名刺のクラウド管理はじめの一歩(個人利用編)

名刺をクラウド管理することを思い立ったところから、実践し始めるまで

「過去にもらった名刺の情報を、どこからでも取り出せるようにしたい」私がそう考えたのは、2010年の年末。デスク周りの大掃除を終えて、新しい年から名刺をクラウド管理することを思い立ちました。

交流会やネットワーキング(たとえばWeb担当者Forumのオフ会など!)で知り合った人とコミュニケーションする機会が2009年から徐々に増えてきたのですが、その中からプロジェクトにつながることも多々あります。そんなときに、名刺をすぐに見つけて連絡できればいいと思ったのです。

名刺管理というと、潜在的なリード情報管理のために社内や部門内でまとめて名刺情報をCRMに取り込むやり方も大切ですが、今回は、私の個人的な利用が目的です。

また、名刺管理システムには手元のパソコンやデバイスにデータを保存するものもありますが、今回はクラウド型、つまりネット上に置かれているサーバーにデータを保存してくれるタイプを前提としました。

名刺管理のシステムをどう検討したのかを整理してみましたので、皆さんの参考にしてみてください。

何がしたいかを絞り込む

名刺クラウド管理を検討するにあたってまず行ったのは、「自分が何をしたいか」「何をする必要はないか」を絞り込むことです。

名刺クラウド管理を検討するにあたり、私が考えた検討項目を整理して絞り込みチェックシートを作ってみました。

名刺クラウドの絞り込みチェックシート
①どこで見たいのか?(=デバイス)会社、自宅、モバイル環境など、どこで、どんな環境下で、どんなデバイスでアクセスしたいのかを考える
②なにを見たいのか?名刺に書いてあるデータのなかで、具体的にどの項目を管理してあとから参照したいのかを考える
③他人と共有したいのか?クラウド化したデータは他人と共有する必要があるのか、あるとすればどんな人とどんな内容で、どんな頻度でなのかを考える
④エクスポートはどこまで必要なのか?クラウド化したデータをCSV形式などでエクスポートする必要があるのかを考える
⑤どうやって名刺を探したいか?特定の人の名刺情報を探すときに、どうやって探したいのかを考える(会社名、名前、名刺交換した日付、どの会合で会ったのか……)。
⑥読み取りはどうしたいか?名刺はどんな方法で読み取るのか、スキャナなのかカメラなのかを考える
⑦コストは許容範囲?コストはどんなものが想定されるのか。どんな方法で、どんな費用だったら許容範囲なのかを考える

私の場合の絞り込み結果

このチェックシートをもとに、条件を整理して絞り込めるようにしたのが、次の表です。今回、私は自分の個人的な名刺管理を主体として考えていますから、部門ごとの名刺管理業務のためではなく、ビジネスパーソン個人としての必要/不必要で考えていることに注意してください。

①どこで見たいのか?(=デバイス)次の4種類のデバイスで情報を共有したいと考えました。
  • 会社のPC
  • 自宅に帰ってきてからPCで
  • 外にいるとき(iPhoneで)
  • 外あるいは自宅で(iPadで)
②なにを見たいのか?
  • メールアドレスの確認
  • お名前
  • 部署名や肩書きの確認
  • 会社名
③他人と共有したいのか?する必要なし
④エクスポートはどこまで?必要なし(データベース化して住所・氏名リストを作成する必要性は低い、それよりも個別にピンポイントで「あのときにお会いした○○さんに連絡したい」という利用シーンが多い)
⑤どうやって名刺を探したいのか?タグを付けたい。1人につき1つのカテゴリでは分類できない。複数分類にまたがってコミュニケーションさせていただいているかたがたも多いので、タグ管理が便利そう
⑥読み取りは?
  • 会社にスキャナがあるので基本的にはそれを利用することを想定
  • ただし、外出時にもすぐに取り込めるようにiPhoneのカメラで撮影したデータも使えるほうがベター
⑦コストについて今回は業務で共有するデータではなく、個人的なデータ管理なので、ランニングコストは避けたい。一時的に初期コスト(たとえば専用の読み取り機や、名刺管理ソフトなど)がかかるのは許容範囲である。

どうやって名刺を取り込むのか?

