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コンテンツマーケティングとしてのオンラインビデオの可能性をDI横山隆治氏などが講演 ~「『オンラインビデオ広告入門』出版記念セミナー」レポート

「オンラインビデオの時代が来る」――10年近く言われ続けてきたが、ようやくその時代が本当に来るのではないだろうか。
株式会社デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山 隆治 氏

2000年代初頭に日本で動画サービスが始まった頃から「オンラインビデオの時代になる」と言い続けてきたが、今年に入ってようやく効果が確かめられる例が出てきている。

オンラインビデオは単なる広告配信にとどまらない、ブランデッドコンテンツを発信できる点で、企業にとってはコンテンツマーケティングの一環として捉えられる。

デジタルインテリジェンスの横山氏によるこんな言葉で始まり、オンラインビデオに携わる著名講師陣が、コンテンツマーケティングや広告、そして、その効果について講演したセミナーのレポートをお届けする。

このセミナーは、インプレスR&Dの新刊書籍『オンラインビデオ広告入門』(副題:クロスデバイス時代のコンテンツ新戦略)の出版を記念したセミナーとして、10月15日に東京・渋谷で開催されたもの。主催は株式会社デジタルインテリジェンス。

本書の著者である同社の横山隆治氏、楳田良輝氏、榮枝洋文氏、株式会社TubeMogulの松矢順一氏が登壇したほか、Platform ID株式会社による効果検証の紹介、広告主企業・クリエイターを交えたパネルディスカッションも行われたセミナーの様子をレポートする。

広告価値のあるメディアに成長したオンランビデオ

株式会社TubeMogul 執行役員 松矢 順一 氏

オンラインビデオ広告のDSPを提供するTubeMogulの松矢氏は、最近、テレビ局や大手出版社などメディア社によるオンラインビデオへの取り組みが活性化していることや、ユーザーの動画利用が成長していることを紹介した。

男性の若年層では、インターネット利用者のうち85%以上が動画を見ているという調査データがあり(コムスコア調べ)、オンライン動画にはテレビの視聴者とは異なる層のユーザーが確実に存在していることから、オンランビデオも「広告メディアとして投資価値が大きくなっている」と述べた。

そのうえで松矢氏はこう考えている。

オンラインビデオはネット広告のひとつと捉えるよりも、大きくデジタルメディアのひとつと捉えたほうがいい。

企業側がオンラインビデオを利用する場合、多くのことを選んでいく必要があり、パートナー選びが重要になる。たとえば次のようなことを決めなければいけない。

  • 「純広告出稿」か「DSP出稿」か
  • 「インストリーム」(ビデオ作品の前に入るもの)かアウトストリーム」(ビデオ作品の外にあるもの)か
  • 「自社サイト」に置くのか別の「動画サイト」に置くのか
  • そもそもコンテンツとして出すのか広告として出すのか
  • など

広告として出すにしても、現時点で次のような形態がある。さらに形態とニーズは、時間の経過とともに今後大きく変わってくることが予想される。

  • インバナー(バナー広告枠やディスプレイ広告枠に表示するもの)
  • インリード(Webメディアのコンテンツエリア内に表示するもの)
  • プレロール(動画コンテンツの前に挿入されるもの)
  • スキッパブル・プレロール(プレロールの一種、数秒後にスキップ可能)
  • インタラクティブ・プレロール(プレロールの一種、動画枠内でインタラクティブな操作が可能)

松矢氏が現在特に注目しているものとしては「インタラクティブ・プレロール」と「インリード」を挙げた。

インタラクティブティブプレロール」は、ユーザーが広告にふれる時間が長いという調査結果がある。

インリード広告」は、ビデオのないメディアのコンテンツ記事の切れ間などに表示されるもので、完全視聴率は減るが、ターゲティングがしやすいというという特長があり、すでに国内でも大手新聞社のサイトで実績があるという。

広告のワークフローやクリエイティブの手法を変える

株式会社デジタルインテリジェンス シニアディレクター 楳田 良輝 氏

デジタルインテリジェンスの楳田氏は、オンラインビデオと従来のマス広告とではワークフローや企画の視点がどう変わるのかを中心に解説した。

テレビCMは15秒や30秒といった制約のなかでメッセージを研ぎ澄ませていかなければならないうえ、媒体計画はメッセージの内容とは関係なく予算や時期によって決まっていくものだ。

しかし、そうした従来のやり方をオンラインビデオに持ってくるのは危険だと楳田氏は言う。なぜならば、ユーザーインサイトよりもクライアントの心理に傾きがちになってしまうからだ。

オンラインビデオはクリエイティブによっては「自分事化」やユーザーの態度変容を促すことも可能だと考えられるため、テレビCMともこれまでのネット広告とも異なる領域での効果に楳田氏は期待している

さらに楳田氏は、オンランビデオ広告で大切なこととして、次の3つを挙げた。

  • ターゲティング精度
  • クリエイティブ(アイデア)
  • 成果指標の設定と測定

「ターゲティング精度」は、DMPの活用などオンラインが最も得意とする分野で、さまざまなターゲット・文脈に応じたメッセージを用意し、どのようなスパンでPDCAを回していくかが重要になる。

