編集部ブログ―池田真也

アディダスが目指すのは360度365日の対話。ad:tech Tokyo 2011基調講演レポート

ad:tech Tokyo 2011、オープニングキーノートでは日米アディダスのマーケティング担当者が講演

デジタルマーケティングの国際カンファレンス、ad:tech Tokyo 2011が10月27日~28日にかけて東京のザ・プリンスパークタワーホテル東京で開催された。ad:techが日本で開催されるのは今年で3回目。毎年規模を拡大しており、2011年は2日間で11856人(実人数で7428人)が参加した。

基調講演会場は立ち見がでるほどの人気

ソーシャルメディアに必要な「リラックス」「透明性」「意外性」

27日のオープニングキーノートでは、世界的スポーツ用品メーカーのアディダスが「One Brand, Two Countries~ソーシャルメディアマーケティング革命~」をテーマに、同社ブランドのソーシャルメディアマーケティング戦略について、過去から現在へと至る変遷を日米の事例とともに語った。

adidas US
Head of Digital Marketing
Chris Murphy氏

はじめに登壇したのは、「私の価値観で最も重要なのはパッションであり、それはアディダスでも同じことです」と話すadidas USのクリス氏。デジタルにこそマーケティングの将来があると考え、デジタルマーケティングを担当するようになったというクリス氏は、デジタルマーケティングをブランド戦略の最先端に位置づけ、コミュニケーションを行っていることを話した。そのうえで、adidas USにおける消費者とのコミュニケーションについて、これまで、そしてこれからのソーシャルメディア対応を交えながら説明していった。

1つ目の事例として紹介されたのは、2006年に行った人気バスケット選手を起用したキャンペーン「Do You Believe In 5」。既存のコミュニティを利用せず、独自のサイトとして立ち上げられたサイトは、写真や動画を投稿し、友人を招待して共有できるなど、今のソーシャルメディアと同様のことが可能で、ブランドと消費者との感情的なつながりを生み出すことが狙いにあったという。なかでも、2日かけて撮影された動画は人気で、キャンペーンは多くの消費者を呼び込み成功した。

しかし、キャンペーン終了後にサイトを削除したことで消費者との会話は途絶えてしまい、継続したコミュニケーションにはつながらなかったという。「コミュニティはすばらしいものだったが、我々はソーシャルを理解していなかった。あくまでブランドを語るのは彼らであってコントロールするものではない。カンバセーションは彼らのなかで起こるものだ」(クリス氏)。このときの経験から、消費者は囲まれた部屋のなかではなく、自由にソーシャルメディア上で語りたかったことに気づき、既存のコミュニティなども活用したマーケティング戦略へと切り替えていったという。

また、消費者とのエンゲージメントが重要だと考え、エンゲージメントの指標を再定義した。従来型メディアの考えであれば、テレビの前に座ってCMを1秒見ただけでもエンゲージしたと数えていたが、よりアクティブにブランドとの関係を築いてくれる可能性がある消費者へと訴求していくことが重要だと考えた。

ENGAGEMENT=PARTICIPATION
VIEWINGからはじまる6つのエンゲージメント指標を定義した

そして現在、アディダスは2006年当時のように消費者を囲い込むことはせずに、Facebookを重視してエンゲージメントを構築していっている。常に新しいコンテンツをプッシュすることで、Facebookではadidas.com以上にアクティブなコンテンツが生まれており、消費者と継続した関係を築けているという。

続いてクリス氏は、これから先の未来では「リラックス」「透明性」「意外性」の3つが重要になると話す。

  • リラックス
    「2008年頃まで、ソーシャルは恐ろしいもので何をすればいいかわからなかったが、今はリラックスして取り組むことができている」(クリス氏)。adidas USではリラックスすることが重要だと考えられており、今ではアイデアがあればそれをFacebookに投稿し、消費者に問いかけることをしているという。
  • 透明性
    ソーシャルメディア上では、企業は透明でなければ消費者はついてきてくれない。隠し事をせずに、商品について疑問があれば消費者から質問を受け、そのブランドに最も詳しい担当者が答える。こうしたことを本社レベルではなく、現場レベルで対応している。
  • 意外性
    クチコミを広めるためには、意外性を提供することで消費者を楽しませることが重要。たとえば、adidas USではノートルダム大学のフットボールチームにオリジナルのグローブを提供している。一見すると普通のグローブだが、両手を合わせるとチームロゴになるもので、このグローブをFacebookのアクティブユーザー100人にサプライズプレゼントすることで、クチコミが広がっていったという。別の商品での展開も考えているという。