名刺管理で一番重要なのは、名刺をため込まないこと。

名刺の取り込み(インポート)が面倒になってしまったら、管理が滞ってしまいます。そこで取り込みが手軽にできる方法をまず探すことにしました。

会社では、複合機のスキャナ機能を活用することに。ただし業務用なので、いったん共有のエリアにデータが保存され、その後自分のエリアに移動させる必要がある。名刺データ管理をするのであれば、スキャン回数も多くなるので、もう一手間省く方法がほしい。スキャンしたあと指定のフォルダにどんどんデータがたまるようになってほしい。そして、そのままクラウド名刺管理ソフトと連動してくれたら手間が省ける。

そこで、気になったのが、自宅用スキャナか、名刺読み取り専用機。

iPadの登場で手軽なスキャナが普及していると聞いたので、さっそく量販店のスキャナコーナーに下見に行きつつ、インターネットも調べました。

製品名/リンク説明メーカー名
YASHICA S80名刺スキャン専用機エグゼモード株式会社
YASHICA S40A4スキャナエグゼモード株式会社
imageFORMULA DR-150A4スキャナキヤノン電子株式会社
ScanSnap S1500A4スキャナ株式会社PFU

この中からキヤノンのimageFORMULA DR-150を選んで購入。自宅ではA4スキャナを使い、モバイル環境ではiPhoneカメラを使って名刺のデータを取り込むことにしました。

いよいよ名刺データの管理サービス選び

スキャナで取り込んだ名刺データの管理は、専用端末内に管理(電子手帳のように)したり、パソコン内にデータとして管理したりもできますが、今回はネットの「あちら側」つまりクラウド上に保存するシステムにしました。

クラウドというと難しそうですが、わかりやすく言うと、こちらでは何も管理しなくても、ちゃんとネット上のサーバーでデータを安全に保存してくれるサービスです。

●クラウドタイプ
製品名/リンクメーカー
Evernote(エバーノート)エバーノートジャパン株式会社
Link Knowledge(リンクナレッジ)三三株式会社
クロネコ名刺Plusヤマトシステム開発株式会社
アルテマブルーイーシステム株式会社
名刺バンクアクシスソフト株式会社
●スタンドアロン/ネットワーク共有タイプ
※今回はクラウドサービスを選択したため、これらの製品は未検討です
製品名/リンクメーカー
名刺読取革命Ver.2パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社
デジタルピットレック株式会社キングジム
速攻!名刺管理2株式会社ジャストシステム
本格読取 おまかせ名刺管理 2ソースネクスト株式会社
やさしく名刺ファイリング PRO v.10.0 高速カラースキャナ付メディアドライブ株式会社

「Link Knowledge」「アルテマブルー」「クロネコ名刺Plus」などは、社内や部署内での共有管理に向いている高機能サービスで、名寄せ、人脈マップ、DMリスト作成や一斉メールなどのアウトプット連携にもすぐれています。業務として導入するのであれば、これらのサービスは気になる存在です。

とはいえ今回は個人用ですので、Evernoteの性能を中心に確認することにしました。もし業務用にクラウドサービスを検討する場合は、セキュリティのレベルや、利用者数やデータが増えたときに利用料がどう変わるのか、サービス稼働率は何%ぐらい確保されるのか、データ紛失対策がどうなっているのかなど、しっかりとチェックする必要があります。

日本語読み取り対応がどこまで進んでいるか?

