インタビュー

企業活用はピンイットボタンの設置から

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企業活用はピンイットボタンの設置から

――企業がピンタレストをうまく始めるためのコツはありますか。

あります。基本は3つのステップになると思います。

まずピンタレストはピンを押してもらって、それがクチコミから広がるのが最大の特徴なので、Webサイト上でピンしてもらう環境を整えるのが一番大事です。ヘビーユーザーの方は、自分でブラウザのエクステンションを入れてピンしやすい環境を整えますが、一般的には、「ピンイットボタン」をサイトに実装することが最初のステップになると思います。そして、ピンイットボタンから引っ張る写真のクオリティをしっかり担保していく。基本ですが、ピンのなかに書く文言を工夫することが大事です。

次のステップがビジネスアカウントを作成して、ボードを運用していくことになると思います。ボードの作り方も、単純に商品を羅列する見せ方もありますが、さまざまなビジネスユーザーを参考にしていただきながら、ブランドストーリーを訴求したり、H.I.S.さんのように今までと違う切り口で訴求したり、ピンタレストならではの使い方を考えていただきたい。

そこから先は、APIを駆使して自分のサイトにうまくいろいろなものを取り込むような、上級編の使い方があります。

すでに派生した取り組みはいくつかあります。たとえば、米国の高級デパートメントストアのNORDSTROMは、Webサイトにピンイットボタンを置いていますし、APIを使って人気のピンを表示したりしている。そこで彼らは、よくピンされる商品と、商品の認知に相関関係があることに気づきました。

当たり前ともいえますが、彼らは店舗にディスプレイを置いて「これが先月最もピンされたバッグのトップ5です」と、実際に表示したのです。米国では、女性の5人に1人がピンタレストを使うという実績があるので、ピンタレスで人気の商品なら購入しようかと検討する。新しい形のO2Oのような取り組みもあります。

ピンタレストで人気の商品を店舗でアピール

――ビジネスアカウントを作るより先に、自社サイト上でピンできる環境を整えていく。

すでに持っているアセットを最大限に活用することが一番賢いと思いますし、多くのビジネスユーザーはクオリティの高い写真をすでに持っています。サイト上で活用しているアセットに、なるべくアクセスしやすくするのが最初のステップだと思います。

ユーザーの観点からすると、アクションは2つあります。1つは「ピンを作成する」、もう1つは「リピンをする」(ピンタレストで見つけた写真を自分のボードにピンする)というもので、新しくピンを作成するアクションよりも、リピンするアクションのほうが多い。ピンされたものがリピンされることでスケールし、多くの人に触れていくので、まずピンを作ってもらうことが大事です。

公式アカウントの開設よりも、サイト上でピンしやすい環境を整えることが一番大事

始めるなら今のうち、キュレーターといち早くつながる

――その他に、何かポイントはありますか。

1つおすすめしているのが、ピンする人をうまくつかまえることです。ピンする人のもとには膨大な数のフォロワーがいるので、ピンする人に対してうまく訴求するのが大事です。

――最初におもしろいものを見つけてピンする人ということですか。

キュレーター的な人をつかまえるんです。その人が何千というフォロワーを抱えているので、そこから一気にバイラルで広がる。日本はまだ、日本特有のコンテンツが少ないので、今のうちに始めておけば、早い段階でインフルエンサーあるいはキュレーターのアテンションを取っておくことができる。ユーザーの自然増加にともなって人がつながり、どんどんバイラルが進んでいくようになりますから、「今のうちに始めておくと得ですよ」とは、よくパートナーの方にお伝えしています。

フォローする方は、企業のボードを直接するよりも、キュレーターを経由してフォローするパターンが多い。キュレーターの強みは、あまたのブランドをクロスして、より良いものをセレクトすることだと思うのですが、フォロワーの方も経験としてその方がいいんでしょうね。ブランドのバイアスがあまり入らず、良いものをキュレートしてくれるおもしろさがある。

――ピンタレストは個人の発見をサポートするサービス。だとすると、企業が入るときに、直接売上を上げようなどコンバージョンを考えて入っていくと失敗してしまう。

そこはまだ、弊社も答えが見えていないところです。というのも、ユーザーは興味関心ごとでピンを集めているので、ピンに対する興味が高く、ピンを打ったときに、もう一段階クリックして元のソースにとんで調べる方が多い

これは米国の事例になりますが、いわゆるパブリッシャーサイトのトラフィック量でいうとFacebookが一番ですが、ピンタレストがナンバー2になっている(図1)。クリックをして飛んだ先がECサイトなら売上の増加につながると思います。そういう意味では、サイトのトラフィックドライバーの主要なツールとして考えてもらってもかまわないと思います。

図1 Shareaholicの調査レポート。ピンタレストがFacebookに次いで多くのトラフィックをパブリッシャーサイトにわたしている

――企業の活用方法については、まだ探っている段階なのでしょうか。

そうですね。弊社で今トライしているのが、広告の「プロモーションピン」と呼ばれるものです。特定のパートナーと試している状況で、今のところホームフィードに出ることはなく、検索結果とカテゴリの一部に表示させています。たとえば、通常の検索結果やカテゴリのなかに、関連するブランドのプロモーションピンが入ってくるかもしれない。

