか、PCがいいかスマホがいいか、朝がいいか夕方がいいかなど、適切な手段とタイミングでコミュニケーションする。
これらを実現するために必要な要素としては、たとえば次のようなものがある。
- 誰でも簡単にコンテンツを作成できる仕組み(頻繁に更新できる)
- マルチデバイス対応
- A/Bテスト
- アクセス解析
- データ分析を元にしたパーソナライズ、レコメンド
- 動画配信
- メールなど、ウェブ以外への展開
こうしたことを実現するための要素をマッピングすると、おおむね以下のようになる。ビジネスに貢献するサイトを目指すなら、自社のサイトがどの段階にありどこまで進めるべきかを考え、そのためにはどのような仕組みが必要になるのかを考えることから始めよう。
ここではウェブでのおもてなしを3つのレベルに分けたが、もっと細かく7段階に分類して、自社がどれぐらいおもてなしをできる組織かの「成熟度」を判断できるテストもある。
このテストを提供しているサイトコア社は、ウェブサイトのコンテンツを管理し、そのサイトによってカスタマーエクスペリエンスを改善してデジタルマーケティングに活かすためのシステムを開発・提供している企業だ。
サイトコア社の片桐佳江氏は、こう語っている。
「カスタマーエクスペリエンス成熟度」として定義している7段階のステップは、現在の状態から将来の理想的な状態までのロードマップを描くためのもの。
多くの企業はまだこの7段階の下のほうにいるが、そこから将来どうなっていきたいかを明確にすることで、具体的に何をすべきかが見える。
そうしたことを考える際には、「1年以内にこの程度までは実現したい」という短期的目標を定めるだけではなく、人材や組織変革まで含めた中長期の目標も併せて決めることが大切だ。
デジタルマーケティングゴール
ビジネスに貢献するサイトにするための具体的な手順として、最初にやらなければいけないのはビジネス指標と関係するゴールの設定だ。
あなたは、
デジタルにこれだけお金をかけて、本当に役に立っているの?
と言われたことはないだろうか。
また、デジタルキャンペーンの報告で
PV数やUU数がこれだけ上がりました
と言ったら、
それで?
と冷たく言われた経験は?
経営層にとって、ページビューやユニークユーザーは知りたい数字ではない。経営層が本当に知りたいのは、「顧客にどういう価値を提供できたか」「ビジネスにどれだけ貢献したか」だ。だから、ビジネスに同期したKPIでなければ、納得してもらえない。たとえば、次のようなものだ。
- BtoBのソフトウェアならデモのリクエストやセミナーの申し込み
- 自動車メーカーならディーラーでの試乗申し込みやカタログダウンロード
- 化粧品ならブランドイメージビデオの再生
サイトコアでは、たとえば自動車メーカーであれば試乗申し込みが「ゴール」で、その前段階のカタログリクエストダウンロードを「ミニゴール」と呼ぶ(片桐氏)
化粧品のテレビCMはよく見るが、実際に見たかどうかわからない視聴率で広告価格が決まっていたりする。それに比べればネット動画は確実に見られたことがわかるので、ブランドロイヤリティを高めたいならむしろコスト効果があるだろう。
何をゴールと設定するかによって、サイトがビジネス貢献できるかどうかの方向性を定めるのだ。
ゴールを設定したら、次はそのゴールを実現するための、顧客視点のコミュニケーション設計が必要だ。これについてサイトコア社は、4つのステップを勧めている。
ステップ1マルチチャネルでコンテンツ管理の効率化
前述の【レベル1】から【レベル2】以上に上げるためには、マルチデバイス対応は必須だ。また、来訪者を飽きさせないためには、たくさんのコンテンツを用意する必要がある。
このため、HTMLやJavaなどの専門知識がなくても容易にウェブページの作成や変更ができる環境を整えておくことが必要だ。
ステップ2A/Bテストや多変量テストを使った最適化
【レベル2】以上ではコンテンツ最適化のため、A/Bテストや多変量テストなどを継続的に使う。こうしたテストは、担当者やデザイナーの思い込みではなく、実際のサイト訪問者がどう行動したかのデータをもとに、最適なコンテンツ表示を判断するための仕組みだ。
トップページや入力フォームなど、頻繁にアクセスされるページや、ゴール達成に重要な場所は特にA/Bテストを必ず入れることで、ゴールにつながるコンバージョン改善に貢献する。
ステップ3ルールベースのパーソナライズ
【レベル2】以上では関係ないものは見せない。このため、「○○であればコンテンツAを表示する(しない)」というルールを設定して最適化する。表示する条件は複数でもいい。
たとえば、もし訪問者が
- 「ベネチア旅行」という検索キーワードで広告から流入
- 東京からアクセス
- 1か月以内に5回以上訪問
というすべての条件にマッチしたら「成田発ベネチア行きエアーチケットの1割引バナーを表示する」などの方法だ。
ステップ4ペルソナ・顧客セグメントの作成によるパーソナライズ
ルールベースのパーソナライズがユーザー像の一部分に着目した最適化だとすると、ユーザーのすべてに着目してパーソナライズするのがペルソナや顧客セグメント作成による最適化だ。