「クリエイティブ(アイデア)」については、テレビCM素材とオリジナル素材との効果を比較したデータを紹介しながら、どのように組み合わせるのか、場合によってはこれまでのCMクリエイターだけではなく誰と組むのかも考えなくてはならない。そして「クリエイティブブリーフ」という設計図が最も重要になると解説した。

「成果指標の設定と測定」に関しては、今後業界での議論を経て新たな指標が作られていくであろう研究課題だと述べた。

オーディエンスからファンへの変化

株式会社デジタルインテリジェンス ニューヨーク・オフィス代表 榮枝 洋文 氏

米国で話題になっているMCN(マルチチャンネルネットワーク)の動きについて解説したのは、デジタルインテリジェンスの榮枝氏(ニューヨーク在住)。

書籍『オンラインビデオ広告入門』でも榮枝氏はこのトピックについて執筆しているが、今回のセミナーでは、この背景としてオンラインビデオコンテンツの制作面と流通面で起こっている変化について解説した。

テレビ番組の視聴を支えてきたのは「オーディエンス」であるが、YouTubeに代表されるオンラインビデオコンテンツを支えてくれるのは「ファン」である。

そのため企業が行う必要があるのは、狭くとも1つのテーマに熱狂するファンをいかに増やしていけるかを、企業が自ら考えることだという。いわば、オンラインビデオコンテンツによる「サブカルチャーの形成」に企業が寄与するということだ。

では、そのためには何をすればいいのか。

1つの方法としては、すでにユーザー支持されているコンテンツに「乗っかる」ことがある。草の根で生まれる優れた専門コンテンツをスポンサードするのである。

テレビ広告のCM素材をオンライン上に載せることは、すでに増えてきている。しかし、その次の段階として行っていくべきことは、CGMも含めた小さくとも大量のコンテンツを集め、それらを支援し、チャネルとして育てていくことをブランド側が考えるようにしていくことなのだという。

米国では、ディズニーによるMCN企業の買収や通信事業者によるコンテンツ争奪戦といった動きが、すでに起こっている。これは、コンテンツ資産がいかに生命線であるかに、企業側が気付いていることの現れだろう。

榮枝氏は、次のように述べてセッションを締めくくった。

パートナーの選択においては、テクノロジーに投資しているかどうかがひとつの見極めるポイントとなる。

日本のクリエイティブ力も、この分野には大いに活かされるだろう。

動画が購買を引き上げた実例を紹介

株式会社Platform ID 代表取締役社長COO 清野 賢一 氏

オンラインビデオ広告のKPIをどこに置くかは目的によるが、これまでの話は、主にブランド価値を高める点にあった。

それに対して、次のセッションで登壇したPlatform IDの清野賢一氏が紹介したのは、KPIを販促効果に求めた例だ。

今回紹介された事例は、動画を配信し、実店舗での売り上げにどれぐらい寄与したかを計測したもの。

とは言っても、「オンラインビデオの購買への貢献」を測定するのは容易ではない。同社がそうした効果測定を行える背景には、同社のDSPであるXrost(クロスト)がTSUTAYAのIDと紐づいており、Tカードによる購買履歴を把握できることがある。

では、オンラインビデオ広告は実店舗での売り上げにどの程度貢献したのだろうか。あくまでも例としてだが、次のような結果が報告された。

  • とある飲料メーカーのトライアルでは、200万円の広告出稿に対し、1600万円を売り上げたという報告があった。
  • 300万人に広告を配信し、広告に触れた人が実際に店舗に行って買ったかどうかを調べたところ、次のような購買率であり、広告接触が販促に貢献していることがわかった。
    • 配信対象者だがインプレッションがなかったユーザー:5%
    • インプレッションのあったユーザー:8%
    • インプレッションがありクリックしたユーザー:23%
  • さらに細かく分析してみたところ、ターゲティングをきちんとしたほうが、より売り上げに貢献していることも検証された。

今後の運用面では、何秒の動画を何回見せることが一番購買に結び付くかを測定していくことが重要になると清野氏は予想している。

また、競合商品との分析、消費者の購買サイクルに合わせたクリエイティブ構成やコミュニケーションを設計していくことも、DMPとしての重要な役割であると考えているのだという。

パネルディスカッション~広告主やクリエイターも交えてオンラインビデオの可能性を語る

セミナー最後のパネルディスカッションは、テレビCMを出稿している企業の視点からは資生堂の羽生浩一氏を、クリエイターの立場からは、TOMOGRPAHの川越智勇氏を招き、横山氏が2人に質問する形で進行した。

まず、CMの流儀から自由になるオンラインビデオでアプローチはどう変わるのか、大事にしなければならないことは何かが問い掛けられ、続いてバズ化とブランディングの関係について語られた。

パネルディスカッションの模様
株式会社資生堂 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 羽生 浩一 氏

羽生氏これまでは、他のメディアと複合的に考えるべきだとわかっていながらも、まだテレビCMを中心に考え、デジタルを後回しにする傾向はあったと思う。

まずはコアアイデアを発想し、そこからメディアニュートラルに考えていく癖をつけてかないといけない。

川越氏15秒・30秒という制限は、俳句のようなもので、オンラインビデオでは長編でも短編で連載でも何でもできるようになる。しかし、何でもいいと言われると、対応できない人たちが出てくるだろう。