最後にクリス氏は今後の展開について、米国で10代の若者に行われたアンケートの結果を示しながら語った。アンケートによると、米国の10代若者のうち、78%が有名になりたいと考えていて、83%は必ず有名になれると信じているという。「私が10代の頃には考えなかったが、83%が有名になれると信じている。今は実際になることができ、これは我々にとっても価値のあることです」とクリス氏は話す。

消費者が主役のソーシャルメディアが登場し、ソーシャルでコンテンツが支持されることで実際に有名になる人物も多いというが、彼らの興味を引く、驚くようなコンテンツを提供することは、彼らとブランドの双方に価値があるという。なぜなら、彼らの先にはさらに多くのファンがおり、200万人のFacebookファンが見たコンテンツは、さらにその先いる1億人の友人にまで影響する可能性があるからだ、と話しクリス氏は講演を終えた。

Facebookファン200万人から1億人へと波及する

360度、365日の対話を生み出すには

アディダスジャパン株式会社
ブランドマーケティング シニアマネージャー
津毛一仁氏

基調講演の後半は、アディダスジャパンの津毛氏が日本市場のソーシャルメディアの取り組みについて説明していった。日本で有名になりたいと考えるのは少なく、友人同士のコミュニティの影響がより強いと、日米の若者では状況が違ことに触れつつ、まず2010年のキャンペーンプラットフォームが示された。

2010年8月当時、アディダスジャパンとしてはFacebookを活用しておらず、外部プラットフォームとしてはTwitterやアメブロなどを利用していたものの現在と比較してソーシャルメディア上の展開は小さく、それぞれが個別に展開していた状況だった。独自のキャンペーンでは、特になでしこジャパン応援企画「SKY COMIC」はオフラインとオンラインでユーザーを巻き込み人気を博したが、一方で、一時的な盛り上がりにとどまり継続的な対話を生み出せないという課題があった、と津毛氏は話す。

2010年のソーシャルメディア展開

そして2011年、人々の価値観に大きな影響を与えた3月11日の震災以降は、これまでの経験を活かし「adidas is all in」と題したキャンペーンをFacebook、Twitter、mixi、グリー、アメブロなど、多数の外部ソーシャルメディアを取り入れる形でプラットフォームを構築して展開していった。mixiページはローンチにあわせて展開し、公式ブログやスマートフォンなども新たに加えた。

2011年、現在のソーシャルメディア展開

続いて津毛氏は、ソーシャルメディアを活用したスポーツシューズ「adizero」のキャンペーン動画「adizero LAB」を最新事例として紹介した。

adizeroのブランドコミュニケーションでは、“多くの人に知ってもらうこと”と“メリットが何かを伝えること”の2つをリーチしようと考えた。そこで、まずブランドを知ってもらい、そのうえで語ってもらうアプローチを取った」と話す津毛氏。ソーシャルメディア主体のキャンペーンとして、あえてプロモーションは行わずYouTubeに動画を公開したところ、クチコミだけで急速に広がり、動画は4週間で90万以上再生された。さらに動画を入り口としてFacebookやモバイルへと波及し、Facebook上のフィードバックは9割以上がポジティブなものだったという。その他にも、現役選手がリアルタイムで実際の試合を題材に講義を行う「アディダス フットボール大学」なども展開していることが紹介された。

最後に津毛氏は、マーケティング戦略として「360度365日、熱量を生み出すコミュニケーション」をキーワードとして示した。「キャンペーンやコミュニケーションを作るときは360度のシナジーを365日生み出すこと、この2つをキーワードにしている。ソーシャルの活動は常にアクティベート化されており、ソーシャルのチャネルを取捨選択したうえでプロダクトと連携して実施していくことがこれからは重要になる」(津毛氏)

加えて、クリス氏はキャンペーン終了後にも消費者との対話が落ち込まないようにすること、渓谷をなくして山頂を維持することが重要だと話す。「アディダスはキャンペーン主導の企業であり、投資のピークがある。従来はピーク(山頂)の間に落ち込み(渓谷)があったが、ソーシャルメディアを使うことで次のピークまで対話を持つことができる。継続して対話を行い、ピークの状態を維持すること、これが365日の対話ということ」(クリス氏)

また、質疑応答では365日の対話を実現するための取り組みも話された。クリス氏は米国での対応について、「アディダスはパッションの会社であるため、社員が熱心に週末や夜間も対話をしてくれている」と話した。過去には外部スタッフを雇うことも行ったが、今は代理店などを使わず社員が対応しているという。津毛氏も「常に対話を持つことは難しいと思うが、ソーシャルメディアでの対話は重要なものであり、我々のメッセージを外部に任せることはできない」と、アディダスジャパンにおいても同様の姿勢で対応していることを明かした。

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