Evernoteは名刺だけではなく、さまざまなデータをなんでもクラウド上に放り込んで(アップロードして)タグ付けをしておけば、あとからその情報を検索できるというサービスで、PC用アプリケーションもiPhone用アプリケーションもあります。

OCR機能も備えていますので、名刺を写真やスキャン画像としてEvernoteに取り込めば、自動的に文字の部分を読み取ってくれますので、あとから検索できます。とはいえ、多国語展開しているEvernoteですが、日本語をどれくらいの精度でOCRしてスキャンできるのかが気になるところ。

まずは、iPhoneで名刺を複数枚撮影し、PDFで保存。そのまま社名や氏名を検索してみました。その名刺に書かれている名前などでEvernoteを検索してみると……問題なくその名刺のPDFを見つけられました。

次に、購入したてのキヤノンのA4スキャナimageFORMULA DR-150を使ってみました。スキャンした画像をJPEG形式で保存し、PC経由でサーバーにアップロード。画像として見るのであれば、こちらのほうが写真撮影よりもきれいに閲覧できます。そして、同様にEvernoteを検索してみると……問題なくOCRされた情報でその名刺を見つけられました。

とはいえ、全部の名刺が100%正しくOCRされ、検索で間違いなくヒットするわけではありません。書体の関係なのか、正しく検索できない名刺もありました。今回ざっと10枚の名刺をテストしたなかでは、1枚だけ、どうしても正しく検索できないものがありました。こういう場合もあるので、日付で管理するか、タグをつけていくことにしました。そうすれば、Evernoteで正しく認識されない名刺でも探せるようになるでしょう。

結論

今回の名刺クラウド管理ソリューション選定では、状況に応じて4つのデバイス(会社PC、自宅PC、iPhone、iPad)から名刺を取り込んでEvernoteで管理することに決定しました。

しかし、これで終わったわけではありません。

課題

Evernoteの日本語読み取りは100%ではないので、今後の開発状況のチェックを続けることや、名刺インポート後に念のためチェックすることが当面必要です。

期待

今回Evernoteを初めて使ってみたのですが、さすが「何でも保存、どこからでもアクセス、すばやく検索」と銘打っているサービスだけあって、名刺管理以外にも幅広く活用できることに気づきました。画像管理では、年賀状の管理や、気になるWebサイトのスクリーンキャプチャーを保存しておけます。音声データ管理もできるので、英会話を録音しておいて、タグをつけて改善状況を確認できます。また地理データとも連携できるので、データと位置情報をつなげて保存することで、旅行記録もできます。たとえばゴルフにいったときのスコアやスイング、記念撮影なども地理データと一緒に保管するとおもしろいかもしれません。

さらに言うと、EvernoteはPC用ソフト、iPhone用ソフト、iPad用ソフトがそれぞれ違う作りになっていました。PC版は機能的な作りですが、iPad版は遊び心ある画面になっていますので、楽しみながらデータ管理ができ、使い方の発想が広がると感じました。

また、今回購入したキヤノンのA4スキャナimageFORMULA DR-150は、スキャンデータをそのままメールで送信したり、ほかのアプリに自動連携させたりする機能があるので、こちらも名刺管理以外にも便利に活用できそうです。

飛躍

今回は個人としての名刺管理が目的でしたので、結果としてiPhone/スキャナ+Evernoteという、ネットギークな人には定番的な組み合わせに落ちつきました。

しかし、名刺管理そのものがもっと劇的に変わる時代がくるかもしれません。たとえば、スマートフォンの上に名刺を置くとそのままデータを読み取ってくれて、紙のお名刺を渡さなくてもいい時代がくるかもしれません(Pokenのようなサービスはすでにありますね)。また、同じ会社の方からただいた名刺データは組織系列に並び替えが自動でできたり、組織名称が変わったら自動的にデータがプッシュされて新しいデータに上書きされたり。そう遠くない時代に実現するかもしれませんね。そうなると、今回のような名刺管理の苦労はムダになってしまいますが……それはそれで良いことでしょう。

また、リンクナレッジやアルテマブルーのような、組織向けの名刺管理も、今後は進めたいところ。組織として業務でCRMやリードナーチャリングをする場合に、名刺管理は非常に重要ですからね。

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