Webコンテンツの成果を評価するたった1つの指標「One Metric」(前編)
コンテンツマーケティングの成功を測定して分析し、そして報告することは難しい。その点は、素直に認めよう。
しかもぼくたちはみんな、忙しい。現在のコンテンツマーケターが直面する大きな課題として「時間が足りないこと」を挙げる企業は実に69%にものぼる(B2Bの動向に関するContent Marketing Instituteの調査)。
僕たちは、コンテンツのリソース調達や編集、公開に多大な時間を費やしているし、制作スケジュールを管理したことのある人なら誰だって、解決すべき問題とは絶え間なく湧いてくるものだと知っている。ゆとりなんてほとんどないコンテンツマーケターは、たとえば次のようなよくわからない大量のデータをみながら判断していくことは……可能ならば避けたい。
もちろん、詳細なデータを丹念に調べたくなることもある。ある記事が、他の場所ではごく普通の反応しかないのに、Twitter上では断然人気があるというようなケースは、調べる価値がある。
しかし、個々の評価指標を見るとき、僕たちは往々にしてまったく間違った形でデータを読み取ってしまいやすい。
Mozの場合、プラス評価(親指を立てたアイコン)のクリック数がそれほど多くなければ記事の評価は低く、しかもマイナス評価(親指を下に向けたアイコン)がクリックされようものなら、ひどい過ちを犯してしまったような気になってしまう。
だが、本当のところ、こんなマークの指標だけで成功を判断することはできない。実際、Mozで過去2年間にマイナス評価が最も多かった記事は、スパム的なゲストブログの終焉を予言したとも言えるカーソン・ウォード氏の記事だった。
僕たちには解決策が必要だ。コンテンツの成果を一目で追跡しやすく、それでいながら「木を見て森を見ず」なんてことがないような解決策が。不要な情報をすばやく取り除いて、本当に成功を収めたコンテンツを把握するだけでなく、そこまで達しなかったコンテンツも把握する方法が必要だ。僕たちが求めているのは、下図のようなものだ。
この記事では、僕たちがMoz Blogのさまざまなコンテンツ評価指標を、どのようにまとめて分かりやすい単一のスコア(One Metric)を導き出したか、しかもそれを、どうやってほぼ完全に自動化したかを紹介しよう。
単一の指標でコンテンツを測る――One Metric
このスコアが意図していないこと
これは絶対値としてのスコアではない。どんなサイトにも使える100点満点のスコアを作成しても、計算するのは同じように簡単だが、要するに意味がないのだ。
というのも、そういうスコアであれば、コンテンツマーケティングの取り組みに手をつけ始めたばかりの企業は、1桁台のスコアが続くだろう。莫大な資金をかけた大企業の取り組みと、零細企業が全力を注いだ取り組みを比較してもフェアではない。
この記事で紹介する指標は、ある組織の取り組みを他の組織の取り組みと比較するためのものではない。1つの組織の内部で利用するためのものだ。
このスコアの意図と評価対象
「One Metric」は単一のスコアであり、それ以前のコンテンツの平均的パフォーマンスと比較することによって、コンテンツがどれほどの成功を収めたかを明らかにするものだ。
僕たちは、いくつかの異なる指標(「材料」)を組み合わせてOne Metricを開発したのだが、そうした指標は、次の3つのカテゴリに分類される。各カテゴリの比重は同等だ。
- Googleアナリティクス
- オンページ(インハウス)指標
- ソーシャル指標
本質的に数字が大きいほど比重は高くなるのだから、単にこれらの指標をすべて一律にこねあわせても意味がない。つまり、訪問回数の「1万回」とFacebookの「200いいね!」を単純に足して平均を取ることはできない。Facebookの占める比重ははるかに大きいからだ。「いいね!」が200件から201件になるときの増加率は0.5%で、訪問数が1万件から1万1件になるときの増加率は0.01%だ。
すべての材料の比重を平等にするため、僕たちは実際の値とそれぞれの期待値を個別に比較している。
材料を1つだけ使って簡単な例を挙げてみよう。
ある記事がTwitter上でどれほどの成果を挙げたか感触をつかみたい場合は、当然ながら、その記事にリンクしているツイートの数を見ればいい。
だが、その数字は実際に何を意味するのだろうか? 100回ツイートしてもらえる記事というのは、どの程度うまくいっていると言えるのか? 500回では? 2000回では?
