インタビュー

「ソーシャルメディアマーケティング」という言葉は、誤解を招く表現だ

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「ソーシャルメディアマーケティング」という言葉は、誤解を招く表現だ

●マスメディアからソーシャルメディアへという流れの中で、もうマスメディアは不要だという話もありますが。

Michael Slaby

スレイビー氏: 新しい対話のありかたを推進することは、これまでのマスメディアを通した広告やマーケティングを捨ててしまうことを意味しているわけではありません。

●マスメディアとソーシャルメディアの違い、そしてそれらをより統合して活用することのメリットと留意点は何でしょうか。

スレイビー氏: マスメディアとソーシャルメディアを統合的にとらえ、全体的な枠組みの中で、一貫性のあるメッセージでコミュニケーションすると、最も力を発揮できます。テレビ広告は、新しい1つのトレンドを作り出すという意味では非常に重要な役割を果たします。オバマ・キャンペーンでも、一貫性のあるメッセージを伝えるための基礎として、テレビ広告は不可欠なものでした。

人々はテレビを見るのをやめてしまったわけではなく、もっといろいろなものを使っているのです。テレビに加えてチャネルが増えているだけなのです。米国ではテレビはいまだに重要で、日本でも新聞が重要だと思います。

●Twitter が登場してきて、リアルタイム性がより求められてきています。

スレイビー氏: デジタルメディアはさまざまな種類が存在し、それぞれ異なる種類の対話を可能にします。しかし、そのいずれの場合においても重要なことは、人々が直接参加してコミュニケーションしているということです。ということは、企業はそこに一方的に語りかけるのではなく、それぞれのコミュニティが活発になるように関わっていくべきなのです。

ソーシャルメディア一般的に言えることですが、国ごとに文化的な背景が違うため、その活用方法にも違いがあります。米国では、個人情報をシェアすることは自然に受け容れられていますが、日本では匿名性が重要視されています。

より多くの情報をシェアすることの価値は非常に大きなものです。匿名性を保つことと、ソーシャルメディアで多くの情報をシェアすることの間には緊張関係がありますが、今後TwitterやFacebookが成長していくにつれて、この緊張関係をより自然な方向へと変化していくことになると思います。

●ソーシャルメディアの積極活用を提案するなかで、さまざまな新しい手法やキーワードが登場していますが、どう考えればいいでしょうか。

スレイビー氏: ソーシャルメディア空間は、個人間の関係をベースにしたものです。企業の振る舞いも、その関係を尊重したものでなければなりません。ただクーポン券をばらまけばいいというものではないのです。その空間にあった振る舞いが求められます。マーケティングキーワードを叫ぶだけではどうにかなるものではないのです。

「ソーシャルメディアマーケティング」という言葉は、誤解を招く表現だと思います。マスメディアで行われたマーケティング手法を取り出してきて、ソーシャルメディア上でそのまま使うようなことは、受け容れてもらえません。

「ステルスマーケティング」もまた、とても危険な言葉です。米国のFTCでは、ステルスマーケティングに関する規制を行っています。ソーシャルメディアにおいては、「本物であること」や「誠実であること」はとても重要なことです。ソーシャルな関係を他の人と持つとき、正直であることは不可欠ですし、ブランドコミュニケーションにおいては、信頼が最も重要な要素なのです。

※連邦取引委員会、日本でいう公正取引委員会。
Michael Slaby

まずエンゲージメントが必要なのは企業と代理店の間

●ソーシャルメディア対応では素早いレスポンスが求められます。しかし、代理店が企業とユーザーの間に入ってしまうと、時間がかかってしまうことが多くあります。コミュニケーションプロセスにおける、代理店などの外部パートナーの役割や体制はどのように考えていますか?

スレイビー氏: 早いレスポンスというのは、配慮するべき事柄です。代理店と仕事をはじめる段階でルール化し、取り決めをしておくべきでしょう。

企業と代理店という関係でいうと、これからは、単なる受発注の関係ではなく、代理店と企業も、パートナーとしての関係を持つことが重要です。つまり、「企業と、PR代理店や広告代理店の間のエンゲージメント」ですね。

ソーシャルメディアの活用は、まだまだ未知の部分が多く、しばらくは試行錯誤が続くことでしょう。しかし、スレイビー氏の言葉にもあるように「透明性」「信頼性」「継続性」といった本質を忘れた施策やコミュニケーションをしないことが重要です。チームとして、組織として一貫した姿勢が求められています。

まとめ

スレイビー氏との1時間に渡るインタビューを通じて感じたことは、経験に裏付けされた自信でした。単なる知識や仮説ではなく、「Obama for America」で大きなチャレンジをし、成功したことは、ほんとうに貴重な体験だと思います。

エデルマンにおける今後の役割において、「クライアントを支援するために、コミュニケーション、そして旧来と新しいデジタルの両方をクロスメディアし統合するためのフレームワークを作ることに全力を注ぎます」というスレイビー氏。テクノロジーに詳しい彼が、PR代理店の立場から、新しいツールを開発して提供するなどの可能性も期待できそうです。

顧客と企業の新しいコミュニケーションを支援し、実現していくには、企業と代理店の間により深いエンゲージメントが必要です。ソーシャルメディアの登場によって、顧客、企業、そして代理店の間の新しいパートナーシップ、新しい関係が、すでにスタートしています。

マーケティングやPRに関わる私たち自身の、個人の意識改革からスタートしなければならないと改めて感じています。

Minako Kambara

取材&原稿執筆:神原弥奈子ニューズ・ツー・ユー

翻訳&原稿協力:平田大治(ニューズ・ツー・ユー)

写真:Web担編集部

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