顧客の属性や行動履歴などの情報からその顧客のニーズを推測し、適切なコンテンツを、その顧客に適したタイミングで、適切なチャネル(手段)を通じて提供する。One to Oneマーケティングによって実現する理想型だ。
これは専門家の助けが必要なハードルの高い手法だが、サイトコア社ではコンサルティングのノウハウをパートナーに提供しており、経験を積んだパートナーからコンサルティングも行っている。
CMSは単なるコンテンツ制作ツールではない
A/Bテストだのパーソナライズだのというと、専門のツールが必要と思うかもしれない。さまざまなツールを組み合わせなければならないのは大変そうだと、心配にもなるだろう。
しかしサイトコアは、単にウェブコンテンツを作成するだけのツールではない。ここまで説明してきた、ユーザーのデジタル体験(カスタマーエクスペリエンス)全体を最適化するマーケティングシステムなのである。A/Bテストやパーソナライズの機能を備えており、ウェブやメールだけでなくコールセンターや印刷物も含めた顧客接点全体の機能、つまりデジタルだけでなくアナログなカスタマーエクスペリエンスも提供する。
CMSはウェブコンテンツを作成するツールと思われているが、サイトコアはウェブだけでなくカスタマージャーニー全体を通したカスタマーエクスペリエンスを最適化するツールです(片桐氏)
サイトコアが考える「ビジネスに貢献するサイト」とは、ユーザーそれぞれにとって最適なタイミングで、最適な情報を、最適なチャネルで提供できるサイト、つまりカスタマーエクスペリエンスが成熟しているサイトである。
前述の4つのステップを実践してカスタマーエクスペリエンスを上げるためには、整備しておかなければならないポイントが3つある。
- システム ―― 効率よく施策を実行でき、臨機応変に変更・改善しやすいテクノロジー基盤
- 人材・組織 ―― 専任の専門家や組織体制の整備
- プロセス ―― 継続的に改善するプロセス
そうしたことを実現できているサイトの例として、売上向上と送客を目的としたサイトの具体的な事例を紹介しよう。
顧客ごとに最適な情報を表示してカスタマーエクスペリエンスを向上しているサイト例「スポーツショップ GALLERY・2」
横浜黒川スポーツの運営する、スポーツ用品の情報&通販サイト「スポーツショップ GALLERY・2」では、どんな商品カテゴリのページを閲覧したかによって、トップページなどに表示する内容を訪問者ごとに動的に変えているパーソナライズを実現しているのが特徴だ。
このサイトでは「フットサル&サッカー」「バスケットボール」「バレーボール」など、さまざまなスポーツをテーマに、店舗で扱っている商品などの情報を積極的に掲載している。
初めてサイトを訪れると、トップページにはさまざまなスポーツの情報が表示される。
しかし、たとえば訪問者がサイト内でバスケットボールの情報をよく見ていれば、その人が次にトップページを訪問すると、バスケットボール関連の情報が中心に表示されるようになる。サイトのシステム自体が「この人はバスケットボールに興味があるのだな」と判断するのだ。
この仕組みは、サイト訪問者の閲覧したコンテンツの種類をもとに表示をパーソナライズしている(サイトとして積極的に伝えたい最新情報などは、こうしたパーソナライズの影響を受けない枠として表示している)。
表示するコンテンツの決定は、特定のページを閲覧したかなどの行動だけをトリガーにしているわけではない。閲覧したコンテンツの内容や回数といったデータをシステムがリアルタイムで分析し、訪問者が嗜好するスポーツの傾向を自動判断してコンテンツを表示している。
このため、分析結果で興味対象がバスケットボールだと判断された人は、たまたま間違えてサッカーのページを1回閲覧したとしても、その後も表示されるのはバスケットボールの記事や商品の紹介である。
このGALLERY・2のサイトにおいて、サイトコアはシステムとして、
- コンテンツを頻繁に更新
- 来訪者の動向をリアルタイムで分析し、表示するコンテンツを最適化
- 一部の商品に関しては、店舗の在庫データと連携し最新の在庫情報を表示し適切な送客
に貢献している。
One to Oneマーケティングが実現する理想的なサイトにするのは、それほど簡単ではない。
特に人材面では、レベルが上がるにしたがってSEOや広告の知識がある人、A/Bテストの知識がある人、訪問者のアクセス解析者、部門をまたがったプロセス実行のためのリーダーなどが必要になり、すぐにステップを進ませるのは難しいだろう。システムも、手軽な価格というわけにはいかない。
それでも、マーケティングプラットフォームとしてビジネスに貢献できるようになるべきサイトは確実に存在している。自社のサイトがどのレベルを目指すべきかはビジネスのタイプや商材によって異なるので、サイトリニューアルの際にはしっかり検討してみてほしい。
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