これを理解するため、僕たちは過去のパフォーマンスを利用している。過去2か月間に公開したすべての記事を取り上げて、それぞれの記事が獲得したツイートの平均数を調べるのだ(僕たちは2か月にしたが、必要に応じてこれより長くても短くてもいい)。それが僕たちのベンチマーク、つまり今後の記事がどれほどの数のツイートを獲得するかという僕たちの期待値になる。
そのうえで、新たに公開した記事が期待値より多くのツイートを獲得したら、僕たち自身の尺度で成果があったと言える。その意味で、ツイートの実際の数はそれほど重要ではない。重要なのは成長することであり、継続的に改善しようと努めることだ。
以下の図は、これをもっと視覚的に示したものだ。
記事が期待値よりよかったのか悪かったのかを知るのは非常に重要だが、実際のところ、どれほどよかったのか、それとも悪かったのか? わずかな差で合格ラインに届かなかったのか、それとも完全な失敗だったのか? それを定量化してみよう。
僕たちが「One Metric」で使用するのは、平均に対する比率(上記の例では92%と73%)だ。どんな材料でも、平均の200%なら、通常の2倍の成果があった記事ということになる。50%なら、記事の成果は通常の半分だ。
そこから、僕たちが使いたい他のすべての材料にもまったく同じ計算をして、それらを組み合わせる。
こうすることによって単一の指標が得られ、記事のパフォーマンスをひと目で概観できるようになる。上記の例では、全体的なパフォーマンスは、平均的パフォーマンスに基づく期待値の113%になった。そのため期待を13%上回ったと言える。
だが、ここで終わりではない。この平均に対する比率はきわめて有益だが、僕たちはこの指標を、僕たち思考のなかだけではなく広く使えるようにしたかった。
だれが見ても理解できるものにするには、尺度を別の形にする必要がある。そこで、さらに一歩進んで、この比率を対数スケールに当てはめたところ、ドメインオーソリティやページオーソリティで目にするような単一の2桁のスコアが得られた。
ちなみに僕たちは、スケールに以下の数式を使った(ただし、必要に応じてこの数式を自由に調整して、あなたの目的により適ったスケールを作ってほしい)。
この数式で「y」はOne Metricのスコアであり、「x」は期待に対する記事の実際のパフォーマンスの比率だ。基本的に、期待値ぴったりだった記事のスコアは50となる。
上記の例では、期待に対する全体の比率が113%なので、数式は以下のようになる。
もちろん、値を手計算する必要などなく、スプレッドシートで自動的に計算できる。これは実にスムーズだ。
プロセスを自動化する
One Metricを自分のコンテンツに合わせて使う
こうしたスコアは簡単に確認できることが大切だ。僕たちは、新しいコンテンツを作成するたびにExcelにデータを追加して各種のサービスから情報をダウンロードして入力するということはしたくない。
この記事では単にスコアを作るだけでなく、それを「活用」できるように、物事を簡単にすることまで解説したい。記事を公開したら、スプレッドシートで「フィルダウン」しさえすればいいようにしたいのだ。1記事につき10~15秒ほどの作業だ。
残念ながら、僕はあなたのGoogleアナリティクスにアクセスできるわけではないし、あなたのオンページ指標がどのように設定されているかもまったくわからないので、そのまま使えるテンプレートを提供することはできない。
そのため、最初は少し手ごわいように見えるかもしれない。
しかし、とにかく作業を始めてしまえば、新しいコンテンツごとに新しい行に数式をコピーしていくだけであり、指標は自動的に書き込まれていく。やってみるだけの価値は十分にある。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、「One Metric」を算出するプロセスの自動化について紹介する。→後編(自動処理編)を読む
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