これまでのCMとはプレイヤーが変わってもおかしくない。

羽生氏コアアイデアをセットするためには、お客さまのインサイトを捉える作業が大事。それを疎かにしてしまうと違和感のあるものを増殖することになってしまう。そうではなく、コアアイデアを考えることに時間をかけ、かかわる人すべてがそれを共有する必要がある。

クリエイティブブリーフィングに説得力があるか、きちんと検証されているかが大事になると思う。

川越氏榮枝さんの話をきいて考えたのは、自分たちで作るもの以上に他の人が作っているものが大きくなり、時系列に矢継ぎ早にコンテンツを入れていくことになるとすれば、立ち戻る何かがないと、危ないと思う。

TOMOGRAPH代表 クリエイティブディレクター 川越 智勇 氏

羽生氏たとえばバズは仕掛けであって、話題になるということは突飛な要素が必要になり、拡散しても一過性のもので終われば、本当にブランディングに結び付けられるかどうか疑問がある。また、テレビCMでもブランディングできるものとそうでないものがある。

要は何を伝えたいかを整理したうえでテレビCMとオンラインビデオの役割分担を決めることが大事になる。

川越氏実際にバズ化していく様を見て思い出すのは、PR会社がタレントを呼んでも関係ない話ばかりがテレビで報道されて、商品の特性や大事なことが伝わらないということ。

これに対して本当に戦略的なPRは、文脈があり情報流をつくることができる。

オンラインビデオでは、ターゲットによって情報の質を変化させながら、時系列で組み立てていくことを考えられる。ターゲットごとに与える情報の深さを変えていけるところが、オンラインビデオの面白いところ。短期ではなく、中長期で見てくほうが面白い。

続いて横山氏は次のように述べ、意見を求めた。

現在、テレビは唯一の強大なプッシュ力を持つメディアになっている。一方、ネットは興味・関心が顕在化した人を刈り取ることはできている。

しかし、今のマーケティングメディアは、そのプッシュとプルが離れすぎているのではないか。その中間に位置する手段の1つとして、オンラインビデオが有効なのではないか

羽生氏オンラインビデオは作り方や長さが自由でより深い情報を渡せる。ターゲットごとだけでなく、エリアごとに変えることもできるようになってきた。

テレビスポットはコストがかかるので何回も続けられないが、途中にオンラインビデオを入れていくことで、忘れられることに歯止めをかけられるのではないか。

川越氏CMを投入して1週間か2週間後にYouTubeにメイキングを出すこともある。ネットは商品の購入サイクルによってはある程度の期間、買わないものがあったときにも、“ホット化”してくれる。つまりオンラインビデオは、いつでも食べられるように温めておいてくれる装置だという感覚はある。

これを受けて、横山氏は、次のように述べた。

タイミングのマーケティングでいえば、これまでのキャンペーンは送り手のタイミングであった。たとえばビデオカメラの検索数は1年変わらないのに、運動会のシーズンに向けてテレビCMを打つ。

しかし、その一部を通年のキャンペーンに回せば効果は変わってくるはず。

つまり、これからは送り手ではなく買う側のタイミングに切り替えていく必要がある

続いて榮枝氏の話にあった「草の根型のコンテンツ」に話題が及び、今後やっていきたいトライアルが最後に語られた。

羽生氏お客さまはすでにいろいろなことに気が付いていて、企業側の押しつけてくる情報がいらなくなっている。だから、うまくいかないことがある。

そういうときだからこそ、今までのセオリーでは太刀打ちできない。

新しいYouTuberなどのクリエイターには無限のアイデアがあると思うので、自分たちのブレインでは考えられないアイデアを、そういうところ(YouTuberなど)に求めていくことはできるのではないか

川越氏広告クリエイターも草の根に下りていくことも面白いのではないか。たとえばアイデアがたくさん上がってきたら、全部作ってもらい、当たったものを引き上げていくということができるかもしれない

クリイティブの作り方が変わっていくきっかけにオンラインビデオがなるといい。

羽生氏今後はとにかく動画の作り方の研究をしていきたい。長さを気にしなくていいのでドラマや物語をつくることもできる。

昔のテレビCMの世界はもう少し長いものもあり、物語のようなCMもあった。いまのテレビでそれができないのであれば、オンラインビデオでやってみたい。

川越氏メディアがあって、クリエイティブがあるという発想をしないのは、実は十数年前から行われている。予算規模によってはテレビ依存しない・できないことがあるので、思い切って制作費をオンラインビデオに回すのもよい。

大作を作ってもいいし、毎日違う素材を365作ることもありうる。制作側で違いを作り、メディア配信まで提案できれば面白いのではないか。

◇◇◇

本セミナー開催のきっかけとなった書籍『オンラインビデオ広告入門』は、電子版(1,600円+税)と印刷版(2,200円+税)の両方で、インプレスR&Dより発行されている。

http://www.amazon.co.jp/dp/4844396471

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