弊社の仮説は、ユーザーの新しい発見にもつながり、パートナーの訴求にもつながるというもの。お互いにとって、それが本当にWin-Winならば、プロモーションピンの見せ方として考えていきます。

――企業向けのサポートとして、他にどんなものがありますか。

まず、分析ツールがあります。たとえば、サイト上でピンされた数などがわかります。H.I.S.さんであれば、Webサイトで特によくピンされた写真などの情報がとれます。

それとは別に、サイト上にピンイットボタンを置くためのツール(ウィジェットビルダー)を提供しています。少し変わったところでは、写真の上にマウスを置くとピンボタンが発生する「ホバリング」という機能の実装ツールがあります。APIも一部提供しつつあって、あるサイトのドメイン内で、最もピンされたものをサイト上で見せたりできます。

たとえば、米国で著名なライフスタイルコーディネーターであるマーサスチュワート氏のサイトでは、「今日最もピンされたものはこれです」と表示される。これはピンタレストのAPIを使って実装しています。

コミュニティ作りが日本での第一歩

――今後ピンタレストが日本で、どのように市場を拡大していくのか気になります。具体的なイメージはありますか。

具体的な数値目標は設定していません。CEOのベンともよく話したのが、まず良いコミュニティを作ることが一番大事だということ。良いコミュニティを作るためには、数字に追われていては仕方がありません。

よく、ピンタレストは写真のクオリティが高いと言われることがあるのですが、ユーザーの目利きが優れているからであって、実は弊社からはコンテンツをいっさい出していません。ユーザーの間でクオリティを担保してもらっているので、良いコミュニティを作ることが何よりも勝ると思います。まだまだ、日本はその段階からです。

ある程度、一定数のユーザー数が揃わなければ、ビジネスモデルやマネタイゼーションという観点で語るには早い。少なくとも日本において今年一年間(2014年)で、マネタイゼーションの話が発生することはないと思います。

――コミュニティを良いものにするための施策は考えていますか。

2つ考えています。

1つ目はコミュニティビルディングで、コミュニティマネジャーを採用し、オンラインとオフラインでさまざまな活動をしていこうと思っています。この2月には、新たにコミュニティマネジャーが入社しました。オンラインでは、広くユーザーにリーチをかけていくと思うのですが、メール、Twitter、Facebookなどを駆使しながら、ユーザーのエンゲージメントを高める、もしくは理解してもらうための啓蒙をしていく。

オフラインでは、数は限られると思うのですが、インフルエンサーの方、ヘビーユーザーの方にエバンジェリストのように、プロダクトを世の中に広めていってもらいたい。いわゆるミートアップ(オフ会)を積極的に開催して情報交換し、弊社からサポートすることをどんどんやろうと思う。実際に直接メールで問い合わせをして、オフ会に招待することもあります。

2つ目は、日本と関連性の高いコンテンツを拡充していくことです。その方法としてパートナーシップを考えています。より多くの日本のビジネスユーザーに、先ほどの3ステップのように、ピンイットボタンを置いてもらい、アカウントを作成してボードを運用してもらう。そしてAPIで次の活用も検討いただくなど、より多くのパートナーに活用いただいて、より良いコンテンツが世の中にでるようにしていきます。

――2つの施策について、具体的にどんな動きをしていきますか。

人に対してリソースを割くことが、コミットメントとして1つあると思います。コミュニティ作りについては、コミュニティマネジャーが専任で担当します。一方、パートナーマネジャーの採用も進めていて、API実装の質問に答えたり、説明会を開いたりしてサポートしていく。こうした活動が大事だと思います。

――日本法人では2人のマネジャーと定国さんを含めた3人でのスタートになる。

カントリーマネジャー、コミュニティマネジャー、パートナーマネジャーの3名で始めますが、後ろにはグローバルで240名のメンバーが動いています。プロダクト開発は米国のチームが進めていて、言語のローカライズも米国チームで人員を備えている。東京オフィスは、目に見える人数は少ないかもしれませんが、ピンタレストとしてはチーム全体で、240名全員でユーザーをサポートしていく考えです。

日本法人は、組織作りも含めてようやく立ち上がったところです。ただ、人的リソースの伸びは急成長フェーズにあって、1年前にグローバルで80名だったメンバーが3倍の240名になっていますから、日本法人もどう伸びるかは未知数のところがあります。

日本法人はカントリーマネジャー、コミュニティマネジャー、パートナーマネジャーの3名でスタート。ピンタレストとしては、240名全員でサポートしていく

――楽天が出資した際に、日本の進出をサポートするという話があったと思います。今後何か、一緒にやることはありますか。

これについても、ようやく日本法人ができたところですので、さまざまな可能性を議論し始めているところです。楽天は8000万人以上の会員を抱えてらっしゃるサービスでもあるので、そこでより良い体験をしていただく、何かしらWin-Winの関係があると思うものの、具体的なところはまだ見えていないですね。トラベルやグルメなど、いろいろなサービスを持っていらっしゃるので、どのサービスと一緒にやるのが一番いいのか、という話もあります。

――今後の展開について、日本のユーザーにメッセージをお願いします。

よく、ピンタレストの楽しみ方がわからないと聞くこともあるので、こちらからも積極的に訴求していかないとならないと思っています。コツとしては、繰り返しになりますが、自分と感性の合うボードを見つけて、フォローして楽しんでみることです。きっと、ピンタレストの楽しさが体感できると思います。

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